シャトル救出任務については前回の番外編で軽く触れたのでカットさせていただきます、悪しからず。
束の間の平和
シャトル救出任務から数ヶ月、特異災害機動対策部二課は解体となり、代わりに国連所属の超常災害対策機動部タスクフォース S.O.N.G. として再編成され、新たなスタートを切った。と言っても人事は二課の時と変わっていないのでいつも通りではあるが。
日常の方でも少し変わった事があったが、いつも通り平和を満喫している。というのも翼がリディアンを卒業しロンドンへ旅立った。そして入れ替わる形で調と切歌がリディアンに入学、それ以外の面々はみんな進級した。
今の季節は炎天下を誇る夏であり、世間ではクールビズスタイルとなっている。リディアンも然り、夏服で登校している。
そんな中、瑠璃とクリスが他愛もない談話で盛り上がりながら登校していると
「ク〜リスちゅわあぁ……ぶへぇっ!」
どこぞの大泥棒の如く後ろから抱き着こうと飛び上がった響だったが、頭上からクリスのカバンが振り下ろされ、その後頭部に直撃する。その後ろで響と共に登校している未来が苦笑いする。
「ちょっと、クリス!そんな乱暴な!」
「この馬鹿はあたしが先輩だって認識しねえからな。それなりに躾とかねえと、あいつらに示しがつかねえんだよ。」
瑠璃はクリスの反撃を咎めるが、クリスは響に自分だけ先輩と認知されていない事に不満があった。
響は瑠璃と輪には敬語を使い、さん付けで呼ぶがクリスにのみ友達感覚で呼び捨て且つタメ口なのだ。さらに調と切歌という後輩が出来た今、規律や順序はしっかりしておかないと組織としても成り立たないのだ。
クリスが響の後ろを指すと調と切歌が手を繋いで登校して来た。
「おはようございます。」
「ごきげんようデース!」
「おはよう。暑いのに相変わらずね。」
この暑い中、切歌の変わらず元気よく張り切った挨拶に感心するが、響と瑠璃は調と切歌の手に注目する。
「いやぁ暑いのに相変わらずだねぇ~。」
「まるで恋愛小説みたいに……。」
二人は手を繋いで登校してきたのだが、まさに恋人繋ぎである。
「いや〜それがデスね、調の手はちょっとひんやりするのでついつい繋ぎたくなるのデスよ。」
「そういう切ちゃんの二の腕もひんやりしていて癖になる。」
切歌は照れながら説明すると、調は付け足すように切歌の二の腕をプニッと摘む。それに未来が食いつくように反応した。
「それ、本当なの?!」
確認の為に響の二の腕をプニッと摘む未来。
「いやあぁぁ〜!やめて止めてやめて止めてあああぁぁ〜!!」
あまりのくすぐったさに響は大声が出るが、その光景を目の当たりにした姉妹は顔を真っ赤にして、瑠璃は手で自分の顔を覆うように視界を塞ぎ、クリスは響の背中をバッグで叩いた。
「そういう事は家でやれ……。」
「家なら良いの……?!」
クリスのセリフに思わずツッコむ瑠璃であった。
瑠璃とクリスは教室に着き、自分の席に鞄を置く。
「あれ?輪はどうしたんだろう?」
登校中の道でも学校に着いてからも、まだ輪と会っていない事に気付いた瑠璃。いつもなら、輪が早く学校に到着するのだが、教室にも姿がない。一体どうしたのかと心配した瑠璃はスマホで電話を掛ける。
(あれ?出ないな……。どうしたんだろう……?)
何回掛けても繋がらないのでメールを送信した。結局ホームルームが始まってしまい、一限目の授業の途中でようやく姿を現した。
「ごめんなさい!遅くなりました!」
勢いよく扉を開けた輪だが、かなり息が上がっている事から全力で走ってここまで来たのだろう。
「何があったかは存じ上げませんが、次からは気を付けてくださいね?」
「はい、すみませんでした。」
一礼してお詫びすると瑠璃の隣の席に座る。それ以降は特に大した事もなく、一限目の授業が終わり、10分休憩になると遅刻した理由が気になった瑠璃とクリスは輪に問いかける
「どうしたの?輪が遅刻なんて随分珍しいね。」
「あぁ……それがさ、寝坊しちゃったんだよね。」
「寝坊だぁ?」
「私、電話したの気付かなかった?」
「スマホをリビングに忘れちゃったんだよ。だから鳴ってる事に気付かなかったの。とにかくそれだけ!はい、この話はおしまい!」
輪が強引に話を打ち切らせに来る辺り、あまり触れてほしくないのだなと悟った瑠璃は、話題を変えた。
「そう言えば今日クリスの家でお泊り会するんだけど、輪も誘われてるよね?」
「あ、それについてなんだけど。私パス。」
断った事に、瑠璃とクリスは目を見開いて驚いた。
「パスぅ?!」
「え?!何で?!だって今日はお姉ちゃんの……」
「チャリティライブでしょう?しかもマリアさんのコラボ付きで。それがさ……小夜姉何か体調悪いみたいでさ。」
「え?!大丈夫なの?!」
食いつくように驚く瑠璃。
「風邪とかじゃねえのか?そんなのよくある話だろ?」
クリスは小夜について悪魔であること以外知らないが、小夜が体調を崩す事なんて事は滅多にない。
以前に大阪で勤めていた病院で集団食中毒が発生した事があり、看護師達もそれを貰ってしまったらしく、殆どの人が体調を崩した中、たった一人小夜だけが何ともなかったなど、上げればキリがないがとにかくちょっとやそっとでは風邪を引かない強靭的な肉体の持ち主なのだ。
「そういう訳で私はパス。ごめんね!」
「そういう事なら仕方ねえけど、あんま無理すんなよ?」
「そうだよ。何かあったら言ってね?」
「うん、ありがとう。」
(ああ〜二人の優しさが心に染みるぅ〜。)
雪音姉妹の労りに呑気に癒やされる輪だった。
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そして迎えた夜、瑠璃、響、未来、創世、弓美、詩織、切歌、調がクリスの家に集まりリビングで待機していた。テーブルには様々なお菓子が用意されており、全員入浴も済ませ、パジャマに着替えてあとはライブが始まるのを待つだけなのだが……
「何か人数増えてねえか?!聞いてねえぞ!」
クリスは輪が欠席となったので、瑠璃だけかと思っていたのだが、瑠璃が大勢連れて来た事にツッコむ。
「ごめんねクリス。みんなも同じ目的みたいで……」
「すみません、こんな時間に大人数で押しかけてしまいました。」
詩織はクリスに一言お詫びを入れる。
「ロンドンとの時差は約8時間!」
「チャリティロックフェスをみんなで楽しむには、こうするしかないわけでして。」
弓美と創世はそう言うが、クリスの家のテレビは大画面になっていて、その分迫力も段違いになるのだ。
クリスは心の中で呟く。
(ったく……姉ちゃんと二人きりで見られると思ったのに……。)
そこに響がそばにやってくる。
「ま、頼れる先輩ってことで!それに、やっと自分の夢を追いかけられるようになった翼さんのステージだよ?」
「お姉ちゃん……やっと世界に羽撃けるって知った時、凄く嬉しそうだったもんね。」
「そしてもう一人……」
未来がそう言うと調と切歌が嬉しそうに続く。
「マリア……!」
「歌姫のコラボユニット、復活デス!」
「ね?今日はみんなで楽しもう?」
瑠璃にそう言われるとクリスは反対出来ない。ここは素直にみんなで楽しもうとテレビの前に座る。
そして会場の照明が一度落ちると、ステージ中央に立っている翼とマリアにスポットライトが照らされた。二人が歌う曲は《星天ギャラクシィクロス》
歌い出すと背景のパネルが展開され、ロンドンの夕陽が射し込し、水上の床の水面を鮮やかに照らす。
音楽に合わせて、水がアーチの様に噴射し、噴いた宙には虹を生み出す。Bメロに入ると翼とマリアがスケートのように滑走、プリマのように踊りだす。
そしてサビに入ると同時に夕日は落ち、夜となる。少しの間に漂う静寂を、二人が歌い出してそれを打ち破ると天井に映し出されたプロジェクターから星屑が降り注ぐ。水面がそれを映し出し、一層の輝きを放つ。二人が滑走した所を頭上から見ると、それは∞を表していた。
サビが終えるその時、頭上の青と桃色の銀河が一つに混ざり合って超新星爆発を起こすと、クロス状の光が輝いた。
現地の観客は勿論、テレビで見ていた響達も歓声をあげた。
「凄い……。」
瑠璃は完全に魅了されていた。
こうして、平和を満喫する装者達。しかし、それが砂の城のように儚く崩れ去ろうとしているのをまだ知らない。
GXでは瑠璃が大事にする歌と人の絆の強さが試されます。
瑠璃の楽曲(GX編)
Twilight Bonds
絆の形、強さ、そして大切なものが何かを探しながら前へ進む思いを歌にしたもの。