戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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瑠璃の裸を隠せー!わー!


殲琴を奏でる

 救援に駆けつけたのは強化型シンフォギアを纏った翼とクリスだった。その証として、ギアのコンバーターの側面が二対の翼のような形状へと変わっている。3人の頑張りがシンフォギア改修を間に合わせ、瑠璃の絶体絶命の窮地を二人が救った。切歌と調は涙を浮かべつつ安堵した。

 

「お姉……ちゃん……クリス……。」

 

 瑠璃の視界は霞んで見えているが、大好きな姉と妹が映っていた。

 

「私達の分までよく頑張ったな、瑠璃。」

「後はあたし達に任せてくれ。」

「良かった……わた……し……」

 

 発電施設の防衛は叶わなかったがシンフォギアの改修まで持ちこたえた。託され、託した瑠璃の努力が実を結び、危機を救ってくれたのが嬉しかった。次第に瑠璃の瞼は閉じ、意識を失った。

 

「姉ちゃん……!」

「案ずるな。気を失っただけだ。それよりも……。」

 

 翼とクリスは瑠璃を痛めつけたジークとミカを睨んだ。

 

「さて、どうしてくれる?先輩!」

「可愛い妹をここまで嬲られたのだ。反撃程度では生温いな。逆襲するぞ!」

 

 

 麗しい姉妹愛がモニターに大きく映し出されている反面、一糸纏わぬ瑠璃の裸体も一緒に映ってしまっていた。

 

「男どもは見るな!!」

 

 マリアが怒鳴ると、男達はモニターから目を逸らしつつ目を瞑る。そして何故か未来が響の視界を手で覆う。

 

「うおおぉ?!な、何で私までぇ?!」

「あ、ごめん……!つい勢いで……」

 

 だが戦闘管制担当である藤尭はこれでは職務遂行出来ないので恥を承知で進言した。

 

「モニターから目を離したままでは、戦闘管制が出来ません!」

「何その必死すぎるボヤきは?!」

「3人が撤退するまでの間よ。それに、今の翼とクリスなら、それくらい問題ないはず」 

 

 藤尭の進言はマリアと友里によってあえなく消された。

 

「良かった……瑠璃……」

 

 瑠璃の生存を確認した輪は緊張の糸が解れたようで、脱力するように膝から崩れ落ちそうになるが、咄嗟にマリアが支える。

 

「大丈夫?」

「す、すみません……瑠璃が……瑠璃が……。」

 

 涙ぐんでいるのか上手く言葉で言い表せない。そんな輪をマリアはおかしかったのか、少し笑ってしまう。

  

 戦場ではジークが小手調べと言わんばかりにアルカ・ノイズを召喚する。顕現したアルカ・ノイズは命令通り、装者達を亡き者のしようと襲い掛かる。翼は刀でアルカ・ノイズを両断、クリスがボウガンで蜂の巣にする。解剖器官がアームド・ギアに触れても分解されない。そして、大群をなしていたアルカ・ノイズを殲滅させた事がギアの出力も上がっている事を証明している。Project IGNITEは成功を意味した。

 

「ここは二人に任せるデス!」

 

 切歌と調はそれぞれジャケットを羽織り、その柔肌を隠し、気を失った瑠璃を担いで撤退する。

 

「私達が足手まといだから……瑠璃先輩を……!」

 

 託されたのに果たせなかった。ジークに痛めつけられた瑠璃を、自分達は守れなかったばかりかただ倒れ伏して、見ている事しか出来なかった。瑠璃に羽織らせたジャケットの隙間から、僅かに見えた裸体に刻まれた傷が調の心を締め付ける。

 

 翼とクリスの重なる歌が、エルフナインが頑張って改修したシンフォギアがアルカ・ノイズを殲滅させた。次の標的はミカとジークだ。

 

「ほう……。」

 

 ジークは右手に握るハルバードを構える。翼は大刀から刀を抜刀すると、罰印に斬撃を放つ。

 

【蒼刃罰光斬】

 

 トポス・フィールドの範囲外で放たれた為、先読みは出来なかったがミカと共に斬撃を跳躍で避けるがその着地地点にクリスの大型ミサイルが2発発射される。

 

【MEGA DEATH FUGA】

 

 地に足がついていない状態では避けられない。だが巨大なミサイルを真正面から防ぐ事もできない。ミサイルは着弾し大爆発を起こした。

 流石の二体もこれをくらえばタダでは済まない……と思われていた。

 何と煙が巻き上がるとそこには突如現れたキャロルの魔法陣の結界によって防がれていた。

 

「面目ないゾ!」

「感謝します、マスター。」

「いや、手ずから凌いで分かった……。オレの出番だ。」 

 

 まさかの黒幕がここに現れた事には意表を突かれたが、絶好の好機であると踏んだ翼とクリスは不敵な笑みを浮かべる。

 

「全てに優先されるのは計画の遂行。ここはオレに任せてお前達は戻れ。」

 

 キャロルは二体に淡々と命令を下す。承知した二人はテレポートジェムを割り、根城であるチフォージュ・シャトーへと転移した。まさかの敵前逃亡という予想外の行動に驚くクリス。

 

「とんずらする気かよ?!」

「案ずるな。この身一つでお前ら二人を相手するぐらい、造作もないこと。」

「その風体でぬけぬけと吠える……!」 

 

 たった一人で二人の装者と、しかと生身でやり合うと言われているようなものだった。完全に挑発と言っても過言ではない。だが翼はそれに乗る事はなく、逆に返してやった。

 

「なるほど。形を理由に本気が出せなかったなどと、言い訳されるわけにはいかないな。ならば刮目せよ!」

 

 そういうと魔法陣から取り出した紫色の竪琴を取り出す。それをキャロルは弦を弾き、美しい音色を奏でる。

 だが本部のモニターには警報が発生していた。キャロルが奏でた瞬間、高エネルギー反応をキャッチしたからだ。原因は間違いなくキャロルなのだろうが、その正体が何なのかが掴めず、装者の中では年長者であるマリアですら困惑し、同じような者が後を絶たない。

 

「アウフヴァッヘン?!」

「いえ、違います!ですが非常に近いエネルギーパターンです!」

「まさか……聖遺物起動?!」

 

 だがエルフナインだけがそれを知っており、モニターを見ながら呟いた。

 

「ダウルダブラのファウストローブ……!」 

 

 ダウルダブラ、それがキャロルの持つ竪琴の名称である。ダウルダブラがローブと帽子を捨てたキャロルの衣服と1つになるように変形した。同時にキャロルの身体が一回り大きくなり、艶やかな肉体へと成長する。そしてダウルダブラはまるでシンフォギアのようなパワードスーツ、ファウストローブを纏った。

 

「これくらいあれば不足はなかろう?」

 

 翼の挑発を返すように成長した自らの胸を揉む姿を見せつける。そして、指先から琴の弦が二人を切り裂かんと襲い掛かる。

 翼とクリスは跳躍して避けたが、先程いた場所は容易く切り裂かれていた。

 

「大きくなった所で!」

「張り合うのは望むところだ!」

 

 翼とクリスが反撃に出る。クリスのガトリング砲を乱射し、翼が斬りかかる。だがキャロルは背部のユニットを展開させると左右から炎と水の波動を放つ。その威力は強化型シンフォギアをも凌駕していると言わんばかりに二人を吹き飛ばす。

 これ程の力の差を見せつけられた本部にいる者達は驚きを隠せなかった。そして、何故そんな力があるのかと藤尭が疑問を抱く。

 

「唄うわけでもなく、こんなにも膨大なエネルギー……。一体どこから……?」

  

 エルフナインが答えた。

 

「思い出の焼却です。」

「思い出の?」

「キャロルやオートスコアラーの力は、思い出と言う脳内の電気信号を変換錬成したもの。作られて日の浅い者には力に変えるだけの思い出が無いので、他者から奪う必要があるのですが……数百年を長らえて、相応の思い出が蓄えられたキャロルは……」

「それだけ、強大な力を秘めている……!」

 

 勘付いたマリアが言う。そこに輪がエルフナインに聞きたいことがあった。

 

「じゃあ……力に変わった思い出は、どうなっちゃうの?まさか……消えてなくなるの?」

「その通りです。キャロルは、この戦いで結果を出すつもりです!」

「そんな……。」

 

 輪はその恐ろしさに、顔が青ざめた。モニターに映る戦いを見守る者が多い中、マリアと緒川は輪の表情を見逃さなかった。

 

 キャロルの操る弦に苦戦を強いられる翼とクリス。単騎でたったこれ程の威力を自由自在に操れてしまうキャロルとの力の差は歴然である。翼の剣も、クリスの矢も、今のままでは届かない。痛みを押し殺して二人は立ち上がる。

 

「くそったれがぁ……!」

「大丈夫か……雪音?」

「アレを試すくらいにゃぁ……ギリギリ大丈夫ってとこかな……!」

 

 Project IGNITEによって強化されたシンフォギアはこれが全てではない。

 

「弾を隠しているなら見せて見ろ。オレはお前らの全ての希望をブチ砕いてやる!」

 

 キャロルは二人を見下すように言い放つ。クリスは翼に確認するように向きながら問う。

 

「つき合ってくれるよな?」

「無論、一人で行かせるものか!」

 

 二人はキャロルの方に向き合い、ギアのコンバーターに触れる。そして二人は声を重ねて叫ぶ。

 

「「イグナイトモジュール、抜剣!」」

 

 コンバーターの羽状のパーツをスイッチのように押し込むと、《ダインスレイフ》の音声が鳴る。コンバーターを取り外し、それを宙に投げるとコンバーターの外殻が正三角形の形をなすように展開され、その中央にはエネルギーの刃が現れる。その刃が発動主である二人にそれぞれ、胸を貫いた。禍々しいオーラが二人を覆うと、二人は声にならないうめき声を挙げながら苦しみだす。

 

「腸を掻きまわすような……これが……この力が……!」

 

 二人にその身に降りかかる憎しみや悲しみ、怒りといった負の感情は、闇となってそのまま肉体的にも、精神的にも蝕んでいく。

 

 イグナイトモジュール、それはエルフナインが考案したProject IGNITEによって強化されたシンフォギアに追加された決戦機能である。

 そもそも何故それが追加されたのか、この計画が発表された時に遡る。

 

「ご存じの通り、シンフォギア・システムにはいくつかの決戦機能が搭載されています。」

「絶唱と……」 

「エクスドライブモードか。」

 

 それがシンフォギアに搭載された機能である。だが絶唱には致命的な弱点がある。それは使用者の負荷を度外視する点についてである。これを発動して敵を倒せなかったら、自らにもダメージが及ぶだけでなく、止めを刺されるのは容易い。

 

「とはいえ、絶唱は相打ち前提の肉弾。使用局面が限られてきます。」

「なら、エクスドライブで……」

 

 瑠璃がならばと進言するが緒川に遮られる。

 

「いえ、それには相当量のフォニックゲインが必要となります。奇跡を戦略に組み込むわけには……」

「確かに……そうですね……。」

 

 エクスドライブは発動出来れば強力な切り札となる。だが発動には緒川の言う通り、膨大な量のフォニックゲインが必要となる為、発動はほぼ不可能と言ってもいい。

 だがただ出力を上げただけでは本当の意味で強化されたとは言えない。エルフナインが話を続ける。

 

「シンフォギアにはもう一つの決戦機能があるのをお忘れですか?」

 

 装者達には心当たりがあった。だがそれは決戦機能と言うには程遠いものである。

 

「まさか……『暴走』?!」 

「立花の暴走は、搭載機能などではない!」

「とんちきなこと考えてないだろうな?!」

 

 クリスはエルフナインの胸倉を掴む。暴走を利用して戦うなど容認出来るはずがない。だがエルフナインは冷静だった。

 

「暴走を制御する事で、純粋な戦闘力へと変換錬成し、キャロルへの対抗手段とする……これが、Project IGNITEの目指すところです……!」

  

 だがそれを扱うにはその身に降りかかる闇を制御するだけの心の強さが求められる。今二人の精神には、目を背けたくなるような苦しみに襲われている。

 

(あの馬鹿は……ずっとこんな衝動に晒されてきたのか……!)

(気を抜けば……まるで深い闇に……!)

 

 響が暴走した時、どれだけの苦しみを味わったかを、翼とクリスはこのような形で知ることになった。

 

「モジュールのコアとなるダインスレイフは、伝承にある殺戮の魔剣。その呪いは、誰もが心の奥に眠らせる闇を増幅し、人為的に暴走状態を引き起こします。」

「それでも、人の心と英知が破壊衝動を捻じ伏せる事が出来れば……」

「シンフォギアはキャロルの錬金術に打ち勝てます。」

 

 それがProject IGNITEの、世界を救う為の切り札である。




ちなみに今、瑠璃は意識を失ってますが、後々自分の裸体が映し出されたと知った瑠璃は恥ずかしさのあまりしばらく自分の部屋から出て来れなかったとか……
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