戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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いよいよジークが戦います。どんな能力になるのか?


絶対領域 トポス・フィールド

 響が攻撃したミカと思われたそれは、ガリィが作り出した水の幻影であった。野晒しとなったギアのコンバーターを、直下に現れた本物のミカが、カーボンロッドが放たれる掌を向ける。

 

「しまっ……」

「響!!」

 

 響の絶体絶命の状況に未来が叫ぶ。

 掌かが開き、カーボンロッドが射出されようとしたその時だった。

 

「のわあぁーー!!」

 

 響の目の前がミカとの間に割り込むように、突如黒白のエネルギー波が通り、カーボンロッドを破壊した。

 思わぬ横槍を受けたのを目撃したガリィは放たれた方向を見ると、瑠璃が槍を突き出していた。

 

「まさかアイツ!」

 

 アルカ・ノイズと戦っていた瑠璃の距離は離れていた。バイザーの反応によって響よりも先に本物のミカを捉えていたが、離れすぎた距離では接近しても間に合わなかった。だが瑠璃は槍を連結させて、穂先にエネルギーを最大まで集約させずに、黒白のエネルギーを融合させるように放っていた。

 

【Shooting Comet:Dual Drive】

 

「冗談じゃない……!少しでも手元が狂えば、下手したらあいつも……!」

 

 ガリィの言う通り、下手をしたら響をも巻き込みかねないが、バイデントの戦闘補助システムの軌道演算と瑠璃の動体視力の高さだからこそ成せた荒業なのだ。絶体絶命の危機から脱却した響はミカとの距離を取る。

 

「響ちゃん!大丈夫?!」

「ありがとうございます!助かりました!」

 

 瑠璃も響の所へ駆け寄り、並び立つ。

 

「良かった……。」

 

 響が無事である事を安堵した未来。

 

「今のビックリしたゾ!だけど凄かったんだゾ!」

 

 憤るガリィとは対象的に、体勢を崩して仰向けに倒れたミカは起き上がり、その予想外の攻撃に驚きながらも胸を高鳴らせていた。

 

「じゃあ今度はこっちの番なんだゾ!」

 

 そう言って新たに出したカーボンロッドを片手に構えたミカ。戦闘続行の意思を見せ、対峙する響と瑠璃も構える。

 だが頭上から、両者の間に割り込むように降り立つ者が現れた。

 

「な、何?!」

 

 降り立った時の衝撃で砂煙が立ち込め、視界が利かないが、瑠璃のバイザーにはハッキリとその姿を捉えていた。

 

「何……あれ……。」

 

 砂煙が晴れると、そこにいたのは白を基色とした最後のオートスコアラー、ジーク・ラーゼンライズがハルバードを手に、そこにいた。

 

 S.O.N.G.本部のモニターでもその姿を捉えていた。エルフナインからは4体と聞かされていたが、まさかの5体目が現れたことに誰もが驚愕した。

 

「馬鹿な……5体目のオートスコアラーだと?!」

「どういう事だよ?!オートスコアラーは4体じゃねえのか?!」

 

 その存在を知らなかったエルフナインは酷く動揺していた。

 

「そんな……こんなオートスコアラー……僕の記憶にはありません……!」

「用意周到に秘匿していたという事か。」

 

 エルフナインの狼狽えようから弦十郎はすぐに察した。

 

 ジークが現れ、ガリィは内心舌打ちするもすぐに猫かぶりの態度でジークに話しかける。

 

「ようやく出てきたなんて、遅すぎじゃなぁい?」

「ふんっ……お前の見事な負けっぷりに腹が立っただけだ。」

(私は負けてねえっての……。)

 

 ガリィは声に出さずに心の中で悪態つく。一方割り込んできたジークにミカは抗議する。

 

「あたしの獲物を横取りはズルいんだゾ!」

 

 ぷんぷんと頬を膨らませて怒るがジークはそれを無視し、命令するように言う。

 

「ならバイデントの相手をしていろ。私はこいつを潰す。」

 

 ジークはハルバードの穂先を響に向ける。

 

「う〜ん。まあ戦えるならそれで良いゾ!」

 

 ミカはただ戦えればそれで良いので扱いやすい。ジークは一瞬不敵の笑みを浮かべる。

 

「術式展開……トポス・フィールド……!」

 

 ハルバードの穂先を地面に刺すと、自身を中心に魔法陣のような円陣が展開される。その円の内部には十二芒星の紋章が浮かび上がる。

 

「任務開始……」

 

 すぐさま響の懐に入り込まれてしまい、反応が遅れた響はハルバードの柄で鳩尾を突かれそうになるが、寸での所で腕で受け止めるも、その衝撃が身体に襲い掛かる。

 だがジークは立て続けにハルバードを水平に振るい、響はそれを跳躍して避け背後を突こうとするが、ジークは背後を背後を見ずに、ハルバードの石突を突出す。思わぬ攻撃を繰り出され、対応出来なかった響は鳩尾を突かれ、倒される。

 

「がはぁっ!」

 

 いかにシンフォギアが外から受けた衝撃を和らいでくれても、鳩尾を突かれては呼吸が上手く出来なくなる。咳き込んでいる隙を突かれ、今度は腹部を蹴り上げられた。

 

「響ちゃん!」

 

 ミカと鍔迫り合いになっていた瑠璃は、それを目の当たりにし、急いで救援に駆けつけようとするが、水の壁によって邪魔されてしまう。

 

「私と遊んでいきなよ!」

「そこを退いて!!」

 

 黒槍で突いても水の幻影を貫いただけで本人はすぐ真横から、氷の手刀を振り下ろした。これを白槍で受け止め、さらにそれを受け流して、突き飛ばす事でミカの攻撃が繰り出される前に妨害させる。急いで響の救援に駆け付けたいのだが、水の壁がある限り通る事が出来ない。だがその高さには限りがある。

 

「余所見してないでこっちに集中するんだゾ!」

 

 乱暴な口振りで地面から水柱を放ち、ミカもカーボンロッドを乱射させる。前方からはカーボンロッド、下からは水柱、後ろは水の壁に囲まれた。どっちを防いでももう片方の攻撃でやられてしまう。だが側面へ避けるは不可能だ。

 

「なら……!」

 

 槍を連結させてそのエネルギーを穂先に集める。そして、地面にそれを思いっきり叩きつけると、その衝撃で、身体は宙を舞う。

 

「飛んだ?!」

「飛んだゾ!」

 

 その高さは水の壁を超え、ガリィとミカの攻撃を避けただけでなく、そのまま壁の外へと脱出した。だが……

 

「響いいいいぃぃぃ!!」

 

 未来の悲鳴が聞こえ、その方を見るとうつ伏せで倒れていた響が、ジークに頭を踏みつけられていた。

 

「響ちゃん!!」

 

 一糸纏わぬ姿になっている辺り、ギアを破壊されてしまったという事を意味していた。

 

「一足遅かったな。」

 

 ジークは勝ち誇ったように笑うと、未来のいる方へ響の身体を蹴り飛ばす。

 

「響!嫌ああぁぁ!返事をしてよ!響いいぃぃ!!」

 

 未来が響に駆け寄り、叫ぶが響は意識を失ってしまっている。 

 さらに瑠璃の背後にあった水の壁が消えた。それにより3体のオートスコアラーに取り囲まれてしまった。

 

 S.O.N.G.のモニターでもその様子が映し出されていた。響があっさりと倒されたのが信じられず、ジークの驚異的な戦闘能力の高さを見せつけられた。

 

「まずいぞ!これでは袋の鼠だ!」

「逃げろ姉ちゃん!!」

 

 翼とクリスの叫びは通信で届いているが、もはや逃げ道のない絶体絶命の窮地に立たされていた。はずなのだが

 

「やめだ。」

 

 ジークが突然ハルバードを降ろし、テレポートジェムで転移してしまった。

 

「はあああぁぁ?!」

  

 ガリィは目を疑った。このまま取り囲んでしまえば確実にバイデントも破壊出来たはずなのだが、まさかの撤退という行動にガリィは素を晒してしまう程に驚愕した。

 

「な、何で……」

『瑠璃!今のうちに!』

 

 瑠璃もジークの撤退に驚いていたが弦十郎の通信で響と未来を連れて撤退する。呆気に取られていたガリィとミカはそうはさせるかと攻撃を仕掛けるが、瑠璃が白槍を投擲して、建物に衝撃を与えた事で僅かに支えられていた建物は崩壊し、それに巻き込まれる前にガリィとミカもテレポートジェムで退却。結果的に瑠璃はジークの気まぐれによって助かった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 チフォージュ・シャトーに撤退した3体のオートスコアラー。ガリィはジークの独断に悪態つく。

 

「おい!勝手に割り込んだくせに勝手に何勝手に撤退してんだよ?!バイデントはあんたの担当でしょうが!」

「だったらどうした。私は目的通りギアを破壊した。文句はないはずだ。破壊するだけならお前達でも出来るだろう。」

「ああん?!」

 

 ガリィとジークは互いの性格上全くと言っていいほど相性が悪く、それ故に何度も諍いを起こしてはキャロルが止める。

 

「喧しいぞ。」

 

 玉座から見下ろすキャロルの一声で、二人は静まる。

 

「まあこの際だ。計画を次の段階へ進める。残りのギアの破壊はその過程でも出来よう。」

 

 そう言うと、不敵な笑みを浮かべた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 何とか響と未来を連れて撤退に成功した瑠璃だったが、響は意識がなく、ストレッチャーでメディカルルームに運ばれた。未来は何度も名前を呼びかけたが結局、意識は戻らないままになっている。一応命に別状はないようだが、生命維持装置に繋がれた状態になった。

 

「私が手間取ったせいで……響ちゃんが……!」

 

 瑠璃は自分の不甲斐なさを責める形で、拳を壁に叩きつける。そこにエルフナインが歩み寄り、頭を下げた。

 

「ごめんなさい……元はと言えば、僕がオートスコアラーを全機把握していなかったせいで……。」

「いや、今回の件は敵が一枚上手だったということた。エルフナイン君を見事に欺き、戦力の分析を見誤らせた。」

 

 弦十郎は今回の敗北を冷静に受け止めていた。だがこれで制限なしに活動出来るギアはバイデントのみとなってしまい、S.O.N.G.は窮地に立たされた。クリスと翼はエルフナインに頼み込む。

 

「あたしらならやれる!だから、Project IGNITEを進めてくれ!」

「強化型シンフォギアの完成を!」 

 

 エルフナインは頷き、モニターを見据えた。早急に取り掛からなければ、唯一無制限で活動出来るバイデントが破壊されるか分からない。そうなっては今度こそ戦える者がいなくなってしまう。それを防ぐ為に、キャロルの野望を阻止する為に、エルフナインは動き出す。

 




ジーク・ラーゼンライズ

キャロルが作り出した5体目のオートスコアラー。意外にも最初に作製された個体であるが、キャロルの意思でその存在は秘匿されていた。
白を基色としており、西洋騎士の鎧を模した格好となっており、右手にはハルバードを持っている。
待機中はハルバードの石突を床に接し、左腕を高く掲げる英雄像のようなポーズを取る

プライドが高く完璧主義者であり、己のやり方の範疇で勝利を欲する。
キャロルの影響なのか人間を極度に嫌い、「虫ケラ」と見下す。思い出を奪う際には、人間を死なない程度に痛めつけてから奪い取る癖がある。
またガリィとの関係はまさに水と油であり、性格から相容れない。

名前の元ネタはタロットの大アルカナ7番「戦車」の正位置の勝利と逆位置の暴走から。

トポス・フィールド

ジークのみが持つ能力であり、絶対領域。
ハルバードを地面に刺す事で十二芒星の紋章が描かれた円陣が展開され、範囲内にいる生命の動きや五感を一方的にジャックして、相手の動きを先読み防御、攻撃を行う。

元ネタはアリストテレスの著作であるトピカ(ギリシャ語で場所)から。

分かりやすく言えば猗窩座の破壊殺・羅針のような感じです。でも最初のパーフェクトヒューマンみたいな体勢にはなりませんw
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