戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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やはりと言いますか、訃堂許すまじの感想をいただきました。

そりゃあ前回のラストであんな事をしたらね……


力の差

 「帰ろう、翼。みんなの所へ……」

 

 戦う意味を失い、失意に落ちて泣きじゃくる翼にマリアが手を差し伸べようとした時だった

 

 

 

 

 

瑠璃いいいいいいぃぃぃぃーーーーー!!

 

 

 

 

 

 

 夜空を切り裂かんとする悲鳴。方向はS.O.N.G.が入って来た正門の方からだ。

 

「今のは輪の……?!」

『マリアさん!瑠璃ちゃんが……風鳴訃堂に……!』

 

 友里から通信が入った。モニター越しで瑠璃が訃堂の凶刃に倒れた光景を目の当たりにしてしまったクリスが『姉ちゃん!姉ちゃん!!死なないでくれよ姉ちゃん!!』と悲痛な叫びを挙げながら取り乱しているのが聞こえた。

 

 良からぬ事であると明白。二人は急いで正門の方へと駆けつけようとするが、そこに降り立つ者が一人。ラピス・フィロソフィカスのファウストローブを纏ったアルベルトだった。

 

「あなたは!って、あれは!」

 

 空から襲撃してきたアルカ・ノイズに気付くが、詠唱を唄うよりもアルカ・ノイズの攻撃の方が早い。マリアを分解せんと、三体の羽根を鋸のように回転して襲い掛かるが、アルベルトが単身で突出し、飛び立った。仕込み杖である剣の刃を振るい、それらが全て真っ二つに斬り捨てられた。

 

「え……?!」

 

 目の前で敵であるはずのアルベルトに助けられるという信じ難い事態に困惑する。

 

「呆けるな!ギアを纏え!」

「待って!どうして……」

「今の私は敵ではない!」

 

 アルベルトの表情に余裕の笑みは浮かんでいない。まさに真剣そのもの。

 二度に渡ってS.O.N.G.の敵として立ち塞がったアルベルトだが、使役しているはずのアルカ・ノイズを、マリアを守るように斬り捨てた。

 剣を鞘に納め、そして信じてくれと言わんばかりの真剣の表情。アルベルトの全てを信じきるのは難しいだろうが、今はその力を信じるしかない。  

 

 すぐさま屋根の瓦から仕込まれた装置がアルカ・ノイズの召喚石を射出。石庭にばら撒かれて砕け散った。

 

「アルカ・ノイズ!まだこんなに……」

「どうやら夷狄である我々を始末しなければ気が済まないようだ。」

「我々?まさかあなたも?!」

 

 訃堂は利害の一致で手を組んでいたアルベルトの抹殺まで図ったということだ。盟とはいかに儚く脆いものかと、一瞬だけ嘲笑の表情を見せるがそれにかまけている場合ではない。

 

「そういう事だ。来るぞ!」

 

 召喚石が砕け散った箇所からアルカ・ノイズが姿を現した。

 

「翼、立って!戦うのよ!」

「マリア……私は……」

 

 今の翼には戦う気力がない。これが何度も自分達に立ち向かってきた防人の姿なのかとアルベルトは呆れるが、戦えない翼に構っている余裕はない。

 ヒューマノイド型のアルカ・ノイズがマリアとアルベルトに向けて解剖器官を振りおろそうとしていた。

 

「マリア、今はアルカ・ノイズだ!」

「……ええ!」

 

Seilien coffin airget-lamh tron…… 

 

 アガート・ラームのギアを纏ったマリア。同時に解剖器官諸共、アルカ・ノイズの身体が短剣によって切り刻まれて消滅した。

 

「流石、エンキの左腕(・・・・・・)のギアだ。」

「何を訳のわからない事を、やるわよ!」

 

 戦えない翼を背に、マリアとアルベルトは互いに肩を並べてアルカ・ノイズの群れと相対する。

 

「そうだな……!」

 

 地上から襲い掛かるヒューマノイド型のアルカ・ノイズには刃を抜かず、杖のままそれらの個体を突いて貫き、振り下ろして殴り倒す。

 

 空中から襲い掛かる飛行型には、杖の先端を銃のようにアルカ・ノイズに向けると、銃口から発射された弾丸のように光線が発射されてそれが五本に分裂、標的を全て貫いて赤い塵にしてやる。

 

「やあぁっ!」

 

 アガート・ラームの短剣が蛇腹剣へと変化させて、鞭のようにしなる刃が縦横無尽に舞い、周囲のアルカ・ノイズの群れを蹴散らした。

 

 即席で且つ敵同士だった二人では、装者同士の連携は望めないが、あえて連携せようとせずに各々の得意とする戦い方でアルカ・ノイズの数を減らしていった。 

 

「雑魚を素早く片付けるぞ!」

「もちろんよ!」

 

 アルカ・ノイズを放置して瑠璃の所に行けば、必ず訃堂との戦いに横槍が入ってしまう。後顧の憂い断つ為に、マリアとアルベルトは急いでアルカ・ノイズを殲滅しに掛かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 悲鳴の主である輪、群蜘蛛に貫かれて崩れ落ちた瑠璃と、その元凶の訃堂。

 群蜘蛛によって貫かれ、空いた穴から血が止めどなく溢れ出て、S.O.N.G.の制服は鮮血に滲んでしまう。

 

「あ……ぁ……瑠璃!瑠璃!!」

 

 目の前で起きた光景が夢であればどんなに良かったか。だが無情にも、輪が抱え上げた瑠璃は既に骸となって動かなくなっている事実を突きつけられた。

 

「ぁ……ああああぁぁーーー!!」

 

 輪の隣にはいつも瑠璃がいてくれた。何度悩んで迷っても、瑠璃がいると何でも出来る気がしていた。

 そんな心の支えを失った輪の悲しみは深いなんて簡単にすませられるものではない。

 

「くだらぬ……」

「っ……!」

「風鳴の血を引かぬ夷狄など、真の防人に非ず。ましてや、歌などで世界を護るなどと戯言を、真の防人の血を引く翼を誑かす奴など不要!」

「……は?」

 

 プツンと、輪の中で弾けた。

 大切な親友を侮辱しただけでなく、歌を嘲笑い、戯言だと切り捨て愚弄した。輪の逆鱗に触れるには十分だった。

 

「今……何て言った……クソジジイ!!」

 

 憤怒と共にファウストローブを纏い、すぐさまチャクラムの刃を訃堂に振り下ろした。

 だが相手は弦十郎を捻じ伏せた訃堂。力のぶつかり合いでは簡単に押し返され、倒れてしまう。

 

 老体でありながら、一体何処にそんな力を出せるのか分からないが、怒りに燃える輪にはそんな事は知った事ではない。

 立ち上がると同時に、クラウチングスタートの体勢。そして、刃と足の装甲に稲妻が走ると目にも止まらぬ速さで接近して、チャクラムの刃を振り上げる。

 が、これも容易く防がれる。だが今度は反撃される前に再び電光石火の素早さで離脱、そして再び接近して刃を振るう。

 

「さっきから黙って聞いてれば何だよ……!瑠璃だって風鳴なのに、血が繋がってないからって孫を殺すの?!そんなに血が大事なのかよぉ?!」 

 

 家族を失い、目の前で親友を奪われた。しかも小夜の殺害を、実際に手を下したヴァネッサを雇っていたのは訃堂、そして瑠璃の命を奪ったのも訃堂。

 訃堂によって二人の大切な人を奪われた輪は彼に対する憤怒と憎悪は凄まじいものである。

 その二つの感情を体現するかのように、離脱と速攻を繰り返すごとに速さと威力が上がっていった。

 そして、最後の一発は訃堂の頭上より急降下、チャクラムをメリケンサックのように持ち変えて殴りかかった。

 

「死に晒せぇ!クソジジイ!!」

 

 雷轟の如く、素早く思い一撃が訃堂に降りかかる。

 

 

【迅雷・ソニックボルト】

 

 

(っ……!嘘でしょ……?!)

 

 渾身の一撃を、まさか刃の切っ先で防がれるなどと目を疑うような荒業をやるとは思わなかった。

 

(何で……何で……!ジジイのくせに……生身で戦えるんだよ?!)

 

 輪はファウストローブを纏って戦っているのに対して、訃堂は刀一本で異端技術を相手に渡り合うどころか息切れすら起こしていない。

 決して輪が弱いわけではないのだが、それ以上に訃堂が異次元だった。

 

「鼠風情が……消えよ!」

 

 足元が陥没するほどの衝撃波が放たれ、チャクラムの刃は一瞬にして砕け散った。

 

「うわあああああああぁぁーーーー!!」

 

 輪も悲鳴を挙げながら打ち上げられた。

 

(勝てなかった……何で……何で私は……何も守れないの……?)

 

 どれだけ奮闘しても、訃堂に勝てなかった。守りたかった瑠璃も失った絶望を表すように、空中でファウストローブが解除されてしまう。そのまま藻掻くことなく高所から意識とともに落ちていった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここが何処なのか分からない。

 

 

 

 

 

 真っ暗で何もない世界

 

 

 

 

 

 

 だが海の底へと沈んでいくように、何処までも落ちていくのだけは分かる

 

 

 

 

 

 

 

 どこまでも……どこまでも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

「私…………死んじゃったのかな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クリス…………お姉ちゃん…………輪…………皆…………ごめんなさい…………」

 

 

 

 

 

 

 

「私…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………り…………!って……………………る…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この声………輪………?」

 

 

 

 

 

 

 

 微かに聞こえた声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一筋の光が差し込んだが、手を伸ばしても届かない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このままどんどんと落ちていく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まったく……お前というやつは……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶対の破壊神が、命を投げ出した瑠璃に呆れながら姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

『絶対の破壊神たる我が、あ奴以外の誰かを守らねばならぬとはな……』

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは……」

 

 

 

 

 

 

 

『本来であれば、我がこの世界を破壊し尽くしてやるはずだったが……。どうやらそれも……叶わぬようだ……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を……?」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

『今一度、お前を手助けしてやる…………代わりに、我が運命(呪い)を受けよ……新しき世界……お前が見届けよ……』

 

 

 

 

 

 

 呪詛という割には、顔は微笑んでおり、どちらかといえば託したように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 絶対の破壊神と瑠璃の両手を重ね合わせ、指をギュッと絡ませた。

 

 

 

 

 

 

 

  

『バラル……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我が真実は…………その先に…………』

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 少女の魂の中に内在していた破壊神の身体は星屑となって、瑠璃を優しく包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嗚呼……エンキ……ヒトの絆とは……こうも…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 絶対の破壊神は、一人の少女を守る為に儚い星となって、光へと届けさせた。




輪の楽曲【XV編2】

前を向いて歩こう

 自分が歩いてきた道の中で、失ってきたものの多さに寂しさや不安を抱き、正しかったのかと問いながらも、過去に縛られて俯くより未来へと進む事の決意を表した楽曲
歌詞の中に「夜に光をくれた」「誇り高い」「騎士」など、過去に登場し亡くした大切な者達を連想させる

実はこれだけ1番の歌詞を考えてあります。
とはいっても、ちゃんと成立しているかどうかは一切わかりません
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