それと近頃誤字脱字が多くなってしまった……。
本当に気を付けなければ……。
エアキャリア内に集まったF.I.S.だったが、ここに来て結束に綻びが生じていた。
何も知らされていなかった切歌と調に、ウェルはナスターシャが密かに米国と講話しようとした事、それが失敗し追われたこと、そしてマリアにフィーネの魂が宿っていない事を皮肉混じりに話した。
マリアはずっと二人を騙していた事を謝ったが……
「マリアがフィーネでないのだとしたら……じゃあ……」
切歌の気になる事を遮ってウェルは話を進める。
「僕に計画を加担させる為とはいえ、あなた達を巻き込んだこの裏切りはあんまりだと思いませんか?せっかく手に入れたネフィリムの心臓も無駄になるところでしたよ。」
切歌はナスターシャに問いただす。
「マム……マリア……ドクターが言っていることなんて嘘デスよね……?」
ナスターシャは何も告げず目を逸らしたが、マリアが肯定した。
「あのまま講話が結ばれてしまえば、自分達の優位性が失われる事を恐れた。だからあなたはノイズを召喚し、会議の場を踏みにじって見せた。」
ナスターシャの言葉にウェルはメガネをかけ直し、僅かに混じる悪い笑みを浮かべる。
「嫌だなぁ……悪辣な米国の連中からあなたを守って見せたというのに。このソロモンの杖で!」
「貴様!」
ソロモンの杖をナスターシャの方に向けるとジャンヌが声を荒げ、切歌と調がナスターシャを守る様に庇うが、マリアはウェルを庇った。
マリアの予想外の行動にジャンヌ、切歌と調は信じられず、動揺する。
「マリア、何のつもりだ?!」
「どうしてデスか?!」
ウェルは高らかに笑う。
「ふははは!そうでなくっちゃぁ!」
輪の言葉が蘇る。
(生半可な気持ちであんなテロ紛いの事をしたって事でしょう?)
生半可な覚悟では世界は救えない、彼女から改めて悟ったマリアが決断した。
「あの子の言う通り、偽りの気持ちでは世界は守れない。セレナの思いを継ぐことなんて出来やしない!すべては力!力を持って貫かなければ、正義をなすことなんてできやしない!世界を変えていけるのはドクターのやり方だけ!ならば私は、ドクターに賛同する!」
マリアの決断に調は戸惑い、受け入れられない。
「そんなの嫌だよ……。だってそれじゃあ、力で弱い人たちを抑え込むってことだよ……!」
ナスターシャは沈黙していたが、ここで口を開く。
「分かりました……。それが偽りのフィーネでなく、マリア・カデンツァヴナ・イヴの選択なのですね?」
ナスターシャの問いにマリアは頷いた。
だがジャンヌはマリアが、家族同然の友の事が分からなくなった。
マリアは正義感が強く、目の前の困難に立ち向かい、誰からも頼られる、ウェルの言葉を借りるならばまさに英雄に相応しい人物だが、今のマリアにはそのように映らない。
(マリア……私はお前の事を……!)
今のマリアを見てられなくなったジャンヌはエアキャリアから出て行った。
だが
「ぅっ……!」
突然蹲り、右手で心臓がある場所に手を当て苦しみだした。
「今だけは……今だけは……止まるわけには……!」
すぐに痛みは収まり、エアキャリアの外装に背をもたれるように座る。
(メル……私ももうすぐそっちに行く。だけど……今のままじゃ死んでも死にきれない……!)
空を見上げ、首に下げたロケットを開けると、幼き日のジャンヌとメルが笑顔で並んでいる写真が入れられていた。
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その日の夜、クリスはファミレスまで翼を呼び出した。
クリスはナポリタンパスタを食べているが、皿から数本の麺、玉ねぎやピーマンが飛散しており、さらに口の周りもケチャップで汚れている上に左頬にマッシュルームか付着している。
「何か頼めよ。奢るぞ。」
対する翼は何も注文していない、というよる注文する気がない。
「夜の9時以降は食事を控えている。」
トップアーティストたるもの、体型の維持も欠かせないが、理解出来ないクリスは軽口を叩く。
「そんなんだからそんななんだよ。」
「何が言いたい?!用がないなら帰るぞ!」
不機嫌だった所をクリス軽口が気に入らず、怒って席から立ち上がる。
「怒ってるのか?」
「愉快でいられる道理がない。F.I.Sの事、立花の事、瑠璃の事そして……仲間を守れない私の不甲斐なさを思えば……!」
翼は先輩として、響が戦い続けてその命を失う事を恐れており、守ろうとしてもその思いとは裏腹に響がさらに戦いに巻き込まれている。
それがどれ程悔しいか、推量れない。
クリスはフォークを食べ終わった皿に置いて、話す。
「呼び出したのは、一度一緒に飯を食ってみたかっただけさ。あたしら姉ちゃんを通じてでしか話せてなかったし、一度あたしらで腹を割って話し合うのも悪くないと思ってな。あたしらいつからこんななんだ?目的は同じなのに、てんでバラバラになっちまってる。もっと連携を……」
「雪音、腹を割って話すというのなら、いい加減名前くらい呼んでもらいたいものだ。」
クリスの話を遮ってバッサリと指摘された事がクリスにとっては頬を赤く染めるのには十分だった。
クリスは心を開いている者と言えど誰かを名前を呼ぶ事をしない。
クリスが痛い所を突かれて何も言えない間に翼は退店してしまう。
「結局話せずじまいか……。やっぱ姉ちゃんがいないと無理なのか……。いや……むしろこれで良かったのかもな……。」
一人残されたクリスの口の中はコーヒーの苦味だけが残る。
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翌日、二課の装者達はブリッジに召集された。
弦十郎があるものを見せる。
それは、破壊された通信機とデジタルカメラだった。
「河川敷で発見された通信機とこの映像を鑑みるに、未来君と輪君はF.I.S.に連れ去られた事が分かった。」
「それってつまり!」
未来が生きている。
それだけで響の翳りは消えた。
「こんな所で呆けてる場合じゃないってことよ!さて、気分転換に身体を動かしに行くぞ!」
そう言って響と瑠璃の頭を撫でる弦十郎。
そして始まった気分転換という名の特訓。
五人はジャージを着て海岸沿いの道でランニングをしており、先頭にいる弦十郎はかの伝説のアクション俳優が出演し、歌った映画の主題歌を歌いながら走っている。
その後ろにいる装者4人は並列で並んで走っているが、クリスだけは息が上がっている。
「何でオッサンが歌ってんだよ?!つかそもそもこれ何の歌だ?!」
「アクション映画の主題歌だよ。結構古いけど、私も見た事ある。」
瑠璃が丁寧に教えてくれたが、この映画が公開された時、瑠璃とクリスは生まれてすらいないはずが何で知っているんだと心の中でツッコむクリス。
(そうだ!俯いていちゃ駄目だ!私が未来を助けるんだ!)
響は未来を助ける為に気合を入れて、弦十郎と横に並んで歌いながら走る。
(響ちゃん、気合入ってるなぁ……。未来ちゃんを助けたいんだよね。私も、輪を助ける為に……!)
瑠璃も弦十郎と響の横に並んで走り歌い出す。
その後の特訓も映画さながらのハードなものだった。
逆さの状態で足に棒を引っ掛け、下の瓶にある水をお猪口で汲み、それをお尻の高さにある樽に入れる作業を繰り返す鍛練、縄跳び、空気椅子の姿勢で腕をまっすぐ伸ばし、腕や太腿、頭の上に先程のお猪口を乗せて、姿勢を保つ鍛練等、明らかに気分転換の領域を越えている内容だった。
それでも響はめげずに気合で、翼はそれを冷静に、瑠璃は映画と同じ動作で模倣して乗り越えるが、クリスは常人では普通に音を上げる特訓を何とか乗り越えた。
(どいつもこいつもご陽気で、あたしみたいなやつの居場所にしては暖かすぎんだよ……。)
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エアキャリアの中の牢に囚われている未来と輪だったが、存外悪い扱いはされていない事に不思議に感じていた。
(普通こういうのって、何か言え!とか吐け!とか脅されて尋問されるパターンのような気がするけど……いかんいかん。オジサンの映画の見過ぎだ……。)
そこにウェルとマリアが現れた。
「この二人を連行することに指示をしたのはあなたよ。一体何の為に?」
「もちろん、今後の計画遂行の一環ですよ。」
輪はウェルに対して異様に悪い予感を感じ、未来を背に立ち塞がる。
「何?私達に何かするの?」
「いえ、今のところあなたに用はありませんよ。用があるのはそちらのお嬢さんです。」
ウェルは未来に向けて指す。
「私……ですか……?」
輪と同じ様に、未来もウェルの事を信じられず警戒している。
「そんなに警戒しないでください。少し、お話でもしませんか?きっとあなたの力になってあげられますよ。」
そう言うとウェルは微笑むが、輪が噛み付く。
「未来、騙されちゃ駄目!そいつの言う事を信じたら……」
「あの融合症例の彼女の事で、お悩みなのでしょう?」
図星を突いた悪魔の囁きが未来の心を揺るがせる。
これ以上、響を戦わせたくない、響が安心して休める、平和な世界にしたい、そんな思いがウェルの言葉によって増幅する。
「その話……詳しく聞かせてください。」
「未来!!」
未来の決意は固く、もう輪の静止は意味を成さない。
このやり取りで、未来だけが牢を出る事が許され、輪だけが中に閉じ込められたままになってしまった。
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エアキャリアの外では洗濯物を竿に干す切歌と調だったが、切歌は心ここに非ずの状態だった。
LiNKERの過剰投与の際の休息として、スーパーまで買い物に行った時、工事現場の鉄骨が倒れ危うく潰されそうになった時に発せられたバリア。
あれは紛れもなく自分の力ではない。
だとしたら誰の? 思い悩んだ時に一人だけ心当たりがあった。
そしてマリアから告げられた偽りのフィーネ。
(マリアがフィーネでないのなら、きっと私の中に……。怖いデスよ……。)
本当にフィーネの魂が宿っているのは自分以外ありえないと確信した。
そしてそれを知った時に現れる恐れ、自分の自我が塗りつぶされフィーネが現れることに。
自分が自分でなくなることへの恐れが、切歌を不安に駆り立てる。
「マリア、どうしちゃったんだろう……?」
「へ?」
調が不意に発した声で、先程の思考を考えるのをやめた切歌。
「私は、マリアだからお手伝いがしたかった……。フィーネだからじゃないよ……。」
「う、うん。そうデスとも。」
調はマリアを本当の姉のように慕って来たからこそここまで一緒に頑張れたが、マリアが力で誰かをねじ伏せようとするやり方と捉えた調は、マリアの事が信じられずにいる。
「ジャンヌだって……マリアの事が好きなのに……。」
ジャンヌはマリアに対して何も言わなくなってしまった事に寂しさを覚えた。
二人は亡き妹を持つ姉同士、互いに支え合ってきたが、ここに来て二人のすれ違いで皆との絆に深い亀裂が生じていた。
そんな現状を憂い、嘆く調だが切歌は違う話を切り出す。
「調は怖くないデスか?マリアがフィーネでないのなら、魂の器として集められたあたしたちがフィーネになってしまうかもしれないんデスよ?」
不安げになる切歌。調は
「よく、分からないよ……。」
「それだけ?!」
驚愕が隠せなかった切歌はその場から逃げ出すように駆けて行った。
「切ちゃん……。」
その背を、調はただ見ている事しか出来なかった。
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「切ちゃん!」
そう言って手を伸ばして起き上がる瑠璃。
辺りを見回すと、そこは仮設本部の休憩室のソファで座って休んでいたのを思い出した。
「何で私……あの子の名前を……?」
ここの所何故か見る夢、その中に出てくる切歌。
夢にしては妙にリアルで、言葉に形容し難い感覚、それが残っていた。
「あれ?何で私……あの子の名前を?」
決戦は近い……
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