戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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今回は遅れた分少し長めになります。

また誤字脱字の報告をいただきました。
本当にありがとうございます!
 



悔しさが残る戦い

 響はメディカルルームで目が覚めた。

 ツヴァイウィングのライブの惨劇から生き残った後、響は同級生から組織的かつ陰湿な虐めに遭った夢を見た。

 あのライブで亡くなった数の内、ノイズの災害で亡くなった数が全体の3分の1で、残りは避難経路を巡った将棋倒しによる圧死、暴行によるものだったと知ったメディアが報道すると、まるで正義と言わんばかりの言葉で被害者のバッシングが始まった。

 それを皮切りに、主にネットリテラシーの無い一般人が正義の断罪者のように心無い言葉で罵倒し、遂にはみんながそう言っているから、という理由で便乗した愚かな人々が正義という名の暴力で痛めつけていった。

 響も被害者の一人であり、最初は心配されていたが同級生のサッカー部キャプテンがたまたま同じライブにいて、ノイズによって将来を奪われてしまった。

 それだけなら何ともなかったが、そのガールフレンドが響が生き残った事にヒステリックに喚いたのがきっかけだった。

 それから響は同級生から心無い言葉で罵倒され虐めの標的になってしまった。

 さらに響の父親の取引先の社長令嬢がノイズによって亡くなり、響の生存を喜んだという知らせを耳にした社長によって取引を白紙にされてしまい、さらに他の部署へたらい回し、腫れ物に触るかのような扱いを受けた。

 そのストレス積もりに積もって、ついに響の母親に手を挙げてしまい、遂に蒸発してしまう。

 その時の記憶が悪夢となって見る事がある。

 だがそれでも挫けなかったのは親友である日だまりが支えてくれたからだ。

 もし彼女がいなかったら、今頃響は違う未来を辿っていただろう。

 だがどの道、その傷は瘡蓋の様に残り続ける。

 響の身体に浮かび上がった、ガングニールの破片のように。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 響が目が覚めたと聞いた瑠璃は、その様子を見に来た。

 

「もうあれから何ともない?」

「大丈夫ですよ!ご飯いっぱい食べて、未来と触れ合えば完全回復です!」

 

 最後のやつは置いておくとして、本当に大丈夫そうであると確認した瑠璃はひとまずホッとした。

 

「響ちゃん、ただでさえ無茶が多いから、あまり未来ちゃんに心配かけちゃ駄目だからね?」

「もちろんですとも〜。」

 

 響の無事を確認した瑠璃はメディカルルームを後にして、弦十郎に報告して、帰ろうとした時翼と会う。

 

「立花の具合はどうだ?」

「いつも通りの響ちゃんだったよ。」

「そうか……。」

 

 翼の表情に翳りが差す。

 

「どうしたの?」

「何でもない。瑠璃、立花の日常を任せる。」

「え?どういう事?」

「戦わせるな、という事だ。」

 

 翼は何も告げず、そのままメディカルルームへと向かった。

 翼の言われた事が理解出来ないまま、そのまま帰宅した。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その頃、逃亡していたウェルは逃げ疲れたのか既にボロボロだった。

 研究者は研究が本業なので戦っていないのだからそれくらいでヘロヘロになるなと言うのが無茶である。

 一応迎えには来てくれるようなのだが今にも死にそうな程にフラフラしている。

 だがそこに光明が差し込んだ。

 

「き、ひひひ……こんな所にあったのかぁ……ネフィリムの心臓……!」

 

 それは響がネフィリムの身体からえぐり出しゴミのように捨てたネフィリムの心臓だった。

 それを見つけた途端、ウェルは絶好調と言わんばかりのテンションになる。

 

「これさえあれば……英雄だぁ……!」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 装者達は全員学生であり、出動がない時は平穏な学園生活を送っている。

 下校中、響、未来、瑠璃、輪、弓美、詩織、創世はお好み焼き屋ふらわーに向かっている。

 

「しっかしまあうら若きJKが粉モノ食べすぎじゃないですかね〜。」

「旨さ断然トップだからねぇ。おばちゃんのお好み焼き。」

「確かに……。何であんなに美味しいんだろう……?」

 

 弓美と響の話に、瑠璃は顎に手を当て考える。

 

「私らもすっかり虜だもんね。」

「お誘いした甲斐がありました。」

 

 創世曰く、響がここの所元気が無いと未来が心配になっていたようで、そこで響を誘い、ついでに偶々通りかかった瑠璃と輪も誘ったということだそう。

 そんなこんなでうら若きJKの他愛もない話で盛り上がっていた時だった。

 突如車が道路を曲がりきれずガードレールにぶつかり大破、爆発する。

 

「な、何?!」

「私が見てく……あっ。」

 

 瑠璃がその先にいるウェルを見つけた。

 恐らくウェルはソロモンの杖を持っている、であればみんなを巻き込むわけには行かない。

 

「輪、みんなを安全な場所まで!響ちゃんも!」

 

 そう言うとウェルの方へ走っていった。

 響を戦わせるな、という翼の指令を思い出した。

 意味は今でも分からないが、翼は冗談は言わない。

 きっと何か理由があると踏んだ瑠璃は響を戦いから遠ざけた。

 

「ウェル博士!」

「バイデント装者……!よりによってお前かぁぁ〜!!」

 

 ウェルはソロモンの杖でノイズを召喚する。

 

 Tearlight Bident Tron……

 

 ギアを纏うと二本の槍でノイズの殲滅に掛かる。

 ジャンヌとの戦いに負けられない、みんなを守りたいという思いを背負って鍛練を積んできた。

 その努力の結集が実を結んでおり、ノイズに抜かれる事なく確実に倒している。

 ノイズを全滅させた瑠璃は黒槍の穂先をウェルに向けて勧告する。

 

「ウェル博士!これ以上罪を重ねる必要はありません!投降してください!」

「冗談じゃない……僕は……僕は英雄にいぃぃ!」

 

 再びノイズを召喚されるのを阻止しようと杖に向けて、黒槍を投擲する。

 だがこれを阻む者がいた。

 

「盾……?」

「なんとノコギリ。この身に纏うシュルシャガナは、 おっかない見た目よりも汎用性に富んでいる。」

 

 ウェルを回収に来た調と切歌がウェルを守った。

 

「それでもやっぱりバイデントが相手はやり辛いデス。」

 

 再び戦わなくてはならないかと、心の中で嘆く瑠璃。

 秋桜祭で楽しそうに歌い、嬉しそうにクレープを食べていた二人の笑顔を見ているから余計に辛くなってしまう。

 だが今は敵同士、瑠璃は一旦頭から離して黒槍を遠隔操作で回収して構える。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一方響は瑠璃に言われて、みんなを避難させているが、それでも戦わなくてはと考え、急に立ち止まってしまう。

 

「響?どうしたの?」

 

 急に立ち止まったのを心配する未来。

 

「ごめん未来。私行くよ。」

 

 そう言うと踵を返して、反対の方へ走っていった。

 

「響!」

 

 だが未来も追いかけてしまう。

 

「ちょっと二人とも!ああもう!みんな、先に避難してて!」

 

 輪は二人を連れ戻そうと弓美、詩織、創世にそう伝え、後を追う。

 

 

 響が到着した時、瑠璃は調と切歌と戦っていた。

 ノコギリを投擲されても、瑠璃はエネルギーの竜巻で弾き返し、切歌との白兵戦でも引けを取らない。

 短期間で、しかも2対1でここまで戦えていた。

 

「瑠璃さん!」

「響ちゃん?!何で……?!」

 

 振り返ると避難させたはずの響がいるものだから驚きを隠せなかった。

 

「瑠璃さん!私も……」

「来ちゃ駄目!響ちゃんは戦っちゃ駄目!お姉ちゃんからそう言われてるの!」

 

 翼が何故そのような事を言ったのか、響自身は理解している。

 恐らく胸の中のガングニールである事は予想出来ている。

 それでも響は戦う事を選ぶ。

 

 Balwisyall Nescell Gungnir Tron……

 

 響はギアを纏うと戦いに加勢する。

 

「響ちゃん……。分かった。」

 

 瑠璃は響の強情さに呆れながらも背中を託した。

 瑠璃は予め弦十郎からある事を聞いていた。

 マリア達F.I.S.の装者はLiNKERという薬品を使っているとの事を。

 LiNKERとは本来適合係数が高くない者がこの薬品を使う事で適合者と同等の適合係数を引き上げ、後天的にシンフォギア装者になれるというもの。

 マリアが翼との戦いで『時限式』という言葉を聞いて思い当たったという。

 天羽奏も同じくLiNKERを使用しており自分の事を『時限式』と揶揄していた。

 マリアが時限式であれば恐らく残りの二人も同じであると踏んだ瑠璃は、戦いを長引かせる事で二人がギアを纏えなくなる程度まで適合係数を引き下げさせてしまおうと考えた。

 まだその様子が見られていないのは交戦したばかりであり、このまま消耗させて勝機を見出す。

 だが響が来た以上、そのように回りくどい事をする必要はなくなった。

 早めに決着をつけてソロモンの杖を取り返す。

 

 響が来たおかげで拮抗状態から巻き返した。

 切歌を追い詰めた瑠璃が、切歌に語りかける。

 

「二人が何の為に戦うのか、少しは理解したよ。だけどこのままじゃ二人が……本当に後に引けなくなるよ。」

「同情デスか……?」

「そうかもしれないね。でも、私は心の底から二人が心配なの。だって、あんなに楽しそうに歌って、食べているなんて、普通の女の子なんだなって。」

 

 瑠璃の笑みに切歌は心が思わず揺らいだ。

 

(本当に、あたし達を……思ってくれてるデス。敵同士なのに……。)

 

 切歌は思わず俯いたその時……

 

「っ!うっ!」

 

 後からウェルに首筋に注射を打たれた瑠璃。

 瑠璃はウェルを突き飛ばした。

 

「き、急に何を……ぁ……ぐあああああああああぁぁぁぁ!!」

 

 突然瑠璃がギアのバックファイアが襲い掛かった。

 瑠璃の苦しむ悲鳴が聞こえた響と調は戦闘を中断して瑠璃の方を見た。

 

「瑠璃さん?!」

「まさか……Anti LiNKER……?!」

 

 調が呟いたAnti LiNKERとは対象者の適合係数を下げる言わばLiNKERの反対版である。

 廃病院で二課の装者達がギアのバックファイアに襲われた赤い霧もAnti LiNKERでありウェルのお手製である。

 霧状にばら撒かれた時とは違い、直接注入された事で襲い掛かるバックファイアの威力は凄まじく、瑠璃は膝から崩れて倒れてしまい、ギアが強制解除される。

 

「瑠璃さん!」

 

 響が瑠璃に駆け寄る。

 

「駄目……まだ…………私は……ぐぅっ……!」

 

 立ち上がろうとしても、バックファイアによる激痛が、瑠璃の身体を痛めつけている限り、立ち上がる事すままならない。

 さらにこれだけでは終わらない。

 ウェルは調と切歌の首筋からLiNKERが入ったガンタイプの注射で投与させる。

 

「何しやがるデスか?!」

「LiNKER?!」

「LiNKERの効果はまだ余裕がデス!」

「だからこその連続投与です!あの化け物諸共消し去るには、今以上の出力でねじ伏せるしかありません!その為にはまず、無理矢理にでも適合係数を引き上げる必要があります!」

 

 だがLiNKERは元々劇薬であり、この開発の為に何人もの犠牲者を出した。

 ウェルが改良して今より負荷は減ったものの、それは普通に投与すればの話で過剰投与などすれば薬害が発生するのは目に見えている。

 調と切歌は抗議するも今のウェルには届くわけがない。

 さらに自分を回収しにきたのもナスターシャ教授の容態が悪化している事も看破している。

 もしここで回収出来なければ今後の計画にも支障を来すどころの話ではなく、頓挫する可能性だってある。

 調は覚悟を決める。

 

「やろう……切ちゃん。マムのところにドクターを連れ帰るのが私達の使命……。」

「絶唱デスか……。」

「そう、YOUたち唄っちゃえよ!適合係数がてっぺんに届く程、ギアからのバックファイアを軽減出来ることは過去の臨床データが実証済み!だったらLiNKERぶっ込んだばかりの今なら、絶唱唄い放題のやりたい放題!」

 

 一連のやり取りを倒れて伏している状態で見ていた瑠璃はその暴挙を何としてでも止めるべく立とうとしても、身体から言うことを聞かない。

 

「駄目……そんな……こと……させられない……!」

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el baral zizzl……

 

 だがその思いも虚しく二人は絶唱を唄い始めた。

 

「これって……絶唱?!駄目だよ!LiNKER頼りの絶唱は、装者の命をボロボロにしてしまうんだ!」

「女神ザババの絶唱二段構え!この場の、見事な攻略法!これさえあれば、こいつを持ち帰る事だって……」

 

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el zizzl……

 

 唄い終わると二人のギアが変形し始めた。

 調はツインテールのアームが4本に、切歌の鎌の形状もより荒々しいものへと姿を変えた。

 だがこのまま引き下がれない響が取った行動……

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el zizzl

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el zizzl……

 

 響が絶唱を唄った。

 その瞬間、調と切歌のフォニックゲインが絶唱発動までのエネルギーが発しない。

 それによりギアの形状が元に戻ってしまう。

 

「セット!ハーモニクス!」

「まさか響ちゃん、S2CAを……?!」

 

 調と切歌の絶唱のエネルギーの流れを響が操り、自身に集約していた。

 

「二人には……絶唱を使わせない!」

 

 そして集めたエネルギーを虹色の竜巻として、上空に放った。

 だがその無茶のせいで、体力を根こそぎ持っていかれたのか動けない。

 

 調と切歌は撤退の好機と見てウェルを連れて撤退した。

 ここでクリスが到着した。

 

「おい!大丈……姉ちゃん!どうしたんだ?!」

 

 瑠璃が倒れていた事に気付いたクリスが駆寄ろうとするが、何故か周囲に高熱が生じていた。

 

「クリス、私はいい!それよりも響ちゃんが!」

 

 響の心臓部に位置する場所から石のような隆起物が発生していた。

 

「響……?」

「ちょっと未来!何で急に……え……何これ?」

 

 ここに未来と輪が到着していたが、響の様子がおかしい事にすぐ気付いた。

 特に未来は響の異常に取り乱し、駆寄ろうとするがクリスに止められる。

 

「よせ!火傷じゃすまないぞ!」

「でも響が!」

 

 するとバイクのエンジンが噴く音が聞こえた。

 翼が乗るバイクは高く飛翔し、車体前方に剣を展開させ、近くの貯水タンクを斬る。

 その斬れ目から水が流れ、その下にいる響に掛かった。

 水を掛けられたことで異常な高熱は消え、未来が駆け寄る。

 そこに翼が悔しがるように呟いた。

 

「私は……立花を守れなかったのか……!」

 

 それを聞いたクリスが翼に詰め寄る。

 

「私は守れなかった?!何だよそれ?!あのバカがこうなるとでも知ってたのか?!おい!」

 

 翼は沈黙した。

 

 未来が響を呼ぶ声が響く中、輪が倒れていた瑠璃に駆け寄った。

 

「瑠璃、大丈夫?!」

 

 輪の心配をよそに瑠璃は翼が言っていた事の意味に気付いた。

 

(まさか……響ちゃんの身体に何かあったって事……?!私は……そんな響ちゃんを戦わせて……。)

 

 守らなくてはならない者を守れず、倒れているばかりか逆に守られ、剰え命の危険に晒してしまった事に気付いた。

 

(私は……皆の足を引っ張ってばかりだ……。私のせいで……響ちゃんが……!)

 

 その悔しさを拳に乗せて、地面に叩きつけた。

 

「瑠璃……。」

 

 輪は瑠璃が悔しい気持ちで頭がいっぱいになっているのに気付くが、自分に出来る事など何も無い、そう思い知らされる。

 

 




瑠璃に焦りが……


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