戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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G編開幕となります!

ただ瑠璃は諸事情により岩国へは行けず特訓中。
何故だろーなー。


G編
女王の蜂起


 ルナアタックから数カ月の時が過ぎた。

 ノイズを呼び出し操作する聖遺物、ソロモンの杖をアメリカの研究機関から召喚されたウェル博士と共に岩国にある米軍基地に護送する作戦が行われている。

 だがその場に瑠璃はいなかった。

 

 

 少し遡る

  

 

 ソロモンの杖護送作戦に選ばれなかった瑠璃は弦十郎に抗議していた。

 

「お父さん、私も戦えるのに、なんでお留守番なの?」

「ここでは司令と呼べ。」

 

 瑠璃はバイデントの装者として正式に二課に加わったが、まだ経験と実績が足りない状態でこのような重要任務に連れて行かせるわけにはいかなかった。

 よって瑠璃は東京で待機させる事が決まった。

 

「瑠璃には俺の特別メニューを熟してもらう!だが心配するな!瑠璃の戦い方に合うアクション映画を用意した!」

「このオッサンやっぱりアクション映画しかねえじゃねえか!」

 

 

 正直な所、弦十郎は瑠璃の二課入りについて不本意だった。

 瑠璃はまだ全ての記憶が戻ったわけではない。

 瑠璃が戦う事で過去の記憶が蘇り、傷つくのではないかと不安視していた。

 しかし、瑠璃は自らの意思で志願した。

 であれば親として、瑠璃の意思を尊重し、正式にバイデントの装者として二課に登録させた。

 他の装者達の反応はというと、響は盛大に喜び、翼も仲間として快く受け入れたが、クリスだけは複雑な心境だった。

 思う所はあるが瑠璃は一度決めた事を捻じ曲げることはしない。

 だからクリスも何も言わず、瑠璃と共に戦うと決めた。

 

 そして二課入りの翌日から瑠璃は弦十郎主導、輪のサポートの下、自宅でトレーニングをしている。

 

「そうではない!稲妻を食らい、雷を握りしめて穿つべし!」

「うん……つまりオジサンどういう事?」

 

 響の時と同じ、アクション映画を鑑賞しその八極拳を習得しようとしている。

 ただ瑠璃は、響が弟子入りする前から多く映画を見ており、さらに動体視力の良さも相まって飲み込みが早く、会得にも時間は掛からなかった。

 そして、ここからが響とは異なる訓練法だった。

 重りをつけた2本の竿をバイデントの槍の代わりに振り回すものだという。

 簡単に言うがこれは非常に重く、油断すれば竿に振り回されてしまう。

 

「身体の軸がブレているぞ!得物に振り回されるな!」

 

 弦十郎の訓練は厳しいが、瑠璃は決して逃げ出さない。

 努力も甲斐あって、翼との模擬戦では良い線まで行っている。

 

「流石司令の子女ですね。この短期間で、翼さんと渡り合っていますね。」

「ああ。後は精神的な問題だな。」

 

 緒川は感心していたが、弦十郎の懸念通りのシチュエーションが起きた。

 

『蒼ノ一閃』

 

 翼が大刀を振り下ろすと、刃状のエネルギー刃が瑠璃を襲う。

 だが瑠璃はあろう事かそれに怯んでしまい、Shooting Cometが出す瞬間を逃し、避ける事も遅れてしまった事で正面から受け止めざるを得なくなった。

 相殺しきれずに弾き飛ばされ、壁に打ち付けられてしまい、そのまま翼の勝利となった。

 今の瑠璃は敵の咄嗟の攻撃に対して反応出来ず、怯んでしまう為に避けるという選択肢を消してしまい、そのまま直撃してしまうという事が多い。

 戦士としては致命的な弱点となってしまう。

 

 翼は倒した瑠璃に歩み寄り、手を差し伸べる。

 

「やるようになったな、瑠璃。だが、最後のあれは頂けないな。」

「そうだよね。つい……。」

「焦る必要はない。瑠璃は装者になって日が浅い。その内、苦手な事も必ず出来るようになる。落ち込む必要はないぞ。」

「うん。」

 

 差し伸ばされた手を握り返し、立ち上がる。

 瑠璃の当面の課題は決まった。

 

 そしてソロモンの杖護送作戦一週間前、瑠璃は弦十郎に連れられて山中にいる。

 

「お父さん、こんな所で何をするの?」

「なに、特訓だ!」

 

 意図が読めない瑠璃は首を傾げる。

 森の中のある場所で待機するよう言われると、瑠璃はそこで待った。これから何をするのか、予想がつかない。

 若干不安になってきた所で弦十郎が戻って来た。

 

「よし、ではこの先にある小屋まで走ってもらう。だが道中に障害物を全方向から投げる。それを避けるか、押し返せ!」

「え?それってどう……うわぁっ!」

 

 聞こうとする前にいきなり投げてきた。

 丸太はロープで括られおり、それを弦十郎と緒川が瑠璃を狙って投げている。

 いきなり殺意高めの投擲物をしゃがむ事で避けたが、それは偶々であって対応出来たとは言えない。

 

「いきなり丸太って危な……」

「次来るぞ!」

「痛あぁっ!!」

 

 言い終わる前に後ろからやかんが飛んできた。後頭部に直撃し、痛い所を押さえる。

 

「ボサッとするな!訓練中だって事を忘れるな!」

 

 今度は大型タイヤが襲ってくる。

 瑠璃は咄嗟に前転をした事で事なきを得た……が立て続けに丸太が襲来する。

 一度避けられても二度連続となると対応出来ず飛ばされてしまう。

 さらに容赦なくぶん投げられる為、避ける為に逆走してしまいゴールから離れて行ってしまう。

 

「逃げるな瑠璃!押し返せ!」

「押し返せってそんな無茶な〜!」

「無茶じゃない!目を背けるな!立ち向かえ!翼やクリス君を守れるのはお前だけだ!」

 

 その檄に反応したのか、一瞬だけ目付きがツリ目に変わる。

 腰に力を入れ、吹っ飛ばれないように構えて、正面から来た丸太を受け止めた。

 

「司令、今の……」

「ああ。やりやがった……。」

 

 のではなく二つの掌底で丸太を真っ二つに割ってしまった。

 

「出来た……出来たよお父さん!やったよ!」

「喜ぶのは早い!まだだ、続けて行くぞ!」

 

 瑠璃は喜ぶ間もなく特訓を続けるが、今ので自信がついたのか、障害物を捌けるようになり、ゴールへと到達した。

 最初の時と比べるとみるみると成長を遂げていき、大型タイヤを両手で受け止め、丸太を掌底でかち割りっていた。

 それを見ていた輪はというと……

 

(瑠璃、どんどんオジサンみたいに常人離れし始めてるなぁ……。)

 

 瑠璃だけは装者の中でも今まで最も普通の女の子らしかったのだが、とうとう瑠璃も逸脱し始めた事にショックを受けるスタッフがいるということを輪は知っている。

 しかし、こればかりは瑠璃が選んだ事なので口出しするのはナンセンスというもの。

 今まで通り、瑠璃を見守っていこうという方針を取った。

 

 

 

 そして護送作戦当日に戻る。

 今日は弦十郎がいない為、山中のコースを走り込みをしている。

 輪も共に走り、ゴールまで辿り着いた。

 

「はぁ……はぁ……やった……。」

「キツかった……。」

「っていうか……何で輪も走ってるの?」

「良いじゃん……そんなの……。」

 

 二人とも息絶え絶えで仰向けで大の字になる。

 

「お疲れ様でした。」

 

 二課のスタッフに起こしてもらい、スポーツドリンクを貰いそれを飲み干すと二人は下山した。

 今日QUEENS OF MUSICのライブがあり、特別招待席に招待されているが、その前に汗を流す為に、瑠璃の自宅で入浴している。

 輪が瑠璃の背中を洗っている。

 

「付き合ってもらってありがとう、輪。」

「良いって良いって。でもさ、本当に瑠璃も戦うんだよね……。怖くないの?」

 

 輪の瑠璃の背を洗う手が止まる。

 本当を言えば戦ってほしくない、傷ついてほしくない。

 

「うん。怖くないって言ったら嘘になるけど、私はクリスやお姉ちゃん、皆を守りたい。それに私だけ何もしないで待つだけは嫌だから……。その……」

 

 上手く言い表せず言葉に詰まってしまった。

 待ちかねた輪が瑠璃の背中を強く叩く。

 

「しっかりしろ瑠璃!あんたは自分が思ってるより強い子なんだよ?ルナアタックやオジサンの特訓だって乗り越えたじゃん。もっと自分に自身を持ちなよ。」

 

 輪が激励をくれた事で、瑠璃に笑顔が戻る。

 

「ありがとう。」

「いえいえ〜。じゃあ背中流すよ〜。」

 

 背中を流すと、瑠璃の背にある痣や痛々しい傷痕が露わになるが、輪は見慣れている為、何も言わない。

 

 入浴が終わり、身体を拭いて髪を乾かし終えると、二人は私服に着替えた。

 

「そう言えば、響とクリスはまだ任務終わってないのかな?」

「予定だとそろそろ終わると思うけど……大丈夫かな……。」

 

 時計の時刻を見て不安になる瑠璃だが、輪は心配していないようだった。

 

「妹でしょ?信じなよ。」

「うん。」

「私達は一足先に行こう!」

 

 忘れ物がないかしっかり確認した上で二人は家を出て、ライブ会場へ向かう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 今回のライブ、QUEENS OF MUSICにはイギリスへの移籍が決まった翼とデビュー2ヶ月で全米ヒットチャートNo.1を叩き出した、女王 マリア・カデンツァヴナ・イヴのコラボステージが目玉とされている。

 予約席の抽選の倍率は凄まじく、チケットも当然即日完売。

 特別招待席には未来、弓美、創世、詩織も呼ばれていて、響とクリスもこちらに向かっているそうなのだが、まだ到着していない。 

 

「まだビッキーたち、まだ来ないの?メインイベントが始まっちゃうよ?」

「うん……」

 

 未来が肩を落とす中、興奮が押さえきれない弓美と輪はサイリウムを構えている。なお、ライブは撮影禁止なので、ハンドバッグの中にしまっている。

 

「せっかく風鳴さんが招待してくれたのに、今夜限りの特別ユニットを見逃すなんて」

「勿体ないよね〜あの二人も。」

「本当ですよ!アニメみたいに期待を裏切らないんですよ~あの子達ったら!」

 

 その時、瑠璃の通信機から通信が入った為、一旦退室しようとする。

 

「ちょっとごめんね。」

「オジサンから?」

「うん、すぐ戻るよ。」

 

 特別席から退席し、人気のいない通路で通信する。

 

『瑠璃、そっちはどうだ?』

「大丈夫だよ。それより、どうしたの?態々こっちを使うなんて、余程のこと?」

『ああ、実を言うとな、岩国の米軍基地で再びノイズが出現した。』

「え?!それで大丈夫なの?」

 

 一度大きな声を挙げてしまったが、小声で再び通信する。

 

『響君達は無事だ。だが、岩国の方は最悪だ。兵士達はノイズの攻撃の被害に遭い、ソロモンの杖が行方を眩ませた。ウェル博士の姿もな。』

 

 恐らくウェルもノイズの攻撃に晒され炭素化されてしまったのだろうと考えると、守れたかもしれない命が失われた事に悔しさを滲ませる。

 瑠璃は未だに戦士としては3人よりも未熟な為、中々出撃させてもらえない。自分にも力があるのに、使わせてくれない事が不本意でいる。

 

『瑠璃、良いか。この先また戦いが起こるだろう。今回は間に合わせる事が出来なかったが、必ずその力が必要となる。だから今は楽しめ。こちらを心配する必要はない。』

 

 今のは二課の司令としてではなく、父親としての言葉だった。

 

「うん。分かった。始まっちゃったからすぐに……」

 

 だが既に挙がっていた歓声が悲鳴に変わった事に気がついた瑠璃はアリーナ席がある方を振り返る。

 

『どうした?!』

「分からない。ちょっと見てくる!」

 

 通信を繋いだまま特別室に急いで戻る瑠璃。

 

「どうしたの?!」

「瑠璃!あれ!」

 

 ガラス越しに見下ろすと瑠璃は驚愕を隠せなかった。

 

『瑠璃!今何処にいる?!』

「お父さん、今特別席にいる。けど、下にノイズが……!」

『ああ、こちらでも把握している!』

 

 観客席を囲うようにノイズが出現しているという恐ろしい光景だった。

 

「ノイズは私がやる!今から……」

『駄目だ!今手を出せば観客にまで被害が及びかねない!』

「そんな……。どうするの?!」

『今は動くな。』

 

 そう、よく見るとこのノイズ達は人間が目の前にいるにも関わらず襲って来ない。つまり、このノイズ達は統率されている。

 

「まさか近くにソロモンの杖を……」

『狼狽えるな!!』

 

 ステージ中にマリアの声が響いた。

 

 ステージには動揺しているがギアのペンダントを手に握る翼と、冷静でいるマリアが立っている。

 

「怖い子ね。この状況にあっても私にとびかかる気を窺っているなんて。でもはやらないの。オーディエンスたちがノイズからの攻撃を防げると思って?」

「くっ……!」

 

 その発言からノイズを呼んだのはマリアである事は明白だった。

 

「それに……」

 

 全世界に中継されているカメラの方に向ける。

 

「ライブの模様は世界中に中継されているのよ?日本政府はシンフォギアに関する概要を公開しても、その装者については秘匿したままじゃなかったかしら?ね?風鳴翼さん?」

 

 脅しとも取れる挑発。

 ルナアタック後、櫻井理論は世界に開示されたがその装者までもは開示されていない。

 今ここで翼がギアを纏えば、それが世界に中継されてしまう。

 そうなれば歌手活動生命を絶たれたも同然となる。

 だが翼はその挑発に臆するどころか余計に闘志を燃え上がらせている。

 

「甘く見ないで貰いたい。そうとでも言えば、私が鞘走るのをためらうとでもおもったか?!」

 

 翼は剣を模したマイクをマリアに突きつけた。

 それを見たマリアは笑った。

 

「あなたのそういうところ、嫌いじゃないわ。あなたのように誰もが誰かを守るために戦えたら……世界は、もう少しまともだったかもしれないわね」

「何だと?マリア・カデンツァヴナ・イヴ、貴様は一体……」

「そうね……そろそろ頃合いね。」

 

 観客席の方に向くマリア。そして高らかに宣言する。

 

「私達は!ノイズを操る力をもってして、この星のすべての国家に要求する!」

「世界を敵に回しての口上?!コレはまるで……」

「宣戦布告……」

 

 特別席にいる瑠璃がその答えを呟く。

 

「そして……」

 

Granzizel Bilfen Gungnir Zizzl……

 

「まさか?!」

「その詠唱は……?!」

 

 Gungnir 二課のメインモニターからもアウフヴァッヘン波形を感知し、映し出される。

 

「ガングニール……だとぉ?!」

 

 

 弦十郎が叫んだ言葉通り、マリアはガングニールを纏った。だが配色は響のものとは異なり、紫を基調とした黒で、マフラーではなく黒いマントを纏っている。

 

「黒い……ガングニール……」

 

 特別席にいる瑠璃、ヘリで会場に向かっている響が同じタイミングで呟いた。

 

「私は、私達はフィーネ。そう……終わりの名を持つものだ!!」

 

 マイクを再び手に、高らかに宣言した。




結構駆け足で始まりましたが……今後の展開どうしようか……。

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