戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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死を望む少女の運命はいかに


絶たれゆく絆

 もう死にたい……生きてる価値なんてない。そう思って、輪は自らの命を差し出した。ジークはアルカ・ノイズに命令を下すと、その解剖器官が輪に迫った。

 

(これで……ようやく終われる……。)

 Tearlight bident tron……

 

 歌が聞こえた。すると、解剖器官が輪に届く前に、一体残らず分解された。痛みも衝撃もなく、何かが刺さる音が聞こえ、輪は目を開ける。

 

(二本の槍……これって……!)

 

 そこにはバイデントのギアを纏った瑠璃がいた。バイザーはしておらず、その素顔が露わになっている。

 

「瑠璃……!」

 

 何故ここに瑠璃がいるのか分からなかった。何故自分を助けたのかも。

 

「ほう……裏切り者を助けるとは……。」

 

 瑠璃はジークの方を向かず、輪の方へ歩み寄る。

 

「笑いに来たの……?」

「違うよ……。私は……助けに来たの……。」

 

 輪は理解出来なかった。あんな仕打ちをしたのに、生きていてほしいと言われた事に、裏切り者を助けた事に、死なせてくれなかった事に。

 

「何で……助けたの……?私は……あんたの事を嫌ってるんだよ……?」

「それでも良いよ……。嫌っていても良い……。けど……死なせたくない……。」 

 

 瑠璃がそう言うと、輪の目には涙が浮かび上がり、下を向いて俯きながら吐露する。

 

「やめてよ……。私は……もう死にたいの……。こんな地獄に生きていたって……もう辛いだけなの……。たとえキャロルを倒して……世界が救われて……みんなが笑って過ごせるようになっても……そこに私の居場所なんてない……!私には……もう……生きている資格なんてないの……!だから……お願いだから……死なせてよ……!」

 

 痛み、苦しみ、嘆きを涙を流しながら打ち明ける。嘘偽りのない輪の本心。自分の命を絶って、それを贖罪にしようとしている。もうそれしかないと、輪は思い詰めていた。

 そこに瑠璃が1台のカメラを渡す。

 

「これ……中身を見てほしい。」

「え……?」

「死ぬのは……これを見た後にしてほしい……。私から言えるのは……それだけ……。」

 

 瑠璃はジークを見やる。

 

「ここだと危ないから、場所を変えよう。」

「良いだろう。今度こそ決着を着けよう。そこがお前の墓場だ。」

 

 そういうと、2人は飛び立ち、輪の前から去って行った。木々を走り抜くと広い場所へやって来た。そこは、かつて瑠璃と輪がこと座流星群を観測する為にやって来た自然公園だった。

 

「ここなら人も来ないから……戦える。」

「ふっ……。威勢は良いな。貴様の呪われた旋律、操れるかな?」

 

 そう言うと地面にハルバードを刺す。

 

「術式展開……トポス・フィールド!」

 

 そう言うと自身を中心に十二芒星が描かれた魔法陣が敷かれた。しかも前回よりも範囲が広くなっている。

 

「さあ……聞かせてもらおうか!」

 

 二人の戦いが、幕を開けた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 残された輪は、カメラのフォルダーを開く。すると、中にはムービーファイルがあった。それを再生させる。

 

「瑠璃……。」

 

 映っていたのは、そこで撮ったものと思われる瑠璃だった。

 

『見てるかな輪……。この2年と半年で、色々あったよね……。輪にとっては、そんなの偽りの感情かもしれないけど……。』

 

(瑠璃……。何で……。)

 

『それでも私は……本当に楽しかったよ。やっぱり、私は輪の友達でいたい……。でも私の事、嫌ってるよね……?』

 

(違う……そんな事ない……!)

 

『私ね、輪の事好きだよ。』

 

(私だって、瑠璃の事が大好きだよ!でも……でも……私はもう……!)

 

『ごめんなさい、輪。あなたの気持ちを知ろうとしないで、こんな事になってしまって。』

 

(何で……瑠璃が謝るの……?ごめんなさいって言わなきゃいけないのは私なのに……!)

 

 輪の中に押し殺していた感情が溢れ出てくる。涙が流れ、嗚咽も止まらない。

 

『輪が裏切り者でも、それでいい。私を罵倒して、それで気が晴れるなら……全て受け入れるよ。』

 

(そんな事……言わないでよ!何で……何であんたは……私を軽蔑しないの……?!傷付けたんだよ?!裏切ったんだよ?!いつもそうやって……何でもかんでも受け入れようとして……!)

 

『きっと……輪は死にたいって思うかもしれないけど……私は輪には生きていてほしい。もう輪は戦わなくて良い……。私と縁を切って、何処かへ行ったとしても、私は……ずっと輪の幸せを祈ってる。それを邪魔するのがいたなら……私が戦うから……どうか前を向いて生きてほしい。私なんかより幸せになってほしい……。私からはそれだけ。じゃあね……。』

 

 それを最後にビデオは停止した。

 自分の復讐に瑠璃を巻き込んだ愚かさを嘆き、悔いた。涙を流して声を押し殺して、嗚咽混じりに泣いている。

 

(ごめん……っ!ごめんね……瑠璃……!私……私……!)

 

 そこに天羽々斬を纏った翼が現れ、輪に駆け寄った。

 

「風鳴……翼……。」

「無事か出水……っ!足をやられているのか?!」

 

 自分を憎んでいる人間に対して心配し、傷を診てくれている。その事に戸惑い、突き放てしまう。

 

「私は……裏切り者で……あんたを憎んでる……。助けたら……あんたを殺すかもしれないんだよ……?なのに……何で……」

「私の事を……いくらでも恨んでくれて構わない。だが、瑠璃に悲しい思いをさせたくない。これは防人としてでも、風鳴としてでもない。これは……出水への償いでもあり……私の我儘だ。」

「我儘……。」

「さあ掴まれ。今メディカルルームに……っ?!」

 

 翼に指し伸ばされた手を、輪は払った。憎んでいる故ではない。今、自分が本当にしたい事を理解したからだ。

 

「伝えなくちゃ……。私の本当の気持ち……。」

 

 立ち上がろうとするが、右足を怪我しては思うように歩けず、倒れそうになるが、翼が咄嗟に支えた。

 

「出水……まさかお前!」

「瑠璃の所へ……。お願いします……。私……やっぱり瑠璃が隣にいてくれないと……」

「よせ出水!お前が行ったところで……」

「分かってます。私が行っても、瑠璃をまた傷付けるかもしれないし、足手まといになるかもしれない。でも、今すぐ伝えなきゃ嫌だ……!絆を破綻させた私が言っても、説得力ないけど、でもやっぱり私は……」

「輪せんぱーーーい!」

 

 前から声が聞こえ、顔を上げると禁月輪で走行する調と、それに乗って、調の右手を掴んでいる切歌が手を振っている。

 

「掴まるデス!」

 

 空いている左手をを伸ばす。輪はそれを掴んで、それに乗る。

 

「月読!暁!」

 

 後輩の勝手な行動に呆れるが、これで良いのかもしれないと笑っている翼。急いで後を追う。

 

 

 禁月輪で走行する調、それに乗っている切歌と輪。だが輪はバツが悪そうな顔をしている。

 

「何で……裏切り者の私を助けるの?」

「瑠璃先輩に言った事、ちゃんと謝ってほしいからです。私も、響先輩に偽善って言ってしまった事、今も後悔してます。同じ後悔を……してほしくない。」

「だから、輪先輩が裏切り者とかそういうのはどうでもいいんデス。瑠璃先輩を隣で支えてくれる友達は、輪先輩以外にいないのデスよ。」

 

 後輩達の言葉に、自分がやった事は人としても、友達や先輩としても本当に最低な事だと心の底から自分を軽蔑する。瑠璃とやり直せるのか、胸を張って親友だと言えるのか、不安でいっぱいだった。

 

「ちゃんとごめんなさいって言えるように、私達も手伝うデス。まずは面と向かって、当たって砕けろデース!」

「切ちゃん、砕いちゃ駄目。」

「あ、あはは!そうとも言うデスよ〜。」

 

 切歌にズバッとツッコむ調。輪はこの二人を羨ましく感じた。自分から捨てた友情を見ている。

 

「暁さん……月読さん……。」

「輪先輩。必ず瑠璃先輩の所まで届けます。だから、手を伸ばすことを諦めないでください。」

 

 調に諭され、覚悟を決めた輪。どんな結果になっても、キチンと瑠璃と向き合う。

 

 

 瑠璃とジークの戦い、結論から言えば瑠璃が押されていた。発電所での戦いは一度は有利に持っていけたのだが、原因は2つある。まず1つ、今回はトポス・フィールドの範囲が広くなっている事である。前回は100m程だったのに対して、今回はその倍の200mだった。さらにトポス・フィールドの範囲外へ出ようとすると、ジークは距離を詰めてくる為、事実上この絶対領域から出られない。

 そして2つ目は、瑠璃の精神的によるものだった。輪との仲違いにより、瑠璃は心ここにあらずの状態になってしまっている。人はどれだけ強くても、それは精神的に正常であるが故のものであり、僅かな揺らぎでも敗北を招く事だってある。今の瑠璃は正にその状態なのだ。

 

「どうした?以前より弱くなってるぞ?」

 

 強化型ギアで出力アップしているとはいえ、精神的に弱っている状態では、本来の力を引き出せない。そこを突かれ、守りに徹するしかなかった。

 

「イグナイトを使え。それなら少しはマシになるだろう。」

 

 ジークに催促されて、瑠璃はギアのコンバーターに触れた。

 

(イグナイト……!そうだ、これを使って……でも……)

 

 瑠璃は一瞬、使用を躊躇った。今の状態でイグナイトを制御出来るという確証はない。いや、今のまま行けば暴走するだろう。だがこの戦いに負けは許されないと強迫観念に駆られてしまった事で、リスクを承知で、切り札を使う事を決めた。

 

 本部でもそれはモニタリングされており弦十郎は通信で使用をやめるよう命令を出す。

 

「駄目だ瑠璃!今のお前がイグナイトを使っても暴走するだけだ!」  

「お父さん……。使わなきゃ……イグナイト……。私が今ここで……勝たなきゃいけないんだ!」

  

 弦十郎の制止を振り切り

 

「イグナイトモジュール 抜剣!」

 

 マイクコンバーターを親指と人差し指で、摘むように押し込み、それを取り出す。それを宙に投げると、マイクコンバーターが変形し、剣のようなエネルギーを瑠璃の胸に刺し込まれる。だが

 

「ぐああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 瑠璃の身体を闇が覆い、取り込まんとするかのように蝕む。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 瑠璃の精神世界、暗い闇の中で一人ぼっちの瑠璃。

 

「ここは……。もしかして……」

 

 フィーネに精神支配された時に覚えがあった為、以前のように戸惑う事はない。だが何故再びここにいるのかは分かっていない。

 

「瑠璃。」

 

 後ろから声が聞こえた。振り返るとそこには

 

「輪……?輪なの?」

 

 何故か自分だけの世界に輪がいた。だが瑠璃は輪がいてくれた事に嬉しく感じ、輪がここにいる事に何の疑問も浮かぶ事はなかった。

 

「輪……良かっ……」

「目障りなんだよね。」

 

 突然告げられた罵倒に、困惑する。

 

「輪……?どうした……」

「触らないでくれる?あんたみたいな愚図……大嫌いなんだよね。」

「どうして……?何でそんな事を……」

 

 後ろに気配を感じた瑠璃は振り返るとそこにはクリスと翼がいた。

 

「クリス……?お姉ちゃん……?」

「あたしの事忘れてた癖に……何姉貴ぶってんだよ。」

「お前みたいに剣にもなれない役立たずが風鳴を名乗るとは、恥晒しめ。」

 

 大好きな従姉と実の妹にまで罵倒されてしまった。よく見ると響、未来、調、切歌、マリア、弦十郎、など周りは瑠璃を囲うように立っており、その目は冷たかった。

 

「本当に私達に絆なんてあると思いますか?」

「少なくとも、私達はあなたの事が嫌いです。」

「響ちゃん……未来ちゃん……!」 

「この偽善者……!」

「お前なんか役に立たないデス!」

「貧弱なお前に戦う資格などない。」

「調ちゃん……切歌ちゃん……マリアさん……!」

「お前は所詮、ただの赤の他人だ。父親呼ばわりされる筋合いはない。」

「お父さん……!」

 

 仲間だけでなく、父親にまで罵声を浴びせられ、どんどん心がすり減っていく。膝から崩れ落ち、冷たい目を見ないよう下を向き、周りからの罵声を聞かないよう耳を塞ぐが、罵声は止まず、次第に涙を流す。自身の周りを囲うように立っていた仲間達が次々と、目の前から去って行った。

 

「待って……待ってよみんな!置いてかないで!独りにしないで!」

 

 その時ジークに言われた事を思い出した。

 

『所詮絆の力などこの程度。いとも簡単に裏切られ、絶たれる。そんなものに縋ったお前には何が残っている?』

「そうだ……絆の力なんて……あっという間に崩れた……。他人が何を思ってるかなんて……分かってないのに……私は一方的に……」

 

 次第に瑠璃に迫る黒い瘴気、そしてしたから泥のような黒いオーラが瑠璃の身体を黒く染めようとしている。絆がいとも簡単に壊れる事を知った瑠璃、闇に抵抗する事を諦めた今、その全身は闇に覆われ

 

(馬鹿だな……私……。)

 

 顔まで闇に覆われようとしていた時、自らの浅はかさに涙を流しながら嘲笑していた。そしてその風貌まで闇に覆われた事で、現実世界の瑠璃は獣と堕ちてしまった。

 

「ガアアアアアアアァァァァァーーーーー!!」

 

 イグナイトの支配に失敗し、暴走した瑠璃の咆哮。それを見届けたジークは舌打ちをする。

 

「やはり失敗したか。あの人間め……最後の最後まで役に立たん奴だ。」

 

 輪を消す為にアルカ・ノイズを出して、向かわせる。

 だが同じタイミングで調、切歌、そして輪が到着したが、既に手遅れだった。

 

「瑠璃先輩が……」

「暴走しちゃってるデスよ?!」

「あれが……瑠璃なの?」

 

 ただ破壊衝動のまま、狂戦士として暴れる瑠璃。単調な攻撃を軽々と避けるジークの目に、彼女にとってこの事態を引き起こした元凶が映り込んだ。

 

「やはり貴様は役立たずの虫けらだ。塵も残さず消してくれる!」

 

 アルカ・ノイズが輪を抹殺すべく集中的に襲って来た。

 

「やらせるもんかデス!」

「絶対に守りきる!」

 

 調と切歌がアルカ・ノイズ達と交戦する。輪は、足手まといにならないよう下がった。

 




今度は精神面で瑠璃が虐待されました。
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