戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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恐らくこれでアニメ1話分になるかなーと思います。

ですがオリジナルエピソードはまだ続きます。

なのでG編より長くなると思います。


ビデオレター

輪が裏切り者だと知り、何とか止めようとしたが結果は最悪だった。親友に復讐の為に利用され、罵倒され、一方的に絶交を告げられ姿を消した。今は本部の休憩室に引き篭もっており、他の面々も何て声を掛ければ良いか分からず、誰も立ち入る事が出来ない。瑠璃の心は相当のダメージを負ってしまっており、このままではイグナイトが使えなくなると危惧されている。

 なお切歌と調は幸い大した怪我もなく、問題なく出動できるとの事だった。だがそれでも輪が裏切り者だったという事実に、みんなの心は沈んでいた。

 響以外の装者と未来は雨に打たれており、身体を冷やさない為にシャワーを浴びる装者一同。

 

「輪先輩が裏切り者……。」

「あんな輪先輩……見たことないデスよ。」

 

 二人にとって輪は面倒見のいい先輩であり、よく家に呼んではご馳走してくれた。故にさっき見せたその掌返しには驚愕を隠せなかった。

 

「あいつの昔話、あの姉貴から聞いていたけど……。まさかあいつ……先輩をずっと恨んでたなんてな……。でも……それでもあいつの彼氏の命を奪ったのも……あいつの人生を狂わせたのもあたしだ……!あたしがソロモンの杖を起動させなければ……!」

 

 クリスは壁に拳を叩きつけた。こんな事をしても輪への贖罪にはならないのは分かってはいるが、瑠璃が傷つき、輪を狂わせてしまった原因が自分にあると考えてしまい、己を責めずにはいられなかった。

 

「いや、私もあの件に関わった者として責任がある。あの病院での語らいも……今思えば出水の反応にも合点がいく。迂闊だった……。」

「やめなさい。今更後悔してもあの子の傷は癒えないし、帰って来ないわ。それよりも、どうやってあの子を取り戻すかを考えるべきでしょう?」 

 

 互いに傷の舐め合いをしても輪は戻って来ない。そんな中、マリアだけは悲観していない。寧ろ堂々と先を見ている。

 ただ未来はF.I.S.に捕まった時、輪の過去を聞いていたが、それは冗談だと笑い飛ばしていた。だがまさかそれが本当の事だとは思わず、あの時怒ってしまった事に後悔している。

 

「でもマリアさん、どうやって……。」

「やはり鍵は……瑠璃ね。」

「どういうことデスか?」

「あの子が投げつけたカメラ。今解析して貰ってるの。あの子の事だから、ただカメラを投げただけとは考えにくいわ。」

 

 マリアがキャッチしたカメラをもしやと考え、弦十郎に渡したのだ。クリスがカメラと聞いて思い出す。

 

「確かに、あのカメラ好きのパパラッチが、カメラを壊すなんて思えねえ……!」

「もしかしたら……何かあるかも……!」

 

 そこにエルフナインが入って来た。

 

「皆さん!すぐに来てください!あのカメラの解析が終わりました!」

 

 マリアの睨んだ通り、何かあったようだ。すぐに身体を拭いてから着替えると、ブリッジへ向かった。

 

 同じ頃響は瑠璃が引きこもっている休憩室の前に来ていた。弦十郎に頼まれ、瑠璃を連れてくるよう言われた。

 

「瑠璃さん、響です。入りますよ。」

 

 そう言うと扉を開けて部屋に入った。電気はついていなかったが、すすり泣いているのは聞こえる。電気をつけると、瑠璃はベッドの上で、身体を屈んで泣いていた。響は瑠璃の隣に座る。

 

「瑠璃さん、大丈夫……じゃないですよね。」

 

 大事な親友を失う悲しみは痛い程分かる。響もかつて、未来に隠し事をして、そうなった事があった。結果的には仲直り出来たが、同じ結果になるとは限らない。

 

「瑠璃さん、師匠が呼んでます。もし落ち着いたら……来てください!みんな待ってますから!」

 

 響は無理に連れて行かず、瑠璃に委ねる事にした。強引に連れて行った所で瑠璃を余計に傷つけるだけだ。響は部屋から出ていき、そっと扉を閉めた。

 

 ブリッジに瑠璃を除いた装者が集まった。

 

「皆さん……ごめんなさい。僕が裏切り者の存在を教えたせいで、瑠璃さんが……」

 

 情報源であるエルフナインが申し訳なさそうに謝ると、弦十郎はその頭を撫でる。

 

「君のせいではない。元はと言えば、俺達大人の不手際だ。俺が輪君の心の闇に気付いてやるべきだった……。だが、今となっては手遅れ……か。」

 

 あれだけ明るく好意的に振る舞っていただけあって、その本性を知った時は衝撃が強かった。弦十郎や緒川ですら調査をしなければそれを見抜く事が出来なかったのだ。装者達が見抜けないのも無理はない。

 

「藤尭。」

「分かってますよ。」

 

 カメラをオペレーターのコンピュータに接続して解析する。

 

「姉ちゃんはどうする?」

「まだ中身が分からない以上、ここに呼ぶのは危ないわ。今はまだ……。いえ、その必要はないみたいね。」

 

 マリアが瑠璃を呼び寄せるのを躊躇ったが、そこに泣き止んだ瑠璃が入って来た。 

 

「姉ちゃん!大丈夫かよ?!」

「うん……。」

「瑠璃……。」

 

 とても大丈夫には見えなかった。頬の顔は赤さから相当泣いていた事が分かる。翼は何か声を掛けようとしたが、何を伝えたらいいのか分からなかった。

 その時、藤尭が報告する。

 

「映像は真っ暗ですが、ビデオデータがあります。」

「今からそれを映す。瑠璃、戻るなら今だぞ。」

 

 弦十郎は瑠璃の覚悟を問う。内容は誰も把握してはいないので、映った内容次第では瑠璃に追い打ちを掛ける結果になりかねない。故に僅かな逃げ道を与える。

 瑠璃は無言で首を振る。見るという証だ。

 

「分かった。藤尭、映せ。」

 

 その意図を汲み取った弦十郎は藤尭に指示を出す。尭の手慣れたブラインドタッチですぐに映像がモニターに映し出される。藤尭の言う通り画面は真っ暗だが、物音は聞こえる。

 

 『カメラはいいよね。音声だけで良いや。』

 

 恐らくマイクテストをしていたと思われる。

 

『出水輪です。もしこれを聞いていたら……。ううん……回りくどいことは言わない。

もう言っちゃいます。私は、あのキャロルという子供と結託して、S.O.N.G.の情報を流しました。きっかけは、キャロルに3年前のライブの真実を教えてくれました。裏でネフシュタンの鎧っていう聖遺物を起動する為に、ツヴァイウィングのライブを使って行った事……。

それを知った時、私や透は利用されたんだと思って、私の中にある怒りや憎しみが……燃え上がってしまって……もう、自分でもどうする事も出来なくて……。』

 

 同じ被害者である響は、自分も少しでも違ってたら同じ事をしていたのだろうと考える。

 

『本当は分かってたんです。恨み続けても、失ったものは帰って来ない。うん……理屈では分かっていても、怒りや恨みで……それを理解したくなかった……。翼さんを恨んでも、それは逆恨みだって分かってても、誰かに恨みをぶつけるしかなかった……。

でも……その為に、瑠璃を裏切っちゃった……。あの時……オートスコアラーが瑠璃を痛めつけているのを見た時……自分のした事の恐ろしさに気付いて……でももう取り返しがつかなかった……。私……本当に最低だなぁ……。』

 

 あの時、裏切り者として暗躍していた輪だったが、あの叫びは本心だった。マリアはそれを信じていたからあのカメラの意図に気付くことが出来た。

 

『罰はいくらでも受けます。皆から後ろ指を指されるだろうし、何を言われても返す言葉もないし、罪はキチンと償います。みんなが望むなら……私の命も差し出します……。

ただ、小夜姉には内緒にしてください。小夜姉には……もう数え切れないくらい迷惑を掛けちゃったから……どうか小夜姉を責めないで……小夜姉を悪く言わないでください。どうかお願いします。』

 

 音からして頭を下げているのだろうか。

 

『最後に……一つだけ……。瑠璃に言いたい事がある……。』

 

 深呼吸をしているようだが、声が震えていた。

 

『瑠璃……こんな私を……友達だって言ってくれて……ありがとう……。それと………っ……ごめんね……っ!』

 

 嗚咽混じりに告げ、それを最後にビデオは停止された。最初に口を開いたのはマリアだった。

 

「輪は……復讐に燃える怒りと、瑠璃を騙して傷つけているという罪の意識、その2つの間で板挟みで苦しんでいたのね。」

「最後……泣いてた。やっぱり本当は……瑠璃先輩の事が好きだったんだ……。」

「とどのつまりこれは……告発文であり、遺言……。」

「先輩、縁起でもねえぞ?!」

 

 しかし的を得ている解釈だった。これを用意したという事は、輪は少なからず贖罪を求めるだろう。極めつけは最後のメッセージ。

 

「輪先輩、もしかして死ぬつもりじゃないデスか?!」

 

 切歌の不注意な言葉が、瑠璃の不安を掻き立てる。踵を返してブリッジを出ようとした時、弦十郎に右肩を掴まれて止められる。

 

「何処へ行くつもりだ?」

「輪を探しに……。」

「何処にいるかも分からねえ上に、そんな状態の姉ちゃんを行かせられねえよ!」

 

 クリスも止めに入る。本当は行かせてやりたいが、もし輪がチフォージュ・シャトーにいるなら、闇雲に探しても見つからない。

 

「藤尭、友里!ケータイのGPSを探知しろ!」

 

 オペレーター達に指示を出し、輪の行方を追う。

 

「その間に、瑠璃。ちょっくら付き合ってくれ。 」

「お父さん……何を……?」

「司令だ。いや何、映画もビックリなビデオレターを作ってきたんだ。こっちも立派な作らなければな!」

 

 カメラを持ち出し、トレーニングルームへ入る。

 

「瑠璃、カメラは剣より強しだ!」

 

 撮影の準備をする弦十郎。

 

 

 

 シャトーに転移した輪。そこにはファラ、レイアが佇んでいた。だが玉座に座っているキャロルを見て唖然した。

 

「何で?!あんた、死んだはずじゃ……」

「狼狽えるな。この肉体は予備躯体だ。それで何の用だ?」

 

 そう言うとジークが報告する。

 

「奴らに裏切りが露見したようです。」

「らしいな。」

「ごめんなさい……。」

 

 キャロルに目を合わせず、下を向いて謝る。

 

「そうか。まあ良い。ここまでの事が運べばお前の役目は終わりだ。ジーク、この者を返してやれ。」 

「はっ。行くぞ。」

 

 ジークのテレポートジェムで輪は共に外へ転移した。

 ファラとレイアがキャロルを見て問う。

 

「放っておいてよろしいのですか?」

「少なくとも奴は地味にこちらの事を知っている。奴らに喋ってしまう可能性もある。」

「捨て置け。もはや今の奴が持つ情報など使えないものだ。生かしておいても問題はない。まあ、ジークの奴が許すわけがないがな。」

 

 輪がいなくなった瞬間、ほくそ笑む。自分目の前では生かしてやったが、それ以外は知ったことではないからだ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 同じ頃、瑠璃は撮影を終えると夜道を歩いていた。一旦雨は止んだようだが、星空が雲によって遮られている辺り、また降り出しそうな様子である。

 その手にはカメラがある。これは撮影後、瑠璃が持っていた方が良いと弦十郎が判断し、手渡されたものである。

 

「輪……。」

 

 輪にカメラを渡して、上手く出来るかどうか不安になっている。みんなはああ言ってるが、輪の本心は分からない。本当に嫌っているのではないのか?もしかしたら、もう二度と会えないんじゃないのか?そう考えただけで胸の奥が締め付けられる。ベンチに座り、俯く。

 

 本部では弦十郎が小夜に電話を掛けている。心配させない為に、家に泊まりに行っているという体になっている。

 

『ほんまおおきに弦さん。』

「いえいえ、お気になさらず。」

『最近、輪ったら夜な夜な出掛けたと思たら、それから怪我して帰って来るんです。何かあったんやないかと心配で……』

「そうなのですか?」

 

 輪が怪我して帰って来るという事に引っ掛かった。確かに輪は事ある事に首を突っ込むが、ある程度引き際を弁え、危害が及ばないようにしている。もし情報提供した時に負ったのだとしたら、それがバレてしまった今、輪の身が危ない。

 だがその悪い予感を表すように本部で警報が鳴り響く。

 

「アルカ・ノイズの反応を検知!」

「座標の特定を急げ!」

 

 オペレーター陣が全力で解析をした結果、すぐに特定がされた。同じタイミングで装者達全員がブリッジに集まった。

 

「これは……!」

「まさか……!」

 

 藤尭と友里が驚嘆の声を出すと、全員が絶句した。モニターにはアルカ・ノイズから逃亡している輪が映っていた。

 

「粛清……?いや、口封じ……?!」

 

 藤尭が予想するように言うが、どの道裏切りがバレれば輪はもう用済みだ。しかもモニターにはジークが映っている。キャロルの命令か、ジークの独断か、弦十郎達からでは分からないが、どっちにしろ輪が危ない。

 

「聞こえるか瑠璃?!」

『お父さん……?』

「輪君がアルカ・ノイズに追われている!奴らは輪君を抹殺しに来ている!」

 

 瑠璃はベンチから立ち上がって唖然とする。

 

「輪が……?!」

 『今はまだ逃げているが、人間嫌いの奴の事だ!何をしでかすか分からん!ここからならお前が一番近い!座標を送る!すぐに……』

「分かってる!」

 

 通信を切って、通信機に表示された座標に向けて急いで走り出す。もう迷っている時間はない。輪を助ける為に急いで走り出す。

 

輪はジークから逃亡していた。それもキャロルからの命令ではなく、ジークの独断である。ここに転移された後、ジークは輪を囲うようにアルカ・ノイズを召喚して来た。だが輪は僅かの包囲の隙間を潜って逃げたが容赦なく追いかけて来る。アルカ・ノイズは輪を直接狙っているのではなく、周りの木々を倒して逃げ道を塞いでくる辺り、ジークは輪が必死になって逃げているのを見て楽しんでいる。

 

「そうだ。貴様はただそうやって逃げ回ったとしても、お前の運命は決まっている。お前の友だった奴が大事にしてた絆を断ち切り、孤独となって、人知れず惨めに死ぬ運命にあるのだ。」

 

 ジークがそう言うと輪は立ち止まってしまう。

 

(そうだ、元々死のうとしてたんだから……咄嗟に逃げちゃってたけど……あいつから逃げたって……もうこの世界に、私がいて良い場所なんてもうどこにもない……。いっそ死んだ方が……楽なんだ……。)

 

 そう考えた輪はジークの方を振り返って、両腕を広げる。

 

「殺してよ……。いっその事……もう殺してよ……。」

「潔いな。嫌いではない。だが念の為だ。」

 

 そう言うとジークは輪に近づく。するとハルバードで輪の右下腿に切り込みを入れた。

 咄嗟に切られ、立てなくなった輪はその場で転んでしまう。さらにジークによって蹴り倒され、うつ伏せにされると、背中を何度も蹴られる。しかし何度やっても輪は悲鳴一つ挙げない。

 

「悲鳴を挙げろ!私にお前の絶叫を聞かせろ!」

 

 それに苛立ったジークは今度は切り傷を刻んだ右下腿を踏みつける。

 

「ぐぅっ……!ぁっ……!」

 

 流石の輪もうめき声を挙げるが、ジークが望む悲鳴は挙げなかった。

 

「人間の分際で……!私に反抗するというのか……?!良いだろう、ならば望み通り……塵一つ残さず消してやろう!」

 

 興冷めしたジークは、時間の無駄だと判断するとアルカ・ノイズに命令を下す。

 もはや輪に待っているのは分解という死。だが輪は

 

 (やっと……解放される……この地獄から……。お父さん……お母さん……旭……。もう……良いでしょう……?私……精一杯……生きたよ……。)

 

 

 もうこんな色褪せた世界にいたって、意味がない。天を仰ぐように、自分の死を待ち望んだ。

 

(ただ……一つ心残りがあるとしたら……瑠璃とはもう……二度と会えなくなることだなぁ……。)

 

 輪は目を閉じた。アルカ・ノイズの解剖器官が輪の身体に向かって伸びていく。

 





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