戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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オリジナルエピソードが終了して一息ついてました。

さあ再開するぞ〜!


手折れた刀

 ジークが倒された事でチフォージュ・シャトーの内部に垂れている白い幕に黒い模様が刻まれる。

 

「ジークは役目を果たしたか。」

 

 キャロルはジークの暴走で、目的を果たせずに破壊されるのではないかと僅かに考えていたが、結果的にそれは杞憂に終わり、ジークは役目を果たして破壊された。

 

「ぐっ……!」

 

 突然キャロルは頭を抱えて苦しみだした。この現象はキャロルが予備躯体に移ってから発生するようになった。最後の予備躯体に負荷を度外視して思い出を高速インストールした事に加えて自害した思い出によって拒絶反応が発生していた。

 主の不調を心配するレイアとファラ。

 

「いかがなさいますか?」

「無論まかり通る……!歌女共が揃っている……この瞬間を逃すわけにはいかんのだ!」

 

 キャロルは目的を果たす為なら、この身にどんな痛みや苦しみだって受ける。世界を分解するまでは、止まるわけにはいかない。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 瑠璃がジークを倒し、残りオートスコアラーは2体となった。だが裏切り者だった輪は処罰を受ける事になったが、何と数日の聞き取りと謹慎で済んだ。というのもあのライブの惨劇の被害者狩りの被害者であり、それが原因で今回の凶行に走ったという理由もあり、処罰は軽いもので済んだ。

 そして今、病院で入院している。しかも響と同室で。

 

「んで、二人して同じ人助けで木から降りられんようなった猫捕まえようとして、二人して落っこちて、そんで輪に関しては枝で足切って、響ちゃんは頭打ったってぇ?!」

 

 しかも担当看護師が小夜だった。ちなみに小夜には響と輪が木から降りられなくなった猫を助けようとしたが、二人して木から落っこちて怪我をして運ばれたという体で通っている。

 立て続けに重なる偶然に驚く二人。響と輪のお見舞いに未来が来ていた。

 

「すみません、私がいながら止められなくて。」

「ええんよ〜。二人とも未来ちゃん見習わんと。そそっかしい所は何か似とるんよな〜。」

「「面目次第もございません。」」

 

 二人は頭を下げる。

 

「ま、後は3人でごゆっくり〜。」

 

 手を振りながら、小夜は退室した。すると輪が腕をジタバタし始める。

 

「ああ〜ん!もう瑠璃来てくれな〜い!何でこんな時に限って〜!」

「瑠璃さんどうしたんですか?」

「何か翼さんの実家行くんだって。」

 

 未来の問に輪が不機嫌そうに答える。

 

 

 同じ頃、瑠璃、マリア、翼を乗せた車は今、武家屋敷と思わせる私邸へと入った。今回3人がここに来たのには理由がある。

 先日、ミカが襲った共同溝内の電力経路図が強奪された。それにより敵に電力の優先供給地点が知られてしまったのだ。それについては輪が証言してくれた『レイラインの解放』という事に関係がある。意図に関して言えばそれだけでは掴むことは出来なかったが、これにより敵の襲撃場所と思われる場所を特定する事が出来た。

 その一つが深淵の竜宮と呼ばれる、深海にある施設。そこには異端技術に関連した危険物及び未解析品が封印されている。

 そしてもう一つが風鳴八紘邸であった。ここには要石と呼ばれる石柱がある。

 というのもここ数日で発生している神社や祠の破壊、その全てが明治政府の帝都構想で霊的防衛機能を支えていた竜脈、つまりレイラインのコントロールを担っていた。そして風鳴邸にある要石もレイラインコントロールを担っている。そこをオートスコアラー達が狙うと睨んでいた。

 そこで深淵の竜宮にはクリス、切歌、調を、風鳴邸には翼、マリア、瑠璃が向かうことになった。

 

 風鳴邸に到着し、車から降りる翼、マリア、瑠璃と車の運転を任されていた緒川。

 マリアはその敷地内の広さと武家屋敷を思わせる風景に驚いている。

 

「ここが……」

「風鳴八紘邸、翼さんの生家です。」

「10年ぶり……まさかこんな形で帰るとは思わなかったな。」

 

 翼の幼少期はここで過ごしていた。だが思い出にふけている様子は微塵も感じられない。

 一方瑠璃は3年前、親戚回りの挨拶で一度だけ訪れた事があった。

 4人は屋敷の玄関へと向かって歩いていくと、その庭に設置されている要石を見つける。

 

「これが……」

「要石……。」

 

 この巨石がレイラインのコントロールを担っていると言われでもしない限り、飾り物と思われるだろう。

 

「翼さん。」

 

 緒川が呼ぶと、玄関から黒服の男を連れた着物の男がやって来た。彼こそが風鳴八紘である。

 

「お父様……。」

「ご苦労だったな、慎次。」

 

 

 小さな声で呟く。だが翼には目もくれず、緒川に労いの言葉を贈った。

 

「恐れ入ります。」

「それに、マリア・カデンツァヴナ・イヴだったな。S.O.N.G.に編入された君の活躍も聞いている。」

「は、はい……。」

 

 八紘は次に瑠璃の方を向く。 

 

「瑠璃、3年ぶりだな。お前の活躍も弦から聞いている。」

「は、はい……!お久しぶりです……。あの……裁判の時は、ありがとうございました。それと……お礼が遅れてしまい……申し訳ありませんでした。お陰様で……私……」

「私は私の務めを果たしたまでだ。礼は不要だ。それとアーネンエルベ神秘学部門から、アルカ・ノイズに関する報告書も届いている。後で開示させよう。」

 

 そう言うと屋敷の方へと歩いていく。娘である翼を見ず、何も告げずに。

 

「お父様……!」

 

 翼は思わず呼んでしまう。だが八紘はその歩みを一度止めた。

 

「沙汰もなく、申し訳ありませんでした……。」

 

 せめて何か父親として、何か声をかけてほしい。その思いでいっぱいだった。

 

「お前がいなくとも、風鳴の家に揺るぎはない。務めを果たし次第、戦場に戻ればいいだろう。」 

 

 だが無情にも八紘は冷たく言い放つ。まるで不要と言わんばかりに。瑠璃はその冷たさに怯えてしまうが、マリアは文句が言いたいようだ。

 

「待ちなさい!あなた翼のパパさんでしょ?!だったらもっと他に……!」

「マリア!良いんだ……。」

「お姉ちゃん……。」

 

 マリアが政府の重鎮相手に啖呵を切るが、翼がそれを制止する。翼がそうするなら、マリアも下がる他ない。瑠璃もそんな翼を見て胸が苦しくなる。瑠璃の思う父親と娘の在り方とはあまりにもかけ離れすぎているかだ。八紘が翼に対して冷たいと、弦十郎から聞いてはいたがここまでとは想像していなかった。

 やはりこのままには出来ない。たった一人の父親と娘が、こんな冷めきった関係のままで良いわけがない。

 

「あの……!八紘叔父さ……」

 

 意を決して瑠璃は八紘に説得しようとしたが、緒川が突然、発砲したことでそれはお預けとなった。発砲した先にはオートスコアラー、ファラが銃弾を剣で弾いた。

 

「野暮ね。親子水入らずを邪魔するつもりなんてなかったのに。」

「あの時のオートスコアラー!」

「レイラインの解放、やらせていただきますわ。」

「やはり狙いは要石か……?!」

「やらせない……!」

 

 翼、マリア、瑠璃がギアペンダントを握りしめる。

 

「ダンス・マカブル。」

 

 ファラはアルカ・ノイズの召喚石をばら撒き、そこからアルカ・ノイズが顕現する。文字通り、死の舞踏へと招待している。

 

「ああ……付き合ってやるとも!」

 

 翼は誘いに乗るように起動詠唱を唄う。

 

 

 Imyuteus amenohabakiri tron……

 

 翼が青いギアをその身に纏って刀を構える。マリア、瑠璃もそれぞれのギアを纏い、襲い掛かるアルカ・ノイズ迎え撃つ。最前線でアルカ・ノイズを斬り伏せる翼。青い剣閃によって赤い塵と化す。

 

「ここは私が!」

「務めを果たせ。」

 

 八紘は外敵の対処を翼に任せてそのまま黒服を伴って戦線から離れる。ただ、父親としてではなく、風鳴の務めである防人としての言だった。一瞬だけ暗い表情になってしまうが、今は目の前の敵を打倒する事に集中する。そうでなければ、わざわざ一度夢を捨ててまで戦場に立った意味がない。翼はファラに対して正面から対峙する。

 マリアと瑠璃は要石に近づくアルカ・ノイズの対処に当たっている。もし一体でも討ち漏らせば、要石などアルカ・ノイズの解剖器官で容易に破壊出来てしまう。アルカ・ノイズは命令通り、数の暴力で押そうとするが、近づこうとするとマリアの蛇腹剣によって分断され、瑠璃の二本の槍で串刺しにされる。突撃しかしないアルカ・ノイズはその数を確実に減らし、最後の一体をマリアが倒した。

 

「こっちは片付いたわ。翼の援護に行くわよ!」

「はい!」

 

 翼はファラとの一騎討ちを繰り広げている。一見互角に見えるが、よく見るとファラはどこか余裕の笑みを浮かべながら竜巻を繰り出したり、剣を振るっている。だが翼も負けてはいない。高く飛翔し、刀を超大型の両刃剣へと可変させると、脚部のバーナーを点火させて刀の頭を蹴る。そのままその剣先はファラへと向けて急降下していく。

 

 【天ノ逆鱗】

 

「獲った……!」

 

 それを見ていた瑠璃は翼の勝ちを確信していた。だがファラは動じることもなく、その剣先に刃を突き立てた。すると、翼の刀の刀身に亀裂が生じ、あえなく砕け散った。

 

(剣が……砕かれていく……?!)

 

 翼は剣を砕かれた時に発せられた衝撃で吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

 

「お姉ちゃん!」

 

 倒された翼に駆け寄る瑠璃。

 

「私のソードブレイカーは剣と定義される物であれば、強度も硬度も問わずかみ砕く哲学兵装。さあ……いかが致しますか?」 

 

 それが翼の剣を叩き折った理由。剣として己を鍛え上げた翼にとって、まさに相性最悪の敵である剣殺しの剣。それを翼に剣先を向ける。

 

「でも……槍だったら!」

 

 瑠璃は二本の槍を構えて、ファラに向けて突撃する。

 

「あなたには用はありませんのよ。」

 

 そう言うとソードブレーカーを振り下ろすと再び竜巻が発生する。瑠璃はそれを避けてファラに近づこうとした時だった。

 

「駄目よ瑠璃!離れて!」

 

 何かに気付いたマリアは瑠璃を制止するべく叫ぶが、遅かった。瑠璃の目の前で竜巻は3つとなり、その逃げ場を塞いでしまう。そのまま3つの竜巻は高速回転を始めて、その風圧で瑠璃を吹き飛ばした。

 

「ああああああぁぁぁぁぁ!!」

「瑠璃!!っ!」

 

 竜巻によって打ち捨てられた瑠璃はそのまま地面へと叩きつけられた。しかもその竜巻はそのままマリアの方へと向かっている。マリアは短剣を蛇腹剣へと可変させて竜巻を迎撃しようとしたが、剣と定義されてしまったのか、あえなく砕かれた。マリアは咄嗟に避けたものの、竜巻はそのままマリアの後ろにあった要石を破壊してしまった。

 

「あら、アガートラームも剣と定義されてたかしら?」

 

 その物言いからファラはマリアなど眼中に無いようだった。

 

「ごめんなさい。あなたの歌にも興味が無いの。」

 

 そう言うと、ファラは目的を果たしたのか自らの身に竜巻を帯びてそのまま姿を消してしまった。

 

「剣ちゃんに伝えてくれる?目が覚めたら改めてあなたの歌を聞きに伺いますって。」

 

 ファラの声だけが一方的に響く。要石防衛は失敗し、翼と瑠璃は屋敷に運ばれた。




ちなみに言い忘れてましたが、精神世界でのやり取りは……全てすっぽんぽんです!

以上!
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