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ある休日、瑠璃は輪に呼び出され公園のベンチで座って待っていた。
だが肝心の輪が見当たらない。
何かあったのかと思い、スマホで電話しようとした時、隣でカメラで撮影する音が聞こえた。
「輪……!」
「よっ、お待たせ。」
「どうしたの、急に呼び出すなんて?」
「心配してるんだよ。響の事で悩んでるんじゃないかなって。」
図星だった。
あれから瑠璃は仮設本部のシュミレーターで厳しい特訓を繰り返していた。
響を守る為にはさらに特訓しなければと考え、その内容もハードになっているが、無理のしすぎで倒れるのではと心配した輪が呼び出したのだ。
「ちょっと付き合ってよ。」
「え、でも私これから……」
「オジサンにはちゃんと許可貰ってる。つまり、瑠璃は私と遊ぶしかないのだ!さあ行くよ!」
輪は瑠璃を連れ出してデートを決行する。
ショッピングモールで買い物、軽いファッションショー、ゲーセンでプリクラなど午前中で色々周るがまだまだ輪のデート計画は続く。
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小日向未来は先日、弦十郎に呼び出され、響の身体について教えてくれた。
2年前のライブの惨劇にて胸の中に刺さったまま埋められていたガングニールの破片と人体が融合し、このまま戦い続ければ、響の肉体が食い潰され、やがて死に至る事を。
唯一助かる道は戦わせない事、未来と穏やかな生活を送らせる事で、ガングニールとの融合の速度を遅くさせる事にあると。
未来は大好きなお日様を守る為に、今日響をデートに誘った。
奇しくも同じ日に響と未来もスカイタワーでデートをしていた。
スカイタワーの中にある水族館に響と未来がいるが、響はどこか心あらずの状態だった。
(戦えば死ぬ……。考えてみれば当たり前の事……でもいつか、感覚が麻痺してしまって……それはとても遠い事だと錯覚していた。戦えない私って誰からも必要とされない私なのかな……。)
考え込んでいると首筋から冷たい缶ジュースが当てられ、思わず絶叫する。
「大きな声を出さないで。」
「だ、だって!いきなり冷たいジュースくっつけられたら誰だって声が出ちゃうって!」
差出人である未来が不機嫌になる。
「響が悪いんだからね?」
「え?私?」
「だってせっかく二人きりで遊びに来たのに、ずっとつまらなさそうにしてるから……。」
「あ、ごめん……。」
そんなつもりはなかったのだが、未来にそう思わせてしまった響は謝る。
「ごめん……。でも心配しないで〜!今日は久々のデートだもの!楽しくないはずがないよ!」
未来は心配するが響はそんな事はお構いなしにデートを続ける。
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一方スカイタワーの上階にある会議室ではナスターシャが乗る車椅子を押すマリアがいた。
何故ここにいるのか、それは先日フロンティアを浮上させる為に神獣鏡を用いて封印を解こうとしたが、出力が足りず、月の落下による衝突を回避させるという計画が絶望的であるとナスターシャが判断した。
「私達がやってきた事は、テロリストの真似事に過ぎません。真に成すべき事は、月がもたらす被害をいかに抑えるか、違いますか?」
つまり、今のF.I.S.では月の落下から世界を救えないという意味である。
そこに黒服を着た米国エージェントの男達が入ってきた。
それに驚くマリア。
「マム、これは……?!」
「講話を持ちかける為に召集しました。Dr.ウェルには通達済みです。さあ、これから大事な話をしましょう。」
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瑠璃と輪はレストランで早めの昼食を楽しんでいた。
「ねえ、次はスカイタワーに行かない?」
「良いけど……あれだけ周ったのに疲れないの?」
「何言ってるの?瑠璃とデートなんていつぶりだと思ってるの?最近瑠璃っては装者になってから構ってくれないし、何より今、結構思いつめてるでしょ?少しでも息抜きしないと、本当にポッキリいっちゃうぞ?」
途中、我儘を混ぜながら、脅しではないが忠告をする輪。
「確かに……そうだね。あれから強くなろうとしても、ただ我武者羅にやってるだけで、強くなった感じもしないし……。クリスとあまり話せてないし……。」
「はぁ……。流石双子。変な所もそっくり。」
ため息をついて呆れる輪。
「あんたって、変な所で意地を張るよね。」
「そ、そんな事は……無いよ……。」
「いいや、あるね。瑠璃、あんたは一人で響を守ろうとしてる。けどね、一人で出来る事なんてたかが知れてる。そこに気付けてないんだよ。あんた、言ったよね?あんたの強みは、仲間と繋ぐ絆の力だって。」
「絆……?」
ずっと強くなろうとして、久しく聞いていなかった言葉。
瑠璃が一番大事にしているもの、それが絆。
「呆れた……まさか忘れてるとは。いい?絆っていうのは、目に見えないものだけど、実はよく見ると見えるものなんだよ。以前の瑠璃なら、ちゃんと分かるはず。」
「見えるようで見えないもの……。」
とは言っても抽象的すぎてあまり分かっていないようだった。
「まあ今分からなくても、そのうち分かるよ。多分忘れてるだけだよ。よし、ランチ終わり!さ、スカイタワー行こう!」
二人は会計を済ませてレストランから出るとスカイタワーへ向かった。
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スカイタワー上階の会議室ではF.I.S.と米国エージェントの講話交渉が行われていた。
マリアが異端技術のデータを黒服の男に渡し、男は懐にしまう。
「異端技術に関する情報、確かに受け取りました。」
だがその途端、男達はナスターシャとマリアに銃口を向ける。
「あなたの歌よりも、銃弾ははるかに早く、躊躇なく命を奪う。」
「初めから足り引きに応じるつもりはなかったのですか?」
「必要なものは手に入った。あとは不必要なものを片付けるだけ。」
だがそういう展開に限って不義理を働く者は大抵碌な最期を迎えない。
突然窓から襲来した飛行型ノイズによって、データを受け取った黒服の男がその身体を貫かれ、二度と母国の地に足を踏む事なく炭となって消えた。
さらにヒューマノイド型のノイズも隙間から入り込み、他の黒服達に襲い掛かる。
スカイタワーの隣のビルでソロモンの杖を持っていたウェルがコーヒーを飲んでいた。
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ノイズ出現は外からでも把握できた。
それを見た人々はパニックになって逃げ出す。
「輪、避難誘導をお願い!私は……」
「分かった!でも気を付けるんだよ!」
瑠璃は走り出すと、弦十郎から通信が入った。
『瑠璃、スカイタワーの中にまだ避難が終えていない市民がいる。その中に響君と未来君がいる。』
「そんな?!」
思わぬ偶然に立ち止まってしまう。
『さらに、スカイタワー内でガングニールの波形が確認されている。』
「まさか響ちゃんが?!」
『いや、響君は纏っていない。恐らくはF.I.S.のものだ。』
それに関しては一先ず安堵するが、ノイズを殲滅しないと響がガングニールを纏ってしまう。
『翼とクリス君も向かわせている!決して無茶はするな!』
「了解!」
再び走り出してギアのペンダントを握る。
Tearnight Bident Tron……
ギアを纏って、連携した槍を箒のように乗りこなすと、スカイタワーの上部にある展望台の天井に降り立ち、槍を二本に分解、それを同時に遠隔操作で飛行型ノイズを蹴散らす。
【Assault Pisces】
上空のノイズを全て片付けると、ノイズによって空けられたと思われるガラスの穴から侵入する。
そこは会議室であり、既に炭素化してもなお、人間の腕や足の形が残っており、ほんの僅かに焦げ臭いがする。
バイザーを展開して、ガングニールの反応をキャッチするとルートに従い進んでいく。
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マリアはナスターシャを抱え、スカイタワーからの脱出を図っているが、ノイズと米国エージェントからの追撃に加え、一般人が巻き込まれないように守っている。
米国エージェントはマリアとナスターシャを抹殺する為ならば一般人の命など顧みる事はせず、サブマシンガンを撃ちまくる。
マリアはマントを盾として防ぐ事が出来るが、他の一般人は撃ち抜かれてしまい、目の前で命を落とした。
「私のせいだ……!全てはフィーネを背負いきれなかった……私のせいだああぁぁーーー!」
怒りの咆哮のまま、米国エージェントをマントで叩き伏せ、蹴り飛ばし、ガングニールの槍で叩きつける。
刺殺してはいないが、穂先が返り血を浴びる。
悔しさと自責の念に苛まれ、震えるが
「マリア・カデンツァヴナ・イヴ!」
後からバイデントを纏った瑠璃が追ってきた。
「このノイズは……あなたの仕業なの?!この人達は……?!」
瑠璃の問いに答える事なく、穂先からレーザーを放つ。
【HORIZON†SPEAR】
急に繰り出してきた砲撃を瑠璃は連結させた槍の穂先で突くように相殺させる。
爆風から発生した煙に巻かれ、それが晴れるとマリアの姿が消えていた。
「司令、マリアを発見、交戦しましたが逃げられてしまいました。」
『そうか。瑠璃、そのまま響君と未来君を回収してくれ。』
「了解。」
廊下を走り、響と未来を探す。」
いつの間にか失ったものを取り戻せるのか。
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