戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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VS エルザ戦!

輪も参戦!!


優しさ

 輪の横槍により、エルザがロケットの破壊に失敗した。

 

「けどまだウチらが……」

「させてなるものか!」

 

 ミラアルクがロケットに向かおうにも、翼とマリアが立ちはだかる。背中のカイロプテラをブーメランにして投擲、ロケットに向かうもマリアの蛇腹剣の刃に弾かれる。

 

 ヴァネッサの方も、響とクリスが粘り強く耐える為に状況が一変しない。

 

「しつこい……!」

 

 こうなっては埒が明かない。ヴァネッサは目をフラッシュさせて響とクリスの視界を潰す。

 

「目がっ……!」

「クソッ!アイツ、一体何を……」

 

 響とクリスの視界が回復する前に、ヴァネッサは高く跳躍。胸、胴体、肘、脛と全てのミサイルを発射させる。

 

「させるかよ!」

 

 響よりも早く視界が利くようになったクリスが、その下からガトリングでミサイルを撃ち落とそうと乱射する。的確な射撃で撃ち落としていく。だが最後の一本のロケットを撃ち漏らしてしまい、後ろに抜かれてしまう。

 

「しまった!」

 

 ミサイルがそのままロケットへと向かい、撃ち抜く……

 

「はああぁっ!」

 

 だがそのミサイルは二叉槍によって叩き落された。地面へと叩き落されたミサイルは爆発、ロケットは無事だった。

 

「来たか!」

 

 二叉槍を手に、瑠璃が援護に到着した。だがヴァネッサは瑠璃の姿を視認した途端、全身には戦慄の震えが走る。

 

(何なの?この感覚……まるで怯えている?)

 

 怪物と完成し、大きな力を手に入れたはずが瑠璃を見た途端、肉体が恐怖で悲鳴を挙げそうなくらい怖じている。

 瑠璃がバイザーを解除、彼女の瞳が見える。

 

「あなた……まさか……!」

 

 響とクリスには普通に見えていたが、シェム・ハの因子によって怪物となったヴァネッサだけは違った。瑠璃の瞳には冷たい闇が帯びていた。

 あの病院との戦いで見た、全てを震え上がらせるあの闇の瞳。その記憶と意味を悟ったヴァネッサは驚嘆する。

 

「シェム・ハだけではなかった……?!神は既にここにも……」

 

 ヴァネッサが口走った言葉の意味を、響とクリスは理解出来ず、互いを見る。

 

「やっぱり、あなたにはシェム・ハの断片が……」

 

 怪物へと完成させたヴァネッサの肉体の中に宿るシェム・ハの因子、瑠璃はエレキガルの力を使ってそれを見抜いた。

 

「あなたがどうしてシェム・ハに降ったのか、私には分からない。けど、そうした以上は覚悟を決めて」

 

 そう言われたヴァネッサはすぐさまミサイル発射の体勢に入る。生かしてはマズいと本能的に察知した故の行動だ。

 瑠璃も二叉槍を解除、二本の黒白の槍へと戻して、それぞれの手に持って構えたその時だった。

 

「っ……!」

 瑠璃のすぐ横を駆け抜けた一筋の閃光。それに気が付いた瑠璃はロケットの方を振り向くが……

 

 

 

 

 

 

ドカアアアアアアァァァァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如ロケットが爆破。爆発と共に発射台も瓦礫となって崩れ落ちた。

 

「そんな……」

「してやられたのか……?!」

 

 突然起きたロケットの爆破。響とクリスは破壊されたロケットを見て驚愕する。何故ロケットが爆発したのか、外部からの攻撃である事は明らかであるが実行犯は一体誰なのか。

 ノーブルレッドの三人も装者との戦闘、もしくはその余波とも考えられたが、少なくともヴァネッサの攻撃は瑠璃によって届いておらず、二撃目は仕掛けていない。

 

「一体……何が……」

 

 ヴァネッサ本人も何が起きたのか分からず、驚愕を隠しきれていない。

 ミラアルクの主な攻撃は肉弾戦である。近くにミラアルクがいないとなるとミラアルクでもない。

 エルザもミラアルクと同様の理由で、ロケット破壊の実行犯から除外される。

 

「嘘でしょ?!何で……」

 

 エルザと交戦していた輪が爆発と共に崩壊したロケットを見て戸惑っている。一方、図らずも目的を果たしたはずのエルザだったが、何処か悲しげな表情で燃え盛るロケットと発射台を見ている。

 

「私めらは……ずっとずっと壁に囲まれて、疎外感に苛まれてきたであります……」

「え……?」 

 

 消えてしまいそうなエルザの嘆き。それを拾った輪が振り返った。

 

「利用されて……裏切られて……それでもいつか、孤独を埋める方法が見つかると信じて……」

「アンタ……」

 

 エルザの脳裏に蘇る、虐げられた日々。その傷をヴァネッサとミラアルク、三人で舐め合いながらも、人間に戻れると信じて抗ってきた日々。

 その結果がこれだ。完全なる怪物となって、もう人間には戻れない。たった一つの願いを踏み躙られ、残酷な結末を突きつけられたエルザの心に、最早希望なんてない。

 

 エルザは涙を流していた。

 

 

ワオオオオオォォォーーーン!!

 

 

 慟哭に似た咆哮が衝撃波のように襲い掛かる。

 

「不可逆の怪物となり果てるのなら……優しさなんて知らなければ良かったであります!!」

 

 銀狼の鎧の胸部を閉じ、身体を高速回転させて襲い掛かる。輪、調、切歌はエルザの攻撃を跳躍して回避する。

 だがエルザは切歌を標的に絞る。迎撃する為に鎌をコマのように高速で振り回す。

 

【災輪・TぃN渦ぁBェル】

 

 それでもパワーもエルザの方が上手で、攻撃が途切れた切歌はマズいと悟る。そこに割り込むかのごとく、調がツインテールと脚部のアームを鋸で連結させて切歌を守った。

 

【非常Σ式・禁月輪】

 

「調!」

 

 調が窮地を救ってくれたカッコよさに、切歌は思わず乙女のときめき。

 それでも銀狼の爪が、二人を潰そうを躍起になり追いかけ、爪が振り下ろされる度に滑走路に穴を空けていく。

 禁月輪で駆け回りながらも、両手のヨーヨーを巨大化させて投げた。ヨーヨーが銀狼の周囲を駆け巡り、滑走路のコンクリートに埋め込むと、エネルギーの糸が銀狼を拘束する。

 切歌の大鎌の刃を手裏剣型に可変させ、その刃を振るおうとした直後、銀狼が力任せに拘束を振り解き、調と切歌を纏めて吹き飛ばした。

 

「シェム・ハの企ても、私めらの悲しみも、最早止められないであります!!」

 

 全ての敵を壊し尽くすまで止められないほどに自暴自棄となったエルザ。超高速で調と切歌にその牙が向く。

 

 だがその前に割り込み、エルザに向けて掌を向ける輪。

 

「輪先輩?!」

「駄目!」

 

 銀狼と刃を交えた二人が叫ぶ。いくら輪でも、正面からでは太刀打ち出来ないと分かっているからだ。だがそれでも輪は退かない。

 

「この……大バカヤロウがぁ!!

 

 チャクラムを手放し、両掌からフィーネの力であるバリアを展開。片手でやるよりさらに一回り大きく展開され、銀狼の鎧とバリアがぶつかり、押し合いになる。

 

「フィーネの力を使って……」

「だけど無茶デスよ!」

 

 調と切歌の危惧。相手はシェム・ハの力で強化され、全てのテールアタッチメントを合体させて作った鎧、いくら強固なバリアであっても、使用者である輪の体力にも限界がある。

 

「またそのような……!」

「諦めんなよ!!」

 

 何を言い出すのかと思えば、出たのは根性論。それを聞いたエルザは憤怒する。その思いが具現化したのかバリアに亀裂が生じる。

 

「怪物でもない人間に、私めらの悲しみを……」

「怪物だとか人間だとか、そうじゃないんだよ!!」

「……?!」

「怪物の力があったとしても、アンタはアンタだ!!私もこの力があったとしても、瑠璃がアヌンナキだとしても、アイツだって人間らしく生きてんだ!!」

 

 輪がS.O.N.G.の仲間にまで黙っていた真実をエルザにぶつけた。本部でも当然それを聞き逃すわけもなく、弦十郎をはじめとする主たる面々が衝撃を受けた。

 だがそれは、エルザに分かってほしかったからだ。たとえ異形の力があったとしても、異端技術や先史文明の魂が宿っていたとしても、自分が人として生きたいのであればそれに望む事だって出来る事を。それを諦めてしまった事に怒っている。

 

「アンタを本当に怪物にしてしまったのは、異端技術でも、錬金術師でも、ましてやシェム・ハでもない!人として生きる事を諦めて、人と怪物の間に壁を作った……アンタなんだよ!!

「っ……!私めが……でありますか……?」

「うぉりゃああぁ!!」

 

 エルザが怯んだ一瞬の隙に、地面のチャクラムを蹴り飛ばした。銀狼の顔面に直撃して怯んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 バリアを解除するが、一度に大型のバリアを展開した分の体力を消耗してしまった。疲労の表情が濃く表れ、膝をつく輪だが戦意は折れていない。フラフラになろうとも、立ち上がろうとする。

 

「無茶デスよ!」

「私達を守る為に、その力を使い続けても輪さんが……」

「出しゃばるんじゃないよ!」

 

 切歌と調の静止を無理矢理払う。信頼していないわけではない。今引き下がってしまえば、大事な事を伝えられなくなってしまう。全ての力を使い果たしてでも伝えたい事がある輪は、徐に立ち上がる。

 

「人として生きたいっていう叫びがある限り、アンタ達を人として受け入れる人がいる限り、アンタ達は怪物じゃない!だから……優しさを捨てんな!!」

「くっ……ぅ……!ワオオオオオォォォーーーン!!」

 

 咆哮とともに、銀狼が再び四足歩行で襲い掛かる。先程よりも速い、残像を生み出すレベルのスピードで攻撃して来る。再びバリアを展開するが、あまりにも速すぎる連撃にバリアに生じる綻びも早い。このままではやられると思ったその時、背中を押される感覚がした。

 

「二人とも!」

 

 振り返ると調と切歌が背中を支えてくれている。

 

「私達にもぶつけさせてください……!」

「無茶を先輩だけにやらせないのデス……!」

「……頼もしい後輩だね!けど……ちょっとヤバいかも……!」

 

 次第に亀裂が大きくなり、遂にその時を迎える。

 

 

「「「うわあああああぁぁぁーーー!!」」」

 

 

 バリアが破壊され、三人揃って大きく吹き飛ばされた。調と切歌はすぐに立て直したが、一度に大型のバリアを二回も使ったせいで、輪はまともに立つ事すら出来なかった。しかも、エルザは容赦なく輪に狙いを絞って襲い掛かって来る。

 

「クソッ……!足に力が……!」

 

 バリアも使えなければ避ける事すらままならない。これまでかと思われた。

 

 

 

 

 

 

ドカアアアアアアァァァァン!!

 

 

 

 

 

 

「え……?!」

 

 切歌と調の二人が纏った黄金のバリアが、寸での所で輪を守った。

 

「選手後退デス!」

「輪先輩の思い、今度は私達が!」

「アンタ達……その姿!」

 

 輪を守る為に、二人は前に並び立った切歌と調のギアが変わっている事に気が付いた。

 

「制限が解除された……!」

「アマルガムデェス!」

 

 手の甲から展開される黄金の華。調のものは黄金の盾、切歌はいくつもの刃が連なる大鎌を形成し、手に取る。

 

「小癪なであります……!」

 

 アマルガムを使われたからと言って、今のエルザは退く気などない。高速で攻撃を仕掛ける。標的は体力を一番消耗して動けない輪。

 だがやらせるかと切歌の大鎌が全ての残像を刈り、本体の銀狼を吹き飛ばす。さらに盾から鋸の刃を展開、それを投げ飛ばす。

 銀狼の爪がそれを掴んだかと思われたが、盾が調の姿を模したロボットに変身。脚部に鋸を展開して飛び蹴りを繰り出し、銀狼に直撃した。

 だがそれでも銀狼の鎧には傷一つついていない。再び車輪のように高速回転し、二人に襲いかかる。

 

「「レディゴッ!!」」

 

 調と切歌の二人のユニゾンの力が加速する。

 

 切歌が大鎌を頭上に投擲、ロボットとなっていた鋸と連結合体、巨大なトラバサミに変形する。

 

 それでも構いなしにエルザは襲い掛かる。だが二人に気を取られて、すぐ近くの伏兵に気付かなかった。

 

「はっ……!」

「どっせえええぇぇい!!」

 

 チャクラムを合体、巨大化させた大身の槍。それを渾身の力と叫びでバットのように、一回り巨大な銀狼を打ち上げた。

 銀狼はそのままトラバサミにぶつかり、そのまま捕らえられた。刃が檻のように閉じ、内部の刃が高速で回転すると、外の刃も球体のように回ると銀狼の鎧を何度も切る。

 

「いくら何でもそいつはヤバいぜ?!」

「エルザちゃん!」

 

 ミラアルクとヴァネッサがその技の脅威に気付くが、もう遅い。球体刃の檻と繋がっているエネルギーの糸を操っている調と切歌が、それを振り下ろした。

 

 

【ポリフィルム鋏恋夢】

 

 

 そのまま大地へ叩きつけられ、陥没する程の大爆発が起きた。

 アームドギア同士の合体を解除させ、それぞれの持ち主の手に戻る。成り行きを見届けた輪が呟いた。

 

「凄い……おわっ!」

 

 立つのがやっとな状態だというのに、歩こうとすれば転ぶのが関の山。だが倒れそうになった所を切歌と調が肩を貸す。得意げな表情の二人に、輪は笑ってしまう。

 

「あんがと、二人とも」

 

 爆煙が晴れるとテールアタッチメントが損傷し、ボロボロになったエルザが荒い息遣いで辛うじて立っていた。

 

「孤独を埋めるのに、心まで怪物にする必要はないデスよ!」

「あなたの心にある壁は、誰かを拒絶する為じゃない。それはきっと、誰かの心を受け止める為に。優しさを忘れないで!」

(あーあ、全部言われちゃった……。けど……まあ良いっか) 

 

 輪が伝えたかった事を切歌と調が伝えてくれた。それで十分だった。

 力尽きたエルザは倒れそうになるが、駆け付けたミラアルクに抱えられる。

 

「やってくれる!だが、痛み分けだなんて思わない事だぜ!」

「月遺跡への探査ロケット破壊というこちらの目的は、既に果たされてます!」

 

 脚部のホバーでエルザとミラアルクの傍に降り立ったヴァネッサがそう吐き捨て、黄金のテレポートジェムを取り出した。

 

「アイツらまた!」

 

 だが三人の背後から振り下ろされた刃によって、テレポートジェムを落としてしまう。

 

「お姉ちゃん?!」

 

 翼らしからぬ大胆な行動に瑠璃のみならず、敵味方全員驚愕する。

 

「そいつを使えば、貴様らの喉元に喰らいつけるのだろう。この命に代えても、小日向は必ず!」

 

 テレポートジェムが翼の足元に落ち、転送の魔法陣が展開された。このままではノーブルレッドの転移に、翼だけが巻き込まれてしまう。

 

「翼さんを一人ぼっちにさせるな!」

「デェス!」

 

 響の叫びと共に、装者達が駆け出す。なお切歌と調も、輪を抱えながら走っている。

 装者全員とノーブルレッド、転送の魔法陣の内側に足を踏み入れた瞬間、その場にいた全員の姿が消えた。

 

「っ?!」

「皆さん!」

 

 装者達の姿が消えた事で、それをモニターで見ていた弦十郎と緒川も狼狽える。

 

「ギアからの信号、検知出来ません!」

「スキャニングエリア拡大中!ですが!」

 

 藤尭も友里も、死に物狂いで日本より外、全世界をレーダーで反応を探すが影一つ捉えることが出来ない。

 

「世界からの消失?!まさか……そんな事が?!」

 

 その意味を、目の前の事態を未だに信じられないエルフナインが叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を同じくして、装者達が消失した様子を見届けた一つの影も、その姿を消した。




ロケット破壊の実行犯は誰か?!

輪「皆も一緒に考えてみよう!あ、分かっても感想には書かないでね☆」
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