この辺りの原作の設定が記憶が曖昧な為、おかしな所があるかもしれません。
よろしければ感想の方をよろしくお願いします。
あれから数日が過ぎた休日。広木防衛大臣が亡くなったというニュースでテレビは持ち切りだった。どのチャンネルにしても同じニュースばかり報道される。
「よし、あそこに行こう。」
退屈になると決まって行く所。それは、図書館。瑠璃は読書癖があり、家にもそれなりに本を並べてある。
主に歴史小説や世界の地域、音楽に関する本が多く占めており、いつか世界一周するのが夢なんだとか。
図書館に入った瑠璃は早速、お目当ての本を探す。
瑠璃は気になった本を手に取り、3冊取ったところで、司書がいるカウンターまで行くのがルーティーンである。
そのルーティン通りに従い、その3冊目を決めてそれを手に取る。
だが3冊目を取って受付まで行こうとした時、ある一冊の本が目に入った。
それはアフリカ大陸の情勢とその風景に関する本である。
「止まぬ紛争と、子供達の未来……か。」
瑠璃はそれも手に取り受付まで行く。図書カードを渡し、貸出の申請を済ませるとそれを小さな机に積み重ねて最後に目にした本を開く。
エジプト、ナイジェリア、コートジボワールなど各国について様々な事が書かれている。それを瑠璃は熱心になって読んでいる。
するとあるページに目が止まる。
「バルベルデ……共和国?何だろう……」
バルベルデという国だけは聞いたことがなかった。 読んでみると情勢が不安定で紛争が絶えず、今も子供の戦争参加や反政府組織などの活動が活発していると書かれている。
「危ないなぁ……。」
読んでいると8年前にNPO活動をしていた音楽家夫妻がこの地で亡くなったとも書かれていた。
「雪音雅律とソネット・N・ユキネ……国際結婚ってやつかな……。」
今のグローバルな時代に国際結婚は珍しくはない。
ドラマとかでありがちな言葉を借りるなら、愛に国境なんて存在しないというやつだろう。
ただ瑠璃は名前と写真を見た瞬間、何か違和感を覚えた。
「何だろう……どこかで見た事があるような……。」
既視感があるようだったが、思い出せなかった。思い出そうとすればする程、頭が痛くなった。
体調に違和感を感じた瑠璃は帰ろうと立ち上がった瞬間、バランスを崩してしまい身体が後ろに傾く。
後ろには本棚があるが、今の瑠璃にそれを避けられる状態ではない。このまま本棚に倒れる。痛みを覚悟して目を瞑った。が
「大丈夫か?」
誰かに支えられている。ゆっくり目を開くと、以前に落とし物で仲良くなった少女だった。
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図書館を出ると並列で歩道を歩いている。本は手提げ袋にしまい、それを肩にかけている。
「もう大丈夫なのか?」
「はい、平気です。ありがとうございました。」
「良いって。偶々あたしがそこにいただけだからな。」
「でも危ない所を助けてくれたんだもん。あなたがいなかったら、多分酷い事になってた。」
「だから……そんなこっ恥ずかしいのはもういいって……。あと、敬語は要らねえよ。」
「あ、分かりま……。うん、分かった。」
お礼を言われると恥ずかしくなったのか、少女は顔を赤くした。
「つか、何を借りたんだ?」
「えっとね……これ。」
ベートーヴェンが感じた世界、止まらぬ紛争と子供達の未来、礼儀作法マナー講座本を出す。
「どれもジャンルが違うんだな。」
「で、最後に借りたのがこれ。」
その本の名前はカンフーガールファイターである。
思わぬ不意打ちに少女はビックリする。
「何だそのゲテモノ?!」
「え?カンフーガールファイター。知らないの?」
「知ってて当然みたいな顔で言うな!」
この作品は昨年映画化された原作小説であり、ある姉妹が自分の両親の命を奪った悪の組織が主催する大会に出場して優勝を狙うという内容になっている。
実際にこの映画を弦十郎と見た事があり、意外と面白かったという。
「読んで見る?」
「読むか!」
「面白いのに……。」
すると突然瑠璃のスマホから着信が鳴る。
「あ、ちょっとごめんね。」
弦十郎からの着信だった。
「もしもしお父さん?うん。うん、分かった。今から行く。うん、じゃあまた後で。」
そう言い終えると着信を切る。
「ごめん。これから病院に行かなくちゃだから、また今度で良いかな?」
「ああ。気をつけて行けよ。」
「ありがとう、じゃあね!」
瑠璃は走ってその場を後にした。残された少女は手を振って見送った。
「優しいな。」
その呟きを聞くものは誰もいなかった。
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翼が一般病棟へ移った事で面会が可能になったという報告を受け、早速お見舞いに行く事にしたルリだが、緊張していた。
家も違うし、学校で会ってもまともな会話すらしてない。家族と言っても殆ど他人に近い状態だった。
だが翼は自分を守る為に大怪我を負ったのだ。ちゃんと礼を言いたい、その一心で病室まで来た。深呼吸して、覚悟を決めるとドアをノックする。
「お、お姉ちゃん、起きてるかな?瑠璃だよ。」
「瑠璃……。ええ……入って。」
応答してくれた。
一瞬嬉しい気持ちになったが、浮かれてはいけない。
そっと病室のの戸を開けた。
「失礼しま……え?」
瑠璃が見たものはまさに地獄絵図と言っても過言ではない程、悲惨な事になっていた。
雑誌や下着、あらゆる物という物が散乱していた。
「えっと……お姉ちゃん。これって……」
「何も言わないで。」
翼は顔を赤くするとその目は反らしていた。それを見た瑠璃は意味を理解した。
それから瑠璃が整理整頓して、あっという間に綺麗になった。
「ありがとう。こういった事は慣れなくて……。」
「ううん、良いの。いつもやってる事だし、お姉ちゃん忙しいもんね。でも少し意外だったかも……。」
整頓し終えた瑠璃は椅子に座る。
「ありがとう……お姉ちゃん。あの時助けてくれて。それと……ごめんなさい。私、迷惑だったよね。」
瑠璃は俯きながら謝罪の言葉をかわした。
「いや、そんな事はないわ。寧ろ、私の方こそ感謝したい。あの時、怒りに任せて大事な事を見落としていた。防人として、自分の不甲斐なさを思い知らされた。だから、瑠璃が謝ることはないの。それに、可愛い妹を守るのは姉の努めだから。」
そう言われると瑠璃は顔を赤くした。翼にそこまで言われるのは初めてだった。
翼とここまで話したのも初めてであり、色々新鮮だった。瑠璃は照れながらも、ここまで話せたことが嬉しかった。
「叔父様はどうしてる?」
「うん、いつもと同じ。映画見て鍛えて、ご飯をいっぱい食べてるかな。」
「そうか。」
「あ、そうだ。最近響ちゃんって子がお父さんの弟子になっていてね。」
「立花が?」
「うん。おっちょこちょいなんだけど、誰よりもひたむきに頑張ってるの。それでね、お父さんと同じくらいの量を食べるの。ちょっとビックリしちゃったけど……」
翼は瑠璃から響の話を聞くと、どこか嬉しそうな顔をしていた。それを見た瑠璃は少し笑う。
「どうしたの急に?」
「ううん。お姉ちゃんが笑ってる所、初めて見たなって。そしたら何だかおかしくて。」
「そ、そんな笑うところかしら?!瑠璃って、案外意地悪な所があるわね……。」
拗ねた子供のようにプイッとする翼。
「ごめんごめん。でもやっぱり、いつもしかめっ面なお姉ちゃんより、今みたいに笑ってる顔の方が良いよ。」
瑠璃がそう言うと、翼は天を仰ぐように上を向く。
「こんな風に誰かと笑い合うなんて、久しぶりだわ。いつの間にか、忘れてたみたい。」
「良かった。お姉ちゃんが元気になって。」
そういうと互いに笑っていた。
こうして楽しい時間はこうして過ぎていき、気がついたら夕方になっていた。
「お姉ちゃん、明日も来ていいかな?」
「構わないけど、いいの?」
心配そうにみる翼だったがルリはへっちゃらと言わんばかりに笑顔を見せた。
「うん。だって、一人じゃつまらないでしょ?」
「そうね。またお願いするわ。」
「じゃあまた明日。」
そう言って瑠璃は手を振りながら病室を出て戸を閉めた。
(お姉ちゃん、全然怖い人じゃなかったな。とても優しい人だった。こんなに話したのは初めて。)
少しご機嫌な様子で買い物して帰ると夕飯を作った。
今日は了子もご馳走になるという事で少しオーガニックにしたのだが、作っている時にはその嬉しさが忘れられず、弦十郎と了子も何事かと見ていた。
そして間違えて作りすぎたのは秘密。
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その日の夜、瑠璃は夢を見た。
見知らぬ場所で一人ぼっちになっていた。
「お父さん?お父さんどこなの?」
父を呼ぶが夢の中では意味をなさない。
仕方がないので少し歩く事にした。
すると、雪のように銀色髪の少女が泣いていた。
「ね、ねえ。君どうしたの?」
恐る恐る声を掛ける瑠璃。
「お姉ちゃんが……お姉ちゃんがいないのぉ……」
「そっか……じゃあ一緒に探そう?私も手伝うから」
そういってぎこちなく手を差し伸べた。
少女は手を取ると
「この手……お姉ちゃんの手……」
「え?」
瑠璃は少女の言っている意味が分からなかった。
「何を……」
「だってそうだもん……私達……」
少女が顔を上げたその瞬間、ルリは夢から覚めた。
「はっ……!」
大きく目を見開いてベットから起き上がった瑠璃。
時計を見るとまだ午前4時だった。
「今の……夢?」
今までこんな夢を瑠璃は見た事がなかった。もう一度寝直そうとするが、結局眠れず朝を迎えた。
次の日も瑠璃はあの夢を見ては、目を覚ますという悪循環に陥り、次第に寝不足になっていった。
弦十郎と朝食を取っている時も
「瑠璃、塩を取ってくれないか?」
瑠璃はボーッとしていた。
「どうした瑠璃?」
「え、いや、なんでもないよ!」
「本当か?」
「うん、あ、お塩だったね。はい」
不審に思いながら弦十郎は塩を受け取り目玉焼きに振った。
翼のお見舞いに行った時も些細なミスが目立った。
林檎の皮を剥いている時
「痛っ!」
親指の皮を切ってしまい、出血してしまう。
「瑠璃!大丈夫?!」
「あ、大丈夫!大丈夫だから……」
心配させまいと笑顔を振りまくも、翼の不安は拭えていなかった。
瑠璃の調子が悪い事は翼も気づいていたが、何と声を掛ければいいか分からず、結果的に何も伝えられないまま帰してしまった。
この所同じような夢を繰り返し見ていくにつれて、瑠璃は些細な失敗を繰り返すようになり、今も上の空だった。
「瑠璃?瑠璃?瑠璃!」
隣の席にいる輪の呼び声で覚醒すると周囲のクラスメイトと教員が瑠璃を見ている。
「風鳴さん、授業中に呆けるとは珍しいですね。」
「あ、す、すみません。」
「では風鳴さん、この問題解いてください。」
「は、はい!」
瑠璃は黒板の前に立って問題を難なく解いていった。
「正解です。ちゃんと休んでますか?頑張るのは良い事ですが、授業中に呆けるのは無しでお願いしますね。」
「は、はい。すみませんでした。」
教員は瑠璃は素行の良い優秀な生徒であると承知しているので、優しく注意した。他のクラスメイトも最初は何事かと心配していたが、それが杞憂だと分かると元に戻った。
ただ一人、親友を除いては。
お昼休み。食堂でいつものように昼食を取っている。
「瑠璃、あんた本当に大丈夫なの?」
「ううん、平気。心配ないよ。」
瑠璃は笑って誤魔化していることを輪は勘付いていた。
「じゃあ何その隈?」
「え?」
いつも瑠璃と学園生活を過ごしている彼女が、僅かな変化を見落とすわけがなかった。何より、瑠璃は嘘が下手なのも知っている。
「何か寝不足してる?でも、普段から夜更しするような子じゃないから何か悪い夢でも見てるとか?」
そこまで当てられるともはやエスパーじゃないかと思ってしまうルリだったが、新聞部のエースを前に誤魔化しきれるわけもなくようやく観念した。
瑠璃は夢の内容を全てを話した。
「あの日から同じ悪夢をずっとねぇ。よっぽどショックだったのかな?」
が、瑠璃はうたた寝していた。
「起きろぉぉぉーー!!」
「うわああぁぁっ!!」
輪の大声にビックリした瑠璃は起き上がった。
「人の話は最後まで聞きなさい!」
「ご、ごめん。」
しゅんとする瑠璃。
「ねえ、同じ夢を見るという事は何か瑠璃に訴えているんじゃないかな?」
そんなアバウトな事を言われても瑠璃は首を傾げる事しか出来ない。
「訴えているって……何を?」
「私が知るわけないじゃん!もし不安だったらオジサンにも相談してさ、病院行って診てもらうなりすればいいと思うよ?」
出来る事ならやっている、だがいつも忙しい父に迷惑が掛かってしまう。
自分がお荷物になるわけにはいかない、そう思っていた矢先、輪が瑠璃の両頬をパンッと叩くように寄せた。
「シャキッとしろ、風鳴瑠璃!確かに嫌な夢を連続で見たのは嫌だっただろうけど、一々気にしてたら生きていけないぞ?それに、夢は所詮夢なんだから!」
そういって手を退ける。少しヒリヒリしているのか、瑠璃は頬を撫でるように擦る。
「やっぱ輪って相談役に向かないよね。何か勢いだけっていうか……」
思わぬ一言にグサリと来た輪。
「でもありがとう。」
瑠璃は輪に笑みを見せると、輪の頬は赤くなっていた。
「そ、それは……どうもいたしまして。」
二人は昼食を済ませて教室へと戻って行った。
ようやく瑠璃が苦しみだしましたね。
次回はもっと苦しんでもらいますかな。