戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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早速ウェルさんには身体を張って貰いましょう。


冥槍と烈槍

 武装集団フィーネの正体、それが再臨したフィーネが率いていると発覚した二課では弦十郎が信じられないような形相でモニターを見ていた。

 

「またしても先史文明期の亡霊が、今に生きる俺たちに立ちはだかるのか……。俺たちはまた戦わなければならないのか……。了子君……!」

 

 運命の悪戯とはよく言うものであろう。

 外ではフィーネを名乗ったマリアを、響はまだ信じられずにいる。

 

「嘘ですよ……。だってあの時、了子さんは……」

 

 胸の歌を信じなさい。

 最期に響に託すように散ったフィーネ。

 だからこの様に、再び敵として相対する事になったのが信じられない。

 だがそんな響をお構いなしにウェルが言う。

 

「リインカーネイション。」

「遺伝子にフィーネの刻印を持つものを魂の器とし、永遠の刹那に存在し続ける輪廻転生システム……!」

「そんな……じゃあ、あのアーティストだったマリアさんは?」

「もうどこにもいない……そういう事になる。」

 

 そんなマリアであるが、ゲージを死守したとはいえ目に映る敵の装者は三人で数的には圧倒的に不利。

 さらにその内の一人はバイデントを纏っており、その強さはアリーナでの戦いで学んだ為、まともに相手にするわけにはいかない。

 だがそう考える内に水柱が発生し、そこから翼が現れた。

 脚部のバーニアを起動させ水面上を駆け、マリアに斬りかかる。

 

「お姉ちゃ……ぅっ……!」

 

 翼の加勢に行こうとするが、適合率低下によるギアのバックファイアのダメージが残っており、立っているのがやっとだった。

 

「待てよ!いくら姉ちゃんでもそんなボロボロで助太刀に行っても!」

「マリアがここにいるって事は、少なくともあの二人が来ちゃう!」

 

 前回は詰めたと思った矢先に調と切歌に奇襲を掛けられた。現在二人は何処にいるのか不明だがいつ現れてもおかしくない。

 それに気がついたクリスは、瑠璃を抱え潜水艦上まで移動しようとするが、いきなり瑠璃を担ぎ出し、更にその体勢が前から見たらギアの露出も相まって尻丸出しのような状態になっている。

 

「うわぁっ!ちょっと、クリス?!」

「行くぞ、しっかり掴まってろよ姉ちゃん!」

 

 そう言うと、クリスは瑠璃を抱えて潜水艦上へ移動し、響とウェルを連行する形で潜水艦上へ移動した。

 

 翼とマリアの一騎打ちは潜水艦上へと移動しており、その余波が艦内にも伝わっている。

 このままでは被害が大きくなる為、倒すのではなく、振り払う方向へ切り替えた。

 翼は逆立ちの状態から脚を広げ、駒のように高速回転すると、足のブレードを展開して回る剣のようにマリアを攻撃する。

 変則的な攻撃でマリアの体勢を崩したが、そんな事は知らんと言わんばかりに、マントで弾き返され転倒してしまう。

 

「マイター……っ!」

 

 今度は反撃しようとしたマリアだが、突然投擲してきた黒槍をマントで弾き返す。

 

「そっちのターンなんて迎えさせない……!」

「ずっとあたしらのターンだ!」

「やはり来たか!バイデントの装者!」 

 

 クリスに降ろしてもらった瞬間に、黒槍を投擲していた瑠璃だった。

 

「無茶はしないでお姉ちゃん!あの時足をやられたでしょう?」

 

 マリアに横槍を入れられた時、右脚をやられていた事を瑠璃は見ており、翼は十分とは言えない状態で戦いに臨んでいた。

 翼は立ち上がると、刀を構える。

 

「瑠璃、共に参るぞ!」

「了解!」

 

 適合率低下が懸念されているとはいえ、二人でなら勝機は十分にある。

 当然二人は潜水艦損傷を避ける為に振り払う方向で戦いに臨む。

 瑠璃は左前腕のアームを白槍に展開させると、高く飛びかかり、左手に持って白槍を突き出すと同時に翼は刀を水平に振るう。

 マリアはガングニールを突き出して白槍の穂先を受け止め、刀はマントで弾く。

 だが瑠璃は右手をクイッと動かすと、マリアが弾いた黒槍の穂先がマリアに向かい、そのまま突撃するも、刀を弾いた勢いをそのままに黒槍も払う。

 だがマントの守りが間に合わない内に瑠璃は飛び蹴り、マリアはガングニールで受け止めるも、後ろに下がる。

 固い防御を何とか一瞬の隙を狙って崩す事は出来たが

 

「何とイガリマアアァァーー!!」

 

 上空から切歌と調がこのタイミングで奇襲を掛けてきた。

 マリアへの攻撃で後退させた時、クリスとの距離も同時に離れてしまい、付け入る隙を与えてしまった。

 瑠璃はしまったとクリスの方を振り返るが、この隙をマリアは見逃さなかった。

 

「余所見とは呑気ね!」

 

 先程の仕返しと言わんばかりに蹴り飛ばされ、壁に背中を打ち付けてしまう。

 しかも瑠璃の懸念通り、切歌がソロモンの杖を持つクリスを狙った。

 今のクリスはソロモンの杖で片手を塞がれ、さらに苦手な白兵戦に持ち込まれてしまい、苦戦する。

 響もウェルを取り返され、交戦している。

 次第にクリスは懐に入られ、左の脇腹を蹴り飛ばされてしまい倒される。

 ソロモンの杖が宙を舞い、調が響との交戦を振り切ってキャッチしようとした時だった。

 

「そりゃぁっ!」

 

 ブーメランのように舞うバイデントの黒槍が、ソロモンの杖を弾き、さらに高く宙を舞う。

 

「響ちゃん、クリスをお願い!ちょっと……失礼します!」

「ちょ、何を……ぐふぇっ!」

 

 瑠璃はウェルの肩を踏み台にして高く飛び、切歌も調のツインテールのアームを足場に跳躍する。

 二人の手がソロモンの杖に向かって伸び、もう少しで届く所……

 

「があぁっ!」

 

 何と上空から降りてきたジャンヌが瑠璃の背中にタックルし、ソロモンの杖を奪取されてしまう。

 瑠璃はそのまま艦上に強く叩きつけられてしまう。

 

「瑠璃さん!!」

 

 クリスに駆け寄った響が叫んだ。

 

「ジャンヌ……!」

「グッドタイミングなのデス!」

「調も切歌も、ナイスコンビネーションだったわ。」

 

 ジャンヌは二人に笑みを見せ、ソロモンの杖を調に渡す。

 

「これがバイデントの装者か。」

 

 気を失った瑠璃の頭を掴むと、顔を隠しているバイザーを破壊して顔を確認する。

 

「え……。」

「デデっ?!あいつにそっくりデス!」

 

 調、切歌、ジャンヌは瑠璃が風鳴という名字であるにも関わらず、顔がクリスにそっくりである事に驚いた。

 

「何でデスか?!まさかドッペルゲンガーデスか?!」

「さあね。でも一先ずバイデントのギアは返してもら……」

「瑠璃さんを放せえええぇぇ!!」

 

 ジャンヌが瑠璃の響が真正面から殴り掛かって来た。

 咄嗟の特攻で調と切歌は反応が遅れ、防ごうとするが弾き飛ばされてしまい、ジャンヌも身を翻して避ける。

 響は同時に瑠璃を抱えて助け出すと、高く飛んで再びクリスの背に立つ。

 同じタイミングでクリスが意識を取り戻して立ち上がる。

 

「あなた達はいったい何を?!」

 

 響が問いただすと調が答える。

 

「正義では守れないものを守るために。」

 

 言い切ると突然上空からエアキャリアが出現し、ローターから発生した強風が煽る。

 

 ジャンヌがウェルを抱え、調がソロモンの杖を手にし、エアキャリアから降ろされたロープを4人は掴んで離脱した。

 

「クソったれぇ!」

 

 このままみすみす逃してたまるかと、ボウガンをスナイパーライフルに可変し、スコープを覗き見てエアキャリアを狙って構える。

 

 【RED HOT BLAZE】

 

「ソロモンの杖を返しやがれ……!」

 

 ロックオンして引金を引こうとした瞬間、エアキャリアの姿が忽然と消えた。

 

「何だと……」

「クリスちゃん……」

 

 イチイバルでも捉えられず、二課の方でも反応途絶してしまい、これ以上探すのは不可能と判断される。

 

 

 一方、エアキャリア内の操縦席にいるナスターシャのコックピットに、赤い石柱、つまりギアのペンダントが装着されている。

 この中に聖遺物の欠片が入っている。

 

 

(神獣鏡の機能解析の過程で手に入れたステルステクノロジー……。私達のアドバンテージは大きくても、同時にはかなく、脆い……)

 

 突然咳き込むと、口元を抑えていたナスターシャの手に血が着いていた。

 最早残された時間がないという証拠だ。

 

「急がねば……はかなく脆いものは他にもあるのだから……」

 

 エアキャリアに搭乗した5人だったが、アジトを押さえられてしまった事に腹を立てたジャンヌがウェルの胸ぐらを掴んで殴った。

 

「まんまとアジトを嗅ぎつけられるという下手を打つとはな、Dr.ウェル!」

「連中にアジトを押さえられたら、計画実行までどこに身を潜めればいいんデスか?!」

 

 切歌もジャンヌと同じくウェルに怒りを向けるが、マリアに制止される。

 

「おやめなさい。ジャンヌも……こんなことをしたって何も変わらないのだから。」

「だがマリア……」 

「驚きましたよ。謝罪の機会すらくれないのですから。」

 『虎の子を守れたのが勿怪の幸い。とは言え、アジトを押さえられた今、ネフィリムに与えるエサがないのが我々にとって大きな痛手です。』

 

 ナスターシャから小型モニターを介して話す。

 調はネフィリムの方を見る。

 

「今は大人しくしてても、いつまたお腹を空かせて暴れだすかわからない……。」

 

 ここで立ち上がり、得意げに襟を正すウェル。

 

「持ち出した餌こそ失えど、全ての策を失ったわけではありません。」

 

 この時、装者のペンダントを見て下卑た笑みを浮かべていた。




咄嗟に出た大胆な行動でウェルの怒りを買わなきゃいいんですが……
 
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