ジャンヌが素早く接近すると、瑠璃は黒い槍で薙ぎ払うように迎撃、がジャンヌは跳躍して避け、飛び蹴り。
白槍の柄で受け止め、押し返す。
(速い……!目で追えなかった……!偶々槍で防げたけど……次が来る……!)
距離が開いてもジャンヌは素早く走り出し、再び瑠璃に蹴りを入れようとするも、それを避けた瑠璃は逆に蹴り飛ばそうと足を振るうが、ジャンヌが踵でそれを相殺、回し蹴りで瑠璃を吹き飛ばす。
(痛ぁっ……。ただの蹴りのはずなのに、威力が違う……!)
瑠璃は立ち上がると再び槍を構えて、ジャンヌに襲い掛かる。
両者ともに引けを取らない勝負だが、生身の人間が装者と渡り合っている事に不自然さを感じた翼。
「奴は、シンフォギアを纏っていないにも関わらず、ギアと渡り合っている?!」
「姉ちゃんだって装者の端くれだ!こんな奴に押されるわけが……まさか!」
生身の少女がギアと渡り合うならギアを上回る力は一つしかない。
それをウェルが得意げに話す。
「今頃気づきましたか!彼女は唯一完全聖遺物を操る者!かつてギリシアの神が纏ったとされる神速の靴、タラリアをねぇ!」
完全聖遺物タラリア、彼女の足に纏う神の具足。
速さは勿論これで空を跳躍する事も可能にしており、ジャンヌの蹴り技を強靭的なものにしている。
当然まともにくらえば装者と言えどただでは済まない。
(早い……肉眼じゃ捉えきれない……けど!)
瑠璃はバイザーの反応と持ち前の動体視力を頼りに、ジャンヌの蹴り技を的確に捌く。
後ろからの攻撃もすぐさまに振り向いて、穂先で相殺、さらに回り込まれて回し蹴りをされても、柄で受け止め押し返す。
タラリアの弱点はただ速いだけ、動きさえ読めてしまえば攻撃を捌くことは容易であり、言ってしまえば走るのが速くなるだけで、ソロモンの杖やネフシュタンの鎧のようにこれと言った特殊な搦手はない。
先程まで痛めつけられていた瑠璃だが、それでも粘り強くジャンヌと勝負を繰り広げている。
「ならば……これでどうだ!」
瑠璃のいる方へ虚空に蹴り出すと、その衝撃波がそのまま瑠璃に襲い掛かる。
連結した槍の穂先にエネルギーを集約し、それを突き出すとエネルギー波を放った。
【Shooting Comet:Twin Burst】
衝撃波とエネルギー波が共に相殺され、再び打ち合いとなる。
タラリアとバイデントがぶつかる摩擦で火花が散り、戦いの余波が響く。
だが敵はジャンヌだけではない。
ネフィリムが二人を目掛けて襲い掛かってきた。
瑠璃とジャンヌはネフィリムの不意打ちを避け、再び距離が開く。
ウェルが邪悪な笑みを浮かべている辺り、こちらに行くよう誘導したのだろう。
ジャンヌがウェルに憤慨する。
「何のつもりだ?!戦いの邪魔をするな!」
「邪魔とは失礼な方ですね。せっかく手助けしたというのに……」
「黙れ!私の手で彼女を倒し、バイデントを纏わなければ、メルが報われない!」
調が零した少女の名前、メル。
「ねえ、メルって何者なの?もしかして、バイデントと関係ある?」
瑠璃がジャンヌに問う。
「大アリだ!メルは……妹は元々バイデントの適合者だったんだ!」
以前のバイデントの適合者であったメル、彼女はジャンヌの妹であり、既にこの世から去っている。
肌見放さず持っているロケットにある写真、それは幼き二人の思い出が唯一残った光だった。
そこにバイデントの適合者が二課にいると知った。
あり得ない……何故バイデントはメルではなく、その者を選んだのか理解出来なかった。
故にバイデントをこの手に掴み、メルの手向けとする為に今戦っている。
だがネフィリムが乱入し、瑠璃を執拗に攻撃を仕掛けている以上、二人の勝負どころではない。
「きゃあぁっ!」
ネフィリムのパワーに押され、吹き飛ばされた瑠璃はカ・ディンギルの壁に背を強く打ち、気を失う。
「姉ちゃん!この……っ!」
クリスは姉の仇討と言わんばかりの形相でクロスボウを構えたが、飛びかかった時の衝撃でクリスも吹き飛ばされてしまう。
「瑠璃!雪音!」
翼がクリスと瑠璃に駆け寄るが、それに気を取られていた隙にノイズの粘着液の餌食となり、身動きが取れなくなってしまう。
「Dr.ウェル!貴様私の勝負に横槍を……」
「手に入れたかったのでしょう?呪われたギアを。なら効率良く奪った方が楽ではないですか。」
ウェルの言っていることは正しいのだが、それはジャンヌの矜持に反する行為である。
ジャンヌは米国政府が隠蔽した月の落下から世界を救うた為にナスターシャと共に蜂起に参加した。しかし、結果はどうか?
やっている事はテロリズム、そして今しているのはだまし討ち、これでは自分が何の為に戦ってきたのかも理解できなくなってしまう。
動ける装者が響だけになってしまった以上、一人でネフィリムと戦うしかない。
パワーだけのネフィリムに響の重く、かつ速い攻撃が入りまくる。
「ルナアタックの英雄よ!その拳で何を守る?!」
ウェルが何か言っているが気にしない。
ネフィリムを転倒させ、迫るノイズを蹴散らす。
「そうやって君は!誰かを守るための拳で、もっと多くの誰かをぶっ殺して見せるわけだぁ!」
だがこの言葉が刺さったのか、響の中で調に言われた偽善という言葉が蘇る。
その精神的なダメージが攻撃にも移り、弱く振るった左手の拳がネフィリムに噛み千切られてしまう。
「へ……?」
失った左腕から舞う鮮血。
「立花ああああああぁぁぁぁ!!」
翼の悲鳴に似た叫び声が木霊する。
「あ……ぁ……ああああああぁぁぁぁぁ!!」
「いったああああああぁぁぁ!!パクついたあああぁぁぁ!!シンフォギアを、これでえええぇぇ!!」
左腕を失い錯乱する響に対して、ネフィリムが一部とはいえギアを食らった事を喜んでいるウェル。
ネフィリムはガングニールを食らったことで進化を迎える。
「聞こえるか?覚醒の鼓動!この力がフロンティアを……」
「Dr.ウェル!!」
ジャンヌはウェルの人とは思えない言動に今度ばかりは我慢の限界を迎えた。
「何故怒るのです?ネフィリムは我々の計画を成就させる為の……」
「黙れ!貴様の行い、もはや目に余る!」
ジャンヌもこんな形は望んでいなかった。
敵とはいえギアを人ごとネフィリムの餌にするなど正気の沙汰ではない。
「ゥ……ゥゥ……」
だがジャンヌは響の様子がおかしい事に気付く。
響の心臓に宿るガングニールの破片が輝き出し、そこから響の身体を黒い闇が包み込まれた。
そう、再び響は破壊衝動の闇に飲み込まれ、暴走した。
さらに、響は失った腕を新たに生やすように再生させた。
「な……腕が……!」
「ギアのエネルギーを腕の形に固定?!まるでアームドギアを形成するように……!」
ジャンヌも翼も、今起きている事態に驚いている。
このタイミングで瑠璃は意識を取り戻した。
「ぅ……あれ……私……。」
「瑠璃!」
「お姉ちゃん……?ってこれ……動けない?!」
気がついたら粘着液で絡め取られてしまっていることに驚いていたが、正面で起きている事態を見る。
「あれは……響ちゃん?!何であの時みたいに?!」
「瑠璃!バイデントの槍でこのノイズを破壊しろ!」
「う、うん!」
粘着液の餌食にならずに済んだ二本の槍を遠隔操作で、ノイズと粘着液を斬ると拘束から解放された。
同じタイミングでクリスも意識を回復させた。
「ぅ……何だってんだ……?あいつ、また無茶しやがってんのか?!」
「瑠璃!雪音!立花を止めるぞ!」
「当たり前だ!」
「うん!」
響は暴走すると、先程までの苦戦が嘘のようにネフィリムを一方的に嬲った。
ウェルがそうはさせまいとソロモンの杖で大型ノイズを召喚したが、たった一撃で葬られ、そのままネフィリムへの蹂躙を再開した。
ネフィリムの身体を貫き、その心臓を引き抜き、それを放り投げると一撃でネフィリムの身体を破壊した。
これに恐怖したウェルは逃亡し、ジャンヌはマリアからの通信で戦線離脱する。
この時、ジャンヌは響達を見て暗い顔になっていた。
響は逃げ惑うウェルに興味を示さず、味方である三人の方を見る。
「立花!」
「お前には黒なんて似合わねえよ!」
「響ちゃん!正気に戻って!」
響は三人に襲い掛かるが、瑠璃が槍を連結させて高速回転から発生させたエネルギーの竜巻で迎撃する。
【Harping Tornado】
だが響は怯むどころかそのまま突っ込み、懐に入る。
「しま……」
攻撃をくらいそうになるが、クリスのリフレクターで守られ、翼が響に峰打ちをする。
しかし、これでも抑えきれず響の咆哮の衝撃で3人まとめて吹き飛ばされる。
「声だけで……こんなに……」
「相変わらずのバーサーカーっぷりだ!」
だがもう満足したのか響は黒い闇から解き放たれ、ギアを纏う以前の姿に戻り倒れた。
オリジナル聖遺物追加しました。
ギアとまともにやり合うには完全聖遺物しかないですね。
【瑠璃の楽曲 G編】
STAR TO STAR
仲間を、絆を守る為に装者となった瑠璃の決意と守れるにはどうしたらいいのか葛藤をイメージしたもの。
ご感想お待ちしております。