戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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3つの戦いが一気に繰り広げられます。


意地

 フロンティアのブリッジで、三組の戦いがモニターされているが、切歌と調が刃を交えている光景を目にしたマリアは、涙を流しながら膝から崩れ落ちた。

 

「どうして……あれだけ仲が良かった調と切歌が……!私の選択は……こんなものを見たいが為ではなかったのに……!」

 

 己の選択が齎してしまった戦いに無力さを噛みしめていたその時、ナスターシャから通信が入った。

 

「マム?!」

『今、あなた一人ですね?フロンティアの情報を解析して、月の落下を止められるかもしれない手立てを見つけました。』

「どうやって?!」

 

 マリアが興奮気味に問う。

 

『それは……あなたの歌です。』

「私の歌で……?」

『月は、地球人類より相互理解をはく奪するため、カストディアンが設置した監視装置……。ルナアタックで一部不全となった月機能を再起動できれば、公転軌道上に修正可能です……ごほぉっ!」

 

 大量に吐血したナスターシャ。最早猶予はない。

 映像ではなく声のみの通信となる為、様子も見れないが苦しんでいるのは分かる。

 だがナスターシャは懸命に伝える。

 

『あなたの歌で、世界を救いなさい……!ジャンヌの為にも……!』

「ジャンヌが……?」

『マリアには未来を歩んでほしい。皆と過ごした時間は、とても楽しかった……そう言っていました。』

 

 まるで遺言のようにも聞こえた。確かにここ最近のジャンヌの異変に気づいていたが知ろうとしなかった。マリアはそれに後悔しながらも、この先後悔しないように選ぶ事は出来る。

 

『マリア、今度こそ……世界を……!』

 

 ナスターシャの檄でマリアは立ち上がり決意する。

 

「OKマム。」

(ありがとう……ジャンヌ。)

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

 

 

 翼とクリスとの戦いも激化していた。

 銃弾と斬撃が飛び交い、捌き、いなし、撃ち、斬る。蒼ノ一閃に対しても、クリスは跳躍して避け、空中から銃撃を繰り出すも、翼は大剣で防ぐ。

 

「何故弓を引く?!雪音!」

 

 だがクリスは答えない。

 

「その沈黙を、私は答えと受け取らねばならないのか?!」

 

 翼は訴えかけるがその答えは銃口を向けられ発砲される事だった。刀で斬り落とし、クリスに振り下ろすも銃身で受け止められ、鍔迫り合いに持ち込む。

 だがクリスはすぐに身を引く事で鍔迫り合いを解いて再び発砲、翼は身を翻す事で避け、その回転を利用して振り下ろす。

 クリスは今度は拳銃二丁で防いで翼に銃口を向ける。

 

「あたしの十字架を……他のだれかに負わすわけにはいかねえだろ!」

「何……?!っ……!」

 

 一瞬クリスの首に巻かれているチョーカーのランプが赤く点滅しているのが見えた。

 

 『さっさと仕留めないと、約束のおもちゃはお預けですよ……?』

 

 クリスのベッドギアからウェルの声が聞こえた。  

 外からウェルはクリスの戦いを嘲笑うように傍観している。その手にはソロモンの杖を持っている。

  

(ソロモンの杖……!人だけを殺す力なんて、人が持ってちゃいけないんだ!) 

 

 そのチョーカーを目にした翼は一目で判断した。

 

「犬の首輪をはめられてまで、何をなそうとしているのか?!」

「汚れ仕事は、居場所のない奴がこなすってのが相場だ。違うか?」

 

 翼はクリスの言ったことに不敵な笑みを浮かべる。

 

「瑠璃に誓ったからな。首根っこ引きずってでも連れ帰ってやると。お前の居場所、瑠璃がいる帰る場所に。」

「え……?」

 

 出撃前、翼は瑠璃に頼まれていた。

 

『もしもクリスと戦う事があったら、伝えてほしいの。帰って来るのを待ってるって。』

『ならば、私からも願い出よう。』

 

 もしどちらかがクリスと戦う事になったら、クリスを連れ帰ると約束していた。結果的に翼がクリスと戦う事になり、翼は先輩として後輩を連れ帰る事となった。

 

 

「お前がどんなに拒絶しようと、私はお前がやりたいことに手を貸してやる。それが、片翼では飛べぬことを知る私の、先輩と風を吹かせるものの果たすべき使命だ!」

(そうだったよね、奏……。)

(そうさ!だから翼のやりたい事は、あたしが、周りのみんなが助けてやる!) 

 

 亡き友と共に駆けた戦場、天羽奏が心に映る。

 

「その仕上がりで偉そうなことを……」

『何をしているのですか?その首のギアスが爆ぜるまでもう間もなくですよ?』

 

 二人の戦いに水を差すようにウェルが通信で脅しかける。クリスは翼に正面から見据える。

 

「風鳴……先輩!」

 

 クリスから出た、先輩というワードに反応する翼。

 

「次で決める!昨日まで組み立てて来た、あたしのコンビネーションだ!」 

「ならばこちらも真打をくれてやる!」

 

 クリスがボウガンを構えるが翼の蒼ノ一閃が早く出て、それを避けるが左手のボウガンが破損するも右手に持つボウガンが結晶の矢を放つ。

 放った瞬間、小型の結晶となって分裂、数が増えても翼はそれを防ぐもクリスは立て続けに腰部のアーマージャッキから小型ミサイルを全弾発射、翼の背から小型の剣が大量に降り注ぎ、ぶつかり合い空中で爆ぜた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 切歌と調の戦いも接戦が続いた。

 切・呪りeッTぉとα式・百輪廻がぶつかり合い、火花が散るが、どちらも的確に避ける。

 鋸を振り下ろしても、鎌を振るっても、戦況は変わらない。互いにどう動き、どう攻撃してくるか知っているからこそ、戦いが膠着する。

 だが切歌がここまでして強がる理由がわからない調は問う。

 

「切ちゃんが切ちゃんでいられる内にって、どういう事……?」 

「アタシの中に……フィーネの魂が……覚醒しそうなんです。」

 

 調が驚く。

 調は意識が朦朧としていたから覚えていなかったが、切歌はあの時、落ちてくる鉄骨をバリアで受け止めた。それが今でも忘れられない。

 

「施設に集められたレセプターチルドレンだもの……こうなる可能性はあったデス!」

 

 切歌の本音をようやく聞けた。

 

「だとしたら、私はなおの事切ちゃんを止めて見せる。これ以上塗り潰されないように、大好きな切ちゃんを守る為に!」 

 

 アームの鋸が、回転速度を上げる。

 

「大好きとか言うな!アタシの方がずっと、調が大好きデス!だから、大好きな人達がいる世界を守るんデス!」 

 

 切歌も調に鎌の先端を向ける。

 調は鋸を横向きにして、それを頭上と足元に、プロペラのように展開させる。

 

【緊急φ式・双月カルマ】

 

 切歌も左右の肩のアームが分離、それぞれ二つに、合計四つのアームが刃となる。

 

【封伐・PィNo奇ぉ】

 

「「大好きだってぇ……言ってるでしょおおおおぉぉぉぉ!」」

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 地下の戦いでも激しさを増していた。完全聖遺物タラリアの靴を纏うジャンヌの素早い攻撃に、瑠璃は捌いているが、カ・ディンギル跡地での戦いの時とは比べ物にならない程に強く、また弱点だった直線的な軌道も手数で補っており、手にはめられている機械製篭手による徒手空拳の攻撃も追加で出してくる。

 バイザーの戦闘補助システムを用いてなんとか軌道を読んではいるが、手数が多くなった事で攻撃に移る余裕がなくなり、攻撃よりも防御が多くなってしまう。

 

「どうした?それでは私に追いつく事は出来ないぞ!」

「分かってる!」

 

 ジャンヌはこの一戦に全てを賭けてここに立っている。仲間の為に自らの命を燃やし尽くす覚悟だ。

 だが瑠璃にも負けられない事情がある。平穏を、友を、仲間を傷つけさせない、守る為に瑠璃は装者としてここに立っている。

 瑠璃は二本の槍の穂先をジャンヌに向けると、遠隔操作で操る。

 

【Assault Pisces】

 

 ジャンヌは回し蹴りで弾くが、一度弾かれた程度では再び槍は襲い掛かる。だが黒槍を避け、白槍を足場にして跳躍すると、瑠璃のいる方の虚空に蹴り込む。するとその軌道が衝撃波となって瑠璃に襲い掛かる。

 

 槍が手元にない瑠璃は宙返りで避けるが、ジャンヌは着地を狙い第二波、第三波の衝撃波を繰り出す。

 第二波は着地時に素早くローリングする事で避け、第三波は手元に戻った黒槍で弾く。

 

「やるな、そうでなくてはな!」

 

 ジャンヌは楽しそうに言い放つが、いつ心臓の鼓動が止まるか分からない。一方瑠璃はウェルの暴走を止める為に一刻も早くジャンヌを倒さなければならない。 互いに短期決戦に懸けるが、どの攻撃も決定打に届かない。

 距離を詰め、ジャンヌが拳を突き出しても白槍で流され、黒槍で突いても掌で軌道を変えられる。そして鍔迫り合いに持ち込まれる。

 

「嬉しいよ。こうして打ち合う度に君を知れる……!言葉で交わさずとも、互いを理解し合える!」

「私も何となく……あなたの事が分かった……!でも、それでも分からない……!何で、マリアを止めないの……?!その力があれば、この世の理不尽と戦えるのに、暴走した仲間を止めようとしないのは何で?!」

 

 ジャンヌの表情が悔しさに変わり、歯を立てると

 

「私に……そんな時間など残されていないんだ!」

 

 ジャンヌが退く形で鍔迫り合いを解き、再び蹴脚の衝撃波を放つ。

 瑠璃も二本の槍の穂先から十字状の斬撃を放つ。

 

【Crossing Gemini】

 

 衝撃波同士がぶつかり合い、相打ちとなる。だがジャンヌは既に肩で息をしている。よく見ると胸に手を当てており、苦しそうな表情をしている。

 

「瑠璃!」

 

 離れて輪の呼び掛けに反応する瑠璃。

 

「ジャンヌは……心臓が弱ってるんだよ!」

 

 ジャンヌは輪を苦々しく見る。余計な事をと言わんばかりの目で睨むが、心臓の鼓動が止まりかけている。

 

「時間が無いって……」

「ああ……悔しいが、私にはもう未来がない。だから今、この瞬間を輝かせたい。そんな心境に至ったんだ。この輝く瞬間がある限り、私は止まりはしない!」

 

 再び構えるジャンヌ。

 

「風鳴瑠璃!次の一撃で全力をぶつける!お前の全てを、この私にぶつけろ!!」

 

 瑠璃は何も応えず、二本の槍を槍を連結させて構えた。

 

「行くぞ!!」

 

 タラリアが黄金の輝きを帯びると、ジャンヌは高く飛翔、高エネルギーを纏ったタラリアの飛び蹴りを瑠璃に向ける。

 

「行くよ……!」

 

 瑠璃は連結させた槍の穂先に闇を表すような藍色の光がエネルギーとなって集約、最大まで集めるとそれを虚空に放つのではなく、タラリアに直接ぶつける形で突き出す。

 

【Raging Hydra】

 

 二つの対となるエネルギーがぶつかり合い、二人は衝撃によっていまにも吹き飛ばされそうになる。だが互いに譲れない思いが、この場に踏みとどませる。

 やがて二つのエネルギーが耐えきれなくなり、爆風を起こした。




ジャンヌが上弦ノ参の奴みたいになりつつあるなぁ……。

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