戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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遅れて申し訳ありません。
色々やってたらこんなに遅れてしまいました。

決してマスターデュエルやハウス・オブ・ザ・デッドのリメイクにハマったりしたわけではありません!


英雄

 消灯時間となり、病室には照明はついていない。月の光だけが僅かに差し込む事で、病室は真っ暗にならずにいる。

 そんな中、響はスマホの画面を見るとその電源を消した。消す間際、画面には着信履歴が映っていた。しかもそれは全部「お父さん」と表示されている。あれから、洸は響に何度も電話を掛けていたが、響が尽く無視していた。故にファミレスでの一件以降、声すら聞いていない。電源を落とした後、ため息をつく。

  

「大丈夫、響?」

 

 隣のベッドで眠っていたはずの輪に声を掛けられた。静かだったので眠ったと思っていたから響は驚いた。

 

「大丈夫です。少し……」

「大丈夫じゃないよね……?」

 

 響の曖昧な答えを輪に一刀両断された。

 

「あんた顔に出すぎ。瑠璃以上に分かりやすい。」

「あははは……。はい……輪さんの言う通り、大丈夫じゃありません。」

「やっぱり、お父さんの件で?」

 

 響は無言で頷いた。すると、輪は天井を見上げる。

 

「羨ましいな……お父さんの事で悩めて……。」

「え……?あっ……」

 

 輪の家族は小夜を除いてみんな死んでしまった。あの時、輪が涙を流しながら怒りに任せてその血に濡れた過去を暴露していたのを思い出した。

 

「怖いなら、逃げても良いんじゃない?」

「え……?」

「あんたのお父さんだって逃げたんだよ。今ここで逃げても、誰も咎めないよ。っていうか、家族見捨てて逃げ出すとかあり得なくない?それでのこのこと帰って来れるとか、私だったらぶっ飛ばしてるよ。」

 

 突然洸の陰口を言い始める輪。

 

「昔はどうなのか知らないけど、今更どの面下げて家族に会うの?いくらなんでもダサすぎ。そんな都合の良い家族なんているわけないじゃん。」

 

 輪は洸の悪口をこれでもかとぶちまける。次第にエスカレートしていき、響のシーツを掴む手が次第に強くなっていた。

 

「結局中身はろくでなしだったって事じゃん。自分を責める必要はない。何もかも中途半端で逃げ出すようじゃたかが……」

「やめてください……。」

 

 突然響が遮った。

 

「いくら輪さんでも、これ以上お父さんの事を悪く言うのは許せません……!」

 

 怒っていた。悪口を言う輪に対して。病院だからこそ怒鳴らなかったが、それでも父親の悪口を言うのは許せなかった。

 

「やっぱ、好きなんじゃん。お父さんの事。」

「え……?」

 

 輪は笑みを浮かべていた。

 

「もしこのまま黙ってたら、本当に逃げたほうが良いって言うところだった。けど、こうやって言い返したってことは、お父さんとやり直したいって思ってる事だよ。」

「もしかして……。」

 

 輪が響の為に、あえて洸の悪口を言った事に気付いた。本当に自分がどうしたいのか気付かせる為に、父親と向き合う勇気を出せるように。

 

「ありがとうございます……輪さん。」

「いいよお礼は。ただ……私みたいになってほしくなかっただけだもん。」

 

 そう言うと輪は響のいる向きと反対に寝返りを打った。響はもう一度、父親と向き合う覚悟と勇気を持ち、その日は眠りについた。少しだけ気が楽になったのか安心して眠れた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 フロンティア事変収束後、武装蜂起した装者以外のメンバーはナスターシャ、ジャンヌ、Dr.ウェル。その内、ウェル以外の者は死亡、ウェルは拘束された。だが米国政府がF.I.S.の存在をなかった事にした為に、ウェルのこれまでの行動や経歴も全て否定され、果てにはネフィリムの細胞を取り込んだ左腕が原因で、自身が異端技術の物として深淵の竜宮に幽閉されてしまった。

 自身を囲う檻の中でウェルはひたすら自身を、英雄を望む時を今かと待ち焦がれていた。そして、キャロルが深淵の竜宮に侵入、クリスの銃声を僅かながらに耳にしたウェルは、遂にその時が来た事に歓喜した。

 戦闘の余波で牢が破壊され、出てきた所を大型ミサイルをネフィリムの左腕で吸収した。

 

「旧世代のLiNKERぶっこんで、騙し騙しのギア運用という訳ね。」

 

 勝ち気になったウェルが、調と切歌を見下すように言い放つ。調と切歌はそんなウェルに吐き気を催しそうになる。

 

「優しさで出来たLiNKERは、僕が作った物だけぇ〜!そんなので戦わされてるなんてぇ……不憫すぎて笑いが止まらぁ〜ん!」 

「不憫の一等賞が何を言うデス!」

 

 ウェルの癇に障る物言いに切歌が言い返す。だが存在自体を無かったことにされ、竜宮に放り込まれたのもかなり不憫である。痛い所を突かれたウェルは標的をクリスに向ける。すると突然がっかりしたようにため息をつく。

 

「何だ妹の方かぁ〜?大好きなお姉さんはいないのかなぁ〜?」

「どういう意味だ?」

「あの時僕を殴ったあいつ!あいつだけは僕の手で八つ裂きにしたかったのに、出て来たのは出来損ないの妹じゃないか!」

 

 そのセリフはクリスを激怒させるには充分だった。

 ウェルは連行される時、瑠璃に顔面を殴られた怒りを今でも忘れていない。だがこれこそがウェルのやり方である。あえてクリスの逆鱗に触れるような物言いでクリスを挑発し、冷静さを欠かせていた。しかも今のクリスは後輩を守るという事に囚われており、先程の一撃をいとも容易く止められてしまったのが余計にクリスを苛立たせていた。 

 ウェルに殺意を向けているクリスの不穏な空気を感じ取った切歌と調は止めに入った。

 

「待つデスよ!」

「Dr.を傷つけるのは……」

「何言ってやがる?!」 

「だって、LiNKERを作れるのは……」

「そうとも!僕に何かあったら、LiNKERは永遠に失われてしまうぞぉ!」

 

 現状LiNKERを作れるのはただ一人、ウェルだけ。それが調と切歌が攻撃を躊躇う足枷となっている。だがそれを必要としないクリスにとって、そんな事など知ったことではない。

 

「ぽっと出が勝手に話を進めるな!」

 

 本来キャロルと装者の戦いであるにも関わらず、この場に関係ない英雄願望の男が乱入した事で自分が置いてけぼりをくらっているのが気に入らないキャロルはアルカ・ノイズを召喚する。

 

「二人が戦えなくても、あたしは!」

 

 ガトリング砲でアルカ・ノイズを文字通り蜂の巣にするクリス。ウェルは先程の強気の態度とは打って変わってキャロルの後ろで縮こまっている。

 

「その男の識別不能……。マスター、指示をお願いします……。」

「敵でも味方でもない……英雄だ!」

 

 レイアの第一はキャロルを守護する事であり、自らの意思でウェルを守る気など更々ない。だがキャロルの命令であればそれに従う。そんなレイアにウェルが噛み付く。 

 

「だったら英雄様に……さっきよりもでかいのまとめてくれてやる!」

 

 クリスは背中のアーマーなら巨大なミサイルを展開させる。

 

「このおっちょこちょい!」

 

 発射しようとした時、ウェルが怒鳴りつける。 

 

「何のつもりかは知らないが、そんなの使えば、施設も、僕も、海の藻屑だぞぉ!」

 

 確かにウェルの言う通り、そのミサイルの威力は凄まじいだろうが、ここは海底であり、もしそれをここで放って壁や天井にヒビでも入ればそこから海水が押し寄せる。当然水圧で人間などすぐに押し潰される。

 流石のクリスもそう言われては撃つのを躊躇う。

 

「レイア、この埒を開けて見せろ。」 

「即時遂行……。」

(後輩なんかに任せてられるか!ここは先輩の……あたしがぁ!)

 

 クリスは大型ミサイルを格納してガトリング砲での戦法に切り替える。レイアにガトリング砲の砲門を向けるもレイアは俊敏にその弾丸を軽やかに避ける為、アルカ・ノイズだけが蜂の巣になる。だがガトリング砲から弾丸が射出される度に硝煙が上がり、さらにアルカ・ノイズの赤い塵による目晦まし、そしてクリス本人の判断力が怒りで狂ってしまっている事から、レイアを正確に捉えられず、ただただやけくそに撃っているだけである。

 

「ばら撒きでは捉えられない……!」

「落ち着くデスよ!」

 

 調と切歌が制止を呼びかけるも、今のクリスには届かない。クリスはガトリング砲をただ闇雲に乱射していると、その砲門は意図していなかったとはいえ調を捉えていた。

 

「諸共に巻き込むつもりデスか?」

 

 切歌が大鎌でガトリング砲ごと弾いた事で調は被弾せずに済んだが、危うく後輩を、仲間を誤射する所だった。

 クリスは引金から指を外して、乱射を止める。だが気付いた時にはキャロル、レイア、ウェルの姿はなかった。

 

「あいつらは……何処に消えた?!」

 

 アルカ・ノイズが倒された時に発生する赤い塵、プリマ・マテリアが晴れると、床に穴が空いていた。ここから逃げ出したのだろう。

 

「ごめんなさい……ドクターに何かあると、LiNKERが作れなくなると思って……」

「でももう惑わされないデス!アタシ達3人が力を合わせれば……」 

「後輩の力なんてアテにしない!」

 

 先輩としてのプライドをズタズタにされたクリスは、切歌を突き放してしまう。

 

「おてて繋いで仲良しごっこじゃねえんだ!あたし一人でやってみせる!」

「クリス先輩……。」

 

 調は悲しみを込めてクリスの名を呟いたが、クリスには聞こえていなかった。今のクリスは先輩としての立場を完遂しなければという思いに駆られており、そこに絆などない。もしここに瑠璃がいて、今のクリスを見たら、どんなに悲しむだろうか。調と切歌はそう考えてしまう。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一方、キャロル達はまだ竜宮内に留まっていた。キャロルが撤退中、拒絶反応によって気を失っており、その歩みが止まっていたからだ。レイアに抱えられていたキャロルはゆっくりと目を覚ました。

 

「オレは……落ちていたのか?」

「またしても拒絶反応です。撤退の途中で意識を……。」

 

 キャロルはレイアから離れて立ち上がる。主の不調を案じるレイア。

 

「高レベルフォニックゲイナーが複数揃う僥倖に逸るのは理解出来ますが……」

「杞憂だ。それよりも……」

 

 キャロルはどさくさに紛れてついてきたウェルの方を見る。

 

「知っているぞDr.ウェルら、フロンティア事変関係者の一人。そんなお前が何故ここに?」

「我が身可愛さの連中が、フロンティア事変も、僕の活躍も!寄って集って無かったことにしてくれた!人権も存在も失った僕は、人ではなくモノ。回収されたネフィリムの一部として、放り込まれていたのさ!」

 

 フロンティア事変後の処遇に不満をぶちまけていた。だがウェルは月の落下を早めて世界を滅ぼしかけた事や、ジャンヌとナスターシャを死に追いやったなど多くの罪を犯している為、そのまま裁判が開かれようものなら、死刑になってもおかしくはなかった。それを考えれば、この処遇はまだ軽い方であり、さらに自分の意思でネフィリムの腕を手に入れたのだからある意味逆恨みも甚だしいと言える。

 しかし人として扱われないこの処遇は英雄願望が強いウェルにとって死んだも同然であり、耐えられないものだった。

 

「イチイバルの砲撃も、腕の力で受け止めたんじゃない。接触の一瞬にネフィリムが喰らって同化!体の一部として推進力を制御したまでの事!」

 

 このネフィリムの腕、これは使えると判断したキャロルは不敵な笑みを浮かべる。

 

「面白い男だ、よし、付いてこい。」

「ここから僕を連れ出すつもりかい?だったら騒乱の只中に案内してくれ。」

「騒乱の只中?」

「もちろん、英雄の立つところだ……ん?」

 

 キャロルが突然左手を差し出し、意図を察したウェルはその左手で握り返す。

 

「ネフィリムの左腕、その力の詳細は、追っ手をまきつつ聞かせてもらおう。」

「脱出を急がなくてもいいのかい?」

「奴らの把握済み、時間稼ぎなぞ造作もない。」

 

 今のキャロルにはS.O.N.G.の動向が手に取るように分かる。その情報源は裏切り者だった輪だけではない。もう一人、自分の掌に踊らされていると知らずにS.O.N.G.に転がり込み、貢献している少女。毒は既に仕込まれていた。

 




実はR-18版を作ろうか考えてるんですが……文章力が乏しい私に書けるかどうか……。
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