米国の船上で神獣鏡のギアを纏った未来と対峙する瑠璃に弦十郎から通信が入った。
『瑠璃、先程イチイバルのリフレクターがいとも簡単に崩された。恐らく神獣鏡は聖遺物殺しのギアだ!』
クリスはリフレクターで迎撃した時、呆気なく分解されたが翼が機転を利かせた立ち回りで無事だったというのだ。
さらにそこに調が瑠璃に忠告する。
「あれは無垢にして苛烈、魔を退ける輝きの奔流。それが神獣鏡のギア。」
調の忠告に瑠璃は頷いた。
「ありがとう。気をつけて立ち回るよ。」
だが瑠璃のバイデントは冥槍、闇の槍では魔を祓う聖遺物殺しの神獣鏡が相手ではまさに相性は最悪と言っても過言ではない。
さらに瑠璃は調を担いでいた際に未来の攻撃によってバイザーは破損してしまっている。
これが無いとノイズや他の装者からの攻撃や接近の察知など戦闘補助機能が封印されるが、バイザーが破損した破壊された時点でそれらの機能は使い物にならなくなったので、これを解除する。
ここから先は瑠璃の経験と感覚のみで戦うしかないが、それらのディスアドバンテージを気にしていたら未来を取り戻せなくなる。
勇気を振り絞って、瑠璃は二本の槍を構える。
扇から放たれる光線を避け、距離を詰めて槍を水平に払うように振るうが、後退する形で避けられ、連続突きも、扇で的確に防がれる。
そして黒槍の穂先からエネルギーを集約させ、それを虚空に突いた時、エネルギー波となって放たれる。
【Shooting Comet】
未来は展開された扇から波動を放つ。
【閃光】
当然聖遺物の力をかき消す性能によって、バイデントから放たれたエネルギー波は消されてしまい、瑠璃は避ける事しか出来ない。
さらに未来は脚部のユニットで浮遊して海上へと移動する。
バイデントは槍の遠隔操作を応用してこそ遊行出来るのだが、その代わり一切の攻撃手段を失ってしまうという欠点を抱えている。
「だったら……!」
両腕を広げると、二本の槍は浮遊し、右手を突き出すと黒槍が未来に向かって突き進む。
だが未来は扇から光線を放ち、黒槍を撃ち落としたかに見えたが被弾直前に急降下、柄が撃ち抜かれるも穂先が残っている為、構わずに動き続ける。
さらに黒槍に気を取られている内にもう一本、背後から白槍が回転しながら襲い掛かる。
だが未来も扇を投擲して白槍を弾く。
(やっぱりあのバイザー、私のバイテントと同じ……!)
神獣鏡に搭載されたダイレクトフィードバックによって尽く避けられ、背後からの攻撃すらも読み防がれる事から、その性能はバイデントの戦闘補助システムを上回る。
さらに防御だけでなく攻撃も的確で、扇から放つ光線は瑠璃が避けづらいポイントに正確に放ち、攻撃を封じ込める。
やむを得ず二本の槍を手元に戻し、柄が半分消された黒槍は剣のように短く持つ。
(こうも攻撃が激しいと、ここから攻撃が出来ない……!)
黒槍の柄が半分消されたことで連結させて浮遊させて乗る事も出来なければ反撃も出来ず、避ける事しか出来ない。
「未来!瑠璃さん!」
未来を呼ぶ声に反応し、攻撃をやめてそちらに向く。
瑠璃もその方へと向くと、二課の潜水艦か浮上しており、その甲板に立っている響がいた。
「響ちゃん……何で?!」
そこに弦十郎から通信が入る。
『瑠璃。未来君の相手は、響君に委ねる。』
「そんな!そんな事したら響ちゃんが……」
『お前も分かっているだろう。バイデントではあのギアを倒せない事を。』
弦十郎の言う通り、バイデントでは相性が致命的に悪く、苦戦を強いられている。
このまま戦っても勝てる見込みはない。
「悔しいな……。けど……分かった……。ごめんなさい……お父さん……。」
『いや、瑠璃。お前が責任を感じる必要はない。むしろこれ程の相性の悪い強敵相手に、ここまで抑え込んだ。良くやったな。』
「お父さん……。」
司令として、父親として娘の成長を褒める言葉だった。
『司令だ。クリス君がノイズに対処している。瑠璃もそれに加われ。』
「うん……!」
そう言うと通信を切り、響の方を見る。
「響ちゃん、どうか……死なないでね。」
「はい!」
響は笑って返す。
未来は響に託し、米国哨戒機を飛び回ってノイズ殲滅へと動き出す瑠璃だった。
未来は脚部のユニットの浮遊を使って、響の正面に立つ。
「一緒に帰ろう……未来。」
響がそう言うと未来はバイザーを開き、虚ろな瞳が露出した。
「帰れないよ……。だって私には、やらなきゃならないことがあるもの。」
「やらなきゃならないこと?」
響が聞くと未来は笑みを浮かべる。
「このギアが放つ輝きがね、新しい世界を照らし出すんだって。そこには争いもなく、誰もが穏やかに笑って暮らせる世界なんだよ。」
「争いのない世界……。」
「私は響に戦ってほしくない。だから響が戦わなくていい世界を作るの。」
それが未来がギアを纏い、戦う理由。
響はその想いを聞いて一瞬だけ言葉に詰まった。
「だけど未来。こんなやり方で作った世界は、暖かいのかな?私が一番好きな世界は、未来が傍にいてくれる、暖かい陽だまりなんだ。」
未来の想いは正しいのかもしれない。響はその想いを否定するわけではないが、それでもウェルのやり方を認めるわけにはいかない。
「でも、響が戦わなくていい世界だよ?」
「たとえ未来と戦ってでも……そんなことさせない!」
「私は……響を戦わせたくないの。」
「ありがとう。だけど私、戦うよ!」
強く言い切った。
Balwisyall Nescell Gungnir Tron……
ギアを纏い構える響。その瞬間から死へのカウントダウンが始まった。
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何故響が戦う事を決めたのか、それは瑠璃が未来と交戦していた時の仮設本部内で思いついた響の作戦にあった。
「あのエネルギー波を利用して、未来君の纏うギアを解除するだと?」
「私がやります!やってみせます!」
提案された弦十郎は響の身を案じた。
「だが……君の身体は……」
「死んでも未来を連れて帰ります!」
「死ぬのは許さん!」
「じゃあ死んでも生きて帰って来ます!それは絶対の絶対です!」
藤尭と友里が過去のデータと現在の融合状況から計測する。
響がギアを纏って戦える時間はたったの2分40秒というとんでもなく短い時間だった。
だがそれは止める為ではなく、支える為に二人はこの計算を割り出した。
弦十郎は響に問いただす。
「勝算はあるのか?」
それに響が言い切る。
「思いつきを数字で語れるものかよ!!」
かつて弦十郎が放った言葉を、こんな形で返された弦十郎は響の出撃を許したのだった。
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遂に始まった、響と未来との戦いが。
響が右手で殴り掛かり、蹴り込み、未来がそれをダイレクトフィードバックで的確に防ぎ、逆に扇で響を甲板の壁まで吹き飛ばす。
壁に強く打ち付けられた響だが未来の二本の鞭の攻撃を両腕で防ぐが、防御している間にもこうして刻々とタイムリミットが迫る。
(熱い……体中の血が沸騰しそうだ……!)
弦十郎からの通信が入る。
『胸に抱える時限爆弾は本物だ!作戦時間の超過、その代償が確実な死である事を忘れるな!』
(死ぬ……私が死ぬ……。)
だが響は諦めない。
「死ねるかああああぁぁぁ!!」
鞭の攻撃を強引に突破し、反撃の拳を突き出すも未来に距離を取られた上に、空中を浮遊して左右の脚部から展開されたユニットが、未来の頭上に円形に連結するとそこから光線を放つ。
【流星】
響は避けるが、米国哨戒機に直撃する。
さらに小型の鏡を大量に展開、そこからも光線を放つも、響は脚部のジャッキを展開して、その光線を足場にして跳躍する。
「戦うなんて間違ってる……。戦わない事だけが、本当に暖かい世界を約束してくれる。」
同じ頃、エアキャリアを操縦するマリアが神獣鏡の光線が放たれているのを確認した。
「ポイント確認、シャトルマーカーを射出。」
エアキャリアの上部が開かれるとミサイルのようにシャトルマーカーが放たれる。
それらは円形のような陣を敷くように配置され、体部が展開される。
その体部が開かれた場所に神獣鏡の光線が反射する。
本部では友里が危険を知らせる。
「まもなく危険域に突入します!」
残り時間が30秒を切ったその瞬間、心臓のガングニールの破片が動き出すのを感じた。
そして響の胸部からガングニールの破片が大きく露出した。
それを目の当たりにしてしまった未来は、助けるはずが自分が戦う事で響を逆に苦しめている事に動揺する。
(違う!私がしたいのは……こんな事じゃない!こんな事じゃ……)
「ないのにいいいいぃぃぃーーーー!!」
未来の慟哭が響き、バイザーが開かれると涙を流していた。
(誰が未来の身体を好き勝手してるんだぁ!)
光線が飛び交う中に響は未来に突っ込み、抱きしめる。
「離して!」
「嫌だ!離さない!もう二度と離さない!!」
「響いいいいぃぃ!!」
「離さない絶対にいいいぃぃ!!」
シャトルマーカーに反射したレーザーが展開された。
それを確認した響は切り返し、未来を抱えたままそれに突っ込む。
「来る、フロンティアへと至る道!」
操縦席でスイッチを押すマリア。神獣鏡のエネルギー波が照射される。
展開された光線が、下中央に配置されたシャトルマーカーに反射されると、強大なエネルギー波となって放たれた。
「そいつが聖遺物を消し去るっていうんなら……こんなの脱いじゃえ!未来ううううぅぅぅ!!」
二人は神獣鏡のエネルギー波の軌道線上に突っ込み、それを全身に受けた。
二人のギアは粉々に砕け散り、未来の後頭部に繋がれたダイレクトフィードバックも、響の心臓に埋められていたガングニールの破片も跡形も無く消え去った。
強大な神獣鏡のエネルギー波は最後の一個のシャトルマーカーが海上へと反射された。すると、海中から大陸とも言える程の大きさを誇る巨大な島が浮上した。
これがフロンティアである。
一方ノイズを相当したクリスと瑠璃だったが、瑠璃は一度助けたはずの命が、ウェルが再びソロモンの杖で召喚したノイズによって奪われ、そこにいた米国兵たちが皆死んでしまった事に嘆き、動じに静かに怒る。
「Dr.ウェル……許せない……!」
その背を見ていたクリスはある決断を下すために瑠璃に歩み寄る。
「姉ちゃん。」
「クリス……がぁっ!!」
鳩尾を殴られ倒れる瑠璃。
「ど……し……」
「悪い。ケジメはつける。」
「ク……リ……ス……。」
倒された瑠璃はクリスの行く背をただ見てる事しか、出来なかった。
GX編早く書きたい……。
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