戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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前回もう少し早めに区切るべきだったかな……


深まる謎とじゃじゃ馬

 誰もいないエルフナインのラボのドアが開いた。同時に人体感知で点灯する照明もついた。その人体とは輪であり、まるで空き巣の家に入るように、誰もいない事を確認する為に、辺りをキョロキョロと見回す。

 

「抜き足……差し足……緒川さんの足……。」

 

 確認した輪はそろりそろりと、部屋に侵入する。その目的は、ラピス・フィロソフィカスのファウストローブのスペルキャスターであるネックレス、もう一つ、それはテレポートジェムだ。

 魔法少女事変で輪が裏切り者として、キャロルと手を組んでいた時、連絡用にチフォージュ・シャトーへと通ずるテレポートジェムを持っていた時期があった。それは輪が裏切り者であるという決定的な証拠となって、瑠璃が回収されて以降、どこにあるのかは聞いていなかった。だが錬金術師が生み出した代物であれば、恐らくエルフナインが保管している可能性があると踏んだのだ。

 そのエルフナインと未来がチフォージュ・シャトーをアジトにしているノーブルレッドに攫われた。ならば、2人もそこにいるに違いない。さらにノーブルレッドは、S.O.N.G.がシャトーと繋がっているテレポートジェムを持っていないだろうと思っているはず。ならば奇襲を仕掛けるにはうってつけだ。

 大きな物音を立てないように、デスクから探そうとする輪だったが、目的の物はすぐに見つかった。

 

「さぁて……お目当てのものお目当てのもの……。あった……!こんな所に……!」 

 

 ネックレスとテレポートジェムはガラスケースの中にしまってあった。ケースを持ち上げようとしたが……

 

(あれ?!開かない?!あ、鍵掛けてある!)

 

 ガラスケースの下にあるロック盤。それには鍵が掛けられている。恐らく誰かが勝手に持ち出さないようにしているのだろう。

 鍵を開けないでガラスケースを強引に壊せば、音で気付かれるか、警報が鳴って気付かれるか、いずれにせよバレるのは確定する。だが事態は刻一刻と変化する。

 

「気は進まないけど……しょうがない。」

 

 鍵を探している時間はないと判断した輪は握り拳を作ってそれを振り上げた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ブリッジでは響を除いた装者達が集まっていた。目覚めたばかりの瑠璃と入れ替わる形で、今度は響がメディカルルームで眠っている。

 

「見た目以上に響君のダメージは深刻……。だが、翼の撤退判断が早くて最悪の事態は免れたようだ。」 

「いえ、弱きを守るのは防人の務め。きっと奏だってそうしたはずです。」

 

 翼らしいセリフではあるが、弦十郎と瑠璃は翼の表情に違和感を感じ取っていた。普段であれば、もっと凛として答えるのだが、今の翼はまるで褒められて喜ぶ子供のようだった。

 だがそれについてはここで終わりにし、今度は瑠璃の状態の確認に入る。

 

「瑠璃、もう身体は何ともないのか?」

「はい。問題ありません。すぐにでも戦えます。」

 

 精密検査でも問題ないという判定も出ており、瑠璃本人も平気であることから、戦線復帰が認められる。

 一方、傷つけてしまった翼は、これ以上責任から逃げまいと、瑠璃に歩み寄って頭を下げた。

 

「瑠璃……すまなかった。防人の私が、仲間に刃を向けるなど……あってはならぬというのに……私は……」

「お姉ちゃん……。」

 

 翼の謝罪に、瑠璃は悲しげな表情を浮かべた。防人、仲間。まるで赤の他人のような物言いだった。もちろん公的組織の中では、私的感情は慎むべきなのだろうが、それでも瑠璃は大好きな姉にそのような物言いをされると、寂しくなる。

 

「お姉ちゃん……あのね……」

 

 その消え入りそうな声は、そ友里から報告によって消されてしまう。。

 

「司令、マリアさんから提案のあったデータの検証、完了しました。」 

「データの検証?」

「何デスか?それは?」

 

 何の事か分からない調と切歌はお互いに向き合うと、提案者であるマリアの方を見る。

 

「腕輪から検知される不協和音に、思うところがあってね。」

「あの音に、経年や伝播距離による言語の変遷パターンを当てはめて、予測変換したものになります。」

 

 モニターにはスピーカーから発せられる音の信号が上下に2つ生じされている。上は腕輪から発した不協和音のものであり、その中に含まれるノイズが取り除かれていく。すると、それはとても神秘的なメロディへと変わっており、下の信号と一致した。

 

「この曲……!」 

「いつかにマリアが歌ってたデスよ!」

「知ってるのか?」

 

 クリスがマリアに問う。その歌はマリアにとって、馴染みある歌だ。

 

「歌の名は『Apple』。大規模な発電所事故で、遠く住む所を追われた父祖が唯一持ち出せた童歌。」

「変質変容こそしていますが、大本となるのは、マリアさんの歌と同じであると推察されます。」

「アヌンナキが口ずさむ歌とマリアの父祖の土地の歌……。」

 

 Appleがあの腕輪から発せられたという事は、この歌がアヌンナキと何か関わりがある事が判明した。だがそこまでしか分からない。

 

「フロンティア事変においてみられた共鳴現象……。それを奇跡と片付けるのは容易いが、マリア君の歌が引き金となっている事実を鑑みるに、何かしらの秘密が隠されているのかもしれないな。」 

 

 弦十郎が顎に手を当てて考察していると

 

「たが……まれ……。ルル……メルが……」

 

 今となってはマリアしか知らないこの歌を、教わる事なく唄う者がいて、驚愕た。マリアも驚きながらもその声の主の方を見ると

 

「瑠璃……?!」

 

 瑠璃がモニターの方を虚ろな目で見ながら口ずさんでいた。それも一節も間違える事なく。

 

「姉ちゃん?!姉ちゃん!」

 

 クリスの呼び掛けで我に返った瑠璃は、皆が懐疑的な視線をこちらに向けている事に戸惑う。

 

「えっ……何?どうしたの?」

「瑠璃。その歌、どこで知ったの?」

 

 マリアが瑠璃に問う。

 

「えっと……あ、マリアさんが唄っていたのをこっそり聴いていくうちに覚えたんだった。」

 

 口から出た出任せなのだろうが、そんなシュールなシチュエーションを聞いて、思わずクリスが吹いてしまう。調と切歌も釣られたのか笑ってしまう。笑いのネタにされてしまったマリアというと顔を真っ赤にして否定する。

 

「そんなわけないでしょう?!適当な事を言うのはやめなさい!」

 

 この場に響がいたら大爆笑しているだろう。不謹慎ではあるが、今だけはこの場にいなくて良かったと内心ホッとしている。

 とりあえず弦十郎が咳払いで、再び真剣な空気に戻る。

 

「敵の全貌は、未だ謎に包まれたまま。それでも、根城は判明した。俺達は俺達の出来る事を進めよう!おそらくはそこに未来君とエルフナイン君も囚われてるに違いない!」 

「「「「「「了解!」」」」」」

「デェス!」

 

 強い意気込みで返事をする装者達。弦十郎は意気込む皆を一人ずつ見てやると、思い出したかのように聞く。

 

「そういえば、輪君はどうした?」

「え?輪?何で輪が?」

 

 先程まで眠っていた瑠璃は、輪がここにいた理由を知らない。クリスが代わりに説明してやる。

 

「あいつ、2人が攫われていた現場にいたんだ。それで奴らにやられて……」

「そうだったんだ……。あれ?」

「どうした?」

 

 何か思い当たる節があるように見えた。弦十郎は瑠璃に問う。

 

「いや、メディカルルームから出た時……誰かが廊下を通っていたの見たんだけど……一瞬だったから分からなくて……。」

「どこへ行った?」

「こことは反対の方。あそこは確かエルフナインちゃんのラボが……あっ……!」

「まさか……!」

 

 その人が輪であり、エルフナインのラボに向かった事の意味が分かってしまった瑠璃と弦十郎は唖然としてしまう。その答えであるアラートが鳴り響いた。ノイズ、並びにアルカ・ノイズの反応パターンでもなければ錬金術師達によるものではない。

 

「司令!エルフナインちゃんのラボから警報が!」

「映像を出せ!」

 

 映し出された映像が流れ、不安は的中した。

 

「あのじゃじゃ馬め……!」

 

 弦十郎は頭を悩ませ、装者達は唖然としてしまっていた。




輪のテレポートジェム

 かつて魔法少女事変にて裏切り者として暗躍していた輪から押収したアイテム。

 転移先はチフォージュ・シャトーではあるが、これ1つしかなかった事に加えて、使用する理由がない為、深淵の竜宮にて保管されるはずだった。
だが、その直前に深淵の竜宮が破壊されてしまい、他の機関に預けるわけにもいかなかった為、エルフナインが厳重に管理していた。

 ちなみに、このテレポートジェムを使ってチフォージュ・シャトーに乗り込むという案もあったという……
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