戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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キャロルが復活!そして輪もいよいよ……?


奇跡の殺戮者と裏切り者

 ノーブルレッドの3人は戦慄していた。目の前にいた無力な少女、エルフナインがいたはずだった。それが、キャロル・マールス・ディーンハイムとなって、ダウルダブラのファウストローブを纏い、立っている。姿は幼き少女のままであるが、相手はたった一人で世界を壊そうとした最強の錬金術師。外見だけで判断は出来ない。

 復活したキャロルはノーブルレッドに目もくれずに歩き出した。その先には倒れ伏している輪がいた。眼前まで歩み寄られると、輪は顔を上げた。

 

「立て。」

「あんた……本当にキャロルなの……?」

  

 自身を見下ろしているのが本当にキャロルなのか、俄には信じ難かった。だが目つき、口調、佇まい、ダウルダブラのファウストローブ、それらがまさにキャロルであるという事を証拠付けている。

 

「力を貸してやると言っている。死にたくなければ、立て。」

 

 キャロルの手が輪に差し伸べられる。恐る恐る輪はその手を掴んだ。すると、ラピス・フィロソフィカスのペンダントが輝きを発し、熱を帯びているのに気付いた。

 

「これって……!」

「これでお前も本領を発揮出来るだろう。」

 

 つまり、ファウストローブを纏えるという事だ。キャロルは一人で70億の絶唱を凌駕するフォニックゲインの持ち主。そのフォニックゲインが流動出来れば、ファウストローブを纏う事が可能になる。

 それに気が付いた輪は小さく頷き、思いを重ねた。その思いと呼応するように、輝きが強くなった。 

 着ていた衣服が分解され、緋色のインナースーツと四肢のアーマー、手首のアーマーにリングの装飾が形成され、長い髪はポニーテールに結ばれている。光が弱まり、その姿がハッキリと現れた。

 

「ラピス・フィロソフィカスのファウストローブ……?!」

 

 フォニックゲインが無ければ纏えないと思われていた、輪の持つラピス・フィロソフィカスのファウストローブ。しかも必要なフォニックゲインは膨大とされていたが、それがたった一人のフォニックゲインで、いとも容易く纏うことが出来た。こればかりは予想外だった。

 

 本部ではチフォージュ・シャトーから放たれた高エネルギー反応をキャッチしていた。その正体に、オペレーター陣は驚愕を隠しきれていない。

 

「チフォージュ・シャトー内部にて、新たなるエネルギーを2つ検知!」

「これは……アウフヴァッヘン波形?!」

「ダウルダブラとラピス・フィロソフィカス……だとぉ?!」

 

 弦十郎も驚愕している。ダウルダブラは、キャロルの敗北とともに失われたはずだった。それが再び現れたのだ。

 

「キャロル……あんた……。キャロル……?」

 

 ファウストローブを纏った輪は、キャロルの反応がない事に不審に思い、その顔を覗いた。その表情は、思い更けているようだった。

 

(思えば……不要無用と切り捨ててきたものに救われてばかりだな……。)

 

 キャロルの脳裏には廃棄躯体で残存メモリーが極僅かでまともに戦えないにも関わらず、自分を守る為に最後まで戦い、散っていった。全てはマスターの勝利を願って。

 

「ありが……」

「似合わない事に浸らせないぜ!」

 

 キャロルがオートスコアラー達を偲んでいる所をミラアルクの豪腕が横槍を入れた。だがそれは、輪のガントレットが阻止した。

 

「空気の読みなよ、バーカァ!」

 

 押し返されたミラアルクは、宙返りをして後退した。立て続けに、エルザのテールアタッチメントの牙がキャロルを襲った。だが、錬金術のバリアがいとも容易く防いだ。

 

「声音を模したわけでなく、あれは……」

「再誕したキャロルでありますか?!」

 

 その力が本物であると、3人は確信した。キャロルは自身の感傷に土足で踏み入れられた事で、怒りがこみ上げている。

 

「オレの感傷に踏み込んで来たのだ。それなりの覚悟はあってだろうな?」

 

 泣いて詫びようが許さない。遠回しにそう宣告している。だが3人はそんな事など知った事ではない。エルザとミラアルクが左右に駆け出し、中央にいたヴァネッサの指からマシンガンの弾丸が放たれる。だがキャロルはそれを錬金術のバリアでいとも容易く防いでいる。

 

「任せたぞ。」

 

 弾丸を防ぎながら、背後の輪を見てそう言った。響達をたった一人で追い詰めたキャロルが、今更この3人に遅れは取らないだろうが、味方がいる事に越した事はない。

 輪は小さく頷いて、リングの装飾だった2つのチャクラムを形成、襲い掛かるミラアルクの豪腕を捌いて回し蹴りで後退させる。

 

「調子に乗るんじゃないぜ!」

 

 両足にカイロプテラを纏い、飛び蹴りを放つ。輪はチャクラムに雷電を纏ってそれを突き出して迎え撃った。

 

【雷光・フォトンブラスト】

 

 エネルギーをそのままぶつけている為、その爆発的な威力の前に弾かれてしまう。だががら空きとなったキャロルの背後をエルザのテールアタッチメントの牙が襲う。だがキャロルはそれを見向きもせずに、ハープの弦で防ぎ、その反発によって弾き返される。

 

「バレルフルオープン! お姉ちゃんも出し惜しみしてらんなあぁーーい!!」

 

 ヴァネッサの体中に搭載された全ての砲門から大量のミサイルを放った。大小問わず、ミサイル全弾キャロルと輪に向かう。

 

「ヤバっ……」

「狼狽えるな。」

 

 輪の前に立っているキャロルは避けようともしなかった結果、ミサイル全弾直撃した。それを目の当たりにしたミラアルクが仕留めたと確信してガッツポーズを取る。

 

「やったぜ!」

「まだ歌が聴こえるでありますよ!」

 

 だがエルザの言う通り、キャロルの歌は途切れていない。爆炎と黒煙が晴れると、キャロルが多方向に錬金術のバリアを展開していた。しかもキャロルと輪は無傷。

 

「凄っ……。」

 

 大量展開されているバリアを見て、輪はそう呟いた。輪にはこんな芸当は出来ない。キャロルの強さを再び目の当たりにして、再確認した。

 そして、バリアを解除したキャロルは四大元素の錬金術を一斉に放った。その威力はシャトーの床を抉る程の凄まじいものである。

 

「同時階差に四大元素(アリストテレス)を?!」

 

 パヴァリア光明結社の幹部ですらこんな事は出来ない。それをキャロルはたった一人で、この威力を放ったのだ。四大元素の錬金術がそのまま3人に襲い掛かる。3人は身を寄せ合って、エルザのテールアタッチメントで何とかやり過ごすが、全くの無傷というわけではない。あまりにも強大な威力が、その身に伝わる。

 

「流石……たった一人で世界と敵対しただけのことはあります……!」 

 

 だが今度は輪の2つのチャクラムが、炎を纏って投擲される。

 

【緋炎・メテオシュート】

 

 エルザのテールアタッチメントがそれらを打ち返そうとするが、それがチャクラムと接触した瞬間、エネルギーの光が漏れ出した。マズいと悟った3人はすぐさまその場を離れ、特にエルザはテールアタッチメントを解除して離れる。その瞬間、チャクラムは大爆発を起こした。

 パヴァリア光明結社との戦いの時より、輪の技の威力が底上げされている。というのも、あの時は翼とクリスのユニゾンによって引き上げられたフォニックゲインを使用していたが、今回はキャロルのフォニックゲインを使っている。キャロルのフォニックゲインは1人で70億の絶唱を凌駕するものであれば、その威力も段違い。その証拠に先程の爆発で、壁に穴が空き、真上の天井の瓦礫が落ちてしまっている。

 

 シャトーの内部で一体何が起きているのか一切把握出来ていないS.O.N.G.の本部。少しでも解析して、手掛かりを得ようとしている。

 

「状況の確認、急いでください!」

「そんなことよか、さっさとあたしらが直接乗り込んで……」

「分かっている!だが無策のままに仕掛けていい相手ではない!」

「とはいえだなぁ……!」

 

 シャトーに乗り込むにはあの繭をどうにかしなければならない。だが響を欠いた状態でそれを倒すのは不可能。弦十郎の言う通り、打開策も無しに勝てる相手ではない。

 

 このままでは埒が明かないと、ノーブルレッドの3人は分散してキャロルと輪を討ち取ろうするが、チャクラムをメリケンサックのように持ち替えた輪が、床に殴りつける。

 

 【暴拳・ヴォルガニッククラッシャー】

 

 そこから巨大な火柱が上がり、エルザとミラアルクの目前に壁となってその進路を塞いだ。ヴァネッサも、ダウルダブラの弦が迫り、それを回避するが、3人は火柱と弦に囲まれてしまう。

 それを見逃さないキャロルは背部のユニットを展開、頭上に重量子のエネルギーを集約させて、強大な球体を形成した。

 

「まさか……超重力子の塊を……?!」

 

 それをキャロルは容赦なく振り下ろした。暴力的とも言えるその威力をまともに食らえば、3人に死は免れない。

 

「逃げて!!」

 

 3人は逃げおおせたが、爆発の余波で大きく吹き飛ばされてしまう。キャロルが背部のユニットを閉じていると、輪は戦いによって陥没した壁と空いた床の穴を見て、苦笑いしている。

 

「相変わらず……出鱈目だなぁ……。」

 

 とはいえ、一部は輪がやったものである。だがキャロルはこれでも満足な結果とは言い難いらしい。

 

「破壊力が仇に……だが逃がすものか!」

「あ、ちょっと……!」

『キャロル!待ってください!』

「ん?」

 

 トドメを刺すべく追おうとするが、エルフナインがそれを引き留めた。

 

『今は彼女達を追うよりも、未来さんを救出するのが先です!』

「ちっ……正論を……。だが聞いてやる。」 

『あ、あと!』

「何だまだあるのか?!」

(誰と喋ってるんだろう……?)

 

 キャロルは思念体となっているエルフナインと会話しているのだが、輪にはその姿が見えていない。故に輪にはキャロルが1人でぶつぶつと話しているようにしか見えない。

 

『キャロルには感謝しないと。おかげで助かりました。』

「こ、この体は俺の物だ!お前を助けたわけではない。礼など不要!」

 

 とはいえキャロルは分かりやすく狼狽えている。父を亡くしてから1人、命題を果たすために生きてきたキャロルは、誰から感謝される事なく生きてきた。慣れない事に恥ずかしがっているのだ。

 

「それでも……あいつ等には手向けてやってくれないか?きっとそれは、悪党が口にするには不似合いな言葉だ。」

 

 ガリィの亡骸を見て、エルフナインに頼んだ。これまで数え切れない罪と悪行を重ねた者に誰かを慈しむ資格はない。そう考えての事なのだろうが、その考えを不服とする輪が、キャロルの背中を強く叩いた。こちらを呆れて見ている輪の方を驚きの形相で向く。

 

「あんたも馬鹿だねぇ。」

「馬鹿とは何だ貴様?!裏切り者の分際で!」

「裏切り者だから、だよ。」

 

 すると、輪はガリィの骸の方を向く。

 

「あん時、『ありがとう』って……言いかけてたよね?」

 

 ミラアルクの妨害で最後まで言えなかったが、確かに彼女達に礼を言おうとしてた。エルフナインとキャロルを守る為に散っていった彼女達の為にも、主の手で最後まで手向けてやりたい。それが裏切り者だった輪にとっての手向けだ。

 

「最後くらい、自分の口から直接言いなよ。」

『輪さん……。』

「分かった……。」

 

 輪に背中を押されたキャロル。彼女は天を仰ぐように見上げて……

 

「レイア……ファラ……ミカ……ジーク……。」

 

 そして最後にガリィの方を見る。

 

「ガリィ……。ありがとう……。」

 

 主を守り抜いた名誉ある騎士達への手向け。きっと彼女達は喜んでくれるだろう。エルフナインも、ニッコリと笑みを浮かべると、しばしの間、黙祷を捧げる。

 

「さて。皆の為にも、未来を助けなきゃだね。」

「オレの手助けを借りて、ファウストローブをようやく纏えたお前が何故仕切っている?」

「良いじゃんこれくらい!ほら、行くよ!」

 

 輪が先行して、未来が安置されている祭壇の部屋へと走る。キャロルも輪の奔放さに呆れながらも向かった。

 




おまけ

ファラ「マスターとあの方が手を組まれるとは。」

レイア「だがこれまでにない、派手な戦いだったな。」

ミカ「あいつもやれば出来るんだゾ!」

ジーク「マスターがおられるなら、勝利は揺るがん。」

レイア「ん?そういえばガリィは何処に行った?」

ミカ「さっき二人の写真を撮ってデコレーションするって出て行ったゾ。」

性根が腐っている!!
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