戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

157 / 190
本日2本立て!


顕現

 マリアと輪はトレーニングルームでトレーニングをしている。輪はじっとしていられない性格もあり、身体を動かしたいという事もあり、マリアのトレーニングに付き合う形となってトレーニング着に着替えて参加している。

 輪の両手に装着しているミットをマリアがジャブで打ち続けているが、戦闘経験も力も上であるマリアのジャブを、顔色一つ変えることなく受け止め続けられている。それに対し、マリアの脳裏には先程の対策会議の記憶が蘇る。

 

(非戦闘員の仲間を巻き込んだ今回の一件、衝撃は大きかったはず……。まさか、あの時神獣鏡の光を受けた二人が原罪を解かれた人間……神の依代に成り得る存在だなんて……。それを誰もが受け止め、強い心で乗り越えようと努めている……。)

 

 だがそれが雑念となってしまい、マリアの右手のストレートジャブがミットを外してしまい、輪の顔面に向かってしまう。

 

「しまった!」

 

 しかし、分かっていたかのように輪は身体を左に反らした事で事無きを得た。先程から受けていたパンチに何処かブレがあると察していたのだ。

 

「分かってましたよ。心ここにあらず、みたいなパンチでしたもん。」

「ごめんなさい……。」

「大丈夫ですか……?もしかして、翼さんの事で……。」

 

 マリアの目が見開いた辺り、図星を突かれたのだろう。翼が頼りにならない以上、自分がしっかりしなければならない時に、自分も翼と同じ過ちを犯すところだった。さらにその輪にまで心配され、自分も人の事が言えないと嘲笑する。

 

「駄目だな私は……苛立つ翼に差し伸べる手すら持っていない……。」

「マリアさん……。」

 

 首に下げられたギアのペンダントを手にした。

 

「仲違いぐらい、セレナとだってした事があるのに……。」

 

 姉妹であれば当然喧嘩もする。マリアとセレナも例外ではない。白い孤児院にいた頃、二人は何度も喧嘩した。その度に二人は仲直りした。二人を繋げてくてたのは、Apple。マリアとセレナの生まれ故郷に伝わる童歌。

 

(いつだって二人の間には歌が流れていて、仲直りするのに言葉はいらなかったわね。)

 

 いつの間にかAppleを歌っていたマリアに笑顔が戻っていた。輪もマリアの歌に身を委ねるように目を閉じて聴いていた。

 だがマリアは何かを思い出し、歌うのをやめた。終わったのかと思った輪の目は開いている。

 

「どうしたんですか?」

「いえ……。このフレーズ、最近どこかで聞いたような……。」

「ん?」

 

 どういう事か理解が追いついていない輪は、置いてけぼりをくらうしかなかった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その頃、緒川は調査部と共にある研究機関を訪れていた。研究員がアタッシュケースの中身を緒川達に確認させている。中身は旧ノーブルレッドのアジトから回収された欠けた歯車、3つのマイクロチップとメモ用紙。確認を終えると、研究員がアタッシュケースを閉じて、それを緒川に引き渡す。

 

「調査結果はこの中に納めています。」

「確かに受領致しました。」

 

 証拠物品を受け取った緒川達は本部へと帰投するべく3つの車両にそれぞれ乗り込む。

 

「証拠物品と共に、これより帰投します。」

 

 弦十郎に報告を終え、通信を切ると、緒川の乗る車両を先頭に発車する。しかし、その上空から一機のドローンがその様子を捉えていた事に気付いていなかった。その会話の内容も盗聴されている。チフォージュ・シャトーの城壁から監視していたヴァネッサが、そのドローンを操っていた。

 

(疑いはまだしも、証拠となるものを持ち帰られるのはまずいかもね。)

 

 すぐさまミラアルクとエルザに念話を送る。

 

『二人とも、聞こえて?警戒監視網にてS.O.N.G.の動きを捉えちゃった。私達と風鳴機関の繋がりもバレたみたいだけど、どうしよう?』

「位置は把握してるでありますね?だったら迷うことはありません。」

「やっぱそうよね。ここはお姉ちゃんとして強襲、しかないわね。」

 

 背中からダイブするようにシャトーから飛び降りた。すると、足底部が変形してジェットブースターを点火、そのまま上空を飛行する。

 

『神の力の具現化はウチらで進めとく。そっちは任せたぜ。』

 

 そうとは露知らず、緒川達は本部を目指している。その調査報告を弦十郎に通信越しに報告している。

 

「技研による解析の結果、廃棄物処理場で取得した物品は、119.6%の確率でアンティキティラの歯車との事です。」

 

 アンティキティラの歯車。かつてパヴァリア光明結社が神の力の依代として運用していたティキと呼ばれたオートスコアラーのコアである歯車。ティキが起動停止した後はクルーズに偽装していたS.O.N.G.の調査艇にて研究されていたが、ティキ本体の爆発、船舶が炎上した事によって失われていたと思われていたが、それが敵のアジトで発見された。それが何を意味するのか、弦十郎と緒川は分かっていた。

 

『冤罪ロジック構築可能な数値で、本物と立証されてしまったか……。』

『先立っての事故で失われたはずの聖遺物が、敵のアジトにて発見される……。』

「あの件に関して保管物品強奪の知らせは受けていない。遺失を装い、横流しされたと考えるならば……。」

「護災法施行後、国内の聖遺物管理は風鳴機関に一括。司令の懸念通り、やはり鎌倉とノーブルレッドには何らかの繋がりがあると見て……っ?!」

『どうした?!』

 

 驚愕によって緒川の言葉が詰まり、弦十郎はその異変に気付いた。

「敵襲です!恐らくは証拠物品を狙ってと思われます!」

 

 車道の中心に一人立ち塞がる敵の姿。ヴァネッサが妖艶な仕草でジャケットのファスナーを下ろすと、胸部から2本のミサイルが発射された。それが最後尾を走る車両に直撃し、爆発する。辛うじて避けられた2台の車両はそのままヴァネッサのすぐ横を走り抜ける。

 ファスナーを上げながら、走り抜けた2台の車両の方を振り返る。

 

「せっかく誘ったのに、つれないわ。」

 

 脚部をホバーへと変えて残りの2台を追う。先程まで3台だった車両は、敵襲を受けた時を想定し、証拠物品を乗せた車両を逃がす為に配置された言わばダミー。とはいえ、人命が失われた事に変わりはない。

 

『応援は既に手配している!到着まで振り切ってみせろ!』

「そのつもりです!」

 

 しかし、ヴァネッサは証拠隠滅の為ならば手段など問うはずがない。今度は指先10本からマシンガンの弾丸が連射される。緒川の乗る車両は回避するが、もう1台の車体後方のボディは貫通し、さらにタイヤのホイールに直撃した事で外れてしまい、制御出来なくなった車両はスピン、そのまま横転して大破してしまう。残るは緒川と証拠物品を乗せた車両1台のみ。

 今度は両肘から2本のミサイルが放たれる。しかし、車両はそれを回避。今度は両膝からも発射される。今度は肘より低く、より内側に向けて発射された為、普通に避けるのは不可能だ。だが緒川は右側のガードレールを利用する事で、車体を空中回転させて回避、見事に着地して逃亡を続ける。このままでは埒が明かないと判断したヴァネッサは高く跳躍する。

 

「行かせない……スイッチ・オン!コレダー!」

 

 掛け声と共に、ヴァネッサの左下肢を、スパークを纏った槍へと変形させた。右足底部のジェットブースターを利用して上空からライダーキックを繰り出す。これで回避は不可能……のはずだった。

 

「っ?!どういう事?!」

 

 何と1台であるはずの車が3台へと増え、ヴァネッサの飛び蹴りを避けたのだ。

 

【忍法車分身】

 

 緒川は飛騨忍の末裔である。その忍法を応用した技によってヴァネッサの強襲を尽く回避する事が出来た。それを一切知らないヴァネッサは信じられない様子で、分身を解除して走りゆく車両を見ていた。

 

「現代忍法……?っ?!」

 

 突如ヴァネッサの背後から車両が走ってきた。流石のヴァネッサもこれにぶつかれば痛いでは済まされない。両手からロケットパンチを発射して、車両のフロントを破壊したが、その車両からクリスとマリア、二人の装者が跳躍して出て来た。

 

 Killter ichaival tron……

 

 起動詠唱でギアを纏った二人。クリスが拳銃を発砲すると、ヴァネッサは後退して避けたと思われたが、銃弾が鋭くなり、地面に着弾する前に軌道がヴァネッサが避けた方へと変わった。

 

「何ですって?!」

 

 咄嗟に避ける事が出来ない為、両下肢を変形させて、電磁バリアを展開して防ぐ。その隙をマリアは見逃さない。

 

「隙だらけぇ!」

 

 しかし、その前に放ったロケットパンチをそのまま操り、指先からマシンガンを乱射。被弾したマリアは怯むが、ギアのプロテクトによって小夜の時ように銃弾が貫く事はなかった。

 さらにロケットパンチの掌からアルカ・ノイズの召喚石がばら撒かれ、地面に落ちて割れるとセグウェイ型の群れが召喚される。

 だがクリスの拳銃から発砲された弾丸が、エネルギーのビームのように変形、アルカ・ノイズの群れを纏めて撃ち抜いた。

 

【HORNET PISTOLS】

 

 形勢不利と見たヴァネッサ偶々通りかかった大型トラックにロケットパンチを発射。車体を掴んでその上に乗って逃亡を図る。

 

「何度も卑怯な手を使って!」

 

 このまま攻撃しようものならトラックに乗っている一般人に危害を加えかねない。それにマリアが憤る。

 トラックは高速道路へと入った。

 

「証拠隠滅は失敗……。こうなったら装者の足止めくらいしておかないとね。」

 

 そう呟いている内に、装者二人が走る車両に飛び移った。

 

「また一般人を巻き込むつもり?!」

「ご名答。」

 

 マリアの問に悪びれもなく笑みを浮かべて、車両ごと装者を撃ち抜こうと再び指先からマシンガンの弾丸を乱射する。そうはさせるかと、マリアは蛇腹剣へと変形させた刃で全弾防いだ。

 

「それが、アガートラーム……妹共々、よくその輝きを疑いもせず纏えるわね。」

「どういう意味?!」 

 

 突然ヴァネッサから言われたそのセリフに、マリアは短剣を構えながら問う。

 

「イラク戦争の折、米軍が接収した聖遺物の一つ。シュルシャガナやイガリマと異なり、出自不明故に便宜上の呼称を与えられた、得体のしれない謎のギア……。」

 

 自身の纏うギアの事実。それを戯言と切り捨てられず、戸惑うマリア。

 

「何てね。」

 

 だが隙だらけとなったマリアに、左肘からミサイルを発射したヴァネッサ。マリアはこれを防ぎきれず、悲鳴を挙げながら吹き飛ばされてしまう。だがその手を取ったクリスに助けられ、別の車両のボンネットと屋根に着地したが、何も知らない運転中の一般人は何事かと驚きを露わにする。

 

「アイツら得意の搦手だ!揺さぶりに付き合わされてペースを乱すな!」

「ええ……そうね。これ以上好きにはさせない!」

 

 もう油断は見せない。マリアは再びヴァネッサを見据える。

 

「世界の果てを見せてくれぇ!」

 

 何が何なのか分かっていないようだが、アクセルを踏んで距離を詰めようとしている辺り、付き合ってくれるようだ。

 

「それじゃあ、こういうのはどうかしら?」

 

 ヴァネッサはトラックから飛び上がって、両肘両膝からミサイルを計4本発射させると、高速道路を破壊。道に大きな風穴が空いてしまう。クリスとマリアを乗せた車両はアクセル全開であり、急ブレーキした所で落ちてしまうのは明白。

 

「あいつの相手は任せた!」

「了解!」

 

 クリスに頼まれたマリアは車両から跳躍する。車両はそのまま空いた穴から高速道路から落ちてしまう。

 道路へと飛び移ったマリアは弾丸とミサイルの嵐をかいくぐって、ヴァネッサを斬りつけるが跳躍して避けられてしまう。さらに、足底をジェットブースターを点火させる事で、浮遊する事でマリアの攻撃範囲から遠ざかっている。腕を組みながらマリア達を見下ろしている。

 

「あなた達が不甲斐ないから、余計な被害者出ちゃったかも?」

 

 アルベルトのような余裕の笑みを浮かべているが、それはすぐに裏切られる。クリスが展開した2本の大型ミサイルのブースターを利用して、車両が落ちないように掴んでゆっくり浮上してきた。

 

「何ですって?!けれど、弱点を抱えていると同じ!」

 

 ヴァネッサは車両を掴んで隙だらけになっているクリスに指先からマシンガンを放つが、マリアの蛇腹剣が全弾斬り捨てる。

 だがクリスは防ぐ事は出来ないが、別に攻撃出来ないわけではない。そのまま腰のアーマーから小型ミサイルを展開して全弾一斉掃射。

 

【MEGA DETH PARTY】

 

 ヴァネッサはマシンガンの弾丸で小型ミサイルを全て撃ち落とすが、車両を道路へと着地させたクリスは、そのまま展開していた大型ミサイルを2本発射させる。だがその2本はヴァネッサが避ける事なくそのまま素通りしてしまう。

 

「狙いが大雑把すぎるわ!」

 

 が、それは早計というものだ。マリアの蛇腹剣の剣身を利用して、軌道を2本ともヴァネッサの方へと変えてみせた。反応が遅れ、ミサイルをマシンガンの弾丸で打ち落とそうとするが、至近距離でそんな事をすれば爆発した時の衝撃で吹き飛ばされるのは自明の理。だがそれに気付かなかったヴァネッサはその愚行を犯してしまい、高速道路の壁に背中を打ち付けてしまう。

 起き上がろうとするが、クリスに銃口を向けられた。これで詰められた。

 

「プチョヘンザだ!」

 

 Put your hands up、英語で手を挙げろ。銃口を突きつけられたこの場合、ホールドアップを意味する。

 

「未来とエルフナイン、連れ去った二人の居場所を教えてもらうわ!」

 

 ヴァネッサを追い詰めた二人だったが、突如破壊された高速道路の壁から巨大な光柱の輝きが発し、さらにあの不協和音までもが聞こえ出した。それらはチフォージュ・シャトーから発せられていた。

 

「マテリアライズ……?だけど……早すぎる!」

 

 アジトにしているヴァネッサも戸惑いを隠せていない辺り、想定外の事態ということだろう。本部もモニターでチフォージュ・シャトーの映像を捉えている。弦十郎も驚愕を露わにする。

 

「何が起きている?!」

「やっぱりこの歌……私の胸には、Appleのようにも聴こえて……。」

 

 マリアが感じていた違和感の正体を口にする。そして、突如チフォージュ・シャトーの真上に現れた光柱。その中心に銀色の繭が顕現した。

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は来た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覚醒の時が来る…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たった一人、地球に残った私……■■■■■ほ使命……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ、目覚めよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、メディカルルームで眠る瑠璃の目が開いた。その瞳は冷たい闇が宿っていた。




おまけ

未来「響、お誕生日おめでとう。」

瑠璃「おめでとう響ちゃん。」

輪「おめでとーう!」

響「うわぁー!ありがとうございます!」

未来「というわけで、今日はいっぱい御馳走を用意しました!」

瑠璃「そして誕生日ケーキも、大ボリューム!」

響「凄ーい!」

輪「えーと、1段2段3段……待て待て待て!誕生日ケーキ五重塔になってるよ?!これウェディングケーキの間違いだよね?!」

未来「ウェディングケーキ……(ポッ……///)」

輪「そこ!何で顔を赤くしてんの!」

瑠璃「作るのに苦労したよ。サプライズの為に誰も言えなかったから一人で作らなきゃだったし。」

輪「これあんた一人で作ったの?!」

未来「ありがとうございます瑠璃さん!」

輪「何でアンタが礼言う?!もう誰かこの人達を止めてえぇーー!!」


響ちゃんお誕生日おめでとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。