戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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あの日、少女が見た夢は……幻か、それとも……




約束の絆

「あれ……ここは……。」

 

 目を覚ますと、そこは真っ暗な空間……瑠璃以外誰もいなければ何もない。

 

「私……あの時……歌を……。」

 

覚えているのは、フィーネに連れて行かれ、そこで虐待された事、そして姉と刃を交えたあの一瞬。

 

「お姉ちゃん……お姉ちゃ……」

「ようやく気付いたか……。」

 

振り返るとそこにいたのはフィーネだった。

 

「あなたは……ここは一体……」

「ここはお前の意識世界。お前にしか入れない特別な空間だ。人間には誰しもあるが、自分からでは気付くことのできない無の世界だ。」

 

では何故、自分にしか入れない世界にフィーネがいるのか訪ねようとするが

 

「私がお前の精神を支配すれば、お前だけの世界も私のものになる。私の意識をこちらに移すことでそれが可能になる。だが常人に入ろうとすれば忽ち弾き飛ばされてしまう。故にお前の心を砕いて入りやすくしたのだ。」

 

 あの日、響と翼が相手していた時、瑠璃の身体は既にフィーネに心を支配されていた操り人形だった。

 街にノイズを召喚したのも、クリスの命を狙ったのも、全てフィーネの意識だった。

 だがいつそんな事をされたのか、心当たりが一つだけあった。

 あの時微かに意識があった時、唇同士が重なった瞬間、あの時にフィーネの意識を移されていた。

 

「だが一度だけ弾かれたな。まさかあの融合症例第一号に揺さぶられて、一時的に覚醒してしまったが、今度は違う。今度はお前を声の届かぬ場所へ封じ込めてしまえば、奴らの声で二度と意識が蘇ることはない。」

 

 瑠璃の目の前で、肉体が見ているものが映し出される。

 そこでは響、翼、クリスがフィーネと瑠璃を止める為に争っていた。

 

「そんな……お姉ちゃん達を……!やめて!お姉ちゃん達を傷つけないで!」

 

 やめるように訴えかけるも肉体は戦闘を継続し、バイデントを纏って戦っている。

 

「無駄だ。私がここにいる限り、お前の全ては私のものだ。」

「ならあなたを追い出せ……っ!」

 

 いつの間にか両手と、両足から胴へに絡みつくように鎖で束縛されて動けなくなってしまう。

 

「そこで眺めるがいい。家族の鮮血が舞う瞬間を、そして絶望しろ。」

 

意思も肉体も支配され何も出来ない瑠璃は、ただ大切な人達が傷ついていく所をただ見ている事しか出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 現在響と翼がフィーネ、クリスが瑠璃と交戦している。

 数では上回っている装者三人だが、クリスが使っていた時よりネフシュタンの鎧の力を存分に発揮している。

 

 瑠璃はクリスに黒い槍を突き出すが、ガトリングで弾いて軌道を変えるが、白い槍の攻撃には対応しきれず、身を屈んで避ける。

 クリスのギアは遠距離特化型である為、白兵戦ではガトリング砲もボウガンも意味をなさない、圧倒的に相性が悪い。

 

「代われ雪音!」

 

 ここで翼と交代し、突き出された白い槍を弾き返すと、距離が開いた瞬間に、瑠璃は黒い槍にエネルギーを溜め、それを穂先からビームのように放つ。

 

【Shooting Comet】

 

翼も刀を斬馬刀のように大きな刀へと形を変え、振り下ろすと刃状のエネルギー波を放つ。

 

【蒼ノ一閃】

 

 病み上がりだったあの時とは違い、今度は相殺したが白い槍からもShooting Cometを発射され、翼は辛うじて宙を舞う事で避ける。

 

(ガングニールのように一撃の威力は劣るが、手数では向こうが上……ならば!)

 

 上空に無数の短剣が降り注ぐ

 

【千ノ落涙】

 

 対する瑠璃は白い槍をブーメランのように投擲、黒い槍を高速回転させて自身に及ぶ短剣を全て弾く。

 だが最後の一本が瑠璃の影に刺さり、瑠璃は行動不能になる。

 

【影縫い】

 

 投擲された白い槍を上空に弾いて、動けなくなった瑠璃に接近する。

 

「もらったぁっ!」

 

刀の向きを変えて、峰打ちを狙う……

 

「翼さん!後ろ!」

 

弾いたはずの白い槍が意思を持つかのように翼に狙いを定め、迫ってきた。

 

「ボケっとすんな!」

 

ガトリング砲の反射で、軌道を変えるが、瑠璃の影に刺さった短刀はへし折られた。

 

「まさか槍を手にせずとも、それを自在に操れるとは……!」

 

 自由の身となった瑠璃は二本の槍を手に、翼に襲い掛かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 同じ頃、二課本部はフィーネによって回線の殆どが破壊され、辛うじて生きている回線を通じて、装者とフィーネの戦いをモニタリングしていた。

 二課の面々は、一連の事件の黒幕が了子であり、その正体がフィーネであったという事実に影を落としたが、そんな状態であっても自分達に出来る事を成している。

 重傷だった弦十郎も目が覚めているが、未だに動けずにいる。

 そして二課の本部はリディアンの地下シェルターと繋がっていた為、弓美、創世、詩織と合流も果たしたが、弓美は非現実的な惨状に今にも心が折れそうになっている。

 さらに、輪も瑠璃がフィーネにシンフォギア装者としてフィーネに操られ、響、翼、クリスに刃を向けている事に信じられずにいる。

 

「オジサン……瑠璃が……。こんなの嘘だよ!あんなに、心根の優しい瑠璃が翼さんやクリス、響を殺そうとするなんて……嘘だよねオジサン!ねえ?!」

 

 あれだけ人に優しい瑠璃が、従姉と本当の妹を殺そうと戦っているという現実を突きつけられ、愕然とする。

 

「今は……彼女達に託すしかない……!」

 

 弦十郎も無力な自分に憤っていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 瑠璃の意識世界でフィーネに束縛されている瑠璃の意識は、ただ大切な人達が傷つくのを黙ってみているしか出来ない。

 

「お願いやめて!これ以上大切な人達を……」

「よく言う。散々利用されてまだ信じようと?」

 

 フィーネに自身の思いを遮られてしまう。

 

「人はいつの時代でも醜く争う。それもバラルの呪詛によって……。己の体裁を守る為に、人を裏切り、偽りを吐き、血を流す。今己がされている事、している事がまさにそうだ。」

「そ、そんな事……今の私は……」

「私に利用されようとも肉体はお前のもの。それは変わらぬ事実。」

 

 瑠璃を嘲笑うように見下ろし、瑠璃の頭を髪ごと乱暴に掴む。

 

「どう足掻こうとも、お前は私の生贄でしかない。」

 

 何も出来ない、心も身体も支配され伝える事も出来ない、このまま消えてしまいたい、そう涙を流した時だった。

 

「ぅっ……ぁぁっ……!」

 

 突然耐え難い頭痛に襲われ、のたうち回る。

 同時に流れてくる、あの日見た夢と同じ光景。

 

「何だ……?」

 

 フィーネも瑠璃の異変に気付き、意識の全てを支配してやろうと口づけをしようとしたその時、瑠璃だけが見えていたビジョンを映し出すように、真っ暗だった世界が映し出された。

 

「へ……?ここは……」

 拘束もされておらず、自由に動ける。

 フィーネもいない。

 見上げるとそこは夜空に包まれ、星々が燦然と輝いている。

 

「ここは……前に夢で見た景色……これって……」

『クリス!』

 

 後ろから声がしたので振り返ると、そこには二人の少女が夜空の星を眺めていた。

 一人はクリスだ。幼いが銀色の髪と顔からクリスである事は分かった。だがもう一人の幼子を見ると驚きを隠せなかった。

 幼いクリスと同じ髪型だが黒髪にラピスラズリを思わせる瞳、左目尻の泣きぼくろが一致する人物など、一人しかいない。

 

「私……?!」

『ルリ!クリス!』

『『パパ、ママ!』』

 

 双子の少女達は両親と思われる男女の方へと走っていったが、その男女にも見覚えがあった。

 

「あの時……本に載ってた……。」

 

 前に本を借りた時に写っていた写真の夫婦、雪音雅律とソネット・N・ユキネだった。

 

「あれが……あの人達が……本当の両親……?それで私は……クリスの……お姉ちゃん……。」

 

 今の瑠璃とは全然違う、幼いルリは無邪気な笑顔でクリスの方を向いて話す。

 

『クリス、約束覚えてる?』

『うん、勿論。』

 

二人でパパとママの夢を叶える!

 

それを聞いた瑠璃は、一筋の涙を流した。

 

「あ……ぁ……。」

 

蘇る、あの日の星が煌めく夜空の下で交わした約束。

 

「どうして……どうして今まで……忘れてたんだろう……。私は……私は……!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 瑠璃の容赦ない攻撃が響、翼、クリスの体力、精神を少しずつ削っていた。

 装者四人の体力は限界に近かったが、フィーネだけは呼吸を乱していない。

 フィーネを倒そうとすると、どうしても瑠璃が前に立ち塞がる。

 しかし、こちらがいくら攻撃を入れ、ダメージを与えたとしても命令を遂行するまで止まることをしない、まるでサイボーグのように動き続けている。

 瑠璃も限界であるにも拘らず、戦闘を続行しているのは、紛れもなくフィーネの意識がそうさせているからだ。

 

「どうした?私を止めるのではなかったのか?!瑠璃を相手にその程度とはな!ハハハハ!」

 

フィーネの高笑いが、三人の悔しさを助長させる。

 

「だがもう戯れは終わりだ。ルリ、絶唱を使いなさい。」

「まさか……絶唱を!」

「フィーネ!テメェどこまでも!!」

「カ・ディンギルが現れた以上、もはや利用価値はなくなった。後は仲良く果てれば本望であろう?」

 

瑠璃を道具と言わんばかりの態度に、翼は憤怒する。

 

「ふざけるな!!瑠璃は貴様の玩具ではない!!」

「風鳴瑠璃の意思は私が支配している。故に玩具も同義。さあ、やれ!!」

「誰が好きにさせて……」

 

クリスが無防備なルリにボウガンを撃つが、フィーネが操る鞭によって全て消し飛ばされる。

響と翼が瑠璃を止めようと近づいても、鞭によって払われてしまう。

瑠璃は適合率が高いとはいえ装者としては浅く、既に身体は限界だった。

その状態で絶唱を使えば、最悪命を落としかねない。

だが、それを止められる者がいない。

瑠璃は槍を天に掲げるように構えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 気が付いたら再び真っ暗な空間に戻っており、身体は拘束され、フィーネの唇が迫っていた。

 唯一動ける頭部でフィーネを頭突きすると、まともに食らったフィーネは怯む。

 

「貴様……!よくも……」

「思い出した……。私は……私は雪音ルリ……。クリスのお姉ちゃん。」

 

そういうとフィーネは不敵な笑みを浮かべる。

 

「思い出したか……。だが、風鳴を断ち切ったと言うか!」

「違うよ。」

 

ルリはいつもの臆病ではなく、覚悟を持った顔で、フィーネを見る。

 

「一度繋がれた絆は……離れ離れになっても断ち切れはしない……!」

 

 瑠璃を縛る鎖に綻びが生じる。

 

「だから私は、お姉ちゃんやクリス達を傷つけたあなたを許さない……!この世界は私だけの世界……私の意思があれば……あなたを追い出せる!さあ……返してよ!私の自由を!!」

 

渾身の叫びとともに、鎖が破壊された瞬間、フィーネの意識が、瑠璃の意識から消えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 槍を構えたまま動かない瑠璃だったが、突如向きをクルリと変えた。

 

「何?!」

 

 バイザーを解除し、閉じていた瑠璃の瞼が開くと、そこには光が戻っていた。

 

「馬鹿な?!あれ程の意識を取り込んだというのに何故……?!」

 

 フィーネは不測の事態に驚愕を隠せなかった。

 瑠璃は、三人の方へもう一度振り向くと微笑んでいた。

 

「響ちゃん、お姉ちゃん、クリス。私を取り戻す為に、戦ってくれてありがとう。……クリス。」

 

 名前を呼ばれて、クリスはもしや、記憶が戻ったのかと思った。

 

「ごめんね、今まで忘れてて。」

「姉……ちゃん」

 

 名前を呼んでくれて、約束も思い出してくれたのに、どこか悪い予感がしていた。

 

「お姉ちゃん……クリスや響ちゃん……皆をお願い……。」

 

そう言うとフィーネの方を向き直し、高く飛翔した。

 

「なっ……何をする気だ?!」

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

 フィーネの意識から解放された今、歌っているのは間違いなく瑠璃自身、自らの意思で滅びの歌を唄い始めた。

 

「絶唱……?!」

「まさか瑠璃……自分諸共フィーネを?!」

「もういい姉ちゃん……やめてくれよ……!これ以上……姉ちゃんが歌う必要はないから……!だから……だから……やめてくれええええええぇぇぇぇーーーーーーー!!!」

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl……

 

 白と黒の槍、二つの槍を連結させて一つの二叉槍へと姿を変える。

 そして、二叉槍を巨大化させてその穂先をフィーネに向ける。

 歌い終わると吐血するが、構わず腰部のエンジンブースターを点火、隕石のように急降下する。

 狙うはフィーネただ一人。

 

「呪われたギアで……何が出来る?!」

 

 鎧の鞭をバリアのように組み込むと、それを十二層作り上げ、瑠璃を迎撃する。

 激突する直前、穂先がドリルのように高速回転を始め、バリアと激突する。

 

(パパ……ママ……天国で見ていてくれてるかな……。私、思い出したよ。歌で世界を平和にするっていう二人の夢も、クリスとその夢を叶えるっていう約束も。でもごめんねクリス。約束、守れそうにない……。ごめんね……こんな駄目なお姉ちゃんで……。)

 

 一枚目が砕け、二枚目、三枚目も破っていく。

 

(お父さん……お父さんはずっと私を守ってくれてたんだよね。ありがとう……本当の娘のように愛してくれて。)

 

 次々とバリアを破壊し、残すはあと四枚。

 

(私は雪音でもあり、風鳴。離れ離れになったとしても、どんなに時が流れても、一度繋いだ絆は、決して断ち切れはしない……!)

 

 あと三枚。

 

(お別れしたとしても、必ず……また会える。)

 

 残り二枚。

 

(でも、それを阻んで、傷つけようとする人がいるなら、私は戦う。仲間を傷つけさせない!)

 

 遂に最後の一枚に到達し、そのバリアにもヒビが入る。

 だがここで限界が訪れたのか回転が弱くなりつつある。

 

「愚かな!自らの命を無駄にするとはなぁ!」

「無駄なんかじゃない!」

 

 穂先からエネルギーが集中しており、それが徐々に膨大になっていく。

 

「まさか……貴様!自分諸共私を吹き飛ばすつもりか?!馬鹿な?!貴様の精神力などとっくに限界のはず!なのに何故折れぬ?!」

「私を守ってくれた人が沢山いる!クリスにお姉ちゃん、響ちゃんにお父さんに輪!皆、私の為に戦い、守ってくれた!だから今度は私が皆を守る!!」

 

 絶唱のバッグファイアで血涙を流す。

 全て出し切る、ありったけの思いと力、声も全て。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!」

 

 膨張したエネルギーが遂に限界を迎え、大規模な爆発が発生した。

 その威力は凄まじく、爆発範囲外の三人も、強く踏ん張らなければその爆風に吹き飛ばされそうになる。

 

「姉ちゃん!!」

 

 爆煙から瑠璃の身体が放り出されるように上空へ打ち上げられ、それを見たクリスは絶句し、手を伸ばす。  

 

「姉……ちゃん…………。」

 

 だが超爆発によって打ち上げられた瑠璃に届くことはなく、身体はそのまま森へと打ち捨てられるように落ちていった。

 一つになったバイデントの槍も地に刺さった瞬間、光となって消え、それを目の当たりにした三人は涙を流した。

 クリスは膝から崩れ落ち、ガトリング砲を落とす。

 

「そんな……どうして……どうして……こうなっちまうんだよ……っ。ぁ…………あぁ…………姉……ちゃん……姉ちゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

 クリスの慟哭が夜空に響いた。




散ってしまった……。

 ちなみに、フィーネの口づけで他者の精神を支配する能力はオリジナルになります。

バイデントのアームドギア

・槍の遠隔操作

槍を手放した時、瑠璃の意思で槍を自在に操作する事が可能であり、自身が何かしら動けない状態であっても隠し玉として敵の意表を突く事が出来る。
但し有効範囲がある為、何処でも使えるわけではなく、操作している間は無防備になり、緻密で繊細な操作を要求される。

・バイデント連結

右手に持つ黒い槍、左手に持つ白い槍を一つに連結させる事で、一本ずつでは出せなかったパワーを凌駕し、ガングニールの破壊力に匹敵する。
欠点としては二本の槍を一度に纏めて振るわねばならず機動力を失い、反撃される恐れがある。

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