それはさておき、いよいよ瑠璃に危険が迫ります。
放課後、輪はゲームセンターに連れて行こうと瑠璃を誘った。
「ねえ瑠璃、今日帰り寄ってかない?どうせならゲーセンで嫌な事忘れて、スカッとしちゃおうよ!」
「あ、ごめん。今日もお見舞いに行くから……。」
「あ、そっか……。ならさ、私もついて来たら駄目かな?」
「多分大丈夫だと思う。お姉ちゃん、きっと喜んでくれると思う。でもサインは駄目だからね?今は病人なんだから。」
翼のファンである事を知っているので、念の為に釘を刺しておく瑠璃。
「分かってるよ。そこは弁えてるもん。じゃあ行こう!」
そういうと二人は教室を出ようとすると
「翼さんのお見舞い?!」
「私も連れてって風鳴さん!」
「私も私も!」
翼の熱狂的なファンであるクラスメイトに囲まれると瑠璃は戸惑った。
人見知りである瑠璃が、殆ど会話をかわさないクラスメイトの人達に押されていく。
「瑠璃!行くよ!」
輪に腕を引っ張られ強引に連れて行かれる。クラスメイト達も逃がすまいと追い掛けるが、校門で行方を晦ました。
「ふぅ……危ない危ない。あんなに大勢で来られたら翼さんも困っちゃうよね。」
「う、うん。そうだね。あ、ありがとう輪。」
「良いってことよ。それより、このまま手ぶらで行くのもおこがましいし、フルーツでも買っていこう。」
「うん!」
近くのスーパーでフルーツバスケットを買って病院へ向かう二人。
「いやぁ、楽しみだなぁ。」
「もう、輪ったら。(お姉ちゃん、また散らかしてなければいいんだけど……)」
何となく2つの意味で一抹の不安を抱いた瑠璃。
杞憂であってほしいと願っていると、その二人を影から見下ろす人物がいた。
「ちょっと怖い思いするけど、死なせはしないからな。」
そう言って杖を構えると、それから放たれた光線からノイズを召喚した。
二課ではノイズ出現のアラートが鳴り対応に追われている。
ノイズの殲滅は響に向かわせる事になったが、弦十郎は胸騒ぎがしていた。
弦十郎の表情が曇っている事に気付いた了子は声を掛ける。
「どうしたの?浮かない顔しちゃって」
「いや、どうにも胸騒ぎがしてな。」
杞憂であってほしいと願うしかないのが歯痒く感じる。
「大丈夫よ。きっと、何とかなるわ。今回は小規模の上、こっちには期待の新人、響ちゃんがいるんだし〜」
了子のマイペースっぷりには呆れているが、今はそれで気が楽になるので有り難かった。
そこに新たな警報と共に藤尭から報告が入る。
「新たなノイズ反応パターンを検知!場所は先程の出現区域のすぐ近く、開発跡地です!」
そこはかつて小さなビルや団地が多く建てられていたのだが、人口が減った事により今では無人となってそのまま放置されている。
モニターに地図とノイズの出現パターンを座標として照らし合わせている映像が映る。
「何故そんな所に……」
考えていると、弦十郎のスマホに瑠璃から着信が入った。
「すまない瑠璃、今は……」
『助けてお父さん!』
声の様子からただ事ではないというのが分かる。
『ノイズ……ノイズに襲われてる……!』
「何?!」
『来た!逃げよう瑠璃!』
『お父さん、助け……』
輪の声も聞こえたが、ここで着信が切れてしまった。
「藤尭!友里!場所割出せ!」
同じオペレーターである友里あおいは藤尭と共にケータイのGPSが発せられた場所を割り出す。
「司令、ノイズ発生区域内にGPSを探知しました!」
胸騒ぎの正体に気付いた時には既に手遅れだった。
弦十郎は己の無力さに嘆きながらも立ち止まるわけにはいかない。
「くそっ!響君、聞こえているか?!新たにノイズが出現した!だが瑠璃と輪君がその出現区域にいる!何としても助け出してくれ!」
『了解!』
「俺も現場に行く、車を出せ!」
今回ばかりは止める者はいない。
弦十郎は本部を出て、メインシャフトを利用して地上へ上がる。
(神よ……どうか瑠璃を守ってくれ……!)
瑠璃と輪はノイズから逃亡していた。ノイズに触れれば炭化して命を落としてしまう。だが建物が入り組んでいて何処から襲われるか検討がつかなかった。
かと言って後ろからノイズに追いかけられている。それ故に逃げるしか手がない。
「どうしよう……スマホ落としちゃった……。」
「大丈夫、きっと助けが来る!オジサンを信じよう!」
今は何とか巻いているが、いつまた見つかって襲われるか分からない恐怖を前に、瑠璃は不安になりながらも輪に励まされ希望を投げ捨てずにいた。
だがその希望を踏みにじるかのように、ノイズが建物を伝って襲って来る。
「ヤバい!逃げよう!」
輪は瑠璃の腕を引っ張り、的確にノイズが少ない逃走経路を選んで走るが、前からノイズが襲って来た。
「こっち!」
今度は右側にあるビルの間に挟まれた道を走る。だがここで足止めされてしまう。
「行き止まり……!」
前がビルの壁と把握すると、すぐに引き返そうとするが、唯一の出口がノイズによって塞がれてしまう。左側のビルの裏口扉も鍵が掛かっていて開かない。
もはや自分達が死ぬ以外の未来は全て潰されてしまったと、思われた。
「おい、こっちだ!」
突然裏口扉の鍵が開いた。
声を掛けられ、二人は急いで中へ入ると、階段を登って二階の事務室と思われる部屋に入った。
「ここまで来れば、もう大丈夫だ。」
「あ、あなたは……あの時の……。」
「え、知り合いなの?」
助けてくれたのはあの銀色髪の少女だった。輪は知らない為、初めましてだった。
「ありがとう……」
瑠璃と輪は息絶え絶えだった。
「礼なんて要らねえ。それよりも、何とかしなくちゃな。今のうちに体力を回復させとけよ。」
逃げてる間にバッグやせっかく買ったフルーツバスケットを落としてしまったが、命があっての物種、死んでは意味がない。
瑠璃は顔を上げると自分を助けれくれた少女を見た。
「ね、ねえ。あなたは何でここに?」
「そりゃ会いたい人に会いに来たんだ。そしたらこのザマでよ。」
「それは災難だったね……」
だがこの時、輪は違和感を感じていた。少女の声、口調、こないだ何処かで聞いたことがあった。
「ね、ねえ。あなたどっかで会った……え?」
輪は少女の顔を見るや否や、瑠璃の方を見る。
「どうしたの、輪?」
「え、いやいや。だって……いくら何でも似すぎ……っていうかそっくりだよ……。」
瑠璃と少女、風貌と体型、瞳の色と髪の色、黒子の有無の違いはあれど、瓜二つだった。
「お喋りはその辺にしとけ。そろそろ移動しないと、ここもヤバい。」
だがここでノイズの数が少なくなったので、脱出を図る。
少女がドアを開けて、退路を確保すると、瑠璃と輪がそれに続いて、階段を降りている時、輪はある事に気づいた。
(あのノイズ……すぐに襲って来ない……。あの時の夜もそうだった。)
ノイズは人を認識した瞬間、炭素化すべく襲いかかって来るが、今回と言い、夜での出来事といい、何故か襲って来ない。
(もしかして、ノイズは誰かに統率されている?!でも誰に……まさか!)
今いるノイズを操る者の正体、そして夜に遭遇した襲撃者の正体、輪はそれに気付いてしまった。
だが考え事に夢中になるあまり、輪は足を踏み外し、階段から転げ落ちてしまう。
「輪!大丈夫?!」
瑠璃は心配して輪に駆け寄る。
「大丈夫だよ……!それよりも瑠璃、早くあの子から……」
「ぁぅっ……!」
逃げて、と言おうとしたが、既に手遅れだった。少女が瑠璃の首の後ろを手刀を入れられた事で瑠璃の意識は奪われてしまった。
「あんた……!瑠璃に何を……がぁっ!」
少女の正拳が輪の鳩尾に直撃する。
「や……ぱり……あ……た……。」
輪が蹲った所を確認すると、気を失った瑠璃の方へ駆け寄る。
「悪かったな、待たせちゃって。迎えに来たからな。」
そう言うと、少女は瑠璃を抱えるが、少女の右足を掴む手があった。
「……てよ……かえ……して……瑠璃を……。」
だが輪のささやかな抵抗も虚しく、簡単に払われてしまう。そして少女は杖を輪に向けた。
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そろそろストックがぁ……