長かった……無印編の話数を越えてる……。
ジャンヌとの通信が途切れ、その意味を理解したマリアは泣き崩れた。
「そんな……ジャンヌ……!」
『ドクター……なんて事を……!仲間をその手に掛けるとは……!』
ナスターシャはウェルの所業を避難するが、当の本人は悪びれた様子はない。
「やっぱりオバハンが手を引いてたのか……!」
『Dr.ウェル!フロンティアの機能を使って、収束したフォニックゲインを月へと照射し、バラルの呪詛を司どる遺跡を再起動できれば、月を元の起動に戻せるのです!』
だがウェルにとって、そんなものは知ったことではない。もはや不要と判断したウェルは
「そんなに遺跡を動かしたいのなら、あんたが月に行ってくればいいだろ!」
ウェルが球体を操作すると、ナスターシャのいる区画が付に向かって打ち上げられてしまった。
「有史以来、数多の英雄が人類支配を成し得なかったのは、人の数がその手に余るからだ!だったら支配可能なまでに減らせばいい!僕だからこそ気付いた必勝法!英雄に憧れる僕が英雄を超えて見せる!」
ウェルは高笑いするが、もはやその姿は英雄と呼ぶには歪んでおり、独裁者と言うのが妥当だろう。
マリアはナスターシャとジャンヌをその手に掛けたウェルに激怒する。
「よくもマムとジャンヌを!」
アームドギアの槍を形成し、その穂先をウェルに向ける。
「手に掛けるのか?!この僕を殺すことは、全人類を殺すことだぞ?!」
「殺す!!」
ウェルは自分が世界の命運を握ってると言わんばかりの脅しを掛けるが、マリアは構う事なく槍を振るう。
ウェルは悲鳴を挙げるが、その刃は突如現れた響の介入で止まる。
「そこをどけ!融合症例第一号!」
「違う!私は立花響16歳!融合症例なんかじゃない!ただの立花響が、マリアさんとお話ししたくてここに来てる!」
「お前と話す必要はない!マムとジャンヌがこの男に殺されたのだ!ならば私もこいつを殺す!世界が守れないのなら、私も生きる意味はない!!」
マリアは怒りに身を任せてその槍をウェルに向かって突き出す。だが響はその槍を掴んで止めた。
「お前……!」
掌から出血しており、痛むがそれを声にも顔にも出さない。それどころかマリアを説得する。
「意味なんて、後から探せばいいじゃないですか。だから、生きるのを諦めないで!」
そして響を目を閉じ、唄う。
Balwisyall Nescell Gungnir トロオオオォォォーーーーン!!
叫びに混じった詠唱、それに反応したのかマリアのガングニールが分解され、周囲には光の粒子で満たされる。
「何が起きているの……?!こんな事ってありえない……!融合者は適合者ではないはず!これは貴女の歌、胸の歌がして見せたこと!あなたの歌って何?!何なの?!」
何が起きているのかマリアには理解出来なかった。
二課の潜水艦でそれをモニターで見ていた未来が叫ぶ。
「イっちゃえ響!ハートの全部で!」
その光の粒子は響の身を包み、それがシンフォギアの形となる。
「撃槍・ガングニールだあああぁぁぁーーーー!!」
響は声いっぱいに叫んだ。
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ジャンヌを喪い、悲しみに暮れる瑠璃と輪も、その輝きが遠くから見えた。
「一体何が……。」
「行こう瑠璃。ジャンヌの願いを、無駄にしない為に。」
瑠璃は涙を拭って輪と共にフロンティア中枢へと目指す。
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響がガングニールを纏うと、光の粒子達は消え、輝きを失った。
マリアは適合者ではないはずよ響がガングニールを纏えた事に驚愕が隠せなかった。
「ガングニールに適合……だと?!」
それを目の当たりにしたウェルは悲鳴を挙げながらを逃亡する。途中、恐怖のあまり階段から転げ落ちるが、痛みを気にする事はない。
「こんなところでぇ……終わる……ものかぁ!」
ネフィリムの左腕でフロンティアへの指示すると、地面に穴が空いた。ウェルはそこに入り下の階へと逃げおおせた。
響が倒れるマリアを支えている間に穴が塞がろうとしていた。
「ウェル博士!」
そこに弦十郎と緒川が到着したが間に合わず、完全に塞がってしまった。だが二人は響が再びガングニールを纏っている事に驚いていた。
「響君!」
「響さん、そのシンフォギアは?!」
「マリアさんのガングニールが、私の歌に応えてくれたんです!」
その途端、フロンティアで地響きが起こった。
『重力場の異常を計測!』
『フロンティア、上昇しつつ移動を開始!』
二課のオペレーター陣が通信で弦十郎に報告する。
「今のウェルは……左腕をフロンティアと繋げる事で、意のままに制御出来る……。」
その言葉通り、ウェルは廊下を歩いて呟く。
「ソロモンの杖がなくとも……僕にはまだフロンティアがある……!邪魔する奴らは……重力波にて、足元から引っぺがしてやる……!」
そう言うとウェルは廊下の壁にネフィリムの左腕を当てて指示を下す。
「人んちの庭を走り回る野良ネコめ……!フロンティアを喰らって同化したネフィリムの力を……思い知るがいい!!」
フロンティアの外庭の地面が割れ、巨大な生物が姿を現した。それは、以前より一回り大きく、強力に進化した全てを喰らう怪物、ネフィリムだった。
ブリッジからでもネフィリムの出現は確認された。マリアは弱々しく情報を伝える。世界も守れず、ナスターシャとジャンヌを失った今のマリアには戦う力すらない。
「フロンティアの動力は……ネフィリムの心臓……。それを停止させれば、ウェルの暴挙も止められる。お願い……戦う資格のない私に変わって……お願い……!」
今戦える響に懇願するマリア。
「調ちゃんにも頼まれてるんだ。」
「えっ……?」
「マリアさんを助けてって。だから、心配しないで!」
任せろと言わんばかりの笑みと声で応える。すると弦十郎はウェルとはやり方は違うが地面に拳を振り下ろして穴を開けた。
「ウェル博士の追跡は、俺たちに任せろ。だから響君は……!」
「はい!ネフィリムの心臓を止めます!」
「行くぞ!」
「はい!」
弦十郎と緒川は、開けた穴から入ってウェルを追う。響はマリアの方を見据える。
「待ってて!ちょっと言ってくるから!」
そう言うと響は無重力圏に近づいた事で浮遊した瓦礫を足場に跳躍して行った。
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輪の案内でフロンティア中枢へと至る別の出入り口まで辿り着いた瑠璃だったが、巨大化したネフィリムが見えた事でその足が止まった。
「あれって……ネフィリム……?!」
「いやいやいや!あんな化け物を飼ってたって言うの?!」
以前の姿とはまるで違う、まるでウェルのどす黒く肥大化した欲望を体現したかのように変貌していた。
瑠璃は輪の方に向き直す。
「私はあれの相手をする。輪は……」
「早く逃げろって?分かってるよ。でも、それじゃ私の気が収まらないよ!」
そう言うと輪はフロンティア中枢へと向かって走った。
「ちょっと輪!」
「あいつに一発ぶん殴らなきゃ気が済まないからー!」
姿が見えなくなっていたが、輪は大声で叫ぶ。
瑠璃は輪の行動力に驚きながらも、ネフィリムの方へ移動を開始する。
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フロンティア中枢から一気に飛び立った響は翼とクリスの目の前で着地した。
「翼さん!クリスちゃん!」
「立花!」
「もう遅れはとりません!だから!」
「ああ!一緒に戦うぞ!」
「はい!」
翼と面と向かって応えるが、一方クリスはそっぽ向いている。その手にはソロモンの杖があった。
「やったねクリスちゃん!きっと取り戻して帰ってくると信じてた!」
クリスの手を握って、クリスの帰還を喜ぶ響だがクリスは頬を赤く染める。
「おまっ……!当たり前だ!」
だが喜んでばかりではない。遠くからネフィリムが響達を捉えた。ネフィリムの姿を目の当たりにした翼は驚愕を禁じ得なかった。
「あの時の自立型完全聖遺物なのか?!」
「にしては張り切りすぎだ!」
強大な敵を前に、退くという選択肢はない。翼は二人に号令をかけた。
「行くぞ!この場に槍と弓、そして剣を携えているのは私達だけだ!」
「もう一つ、冥槍を忘れないでよね!」
そう言うと槍に跨って飛行していた瑠璃が降り立つ。
「お待たせ。」
「ああ、よく来た!」
「姉ちゃん……。」
翼と響は喜んだがクリスは、ソロモンの杖を奪還する為とはいえ殴ってしまったからか、申し訳なさそうに俯いていた。
「クリス、後でお説教ね。」
「え……?」
「あれを倒して、みんなで帰ろう。」
「ああ!」
クリスは笑みを浮かべると、倒すべき敵ネフィリムの方に向き直る。
「行くぞ!」
翼の号令と共に、4人はネフィリムに攻撃を仕掛ける。
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同じ頃、ブリッジの階段を放心状態で歩いていたマリアは、戦えない自分の無力さに嘆いていた。
「私では……何も出来やしない……。セレナの歌を……セレナの死を……ジャンヌの遺志も……無駄な物にしてしまう……。」
己の正義を貫いた結果がこのザマだ。その悔しさに涙を流した。
「マリア姉さん……」
「セレナ……?」
目の前にセレナが映る。
「マリア姉さんがやりたいことは何……?」
目の前に映った亡き妹、セレナが現れた事に戸惑いながらもマリアは迷わず答える。
「歌で世界を救いたい……。月の落下が齎す災厄から……みんなを助けたい……!」
「「マリア。」」
突然後ろから声が聞こえた。振り返ると、そこにジャンヌと、ジャンヌの左手を繋いでいる幼き少女、メルがいた。
「ジャンヌ……メル……?」
「私達はここにいる。」
「だからお願い。マリアの歌を聞かせて。」
ジャンヌは優しく、メルは満面の笑みを見せる。そして、セレナはゆっくりとマリアの手を取る。
「生まれたままの感情も、隠さないで……?」
「みんな……。」
マリアは目を閉じると、思い出の歌、自分達を唯一繋ぐ歌、Appleを唄う。
マリアが一節歌うとセレナも同じく、目を閉じて唄う。ジャンヌとメルも続くように唄った。
月に向かって区画を飛ばされてしまったナスターシャ。その影響により瓦礫が降り注いだが、ジャンヌお手製の車椅子のお陰で、ジャンヌと同じ運命を辿る事はなかった。
「これは……?!」
突如制御室へと流れ込むフォニックゲインが高まっている。
世界中の人々が、マリアの歌に祈りを捧げている。一人一人から発せられたフォニックゲインが、今この制御室で一つに集まろうとしている。
「世界中のフォニックゲインが、フロンティアを経由して、ここに収束している……。これだけのフォニックゲインを照射すれば、月の遺跡を再起動させ、公転軌道の修正も可能……!」
ナスターシャは車椅子を変形させて瓦礫を退かす。そして地上にいるマリアと通信を試みる。
『マリア!』
「マム?!」
『あなたの歌に、世界が共鳴しています!これだけフォニックゲインが高まれば、月の遺跡を稼働させるには十分です!月は私が責任を持って止めます!』
「マム……!」
その意味を理解したマリアは涙を流す。だがナスターシャは優しく諭すように語りかける。
『もう何もあなたを縛るものはありません。行きなさいマリア……。行って私と……旅立ったジャンヌに……あなたの歌を聞かせなさい……。』
「マム……。」
しばし目を閉じるマリア。そして覚悟を決めたように目を見開く。
「OKマム!世界最高のステージの幕を開けましょう!」
マリアはその身を翻し、行くべき場所へと赴く。
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ネフィリムと交戦している二課の装者達。響と翼、瑠璃が三方向から攻撃を仕掛けるも、ネフィリムにダメージが入っている様子がなく、腕を振回す。
「効いてない……?!」
「やはり姿形だけではないという事か……!」
「だったら全弾くれてやる!!」
だったらとクリスが腰のアーマージャッキから小型ミサイルを全弾撃ち込み、同時にガトリング砲の弾丸を放つ。
【MEAG DEATH PARTY】
まともにくらったのを確認したクリスは口角を上げたが、爆煙が晴れた途端それが糠喜びであると認識させられる。
「嘘だろ?!効いてねえぞ?!」
「来るぞ!」
さらにネフィリムが口から巨大な火球のエネルギーを翼とクリス、まとめて消し飛ばそうと放つ。
「だったら!」
瑠璃が連結させた槍を高速回転から発せられる竜巻型のエネルギーをぶつける。
【Harping Tornado】
「何……このパワー……?!」
桁違いのパワーをぶつけられ、竜巻は呆気なく消し飛ばされてしまい、火球の爆風で三人は吹き飛ばされてしまう。
「翼さん!クリスちゃん!瑠璃さん!」
だがネフィリムは響を潰さんと腕を振り下ろす。特大すぎるその大きさでは避けられない。避けられないと察知し、拳で迎え撃とうとしたその時、その腕を碧刃の鎌が切り刻み、紅刃の鋸をがネフィリムの身体に傷をつけた。
「シュルシャガナと……」
「イガリマ到着デース!」
守ったのは調と切歌だった。二人が来たことに歓喜する響。
「来てくれたんだ!」
「とはいえ……こいつを相手にするのは結構骨が折れるデスよ。」
切歌の言う通り、この程度でネフィリムを刈る事は出来ない。だが後ろから勇ましい声が響く。
「だけど歌がある!」
声のした方を向くと、マリアが岩の上で仁王立ちしている。
「もう迷わない……!だって……マムが命懸けで、月の落下を阻止してくれている!」
宙を見据えるマリアだが、その表情にもはや迷いは微塵もない。
「出来損ない共が集まったところで、こちらの優位は揺るがない!焼き尽くせ!ネフィリイイイィィーーーム!!」
フロンティア中枢のジェネレータールームでネフィリムの姿を捉えていたモニターで見ていたウェルは、ネフィリムに命令を下すように叫び、ネフィリムは先程放った火球よりもさらに巨大なそれを放つ。
直撃したのを見たウェルは狂うように高笑いする。
Seilien coffin airget-lamh tron……
聞こえてきたマリアの詠唱。土煙が晴れると、マリアがギアの装着によるバリアによって、並び立った装者達はそれに守られていた。
(調がいる……切歌がいる……。マムにジャンヌ、メルにセレナもついている。)
「皆がいれば……これくらいの奇跡、安いもの!!」
マリアが叫ぶ。
ネフィリムが再び火球を放つが、ここで響が動き出す。
「セット!ハーモニクス!S2CA!フォニックゲインを、力に換えてえええええぇぇぇーーー!!」
ガントレットを右腕のものと連結させて、火球を殴りつけ爆散させた。
このS2CAは7人の装者によるものだけではない、7人の不揃いではあるが、それぞれの思いを一つに重ねた奇跡のS2CA。
翼は左手を調に差し伸べる。
「惹かれ合う音色に、理由などいらない。」
調はぎこちなくも、その手を右手で握る。
「あたしも付ける薬がないな。」
「それはお互い様デスよ。」
クリスの右手と切歌の左手が繋いだ。
「絆の形は一つだけじゃないよ。」
「デスね。」
敵同士だったあの時、秋桜祭の一瞬だけだとしても、皆と美味しく食べるという形ではあるが、確かに繋がりかけていた。そして今、今度は目の前の困難にともに立ち向かおうと、瑠璃の左腕と切歌の右手は本当の意味で絆が繋がる。
「瑠璃さん、調ちゃん!」
響の左手と瑠璃の右手が繋がるが、調は響を見据える。
「あなたのやってる事……偽善でないと信じたい。だから近くで私に見せて。あなたの言う人助けを……私達に……。」
「うん。」
そう頷くと、調の左手と響の右手が繋がり、並び立った6人の装者が繋がり合った。
フロンティア中枢のモニター越しで見ていたが、その光景を良しとしないウェルは受け入れない。
「絶唱7人分……。たかだか7人ぽっちで……すっかりその気かあああぁぁぁーーー?!」
ネフィリムに命ずるが如く、今度は全身から装者達に向けてエネルギー波が放たれた。その威力は凄まじく、装者達は踏ん張るもギアが耐えきれず分解されていく。
だがウェルは大きな誤解をしていた。今奏で、生み出されたフォニックゲインは7人によるものではない事を。
(七人じゃない……!私が束ねるこの歌は……!)
そう……この歌は……
70億の、絶唱おおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!
装者達はそれぞれの色に輝く光に身を包まれ、再びギアを纏う。しかも光の翼と純白のギア、エクスドライブとなって。
「響き合うみんなの歌声がくれた!!」
シンフォギアだああああああああああぁぁぁぁぁ!!
7つの光と力が1つとなったそれは、ネフィリムの身体を貫き、虹色の竜巻が空へ、宇宙へと届く程に大きく渦巻いた。
ジャンヌがAppleを歌えるのは、メルが存命中だった頃に彼女が夜怖くて眠れなかった時、マリアが歌った事で安心した様にゆっくりと眠る事が出来たからです。
それ以降、ジャンヌとメルも、Appleを歌えるようになったという経緯があります。
ですがジャンヌはメルの死後、これを存命中に歌う事は最期までありませんでした。