戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

186 / 190
遂にラストバトル、開幕!


9つの調和

月からの帰還を果たし、シンフォギア装者はバーニング・エクスドライブ∞に、輪のファウストローブをはTypeΩへと、新たな決戦機能を得て、人と神、未来の存亡を掛けた戦いが始まろうとしている。

 

 装者達の帰還をモニタリングしていた本部は何もしていないわけではない。

 

 ネットワークを通じて起動したユグドラシルであるが、裏を返せばネットワークから妨害を仕掛けることも可能だ。

 

 米国大統領の呼び掛け、緒川家の兄弟の働きにより、全人類が一丸となって各所にファイアウォールを設置。ユグドラシルの稼働を押し止めていた。

 

 それが功を奏し、装者達の到着前に手遅れにならずに済んだ。

 

 こうして装者達とキャロルが一同揃い踏みとなり、未来に憑依しているシェム・ハと対峙する。

 

「呪われた拳と魂を支配する槍、我の依代たる友の体を前に何とする?」

 

 響は昨年の未来のやり取りを思い返す。

 

 

 

 

 じゃあ、私が誰かを困らせてたら響はどうするの?

 

 

 

 

 あの時は唐突すぎて、上手く答える事が出来なかった。だが今なら迷いなく言い切れる。

 

「誰かを困らせる誰かがいるのなら、私が止める!この拳で!」

「俺達九人の歌が揃った今なら神の摂理を覆せる!共に行くぞ!」

 

 キャロルの号令で一斉に飛び立つ。シェム・ハの手から光弾が放たれるも、バーニング・エクスドライブ∞とTypeΩは飛行能力が備わっている。空を翔けながら光弾を掻い潜る。そこにキャロルが四大元素を放つ。

 

 シェム・ハはバリアで迎え撃つも、威力を相殺しきれず、バリアは瓦解。神獣鏡のファウストローブに傷をつけられる。

 

「声を重ねて力を増したか……だが!」

 

 シェム・ハには神の力。受けたダメージを無かった事にする力がある。それを打ち破れるのは神殺しの力、そして同じ神の力を持つエレキガルの槍のみ。

 

 シェム・ハは神の力を用いて無傷の状態にする……

 

「っ……まさか?!」

 

 だが、元には戻らなかった。

 

「不条理の執行に、無効化されない?!」

 

 それに気が付いた装者達は一斉に攻撃を仕掛ける。調の鋸と切歌の大鎌の刃を投擲、それを弾くも翼が間合いに入り蒼炎の刃を振り下ろす。

 

 鍔迫り合いに持ち込んだ瞬間、ダウルダブラの糸がシェム・ハの身体を絡め取る。

 

 身動き取れなくなった隙に再び攻撃を仕掛けるも、シェム・ハを守る小型の鏡が四機から光線を放れ、それを打ち合った刀があえなく折れてしまう。

 

「神獣鏡の輝きで!」

「こっちが神殺しなら、あっちはシンフォギア殺しなのデス!」

「それでも当たらなければ!行くよ瑠璃!クリス!」

「「うん(おう)!」」

 

 輪が勇んで特攻する。瑠璃の穂先、クリスの銃口から光線を放ち、道を作る。迫り来る神獣鏡の光線を掻い潜り、炎を纏ったチャクラムをまるでメリケンサックのように持って、シェム・ハに向かって殴り掛かる。

 

 小型の鏡から展開されたバリアで迎え撃たれるも、咆哮と共に力を引き上げ、強引にぶち破って殴り飛ばした。

 

「ほんとに効いてやがる!これって、エクスドライブの力なのか?!」

「さあね。けど手応えはある!」

「喜ぶのは後!来るよ!」

 

 巨大な紫色の光柱が上がり、膨大なエネルギーが検知される。そこから巨大な機体と一体化したシェム・ハは、まさにデウス・エクス・マキナとなっている。

 

 言うまでもない。これからが本気であるということが。

 

「我が欲したのは権威や力などではない。その先にある未来だ!」

 

 機体の真上からシェム・ハの紋章が浮かび上がり、全方位に飛来する神造生命体が大群となって出現する。

 

「随分とまあ、こんだけの数を揃えちゃって……」

「けど、今の私達なら!」

 

 輪は軽口を叩くも、勝気な様子。それは瑠璃も同じ、数で負けようともそれを覆すだけの力が自分達にはあるから。

 

 神造兵器達が一斉に赤い光線を掃射する。響はそれを弾き、両腕のバンカーユニットを展開、腰部と脚部のブースターを全開にして突貫。翼も逆立つ髪を振り上げ、それを振り下ろすと蒼炎が放たれ、神造兵器の群れを堕とす。

 クリスは巨大な銃を構え、その銃口から極太のレーザーを発射、大型の神造兵器を撃ち抜く。

 

 輪の方も、巨大化したチャクラムをそれぞれの手に持ち、自身の体を高速回転。巨大な竜巻となって周囲の神造兵器を風圧で蹴散らす。

 

「シェム・ハ!」

 

 そんな中、冷たい闇の瞳をした瑠璃が巨大な二叉槍を振り下ろす。小型の鏡を今度は大量に配備、強固なバリアを展開して迎え撃つ。

 

「私達は、地球と人類の未来の為に……」

「そうだ。我らであっても独立した個を備える以上、擦過して激突する。特に……貴様はな」

 

 エレキガルとしての問いに、シェム・ハは憂いた様子で答える。

 

「私が……?」

「アヌンナキは命の創造を司る。だが貴様は相対、破壊と闇の化身。言わば……悪魔だ!」

「……っ!」

 

 エレキガルは、その強大かつ異質な力を持っていたが故に、同じアヌンナキ達から疎まれ、暗い闇へと追いやられた。

 

「故に、目論んだのだろう?蹶起を、戦争を!」

「どうしてそれを……!」 

 

 孤独にのたうち回り、もがいていたかの日から抜け出したくて全面戦争を企てた。まるでそれを見透かされているかのように突きつけられる。

 

 横から神造兵器の光線に狙われ、攻撃をやめて回避に徹してシェム・ハから距離を取る。

 

「まさか……」

「だが、失望したぞ。あの男の存在が、お前を変えてしまったのだからな。神とはちゃんちゃら……」

「つまり、私が戦争を仕掛けても仕掛けなくても、あなたは最初から……!」

「そうだ。我は、この実験場にて個の統合を試み、夢と見た!」

「個の統合……っ!」

 

 これが答えと言わんばかりに神獣鏡の光線が放たれる。だがその間をキャロルが割って入り、そのまま四大元素によって相殺される。

 

「キャロルちゃん?!」

「呆けるな!」

 

 キャロルにどやされ、再びシェム・ハと対峙するはずだった。

 

「いない……?!」 

「うわあぁっ!」

 

 悲鳴がする方を向くと、シェム・ハと一体化している神獣鏡の機体が、エネルギーシールドを展開させ、まるで戦艦のような形態となって、響に直接体当たりを食らわせている。

 

「響ちゃん!」

 

 すぐに助けに行こうとするが、目の前の神造兵器の群れが盾となって、行く手を阻む。

 

「退けえぇ!」

 

 二叉槍の穂先を高速回転させると、巨大なドリルのように前進。目の前を阻む神造兵器の群れに風穴を空ける。

 

「誰もが痛みに傷付き、分かり合えぬ夜に涙しない未来の為に!」

「今度はちゃんと言葉にしたい!」

「分かり合う事すらままならぬ不完全な言葉にか?その言葉で伝えられぬお前達への同じ想いを秘めていたからこそ、この依代は刹那に我を受け入れたというのに!」

 

 シェム・ハの目に浮かび、零れた涙。まるで未来の意思を映し出すように。

 

「未来が……?!」

 

 信じられぬ事実に驚愕を露わにするが、機体にエネルギーが集約され、加速していく。

 

「それでも!だとしても!」

 

 瑠璃が吠え、投擲した二叉槍が機体の頭上を直撃する。槍の威力は凄まじく。機体の加速が相殺され、吹き飛ばされた響は翼が受け止めた。

 

 瑠璃の中にあるエレキガルの魂にも、その想いがあった。

 大切な人がいた。自分に忠を尽くし、支えてくれた一人の男がいた。だが自身はそれを言葉に出来なかった。

 

 シェム・ハの真意を知った瑠璃もまた、エレキガルの意思を表すかのように一筋の涙を流す。だが、それでも瑠璃はシェム・ハと対峙する。

 

「それでも私はあなたを止める!たった一人、誰にも分かってもらえずとも、私を信じて戦い、生き抜いたコーダの為にも!」

「笑止。ならばあの時と同じように……」

「同じじゃない!今の私には共に唄い、共に戦ってくれる仲間がいる!」

 

 瑠璃の後ろからマリア、調、切歌が駆け巡る。

 

 大量の鋸をチャクラムのように投擲、大鎌の刃を放ち、蛇腹剣が鎖のように3種の刃を連結、合体した巨大ロボットを完成させる。

 ロボットはそのままエネルギーを纏いながら、シェム・ハを乗せた機体を殴り、爆発する。

 

「今が好機だ!」

 

 キャロルの号令で一斉に応える。

 

 

「「「「「「「「「オーバーブレイズ!!」」」」」」」」」

 

 

 9人が同時にエネルギーを増大させ、一斉に飛び立つと、そのエネルギーは一つとなって絡み合い、シェム・ハの機体に激突する。

 

 9人のパワーを乗せた拳によって、耐えきれなくなった機体は所々で爆発する。だが、装者達の方も増大するエネルギーに耐えきれず、ギアのアーマーが少しずつ崩れようとしている。

 

 だがそれでも、チャンスは今しかない。全ての思いをシェム・ハにぶつけて届かせる。

 

 

 

 

「呪われた拳で、私を殺すの?」

 

 

 

 

「っ……!」

 

 シェム・ハが憑依している、未来の容姿、声で響に訴えかけた。それが響に一瞬の躊躇いが生まれてしまう。当然、それを見逃すシェム・ハではない。

 

 すぐにシェム・ハの眼に戻り、ほくそ笑むと巨大な爆発が起こる。その衝撃で装者達は吹き飛ばされ、岸壁に叩きつけられて、そのまま地面へと落ちた。

 

「っ!ヤバい!みんな立って!」

 

 輪の声で皆が空を見上げると、強大なエネルギーが渦を作っている。その中心の光があるのは、天高く掲げられたシェム・ハの右手。

 

「無粋に足掻く!だが散り際は、白銀に煌めくがいい!!」

 

 全てを白銀に変えてしまう埒外物理の光線が放たれた。もはや避けるだけの力は残されていない装者達のいる大地から爆炎が生じる。

 

 だが中では……

 

「……はっ!」

 

 響の目の前にいたのは、巨大なバリアを展開し、仲間を守るキャロルと輪の二人。

 

 錬金術とフィーネの力によって、バリアは黄金に煌めく強力なバリアとなり、白銀の光は弾かれ、それらは周囲にの墓石や木々達を白銀へと変えていく。

 

「キャロルちゃんと、輪さんが……黄金錬成?!」

 

 錬金術であるキャロルはともかく、錬金術のれの字も知らない輪までもが黄金錬成をやっている。目の前で起こっている事態に、響は信じられない表情で目の当たりにする。

 

「何故お前までもが……?!」

 

 隣で共に黄金錬成を行っているキャロルも、これには理解出来なかった。だが、そんな事は輪にとって問題ではない。

 

「錬金術だろうが何だろうが、私は大事なものを守りたい!」

「ただの人間が黄金錬成とは……賞賛に値する。だが、その脆弱な肉体では、待つのは自壊だけぞ!」

「輪!!」

 

 ラピスのファウストローブにスパークが生じる。キャロルから分け与えられた錬金術のエネルギーがいよいよ尽きようとしている。

 

 さらにフィーネのバリアを最大まで引き出した上に黄金錬成。それが自殺行為に等しいのは、誰の目から見ても明らか。それでも輪は諦めようとしない。

 

(どうしてか……分からないんだけどさ……。一度でいいから、全部気にしないで、思いっきり歌えたらって考えちゃうんだよね……)

 

 目を閉じて思い返す。切っ掛けは何だったのか、思い当たるとしたら、あの日のライブだった。

 

(あの日、初めて行ったあのライブ、ツヴァイウィングの歌は、最高な輝きだった。私もいつか、あんな歌が唄えたらって……!)

 

 瑠璃の方を振り返る。

 

 

「後は……頼んだよ……!」

「輪……」

 

 

 最後になってもいい。二度と唄えなくなっても構わない。輪は再びシェム・ハに向き合い、かの歌を口ずさむ。

 

 

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el baral zizzl…… 

 

「まさか諸共に……?」

「輪……もうやめて……。お願いだからこれ以上は、唄ってはダメえええぇぇ!!」

 

 瑠璃が涙を流しながら叫ぶが、輪は振り返ることなく唄い続ける。

 

 バリアから黄金の光線が放たれ、白銀の光線に拮抗する。

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el zizzl……

 

 唄いきった輪の口角から漏れる血。

 

 絶唱が終わると、バリアから黄金の光線の出力が跳ね上がり、完全に押し返す。不利と悟ったシェム・ハが身体を逸らすも、頭部のヘッドギアに掠り、その箇所が黄金になる。

 

「最後の最後で……アイツは錬金術を……っ!」

 

 ドサリと倒れる音。力を完全に使い果たした輪が纏うファウストローブが強制解除され、地を這っている。

 

「輪!!」

 

 瑠璃が輪に駆け寄る。仰向けに起こすが意識もなく、心臓も動いていない。

 

「ぁ……ぁ……。嫌だ……!嫌ああああぁぁ!輪!!」

 

 目の前で親友が動かなくなり、瑠璃の悲鳴が真紅の空に響く。

 

「落ち着け、風鳴瑠璃!」

 

 キャロルにどやされ、泣き止んだ。

 

「裏切り者はオレの手で繋いでみせる。 だから……」

「忌々しい」

 

 シェム・ハが倒れた輪を見下ろしてそう吐き捨てる。

 

「だが、自分の全てを燃やし尽くしたようだな」

 

 力が有り余っているシェム・ハに対し、装者達のダメージは甚大。まともに立ち上がる事すらままならない。

 

「ここまでなの……?!」

「否、ここからだ!」

 

 シェム・ハが右腕を水平に広げると、大地が揺らぎ始め、装者達の悲鳴があがる。

 

 本部にもその災害は観測されており、ブリッジにはアラートがなり止む気配がない。

 

「惑星規模の地殻変動を確認!これは……!」

 

 友里がモニターを確認すると、ユグドラシルの枝から展開されたブースターが一斉噴射している。

 

「ユグドラシル球殼からの推進噴射によって、地球の公転速度が加速しています!」

 

 惑星そのものを動かすユグドラシルの力の前に、本部であろうが戦場で戦う装者達ですらそれを止める術はない。

 

「さあ、還るのだ。5000年の在るべき形へ」

 

 シェム・ハの背後に浮かぶ月が影に覆われていく。すると、マリア、調、切歌の身体を紫色の燐光に覆われ、光の粒子が放出されていく。

 

 それは翼とクリスにも同じように表れている。それだけでなく、日本全土どころか世界中の人間にも同じ現象によって、全ての意思が消失する。

 

 シェム・ハが引き起こした月蝕によって、全人類の命はシェム・ハに集まっていく。

 

「太陽放射による接続障害を抑制、ここに生体端末のネットワークは構築される。全人類に忍ばせた全ての命の力を統合し、一にして全なるシェム・ハにて陵辱してくれる」

 

 もはやシェム・ハによる改造は誰にも止められない。たった二人を除いて。瑠璃と響が真っ直ぐシェム・ハを見る。

 

「神殺しと……エレキガル!その力で接続より免れたか?!」

「元々ユグドラシルは、私が作った装置。接続を回避する手段はいつでもしてある!」

 

 すると、瑠璃の左の薬指に装着された指輪が、藍色の光を放つ。

 

「それは、分かたれた槍の……!」

 

 アルベルト、もといコーダが死に際に遺した最後の切り札。それを天高く掲げると、瑠璃の身体は光に包まれる。

 

「この波動……共鳴、戦慄……まさか貴様!」

「悲しき物語によって分かたれた二つの槍が、ここに一つとなる!」

 

 

 光の中から、僅かに藍色を残した白いインナースーツは神装束を思わせる姿となった瑠璃が再び現れる。

 

 その手には完全聖遺物として蘇った二叉槍、禍々しくも神秘的なエレキガルの槍がある。言うなれば、エレキガルの真の姿。

 

「どこまでも我を阻むか!エレキガル!」

「何度だって、何千年になろうとも!」

 

 神獣鏡のアーマーが鞭のようにしなり、瑠璃に襲いかかるも高く飛び立ち、二叉槍で弾く。

 

「槍によって我を剥がそうとも、この身体が人の身である限り、我は何度でも再臨する!」

「そんな事は百も承知!だから!」

 

 瑠璃の頭上より現れた響がシェム・ハに殴り掛かる。

 

「私は未来を……取り戻す!」

「まさか?!だが、その拳は呪いの積層 神殺し!撃てばこの身を殺して殺す!」

「殺さない!」

「っ!」

「お父さんが教えてくれた!呪いと祝福は裏表!あり方なんてどうとでも変えられる!変えてみせる!」

 

 右腕一本で、全ての攻撃を流す。そこに瑠璃に二叉槍を突き出され、苦悶の表情を浮かべながら回避して距離を取る。

 

「断章の全てをこの身に集めたのだ!人に遅れる道理などありはしない!」

「だったらぁ!」

 

 瑠璃が吠える。神獣鏡の光線を、真っ向から槍を突き出して分散させる。

 

「神の魂と融合した私が辿り着かせてみせる!手を伸ばし、想いに向かって届かせる!!」

 

 神獣鏡のアーマーの攻撃を全て粉砕し、道を作った。

 

「今だ響ちゃん!」

「私の想い!未来への気持ち!2000年の呪いよりもちっぽけだと、誰が決めたあああぁぁぁーー!!」

 

 響の右腕のアーマーが展開され、光が集約される。その瞬間、シェム・ハに集まった全ての命が分断、在るべき所へと帰った。

 

「っ!神殺しではない……!今のは……!」

 

 エレキガルを忌々しく睨む。瑠璃のエレキガルギアを介して、バーニング・エクスドライブ∞に秘められたエレキガルの力が起動した。

 

 シェム・ハによって集められた命は全て分離され、持ち主へと戻って行った。

 

「取り戻す……取り戻す……」

「未来を……」

「私達の……」

「明日を……」

「この星の……明日を!」

 

 全世界の人類の想いが一つとなった。だがそれだけでなく、その想いが響の拳に全て集約された。

 

「ネットワークに障害が?!おのれ……!」

 

 全ての目論見が、生前に己が手で殺したはずのエレキガルによって阻まれ、怒りの形相が露になる。

 

 きっと、取り戻すんだ……!」

「それはとっても大切な……!」

「本能が求め叫んでる……!」

「誰にも等しくあるために……!」

「その手に重ね、束ねるんだ立花、瑠璃……。お父様が見せてくれた人の価値を!輝きを!」

 

 束ねた光は響の右腕に集まるが、それでもシェム・ハは足掻く。神獣鏡の光線を放つも、そうはさせるかと瑠璃が槍の穂先から放った黒白の光線で、小型の鏡を全て撃ち落とした。

 

「バラルの呪詛が消えた今!隔たりなく繋がれるのは神様だけじゃない!」

「束ねているのは、この星全ての人間の、想い!」

「それは神殺しなんかじゃない!繋ぐこの手は私のアームドギアだ!」

 

 瑠璃が槍を投擲し、最後に残ったエレキガルの想いまでもを乗せて、響の右手に宿り、右腕のアームと槍が合体する。

 

 シェム・ハも、全ての武装が壊された今、最後の力で漆黒の波動を放つ。

 

 響の握った拳が開き、掌で受け止めた波動が打ち砕かれる。

 

「「「「「「未来(ミライ)を!!」」」」」」

「「未来(ミク)を!!」」

 

 

 

 

 奪還する為にいいいいぃぃぃーーー!!

 

 

 

「まさか……?!本当に呪いを上書いて……?!」

 

 

 シェム・ハの光線を押し切った響の掌が未来に届き、その身体を抱きしめた。

 

 

 

【METANOIA】

 

 

 シェム・ハの悲鳴が断末魔へと変わり、憑依していた未来の身体から排除される。シェム・ハの腕輪が真っ二つに割れ、月蝕の影とともにその魂は消滅した。

 

「そして……花咲く勇気で。私たちの大好きを、二度と手放さないために……」

 

 未来をお姫様抱っこで抱える響に笑みが浮かぶ。

 

 

 


 

 

 シェム・ハとの戦いは終わったが、まだシェム・ハが遺したユグドラシルが起動したまま。それを破壊しない限り、全てが終わらない。

 

 本部にいた弦十郎達は、すぐさま仮設の前線基地を作り、ユグドラシルの破壊を模索する。

 

 一方、気を失った未来の横に安置された輪を処置しているキャロルだったが、作業は軟膏を極めている。

 

「あの黄金錬成は、オレの思い出も使われた……。くっ……これでは先にこいつの命が……」

 

 消耗したのはキャロルも同じ。蘇生に必要なエネルギーが不足しており、徐々に輪の命の炎が尽きようとしている。

 

『キャロル……』

「エルフナイン……。聞いてくれ……」

『え……?』

「これがオレの……最後の我儘だ」

 

 そう告げると、キャロルは輪の身体に覆いかぶさった。




バーニング・エクスドライブ∞-インフィニティ-

本来のバーニング・エクスドライブに加え、エレキガルの槍によって出力が跳ね上がり、さらにエレキガルの力によって、その魂までもが聖遺物の欠片と共鳴している。

∞は輪廻転生、5000年前に死んだエレキガルの魂が現代の人間、瑠璃という少女に宿り、融合した事を意味する為につけられた。

ファウストローブ TypeΩ
ファウストローブのバーニング・エクスドライブ版。説明は上記と同様。


最終回まで、あと2話……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。