ついにXV編、そしてこの作品の最終回となります。
初めてあげたこの小説も、何度も展開に悩み、時には投げ出しそうになりました。
ですが、皆さんのお陰でこの物語も終わりを迎えることが出来ました!
改めて、ここまでお付き合い頂いた読者の方々に感謝とお礼を申し上げます!
それでは、最終回。瑠璃の物語の結末を、ご覧下さい!
シェム・ハとの激闘の果てに、人類はアヌンナキの支配より脱却した。それから1ヶ月が経とうとしている今日、積もっていた雪が解け、蕾だった桜の木に花が咲き始める。
もうすぐあたし達の卒業式。あたしは途中から編入だったけど、それでもこの学校はあたしの帰る場所として、色んなものをくれた。
だけど……あたしの隣の席は空白のままだった。
「姉ちゃん……」
あれから、未だに姉ちゃんの行方は分かっていない。
最後のアヌンナキとして役割を果たす為に、姉ちゃんは旅に出た。
遺体は見つかっていないが、生きているという報告もない。普通であればもう亡くなったものだと片付けられてもおかしくないこの状況だったが、そんなのあたしが許さない。
今度は瑠璃-ルリ-として必ず帰って来るから……約束だよ!
姉ちゃんはそれを最後に姿を消した。
「あの時と一緒だな……」
バルベルデの時も同じ事を言ったのを思い出した。姉ちゃんは、いつもあたしの前を走っていく。あたしはその背中に追いつこうと必死で走っても、いつも手が届かない。
悔しすぎる……。
だけど、あたしは信じるって決めたんだ。姉ちゃんが帰って来るのを。
けど、もうすぐ卒業式だぞ?人生でたった一度きりの、高校の卒業式。早く帰って来ないと、終わっちまうからな。姉ちゃん。
瑠璃がいなくなって1ヶ月が経とうとしている。私、出水輪は履歴書を書いている。
今この家には私一人しかいない。社会人だった小夜姉は亡くなって、この先お金は減る一方になる。
だから大学に入るお金もない。例えお金があったとしても、生活がある以上、お金は必要になる。私は大学の入学の内定を辞退して、アルバイトで生計を立てて行こうと思う。
ただ、リディアンの卒業式くらいには出ようと思う。
もしかしたら。瑠璃もその前に帰ってくるんじゃないないかって、考えてしまう。そんな保証、どこにもないのに。
「さて、何枚か書いたし、後は封筒に……」
ピンポーン、とインターホンが鳴る。
「誰だろ?はーい」
鍵を開けて玄関のドアを開けると、赤いカッターシャツを着た屈強な男。もう誰だか分かるだろう。
「オジサン!」
「すまない輪君。上がってもいいか?」
そう言われて少し戸惑ったけど、履歴書を隠した後にオジサンを案内した。適当なお茶と菓子を出していると……
「不摂生な食事だな。それに部屋の雰囲気も暗いしな」
「デスよねー」
インスタント食品に頼った食生活がゴミ箱でバレてしまう。切歌のモノマネじゃないけど、これはもうそう言うしかない。
「クリス君から聞いたぞ。ここの所、お前さんの様子が変だとな」
「まあ、色々ありましたし。とりあえずは何とか生きてますから」
「そうか……」
オジサンの表情が暗い。無理もないか。大切な娘が姿を消したってなったら……
「実はな輪君、君に謝らなければならない事がある」
「はい?」
私、オジサンが謝るような事をした覚えがない。瑠璃の事で何かあったのか、気になっていると……
「小夜君はな、君が戦っている事を知っていたんだ」
「……うぇっ?!」
まさかの衝撃的事実が暴露された。
「それどころか、君が二課時代から外部協力者としているのも、シンフォギアの存在についても知っていたんだ」
「シンフォギアまで?!え、でも小夜姉ってただの看護師じゃ……っていうか、小夜姉の仕事を紹介したのってオジサン……まさかあの病院って!」
「相変わらず、察しが良いな。そうだ。あの病院は、二課時代からの御用達でな。翼もあそこで治療を受けてた時も、小夜君が看護していたんだ」
確かにエルフナインが入院してたり、私と響が入院した時、大体小夜姉が出てきてたりしてたような。
「輪君が絶唱で病院送りになった時、物凄い剣幕で迫られたな」
その時まで遡る。瑠璃が絶対の破壊神と化し、元に戻す為に輪が絶唱を使い、病院へ搬送されたあの日まで。
「弦さん、これはどういう事か説明してもろうても?」
「すまない……実は」
身長も体格も、弦十郎の方が圧倒的に上回っているが、鬼気迫る表情をした小夜の前には流石に怯んだ。
弦十郎は包み隠さずに全てを話した。
「なるほどなぁ……。瑠璃ちゃんが攫われて、輪が戦っとったんのは知ってはりましたけど……」
「本当に申し訳ない……!」
元々輪は無茶をする所があったが、まさか自分の身を嬲ってまで瑠璃を助けようとするとは思わなかった。
弦十郎はそれを見抜けなかった自分に非があると、弁解の1つもせずに頭を下げた。
「弦さん、輪は最後まで……カッコよく立ち向かってはりましたか?」
「……もちろん。輪君は、小夜君に似て度胸が据わっている」
思うところはある。だが起きてしまった事を非難しても意味が無い。寧ろ、泣いている親友に何度も手を差し伸べた輪の行いを誇らしく思った。
その時の小夜の表情は、とても穏やかで優しい姉のようだった。弦十郎はそう感じた。
「……そんな事が」
「だが……結果的に民間人の小夜君を巻き込んでしまった。助けられなかった事、本当に済まなかった」
改めて弦十郎が輪に頭を下げた。
「オジサン!も、もう……その件に関しては良いって……!」
もう済んだ事を再び頭を下げられて戸惑う。もう良いのに……。
「それで輪君、これから先はどうするんだ?」
「そうですね……。小夜姉が亡くなって、学費も払えないんで、どこか就職を……」
「いや、それはダメだ!」
言い終える前にオジサンに止められた。
「こんな事で、君の将来が閉ざされるなんて事はあってはならない!君は大学に行くべきだ!」
(あ、あれ……何かこの流れ見た事あるような……)
リディアンに進学する前にも同じやり取りをした事があり、当時の私は不良少女に走った。目の敵にした先生からの推薦は絶望的だから、高校に進学せず働こうとしていた。
「学費なら俺が出そう。家賃の事も心配いらない」
「え、いや……でも!そこまでやったら……」
「君には将来がある。自分の可能性を、諦めてはいけない。きっと、瑠璃も悲しむ」
多分、オジサンはそれを伝える為にここに来たんだ。大人になる直前に天涯孤独となった私を助ける為に。
考えてみれば、瑠璃も大学に行くんだ。もし瑠璃が帰って来て、私が大学に行けなくなったって聞いたら……。
「ありがとう……オジサン」
学費の件は、有難くお願いした。けど、家賃についてはまだ考えたい事があるから、その件は保留になった。
オジサンも、瑠璃が帰って来るって信じてる。オジサンだけじゃない。クリスも響も、翼さんも皆、一緒だ。一番の親友が信じないでどうするんだ、私。
「ねえオジサン」
「どうした?」
「私、行きたい所があるんです。一緒に良いですか?」
オジサンにお願いして、車に乗せてもらった。向かった先は、あの日……瑠璃と一緒に、こと座流星群を見に行った公園。
時間は夜の9時。オジサンの運転で公園に辿り着いた私達。何でここに来たのか……もしかしたら、瑠璃が帰って来るのだとしたら、ここなんじゃないかって思った。
そう考えたら、私はどうしても行きたくなった。
「やはり来たか、出水」
「つ、翼さん?!」
何と、翼さんがこの公園に来ていた。翼さんだけじゃなく、クリスに響、未来にマリアさん、調に切歌もいた。
何でここが分かったのか、オジサンの方を見るが、どうもオジサンも皆がここに来た事に驚いている。多分、喋っていない。
「お前が向かうとしたら、ここなんじゃないかって思ってな。それで皆と集まってたんだ」
クリスには見抜かれていた。
「ここが……」
「瑠璃先輩と、輪先輩の思い出の場所なんデスか?」
「……そうだよ。全てはここから始まったんだ」
事情を知らない調と切歌の為に、あの日の事を私は話した。
「瑠璃先輩、ノイズがいたのにそっちにいっちゃったんデスか?!」
「結構無鉄砲……」
「だよね。私、何度も声を掛けたのにそのまま突っ走っちゃってさ……」
あの時の瑠璃は、翼さんの歌が聞こえて向かった。何かの導きかは分からない。もしかしたら、瑠璃の中に眠っていたエレキガルの魂が、翼さんの歌に反応したのかもしれない。
「皆!見て!」
響が夜空を見上げた響が空を指す。皆が夜空を見上げると、流れ星が墜ちていった。
「綺麗……」
流れ星の美しさに魅了された調は、素直な感想を述べる。マリアさんがふと疑問を投げかける。
「今日って、流星群が観測される日だったかしら……?」
「分からない。だが……」
「ああ……この景色を、姉ちゃんに見せてやりたかった」
この神秘的な光景を前に、難しい事はどうでも良くなっていた。
パシャッと、私がカメラを構えて写真を撮る。撮った写真をフォルダを開いて確認する。
「瑠璃、見てる?アンタが守った空……こんなに輝いているんだよ」
この場にいない
「やっと、最高の夜空写真が撮れたのに……それなのに……」
やはり瑠璃がいないと、私の写真は完成しない。涙が溢れないよう我慢してたけど、もう堪えきれなくなった。
「どこをほっつき歩いてるんだよおぉーー!もう卒業式は目前なんだぞぉぉーー!聞こえてるんだったら、早く帰って来てよぉ!瑠璃いぃーー!!」
心の底から、思い切り叫んだ。こんな事をしても、瑠璃は帰って来ないと分かっているのに、叫ばずにいられなかった。私は涙を拭う。
もう今日は諦めて帰ろう……そう思った時。
「あの……」
「どうしたんだ?」
未来が何かに気付いたのか、クリスが問う。
「あの流れ星なんですけど……」
未来が指した夜空を掛ける流れ星。まるで生きているかのように、その輝きは大きくなって……
「何だか、近すぎませんか?あの流れ星」
「え?あ、確かに言われてみれば……」
流れ星の向きがおかしい。さっきまで遥か彼方を飛んで行ったのに、何故か……っていうか、よく見るとこっちに向かって来てる?!
「ヤバいヤバい!流れ星がこっちに来る!」
皆が驚愕を露わにする。オジサンが私達の前に立って、拳を構える。
「いやいや!オジサン、まさか……」
「稲妻を食らい、雷を握り潰す!それさえきっちり出来れば、俺でもあれくらいを……っ?!」
オジサンが拳を握って構えた直後、流れ星は向きを上昇させ、そのまま頭上を通り過ぎて行った。
流れ星がまるで大砲のように地上に着弾し、その破壊力と衝撃と、全容が肌に伝わる。
「あれは……一体……」
「っ……まさか!」
「待ってクリス!」
クリスが走り出すと、輪も走り出した。他の面々も、遅れまいと二人の後を追う。
流れ星とぶつかったのか、木々に破壊された痕が残る。それのお陰でどこに向かえばいいのか、ハッキリと導いてくれた。
私達は、この道に走ったその先を見ている。きっと、その先にいるのかもしれない。期待を胸に走る。
そして、やっと追いついた。あたし達が向かった先に、女の子が一人立っている。そいつは、S.O.N.G.の制服を着ている。
黒い髪は、肩に僅かに届く程度の短さ。そいつが振り返ると、右の目尻にある特徴的な黒子。
「あ……っ……」
あたし達は、その笑顔を見られて思わず涙ぐんだ。
どれだけ旅をしただろう。
愛するものと別れて、器となる少女を見つけるまで5000年、私は眠り続けた。
戦いは終わり、人類は独立を果たした。後は私の魂が還るだけ。呪われた運命から少女を解放した。
人間の少女と1つになった私の魂は、再び自由となって飛び立った。
やがて肉体はあの少女と同じ形となり、2本の足で歩けるようになった。自由に手を伸ばせるようになった。
この旅の終着点は、人間達の知る世界ではない故に、何処にも見つからない。
だからこそ、彼はここで待ち続けた。
誰の手にも及ばない、神さえも知らない、この夜空に。
「見つけたよ……。やっと、会えたね」
光り輝く魂に手を差し出し、その手に乗せて天に掲げた。
「もう、あなたを独りにしない。これからずっと……私達は一緒に……!」
魂は光に包まれた。その光は人の形となって再構成、私のよく知る白髪の青年の姿。私が、ただ唯一愛した人。
「見つけてくれて、ありがとうございます。主」
「コーダ……」
愛しい人の名前を、何不自由なく呼べる。それだけでも嬉しくなる。
「もう、私達を束縛するものはない」
「ええ。この時を、ずっと待ち望んでおりました」
コーダが跪くと、私の手の甲にそっと口ずけをしようとするが……
「違うでしょう?」
「え?」
私もコーダと同じ高さに合わせる。そして、私の唇を、コーダのそれとそっと重ね合わせた。
少しの間に流れる沈黙。それは、私達の愛の深さを記す証。その後、私達の唇は離れる。
「じゃあコーダ、行きましょう」
「行くって……どちらヘ?」
立ち上がった私は、少女達が見上げる空を見下ろして眺める。
「この星の未来……これから歩んでいく、私達すら知らないヒカリで作られた歴史を……!」
二人が旅立つ先は何処か、それは神さえも知らない。だだ、二つの魂は夜空に煌めく星となって、この星に生きる一人の少女に
数奇な運命に導かれ、時には絶望にのたうち回る事もあるだろう。
それでも、家族を愛し、友を愛し、仲間を愛した少女。
みんなと交した約束を果たす為に、少女は帰って来た。
「みんな……ただいま!」
その笑顔は、夜空に煌めく星のように輝いていた。
これにて、戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星 完結でございます!
読んでいただき、ありがとうございました!