戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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久しぶりの小夜さんの登場……だけど出番はほんの少しだけ。
まあメインじゃないからね。
シカタナイネ☆


その歌は何の為に?

 ガリィの急襲があった日の夜、小夜はヘトヘトになりながら帰宅した。毎日激務に追われ、小夜はヘトヘトで帰ってくるのだが、今日は予定より早めに帰ってこれた。小夜は鍵を開けて、玄関のドアを開ける。

 

「ただいま〜。あぁ〜疲れたわ〜。輪、今日の夕飯は何〜?」

 

 呼んでも輪の応答は来ない。輪の履いている靴はあり、リビングの電気はついている為、いるのは分かるのだが靴が揃えられていない。何かあったのかと気になりドアを開ける。そこに輪がいたのだが

 

「ただいま輪……輪!その怪我どないしたん?!」

 

 輪が救急箱から湿布や絆創膏を出していた。よく見ると頬を殴られた痕がある。

 

「ちょっと、帰りにそこら辺のチンピラに絡まれちゃって。えへへ……。」

 

 小夜の心配を余所に輪はあっけらかんと笑うが

 

「何を笑っとるん?!あんた、3年前もそうやって傷作って……どんだけ心配したと思っとるん?!父さん母さん、旭も亡くなって……うちにはもう輪しかいないんやで!」

 

 小夜は今にも泣きそうになりながら、輪を強く抱きしめる。小夜の背にある棚には仏壇が飾られている。そこに飾られている3つの額縁にはそれぞれ両親と小さな少女の写真が納められていた。

 

「ごめんって小夜姉……心配かけて。もう喧嘩なんてしてないから……って痛い痛い……。小夜姉離して、痛い。」

「あ、ごめん。」

 

 強く抱きしめるあまり、傷が痛む。小夜は慌てて輪を離す。

 

「よし、うちが夕飯作っちゃる!何が良い?」

 

 そう言うと小夜は立ち上がって台所の前に立つ。

 

「じゃあ炒飯!」

 

 輪は笑顔でリクエストした。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 今にも雨が降りそうな曇り空、マリア、調、切歌はナスターシャとジャンヌの墓参りに来ていた。隣り合うように置かれた、西洋式の墓にマリアは花束を墓前に添えた。

 

「ごめんねマム。遅くなっちゃった」

「マムの大好きな日本の味と、ジャンヌの大好きな貝デス!」

「私達は反対したんだけど……常識人の切ちゃんがどうしてもって。」

 

 切歌がキクコーマンの醤油と多様の貝殻を墓前に添えた。明らかに墓に添えていいものではないのだろうが、切歌の要望によって決まった。またジャンヌはフランス出身で、海が好きだと生前から語っていたので切歌は以前より貝殻を集めていた。

 そこにもう一人、来客がやって来た。

 

「輪……?!」

「どうも。」

 

 頬に湿布を貼っていた輪が花束を持ってやって来た。

 

「その湿布、どうしたのデスか?!」

「ちょっと色々ね。それより、私も良いですか?」

「ええ。」

 

 マリアが頷くと、輪は一礼してジャンヌの墓前に花を添えた。

 

「ありがとう、ジャンヌの為に来てくれて。」

「いえいえ。本当は瑠璃も一緒に行く予定だったんですけど、何かオジサンに呼び出されたみたいで……それで私一人になっちゃいました。いやぁ……面目ないです。」

「いえ……瑠璃先輩には色々良くして貰ってますし……。一番負担を掛けてしまってますから……。」

 

 輪と調、共に申し訳なさそうに言う。

 

「あ、どうぞどうぞ。何か話したい事があったら。私は帰りますから……」

「いえ、いてくれて構わないわ。」

 

 F.I.S.とは関係ない部外者は帰ろうとしたが、マリアに引き止められる。輪も監禁されていたとはいえ、ナスターシャとはほんの少しだけ話した事はある。見た目とは裏腹に優しい人だと感じていた。

 マリア達3人がナスターシャとジャンヌに報告する。

 

「マムと一緒に帰ってきたフロンティアの一部や、月遺跡に関するデータは、各国が調査している最中だって。」

「みんなで一緒に研究して、みんなのために役立てようとしてるデス!」

「ゆっくりだけど、ちょっとづつ世界は変わろうとしてるみたい。」 

 

 マリアは心に秘めた思いがある。

 

(変わろうと、進もうとしているのは世界だけじゃない。なのに私だけは……ネフィリムと対決したアガートラームも、再び纏ったガングニールも、窮地を切り抜けるのは、いつも自分のものではない力……。)

 

 それでもマリアは前に進もうと決める。

 

「私も変わりたい。本当の意味で強くなりたい。」

「それはマリアだけじゃないよ……。」

「アタシ達だって同じデス。」

 

 3人の思いを表すように雨が降り始めた時、輪が口を呟いた。

 

「世界って……本当に変わるのかな……。」

「え……?」

 

 声に出したマリアだけでなく切歌と調も輪の方を向く。

 

「どんなに一人が頑張っても……それを邪魔しようとする悪意が必ず現れる……。それを倒しても、また次から次へと邪魔する奴が出てくる……。そしていつか……その人の心は……」

「輪。」

 

 過去の古い記憶が蘇り、まるで呪詛のようなセリフを言う輪だったが、マリアの声で我に返った。

 

「あ、ごめんなさい!今のは冗談です!忘れてください!あはは……」

 

 そう言って無理に笑う輪だが、マリアにはその笑顔が何処か怖く思えた。その笑顔の裏にある、何かドス黒い感情というものを感じ取ったような気がしてならなかった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  

 

 S.O.N.G.本部、現在は寄港しており、本部内ではエルフナインによる作戦の提案がなされていた。

 

「先日響さんを強襲したガリィと、クリスさんと対決したレイア。これに、翼さんとロンドンでまみえたファラと、未だ姿を見せないミカ、この4体がキャロルの率いるオートスコアラーになります。」 

 

 本当であればジークも入れて5体なのだが、エルフナインはその存在を知らない為、4体と答えた。シンフォギアのスペックとまともに戦えるオートスコアラーがまだ存在する事を知った翼とクリスは、ギアを壊され何も出来ない事に悔しがる。

 

「人形遊びに付き合わされてこの体たらくかよ……!」

「そのオートスコアラー達は、お姫様を取り巻く護衛の騎士……みたいなところなのかな?」

「スペックをはじめとする詳細な情報は、僕に記録されていません。ですが……」

「シンフォギアをも凌駕する戦闘力から見て、間違いないだろう。」

 

 現在まともに戦えるのが響と瑠璃のみなのだが、その響が詠唱が浮かび上がらない以上、その責務は瑠璃

 に集中する。託したとはいえ、姉としては心苦しくある。

 弦十郎も父親として同様の気持ちだ。

 

「超常脅威への対抗こそ、俺達の使命。この現状を打開する為、エルフナイン君より計画の立案があった。」

「計画?」 

 

 瑠璃がオウム返しに聞き返す。そしてモニターには深紅の文字でその計画名が表示された。

 

「Project IGNITEだ。」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

  同じ頃、響は未来と相合傘をして下校している。先日の戦いでガングニールが纏えない事に葛藤していたままが続き、未来も心配している。

 互いに言葉を交わしにくく、雨音だけが響く中、未来がようやく切り出した。

 

「やっぱりまだ……唄うのは怖いの?」

「え……うん……。誰かを傷つけちゃうんじゃないかって思うと……ね。」 

 

 ガングニールの起動詠唱が浮かび上がらなかった原因は分かってはいる、だがそれがどうしようもないくらいに解決出来ず、余計にブレーキを掛けてしまっている。

 

「響は初めてシンフォギアを身に纏った時って、覚えてる?」

「どうだったかな……?無我夢中だったし……。」 

「その時の響は、誰かを傷つけたいと思って、歌を唄ったのかな?」

「え……。」

 

 未来のセリフにすぐに否定したかった響だが、それが出来なかった。初めて纏った時は、本当に何がなんだか分からない状態で戦いの世界に放り込まれていたからだ。その時の心境など事細かに覚えていない。本当に、何で自分がシンフォギアを纏うのか、分からずにいる。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 その資料が友里の操作によって開示される。その内容の一部を緒川が読み上げる。

 

「イグナイトモジュール……そんなことが、本当に可能なのですか?」

 

「錬金術を応用することで、理論上不可能ではありません。リスクを背負うことで対価を勝ち取る……。その為の魔剣・ダインスレイフです。」

 

 その途中、アルカ・ノイズの出現のアラートが鳴り響き、反応も検出された。藤尭がモニターを拡大すると、そこにはアルカ・ノイズと、ミカが響と未来を追っていた。

 

「ついに……ミカまでも……。」

 

 エルフナインが不安になりながら呟く。すかさず弦十郎が瑠璃に指令を下す。

 

「瑠璃!直ちに現場へ急行し、響君達を救うんだ!」

「了解!」

 

 瑠璃はすぐさまブリッジから出て行き現場へと向かった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ミカとアルカ・ノイズの襲撃を受けた響と未来は必死で逃亡するが、工事現場に入ってしまう。

 

「逃げないで歌って欲しいゾ!あ、それとも歌いやすいところに誘ってるのか?うーん……おう!それならそうと言って欲しいゾ!それぇー!」

 

 ミカのその大きくも鋭い手を振り下ろして、アルカ・ノイズに指示を出すと、水色の芋虫のような形をしたクロール型アルカ・ノイズ達が先行、二人の走る先を誘導するように周りこむと、二人はアルカ・ノイズのいない方へと走るが、入った先は工事現場の中だった。

 しかも他に目立った出入り口が無い為、階段を登って逃げようとする。一般人である未来を先に行かせて、その後ろに響が続こうとするが、無情にもアルカ・ノイズに二人の間を裂くように階段が分解されてしまいまい、響は落下してしまう。

 

「響!」

「未来……!」

 

 背中を強く打ってしまった響の顔を、追いついたミカが覗き込んだ。

 

「いい加減戦ってくれないと、君の大切なモノ解剖しちゃうゾ?友達バラバラでも戦わなければ、この町の人間を、犬を猫を、みーんな解剖だゾー?」

 

 子供のように無邪気ながらも吐かれるそのセリフは残忍そのものだった。そうはさせるかと立ち上がり、響はギアのペンダントを握るが、まだ戦う覚悟が持てていない状態ではやはり詠唱が浮かび上がらず、ギアを纏えない。

 

「ふーん……本気にしてもらえないなら……。」

 

 ガッカリしたミカの視界の先には未来が映った。するとアルカ・ノイズ達が未来のいる階より下の階段に集まる。シンフォギアでさえ分解してしまうのだから、人間を分解するのだって容易だろう。だが命を狙われている恐怖に臆する事なく響に語り掛ける。

 

「あのね響!響の歌は、誰かを傷つける歌じゃないよ!伸ばしたその手も、誰かを傷つける手じゃないって、私は知ってる!私だから知ってる!!だって私は響と戦って、救われたんだよ?!私だけじゃないよ!響の歌に救われて、今日に繋がってる人は沢山いるよ!だから怖がらないで!!」

 

 決死に訴えかける未来に魔の手が差し掛かる。

 

「ばいなら~!」

 

 ミカの指示を受けたアルカ・ノイズは未来に飛び掛かり、床を分解してしまった事で彼女は宙に放り出されてしまう。

 

「未来!!」

 

 響は身体の底から、魂の全てで叫んだ。

 

 Balwisyall nescell gungnir トロオオオオオォォォォォーーーン!!

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 ギアを纏い、連結させた槍に乗って飛行しながら現場に向かっている瑠璃。ブースターを点火させて全速力で飛んでいる。降りしきる雨で、バイザーの表面が濡れるも、内面の視界にはそれによる支障は出ておらず、鮮明に映し出されている。アルカ・ノイズと敵の反応を頼りに現場に向かっている。

 

「間に合って……!」

 

 嫌な予感を感じながらも、二人とも無事である事を信じる。そこにバイザーがもう一つの反応を捉えた。

 

 Balwisyall nescell gungnir トロオオオオオォォォォォーーーン

 

「この声……もしかして!」

 

 遠くからでも聞こえるその叫びが響であると確信し、工事現場に入る。その途端に建物の一部が分解された事で瓦礫が崩落した。だが瑠璃の視界には、ガングニールのギアを纏った響が未来を抱え、着地していた。響の迷いが吹っ切れたかのように雨は止み、雲の間から僅かに差し込む陽の光が、響と未来を祝福するかのように差し込んだ。

 

「ごめん……。私、この力と責任から逃げ出してた……。だけどもう迷わない……!だから聞いて、私の歌を!」 

 

 その様子は本部のモニターにも映し出されていた。

 

「どうしようもねえバカだ。」

 

 クリスは笑みを浮かべてそう言う。

 

 

「響ちゃん!」

 

 瑠璃の声に気付いた響はその方を向く。瑠璃は二人のもとへ駆け寄る。

 

「瑠璃さん、私も戦います!だから一緒に!」

 

 響の凛とした表情に、瑠璃は頷いた。

 

「うん!行こう!」

 

 未来を降ろした響と槍の連結を解除させた瑠璃は、ミカを見据えて対峙する。

 

「うおりゃぁ~!」

 

 新たにアルカ・ノイズを召喚し、数でゴリ押そうと襲い掛かる。響が一番槍を受け持ち、真っ先にアルカ・ノイズを撃ち抜く。瑠璃も、響の周囲を守るように二つの槍を縦横無尽に操ってノイズを蹴散らす。 

 アルカ・ノイズの数が少なくなった今、アルカ・ノイズは瑠璃に任せ、響の次の標的はミカ。響が真っ先に懐に入り込み殴りこもうとするが、掌から射出した赤いカーボンロッドを手に、受け止める。

 

「コイツ、へし折りがいがあるゾー!」

 

 響のパワーに任せた拳を真正面から受け止めているにも関わらず、余裕の表情を崩さない。流石戦闘特化と呼ばれるだけの事はあるが、それで遅れを取る響ではない。

 瑠璃もアルカ・ノイズを殲滅させて、響の援護に周ろうとしたその時、バイザーの反応がミカともう一人の敵を捉えていた。

 

「もう一人……?!この形って……!」

 

 先程のブリーフィングのモニターに映っていた姿形を捉えた。嫌な予感を感じた瑠璃は叫んだ。

 

「響ちゃん駄目!」

 

 だが既に遅かった。響が殴ったミカは水となって散った。響の方も、その事に唖然としていた。

 

「残念。それは水に移った幻。」

 

 建物の陰に潜んでいたガリィが、腕を組んで勝利を確信した。響のすぐ真下から現れた本物のミカが、ギアのコンバーターに狙いを定めて、掌からカーボンロッドを射出しようと向けていた。

 




キクコーマンというパワーワードw
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