遂にバイデントの呪いの秘密が……明らかになるわけではありませんが、輪ちゃんの考察タイムが輝きます!
エレキガル様がシェム・ハとの戦いに敗れ、主を失った私は、錬金術師アルベルトとして長い時を生きた。
本当の名前なんて、もう忘れてしまうくらいに多くの偽りの自分を演じてきた
時には学者、瑠無・カノン・ミラーとしても……
そして、我が主が遺したかの槍……あの御方の魂が宿る槍
その槍を真に操れる人間……それこそが、あの御方に選ばれし人間、あの御方の転生体である証
そして、ようやく……見つけた
あの御方の槍に選ばれた少女
たった一人、完全に適合出来る唯一の装者……!
君だけは……いや。貴女だけは……今度こそ私が、お守りいたします……!
突如、地響きと共に顕現した風鳴訃堂の屋敷から赤い光柱が天を貫いている。そして、その光は巨大な白い樹木と化した。
「何が起きているんだ……?!」
「『ユグドラシルシステム』?!まさかシェム・ハが……!」
流石に予想だにしなかった事態に、アルベルトも驚愕の表情を隠しきれない。その中でも訃堂は笑っていた。
「ハハハ……首輪を着けて神を飼い慣らそうとした報いがここに……」
「アンタが仕掛けた事では無いのか?!」
「どうやら、風鳴の祈り、護国の願いはここに潰えて果てたと見える」
野望が潰えて頭を垂れる訃堂に、先程威圧感はどこにもなかった。
危機を知らせる為にアルベルトは屋敷の敷地内に降り立ち、弦十郎達と接触する。
「風鳴弦十郎!」
「アルベルト?!何故君が……」
「命が惜しくばここから退け!でなければ……っ!」
だがその勧告も遮られる。光柱の輝きが強くなり、その下から巨大な白い樹木が生えてきた。その天辺には、屋敷の地下にてダイレクトフィードバックによって沈黙を保っていた小日向未来、もといシェム・ハが見下ろしていた。
「やはり……ダイレクトフィードバックシステムを……!」
「不敬である。道具風情が我を使役しようなどとは……」
「道具……僕達の事を?!」
八紘の身体を抱える緒川がその意味を問うが、シェム・ハは吐き捨てる。
「じれったい。道具の用いる不完全な言語では、全てを伝えるのもままならぬ」
「どういう事だ?!」
「最早分かり合えぬという事だ」
弦十郎の問いを返し、シェム・ハは一部が欠けた月を忌々しく見る。
「嗚呼……それこそが、バラルの呪詛であったな」
「シェム・ハ!」
怒り混じりで呼ぶ声の主を見てやる。
「貴様は……」
その姿を捉えたシェム・ハの口角が釣り上がる。
「傑作である。未だに奴への未練を断ち切れず、生き恥を晒していたとは」
その台詞の意味の全てを理解したわけではないが、断片的に察したマリアが驚愕の目でアルベルトを見る。
(アルベルトを知っている……?!どういうこと……?!)
「我が主は間もなく再臨なされる。悲願成就、阻ませはしない!」
アルベルトからは考えられない、憤怒の憎悪。余裕の笑みをかなぐり捨て、露わになっている。
だがシェム・ハは言葉を告げる事なく、掌から生み出した光弾を放つ。
「はあぁっ!」
ラピス・フィロソフィカスのファウストローブを纏い、仕込み杖を抜剣。光弾を斬り捨てた。
「さあ退け!命が惜しいならば!」
「待ってくれ!何が君を動かしているんだ?何故我々を……」
弦十郎の問いの答えを意味するのか、アルベルトがマリアに投げ渡した。
その間もなく、追撃の光弾が連続で放たれるが、アルベルトはそれを全て刃で弾いてみせる。振り返らずに、マリア達に告げる。
「君達を守ってやれる余裕はない。敵は、それほどまでに強大なのだから……!」
「アルベルト……っ!」
アルベルトの仕込み杖を握る手が震えているのを、マリアは見逃さなかった。恐怖でも、武者震いでもない。先程の一撃を防いだ事によるものだ。
2度もS.O.N.G.の前に立ちはだかり、翻弄して来たアルベルトでさえ、シェム・ハの力は強大であると教えている。マリア達の方に向かず、シェム・ハと相対しているのも、一瞬の気の緩みが許されないから。
彼女が何故、S.O.N.G.を守ろうとしているのかは分からない。それでも、今この窮地から救おうと真っ先に動いたのは紛れもなく敵だったアルベルトだ。
「ありがとう、アルベルト……。行きましょう!」
アルベルトに感謝の言葉を告げたマリア。アルベルトが作ったこの好機を逃さず、マリア達は撤退する。
「ありがとう……か」
何故だかは分からないが、主の最期の時を思い出してしまった。
「腑抜けたか。奴の奴隷風情が」
くだらない、とアルベルトを潰す為に再び光弾の雨を放つ。だがアルベルトはそれに見向きもせずに、掌から展開した青色のバリアでその弾幕を防いだ。
「何……?」
「その程度にしか映っていない貴様に、分かるはずもあるまい。あの御方に、全てを捧げると誓った……私の全てを!」
剣の切っ先をシェム・ハに向けた。アルベルトのたった一度のアヌンナキへの叛逆が始まる。
「輪……」
目が覚めたら隣のベッドには輪がいた。風鳴訃堂に差刺されてからの記憶がない瑠璃は、何故輪がここに運ばれたのかは分からない。
だが輪がここに戻って来てくれた事が、瑠璃にとって何より嬉しい知らせだった。
「輪……良かった……」
「……くない」
「……え?」
起きたばかりだというのに、突如輪が瑠璃が横になっているベッドに乗り込み、そのまま瑠璃を押し倒した。
「ちょっと?!急に……あっ……」
瑠璃の頬に落ちた一粒の涙。それで戸惑いはすぐに消えた。輪が涙を流していた。
「馬鹿!瑠璃の馬鹿ぁ!すっごく心配したんだからぁ!!」
「輪……ちょ、痛い痛い痛い!」
目覚めたばかりだというのに、輪に肩をポカポカ叩かれる。しかも次第に叩く強度が強くなる。
「私を一人にしないって言ったのに、何あのクソジジイに殺られかけてんだよ?!一緒に戦おうって、あの時言ったくせに!!」
初めて見せた瑠璃の激怒。そしてあの一喝がなければ、輪は今も神の力に縋っていた。
それに気付いて目を覚ました矢先、瑠璃が目の前で訃堂に殺害された。一人にしないという約束をいきなり反故にされかけた事に、輪は腹を立てていた。
「……ごめん」
「そう思うんだったら……約束を守ってよ……!もう私を一人にしないって……!次に破ったら、絶対に許さないんだから……!」
まるで幼子のように泣き叫ぶ輪。だがそれだけ瑠璃を大事に思い、失いたくないという気持ちの表れだった。
家族を失った今の輪にとって、何より大事なのはS.O.N.G.の仲間達しかいない。そして何より瑠璃がいなくなってほしくない。これ以上、一人も失いたくないから、怒っている。
「本当にごめん……。あの時の私……つい必死に……ってあれ?」
「どうかしたの?」
何かを思い出し、瑠璃が起き上がろうとしているのを邪魔しないよう、輪はベッドから降りる。
「そう言えば、何で生きてるのかなって……私、あの時確かに心臓を……」
貫かれたであろう心臓のある胸に手を当てる瑠璃。そこには傷はおろか、処置された形跡もなく、掌には心臓の鼓動がドクンドクンとリズム良く鼓動を打っているのが分かる。
訃堂の群蜘蛛の刃に心臓を貫かれた事を思い出したが、あの致命傷を負いながらも五体満足に動けている事に驚いている。
「多分……神の力だよ。アンタがエレキガルっていう神だから、それが出来たんだ」
思い当たる唯一の可能性を、輪が述べた。
ディヴァインウェポンや絶対の破壊神と戦った時に見た、無かったことにされるダメージ。平行世界の同一個体にダメージを肩代わりさせる無敵性の性質。まさに神の力がなせる技だ。
「エレキガル……私が……」
「何か、思い当たる節はない?アンタさっき、変な夢を見てなかった?」
「変な夢……。うん、確かに見てたけど……あっ」
「何か思い出した?!」
心当たりがある表情に反応した輪がグイグイと食い込む。
「う、うん。あの時……闇に落ちていく私を助けてくれた光があったの。もしかしたら……」
「あの破壊神が……瑠璃を助けたってこと?」
真名が明かされる前、瑠璃が未熟なままエレキガルを絶対の破壊神として覚醒させた記憶が強い輪にとって、俄には信じ難い話だった。
しかし瑠璃は今話した事が事実であると、頷いた。
「うん。それで、その人の魂が私の中に入り込んで……」
「ちょっと待って!入り込んだ……?じゃあ、アンタは今の……
輪にそう問われ、何て答えたら良いか戸惑ってしまう瑠璃。
問うた輪も、何故瑠璃がエレキガルの魂を宿せたのか、引っ掛かっていた。
瑠璃は、雪音雅律とソネット・N・ユキネの間に生まれた人間であり、雪音クリスの双子の姉。これは揺るぎない事実。
そして人間は生まれた時から、原罪を背負っている。その原罪から解放されたのは、神獣鏡の光によって浄化された響と未来だけ。
では何故、その光を浴びた事がない瑠璃にエレキガルの魂を宿せたのか?
たとえ瑠璃がエレキガルの生まれ変わりだとしても、その制約がある限り、アヌンナキの魂など宿す事は出来ない。
先史文明最後の人間であるアルベルトでも、原罪を祓う事は出来ないだろう。だとしたら、一体何処のタイミングで宿す事が出来たのか?
『だが、私の死を哀れんだあの方が……理に反してでも私の魂を呼び出し、新たな肉体に組み込んでくださった。』
『あれはバイデントではない。バイデントは私が便宜上でつけた仮の名前』
アルベルトが輪に告げた真実を思い出した輪。
(エレキガルは冥府の神。どんな能力があるか知らないけど、アルベルトの魂は、そのエレキガルによって見出されて……肉体を与えられた。もし、エレキガルの力が魂に干渉できるのだとしたら……)
あくまでも仮設に過ぎないが、これまでバイデントに関わりのある現象と、エレキガルの力の関連性に紐付ける。
(もし、バイデントを作ったのが、エレキガルだとしたら?もしその槍にも本人と同じ、魂に干渉できる能力があったとしたら?そうなったら、私が瑠璃の精神世界に行けた事についても、説明がつく……!)
瑠璃がイグナイトの闇に飲み込まれ、暴走した時や絶対の破壊神となった瑠璃と戦った時、輪は図らずも瑠璃の精神世界に入る事が出来た。
それは、瑠璃がバイデントのギアかファウストローブを纏っていた時と一致する。
(まさかバイデントの呪いの正体は、哲学兵装なんかじゃなく、主として相応しくなかったから?まるで、あの槍には作った本人の意識でもあるかの……っ!)
アルベルトはバイデントの呪いの正体は哲学兵装だと言っていたが、その主たる事例であるアレクサンドリア号事件やガングニールの神殺しに比べたら、バイデントの呪いがそれだというには年月が少なすぎる。
仮に哲学兵装だとしても、使用者本人だけでなく関わった人物までもが非業な死を遂げるなど、あまりにも強すぎる。
(あの槍には、本当に作った本人の魂が宿っていた?!だとしたら、バイデントのシンフォギアを纏った瞬間……槍に選ばれた瑠璃は……!)
その瞬間、ある一つの答えが導き出された。だがそこに、メディカルルームの扉が開いた事でその答えはお預けとなった。
「姉ちゃん!輪!起きたのか!」
「「クリス!」」
メディカルルームに駆け込んできたクリスに、同時にビックリした瑠璃と輪。その間もなく、クリスは二人に駆け寄った。
「本当に大丈夫なんだよな?!無事なんだよな?!」
「う、うん……私は平気」
「なんだったら私もホラ。全然元気」
安否を気にするクリスに心配かけまいと瑠璃は手を振って、輪は肩を回して大丈夫だとアピールをする。
そんな二人を見たクリスの目尻には涙が溜まっている。瑠璃はこの流れに既視感を抱いていた。
「あれ。この流れさっきも……」
「馬鹿かお前ら!!あたしがどんだけ心配したと思ってやがる?!」
先程輪に同じ事を言われて怒られた瑠璃、そして今度は輪までもが怒られる側に回る流れになってしまった。
「一人で勝手にチフォージュ・シャトーに乗り込むわ!敵に攫われるわ!姉ちゃんに至ってはあたしに何にも教えないで任務に行っちまうわ!どっちも勝手が爆走しすぎるんだよ!!」
「あの、クリスさん?それに関しては、本当に悪かったって……」
「悪かったって思うなら二度と勝手な真似すんな!」
「は、はい……」
クリスに物凄い剣幕で怒られた輪は大人しくするのが吉だと悟って、素直に返事をした。
「姉ちゃんも、もうあたしを置いてどこにも行かねえって、言ったじゃんかよ……!」
「ご、ごめん……」
「あの時、本当に死んじまったんじゃないかって……本当に……本当に……」
(まあ……一回本当に死んじゃったんだけどね)
事情を知らないクリスにそれを言ってはますますややこしくなると分かっているので、輪はそれを言葉にしない。
クリスは我慢出来ず、大好きな姉を強く抱きしめた。
「許さないからな……!今度嘘ついたら、許さないからな……!」
「……うん。ごめんね……心配掛けちゃって」
安心させるように瑠璃も、クリスを優しく抱きしめてそう告げた。
「そういう事は家でやりなって……」
何故か変な所でシスコンのスイッチが入る二人に呆れる輪。
「所で、クリスはそんな事の為にわざわざここまで?」
「あっ……そうだ!オッサン達が帰ってくるぞ!先輩を連れ戻してな!」
「お姉ちゃんが?!」
クリスから齎された朗報に、こうしてはいられないと瑠璃は制服に、輪は私服に着替えてメディカルルームを後にした。
シンフォギアXD
ホワイトデーボイス
瑠璃編
どうしたの?えっ?これって……私に?へっ?!あ、その……嬉しいよ!私にくれるのは本当に嬉しい!けど……いざ受け取ろうとすると……恥ずかしい……///
輪編
それ、もしかしてホワイトデーのお返しってやつ?!ありがとーう!やっぱり心のこもった贈り物って、こんなに嬉しくなるんだなぁ……
多分ホワイトデー当日に間に合うか微妙な所なので、一足先に早いホワイトデーボイスでした