戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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アルベルトVSシェム・ハ!


5000年に渡る叛逆

 アルベルトとシェム・ハ、幾千の時を経て相対している。この様子をモニタリングしているS.O.N.G.の本部にいる面々も、アルベルトがシェム・ハと対峙しているのが未だに信じられない様子で見ている。

 

「私達に何度も立ち塞がった、あのアルベルトが……」

「まさか殿を務めるなんて……」

 

 何度も予測不能な事態を本部から見届けて来た友里と藤尭も、これには唖然とする他ない。

 

「けど、いつまた裏切るか……」

「信じて良いんデスかね……?」

 

 瑠無に化けて瑠璃を攫い、アダム打倒に力を貸したと思いきや、ノーブルレッドを裏で操り、さらには風鳴訃堂に手を貸した。

 何度も騙されては、受け入れるだけの心の余裕がない。

 

「だけど……悔しいが、アイツのお陰で姉ちゃんやオッサン達は助かったんだ」

 

 クリスがアルベルトを擁護するような発言に、調と切歌は意外そうな表情をする。

 目的や裏があったにせよ、アルベルトが助けてくれたというその事実がある事は揺らがない。

 

「アイツを信じるしか、この状況を打破出来ねえ……!」

 

 裏切られるのは承知の上で、未来に憑依したシェム・ハを倒すしかない。今、S.O.N.G.の命運はアルベルトに委ねられた。

 

 

 


 

 

「愚かなり。ルル・アメル風情が、我に歯向かうとは」

 

 シェム・ハにとってアルベルトは数千年前に取り逃がした先史文明期の人間の最後の生き残り。言わばシェム・ハをよく知るただ一人の生き証人。

 そして今日までシェム・ハの復活をあの手この手で阻害させて来た。シェム・ハの中では最も目障りな存在とも言える。

 

「神を気取るな、裏切り者め。例えこの命が果てても、私は貴様に屈しはしない……!」

 

 対するアルベルトにとってシェム・ハは主の敵。目の前で愛する主を殺められたアルベルトの怒りは尋常ではない。そして主の復活とシェム・ハの打倒、その為だけに5000年以上も生きてきた。そして今日、それが叶う絶好の機会が巡ってきた。

 

「行くぞ……シェム・ハ・メフォラシュ!」

 

 腰を低く落としてスペルキャスターである仕込み杖を構える。同時に、唄った。

 ファウストローブは歌を必要とせずとも、錬金術のエネルギーを用いる事でシンフォギアと同等の運用を可能にする。そこに歌を唄い、フォニックゲインを高める事で、さらなる相乗効果を齎す。

 

 先に動いたのはアルベルトだった。駆け出すと同時に刃を鞘に納め、杖に戻すとその先端を銃口のごとくシェム・ハに向ける。そこから白い光弾を乱射。音光の如く速さでシェム・ハに迫る。だがそれをヒラリと、余裕で避ける。

 

「笑止。憤怒に侵され、定まってないぞ」

 

 対するシェム・ハはアルベルトが放った光弾を避けながら、シェム・ハも掌底から光弾を放つ。

 シェム・ハの光弾の弾速は、アルベルトものより遅いが面積が大きく、着弾と同時に爆破する為、威力ならシェム・ハの方に軍配が上がる。

 だが、それは当たればの話。アルベルトは着弾地点と爆風を読んで回避に加え、光弾を放ちながら接近している。

 アルベルトが中距離まで距離を詰めた瞬間、仕込み杖を抜剣する。

 は

「はあぁっ!」

 

 そして右手に持つ仕込み杖、左手の鞘を同時に振り下ろし、罰印の斬撃の衝撃波を放つ。

 それに対し、シェム・ハは右腕に嵌められた腕輪から光の刃を展開、それを右へ払うように振るって衝撃波をかき消した。

 

「っ!」

 

 だが同時にアルベルトが目の前に迫っていた。仕込み杖の刃を振り下ろし、シェム・ハはギリギリの所で光の刃で受け止める。

 

「貴様の力は分かっている。かの銀腕、あれが何物なのか調べはついているぞ」

「変わらぬな……その賢しさ、不快なり……!」

 

 アルベルトを押し返したシェム・ハは浮遊して距離を離す。

 すぐさまアルベルトは接近を試みようとするが、シェム・ハの掌から紋章のような陣が展開された。

 

「くっ……!」

 

 何が起こるか分かっているアルベルトはすぐさま射程距離、範囲から離れる為に高く飛び立つ。そして、アルベルトが先程いた場所には銀色の波動が放たれ、受けた地表、そして流れ弾のごとく波動を受けた木々が銀となって、その葉すら舞い散る事も、風によって靡く事も無かった。

 

「やはり埒外物理……!物質転換ではなく、物質そのものを強引に書き換えて……!」

 

 アルベルトの予想は当たっていたようだ。

 

 錬金術師は卑金属を貴金属に変えることは出来ても、物質そのものを書き換える事は出来ない。人間の手には及ばない、出鱈目にして絶対的な技。真っ向から全てを覆し、無力へと落とす。それが埒外物理の力。

 

(だが貴様は、ユグドラシルを生み出した直後。そのエネルギー消費は計り知れない。いくらシェム・ハとはいえ……!)

 

 シェム・ハが再び埒外物理を放とうと紋章の陣が展開されるが、すぐに消失した。

 

「消魂である……今の馴染みではこの程度。それとも、ユグドラシルの起動に力を使いすぎたか?」

 

 シェム・ハの動きが止まった。一瞬の隙が生まれたこの千載一遇の好機を、アルベルトは見逃さなかった。

 鞘の先端から4つの光弾をシェム・ハの周囲に撃ち込む。すぐに光弾の仕掛けに気付いたが、それに気付いた時には、撃ち込まれた箇所から鎖が出現、シェム・ハの身体を絡め取る。

 

「シェム・ハを捉えた!」

 

 そう言った藤尭、並びに友里やクリス達が驚愕を露わにする。

 

「時は今!」

 

 仕込み杖を鞘に納めたと同時に、右の薬指に指輪を嵌め、それを天高く掲げる。その指輪をモニタリングしていた装者達がその正体に唖然とする。

 

「あれって!」

「まさか!」

「デッデス?!」

 

 かつて、絶対の破壊神と化した瑠璃が身に纏ったバイデントのファウストローブであるスペルキャスター。

 指輪から放たれた輝きと共に、アルベルトはバイデントのファウストローブを身に纏った。

 

 漆黒のアーマーの上に神官を思わせる神秘的な白い布装束。そして漆黒の黒髪の一部に、白いメッシュが刻まれる。そして、何処からともなく現れた二叉槍を手に構える。

 

「この槍にて貴様の魂を穿つ」

 

 槍の矛先がシェム・ハの肉体、もとい未来の肉体を捉えた。だがアルベルトの意図に気が付いたエルフナインが叫んだ。

 

「バイデントの力でシェム・ハを?!ですが、今その槍で刺したら、未来さんの命が!」

 

 意識はシェム・ハが乗っ取ったとはいえ、肉体は未来のもののまま。もしその槍で身体を穿けば、未来の命は失われる。

 

「まさか、未来先輩を諸共に?!」

 

 アルベルトの守護対象は瑠璃であり、その他は勘定に入れていない。止めようにもアルベルトはS.O.N.G.の通信を交わしていない。もはやアルベルトを止める事が出来る者はすぐ近くにいなかった。

 

「これで終わりだ!シェム・ハ!」

 

 二叉槍の穂先がシェム・ハに迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドカアアアァァァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がぁっ!」

 

 突如現れた三方向からの横槍により、槍が届く前にアルベルトは膝をついた。

 

「馬鹿な……何故?!」

 

 横槍の正体はノーブルレッドだった。ヴァネッサのロケットパンチ、ミラアルクのカイロプテラの蹴り、エルザのテールアタッチメントの同時攻撃が、アルベルトひ直撃したのだ。

 

 チフォージュ・シャトーで虫の息となっている所をアルベルトは見逃していた。その三人が、何事も無かったかのように戦闘を行える事に愕然としている。

 だが三人の額に浮かんだ赤く光る紋章を見て察した。

 

「まさか……シェム・ハに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グサッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ…………」

 

 気付いた時には光の刃で心臓を貫かれていた。アルベルトは吐血する。

 

「終幕である」

 

 シェム・ハがそう告げ、心臓から光の刃を引き抜いき、アルベルトは倒れた。

 

(ここまで……なのか……。申し訳ありません……我が主……)

 

 薄れゆく意識の中、アルベルトが見上げた先にあったのは月。それを見たアルベルトは、ある記憶が蘇った。主であるエレキガルに見出され、仕えてきた日々。愛し、愛された日々。そして、唐突に訪れた死別した日。これが走馬灯なのかと、アルベルトは笑った。

 

「月は……遠いな……」

 

 それが遺言と受け取ったシェム・ハが腕輪から展開されている光の刃を振り下ろした。返り血が頬に掛かる。その衝撃的な惨劇までモニタリングされ、本部はみな衝撃を受け、エルフナインは手で目を覆っていた。

 

「アイツが……負けた……」

 

 パヴァリア光明結社との戦い以降、何度も宿敵として立ち塞がったアルベルトが、シェム・ハに敗死した。クリスが漏らした。

 

 そこに、藤尭の報告が入る。

 

「司令達の帰還を確認」

「お前らはオッサン達を頼む!あたしは姉ちゃん達の様子を見てくる!」

「分かりました」

「合点デス!」

 

 三人は司令室から飛び出し、それぞれ行くべき方へと走って行った。

 

 

 


 

 

 本部へと帰還した弦十郎とマリア達。緒川は八紘の遺体を安置所に届ける為に別行動になっている。翼は聞き取りの為に拘留されている。そして、今回の一件で逮捕された風鳴訃堂は奥深くの牢屋へと入れられた。

 

「マリア……司令?!」

「大丈夫デスか?!」

 

 出迎えに来た調と切歌が弦十郎が怪我を負っているという稀に見ない光景にビックリしている。

 

「俺は平気だ。それよりも瑠璃と輪君は?!」

 

 弦十郎は翼を止める前、瑠璃が訃堂によって致命傷を負い、輪も訃堂に敗れた事、そしてその二人を運んだのがアルベルトであると報告を受けた。

 司令というより父親の立場で問い詰めており、調と切歌はその迫力に怯える。

 

「い、今クリス先輩が様子を見てくれているデス!」

「もしかしたらこっちに……」

「お前ら!姉ちゃん達は無事だ!」

 

 クリスが走りながら報告する。その後ろから、瑠璃と輪が追い掛けてきた。

 

「お父さん!マリアさん!お姉ちゃんは……」

「瑠璃?!お前、無事なのか?!何ともないのか?!」

 

 弦十郎は瑠璃の両肩を強く掴んで心配して問う。

 

「だ、大丈夫だって!ほら、何ともないよ」

 

 その証拠に、検査着をはだけさせて傷があったとされる胸部を晒す。本当に傷なんて無かった。それを確認した弦十郎が瑠璃を強く抱き締めた。

 

「ちょ……お父さん?!」

「このバカ娘!寿命が縮まったと思ったぞ!」

「……ごめん」

 

 娘を心配する父親。涙ぐましい光景だが、今はそれどころではない。マリアが咳払いをする。

 

「それよりも、状況は?」

「……アルベルトが死んだ」

 

 司令、マリア、瑠璃、輪、報告を受けた全員が俄には信じ難い内容に絶句する。

 

「何ですって?!」

「死んだ、だと……?!」

 

 弦十郎とマリアが信じられなそうに言葉を漏らすが……

 

「けど事実だ。さっき、アイツにやられた」

「シェム・ハ……!」

 

 瑠璃が怒りを震わせる。まるで、仇であると憎むように。

 

「一先ず、ここにいる全員の無事が知れて良かったわ。けど、今後の事についても考えなくてはね」

 

 アルベルトが敗れる程の強敵。シェム・ハが史上最強の敵であると、思い知らされた。

 だが、それで諦めるという事はしない。特にマリアは悲観に浸るつもりはない。

 アルベルトに託されたもの。マリアはアルベルトに投げ渡されたものを出す。それはSDカードが2枚収められている小さなケースだった。

 

 




アルベルト楽曲

【終末のレジスタンス】

ただ一人に、全てを捧げる愛の歌。主が果たすべき使命、それを叶える為に5000年以上生きたアルベルトの覚悟、宿敵に刃を向け、主の魂に捧ぐ叛逆の歌。
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