戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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今回の冒頭は一人称視点で進んだ後、普段通りの三人称視点に戻ります。


抜剣!

 私の夢、それは世界に羽撃いて、歌を届けたい。防人の歌ではなく、天まで昇る歌を唄いたい。だが私に流れる風鳴の血、それが呪いのように私を縛り付ける。幼き頃より、この身を剣として鍛え上げられた歌を聞いてくれる観客は、いつだって人ではなく、ノイズしかいない。

 お父様に褒めてほしくて、己を研いても褒められた事は一度もない。

 

『お前が私の娘であるものか。どこまでも役に立たぬ剣だ。』

 

 そして、この身が剣である限り、私は誰かを抱きしめる事すら叶わない。目の前に現れた奏を……この手で切り裂いてしまった。私は……こんな出来損ないの剣に……

 

 

 歌で世界を平和にする。それがパパとママの夢で……姉ちゃんと交わした約束だ。何度か遠回りしちまったけど、姉ちゃんと一緒に平和を掴み取ろうと頑張っている。姉ちゃんと同じ学校に通って、新しい後輩も入って来て、皆で何気ない日常を過ごしていたい。

 だけど……いつだってあたしは……守られてばかりだ……。バルベルデでパパとママを失って、姉ちゃんはあたしを庇ったせいで記憶を失うまで傷ついて……!こないだだって、あたしが不甲斐ないせいで姉ちゃんがまた傷ついて、後輩達に守られるしかなかった!

 あたしが弱いままでいるから……これじゃ本当に何もかも失っちまう!あたしのせいでみんなを地獄に落としちまう!嫌だ……そんなの嫌だ!

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 闇に苦しむ翼は、咄嗟にクリスの手を握る。そうしなければ、己を見失った獣へと堕ちてしまう。

 

「すまないな……。雪音の手でも握ってないと、底なしの縁に、飲み込まれてしまいそうなのだ……!」

「おかげで……こっちもいい気付けになったみたいだ……。危うくあの夢に溶けてしまいそうで……!」

 

 二人は辛うじて己を制御出来ていたが、その身に降りかかる闇を支配する事は叶わなかった。それを証拠に、禍々しい闇は消えたが、ギアはそのまま変わっておらず、二人は息絶え絶えの状態だった。

 その結果を見ていたキャロルは、そんな二人を見下ろしながら

 

「尽きたのか?それとも折れたのか?いずれにせよ、立ち上がる力くらいはオレがくれてやる。」

 

 そう言うと先程とは形の違う、まるで飛行船を思わせる様な姿をしている。だがその身体の下にある模様が、ハッチのように開くと、そこから比べ物にならないくらいの、大量のアルカ・ノイズが降り注いだ。しかも発電施設に限らず、その周域にまで及ぶ大群をなしている。それにより、一番外にいるアルカ・ノイズが近隣の街を攻撃し始める。被害を受けた所は赤い塵が舞い、それによる二次被害で爆発が起こる。

 

「いつまでも地べたに膝をついていては、市街への被害は抑えられまい。」

 

 このままではキャロルの言う通り、被害が増すばかりだが、今の二人にはこの大群をどうにか出来る状態ではない。残された道はイグナイトを制御するしかないが、さっきそれを決行した結果が今の状態だ。失敗は許されないが、成功出来る可能性など皆無に等しい。

 

「僕の錬金術では、キャロルを止めることは出来ない……。」

「大丈夫。可能性が全て尽きたわけじゃないから。」

 

 キャロルを倒す一手に届かない事を落ち込むエルフナインに、未来が語りかける。エルフナインの手には発電所が陥落寸前に改修に成功したガングニールのギアペンダントが握られていた。

 

「ギアも可能性も、二度と壊させやしないから!」 

 

 響は笑みを浮かべてそう言い切ると、弦十郎の方に向き直る。

 

「師匠!私出ます!」

「行けるのか?」

「はい!瑠璃さんが繋いで、エルフナインちゃんが直してくれたこのギアで!」

 

 響の澄んだその言葉を信じた弦十郎は出撃許可を出した。

 

 その移動方法は潜水艦から発射されたミサイルをサーフィンのように乗りこなして、戦場へ向かうという荒っぽいやり方だった。だが自らの脚より最速で、最短で、真っ直ぐに、一直線に戦地へと到着した。

 ちなみに、響が降りたミサイルはそのままアルカ・ノイズの群れに着弾して起きた爆発によって、少しではあるが数が減った。

 響の到着を確認したキャロルは不敵な笑みを浮かべる。

 

「ようやく揃うか。」

 

 響はミサイルから降りて着地すると、すぐさま翼とクリスの所へ駆け寄った。

 

「すまない、お陰で助かった。」

「とんだ醜態を見せちまったけどよ。」 

 

 響という希望が現れた事で、少しばかり二人の心に余裕に生まれたようだった。

 

「イグナイトモジュール、もう一度やってみましょう!」

「だが、今の私達では……」

 

 このままやっても再び失敗する。先程抜剣して、これ程までに困難である事を突きつけられてしまい、自信をなくしてしまう。だが響は

 

「未来が教えてくれたんです、自分はシンフォギアの力に救われたって。この力が、本当に誰かを救う力なら、身に纏った私達だって、きっと救ってくれるはず!だから強く信じるんです!ダインスレイフの呪いを破るのは……」

「いつも一緒だった、天羽々斬……」

「アタシを変えてくれた、イチイバル……」

「そしてガングニール!だから信じましょう!私達と、ギアの絆を!」

 

 絆、それは瑠璃がいつも大切にしているもの。人の受け売りではあるが、もしこの場に瑠璃がいたら同じ事を言っていただろう。

 

「そうだな。信じよう、胸の歌を、シンフォギアとの絆を!」

「この馬鹿に乗せられたみたいで格好つかないが、悪くねえ!」

 

 3人は並び立ち、叫ぶ。

 

「「「イグナイトモジュール、抜剣!」」」

 

 3人はギアコンバーターのウィング型のスイッチを押し、それを取り外して宙へと投げると、外殻が開きて、エネルギーの刃を展開する。そして、その刃が、それぞれの使用者の胸に突き刺さった。

 再びその身に降りかかる闇が、痛みが、苦しみが3人を蝕んでいく。この闇を支配しない限り、キャロルに勝つ事も、世界を救う事だって出来ない。

 

 ブリッジではマリア、そして本部に戻りまともな衣服を着用した調と切歌が叫ぶ。

 

「呪いなど斬り裂け!」

「撃ち抜くんデス!」

「恐れずに砕けばきっと……!」 

 

 未来と輪は何も言わなかったが、未来は必ず出来ると信じ、輪は3人が呪いに打ち勝つ事を祈っていた。

 

(未来が教えてくれたんだ……!力の意味を……!背負う覚悟を……!)

 

 今の響に迷いはない。

 

(だからこの衝動に塗りつぶされて……)

(((なるものかあああああああぁぁぁぁぁ!!)))

 

 すると、3人の身を覆う闇がパワードスーツとの融合を果たすように漆黒へと変わり、ギアの装甲も白かった部分が、禍々しい黒へと変えた。

 彼女達の声を重ねるように唄う。

 

「モジュール稼働!セーフティタウンまでのカウント、開始します!」

 

 藤尭が報告すると、モニターに映し出されていた『999』の数字が減少し始める。これはイグナイトを稼働できる制限時間であり、これが0になるといかなる状況であっても強制解除されてしまう。故に一刻も早く勝負をつける必要があった。

 

 イグナイトモジュールを制御した3人を待っていたかのように笑い、アルカ・ノイズを大量に召喚する。

 

「検知されたアルカ・ノイズの反応……その数3000?!」

 

 友里はその数に驚くが、3人は怯む様子すらない?

 

「たかだか3000!」

 

 響が言い切ると、真っ先にアルカ・ノイズの群れに殴りこむ。だがその群れに飛び込むと、拳を一振りでその場にいたアルカ・ノイズ達は塵になった。

 翼も、刀を頭上から振り下ろし、蒼色の斬撃を放ち、後ろにいたアルカ・ノイズごと両断する。

 

【蒼ノ一閃】

 

 クリスは腰のアーマーを展開させた小型ミサイル、背中に4本の大型ミサイルを構え、一斉掃射させる。

 

【MEGA DETH QUARTET】

 

 全員が全員、通常の形態より大幅に出力が上がっており、その力を存分に発揮する3人。程なくして3000のアルカ・ノイズは殆どが塵へと還る。

 

「臍下あたりがむず痒い!!」

 

 響達を見て笑うキャロルは、響達を叩き潰さんと弦を操る。響達はすぐに避け、その場は粉砕されるが、そこに自身が召喚していたアルカ・ノイズも葬る。さらにクリスに向けて波動を放ち、クリスはすぐさまそこから退避する。

 

「強大なキャロルの錬金術……ですが、装者たちもまたそれに対抗できる力を……!」

 

 緒川の言う通り、さっきまでは手も足も出なかった。だが今は互角に戦えている。誰もがキャロルに勝てると確信していた。だが未来は皆が考えているものとは少し違った。響の事だ。

 

(それでも響は、傷つけ傷つく痛みに、隠れて泣いている。私は何もできないけれど……響の笑顔も、その裏にある涙も、拳に包んだ優しさも……全部抱きしめて見せる。だから……)

「負けるなあああああぁぁぁ!!」

 

 キャロルのダウルダブラの弦が、響の右腕に絡みついたが、それを逆に引っ張る事でキャロルを手繰り寄せた。急に引っ張られたキャロルが体勢を崩すのを見逃さなかった翼は斬撃を、クリスは結晶の矢を放つ。キャロルはそれらを弦を纏め、盾のようにそれを防ぐが響の接近を許してしまい、キャロルの鳩尾に殴り込み、そのまま押し込んで、施設の壁に激突させた。

 イグナイトの高火力をまともに受けたキャロルのファウストローブは所々破けているが、響は全てのブースターを点火させた飛び蹴りをキャロルにくらわせると、大爆発を起こした。

 ダメージが大きすぎたのか、ファウストローブは解除され、キャロルの身体も幼い状態に戻っていた。この勝負、響達の勝ちが決まった。

 

「勝ったの……?」

「デスデス、デース!」

 

 ブリッジにいる調と切歌波喜び合い、マリアと輪、そして未来は安堵する。

 

「キャロルちゃん……。どうして世界をバラバラにしようなんて……。」

 

 響は痛ましい姿になったキャロルに歩み寄る。

 

「忘れたよ。理由なんて……。思い出を焼却……戦う力と変えた時に……。」

 

 キャロルと言えど、思い出を力に変えてしまえばその記憶は失われてしまう。強大でありながら、悲しい力である。

 

「オレに勝った褒美だ……一つ教えておいてやる……。裏切り者はすぐ近くにいる……。」

 

 キャロルは親切で教えたわけではない。誰かと繋ぐ事で強くなれる響を嘲笑う為に教えたのだ。

 

「その呪われた旋律で誰かを救えるなどと思いあがるな……。」

「え……?」

 

 キャロルは奥歯を噛みしめるとそこに緑色の光が一瞬発した。その瞬間にキャロルは倒れ、その身体は黒く染まり、炎で焼かれた。

 

「キャロルちゃん?!キャロルちゃん!!」

 

 キャロルは自らの意思で自決した。響とは決して相容れないと、そう告げるように。

 

 キャロルが死んだと同時に、チフォージュ・シャトーの広間では、オートスコアラーの頭上に、それぞれの色の垂れ幕が降りていた。

 

「呪われた旋律……誰も救えない……。そんなことない……そんな風にはしないよ……キャロルちゃん……。」

 

 キャロルの身体を焼く炎の煙は空へと昇り、響はそれを見ながらそう告げた。

 

 奇しくも同じ時に、メディカルルームで眠っていた瑠璃の意識が戻った。




今回、瑠璃の出番ただ目覚めただけ!

もしこの小説のR-18版を作ったら見る人はいるのだろうかと考えてしまう私……。
(まあそもそも作れる程の文章力無いんですがw)
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