戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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しばらく瑠璃はおまけ程度にしか登場しません。

主役なのになんでだろうね?

それにしてもここの所暑いな……


仕込まれた毒の正体

 キャロルを取り逃がしたクリス達は一旦体勢を立て直しを図る。現在は深淵の竜宮内にある通信システムで弦十郎と通信しているが、先程のクリスの行動を弦十郎に咎められていた。

 

『力を使うなと言ってるんじゃない!その使い方を考えろと言っているんだ!』

「新しくなったシンフォギアは、キャロルの錬金術に対抗する力だ!使い所は今をおいて他にねえ!眠てえぞおっさん!」

『そこが深海の施設だと忘れるなと言っている!』

「正論で超常と渡り合えるか!」 

 

 弦十郎相手でもここまで意地になっている。こうなったクリスを瑠璃でも諌められるかどうか分からない。それくらいクリスは焦っていた。先程の失態を返さなくてはという焦りが、判断力を鈍らせている。

 

『念のため、各ブロックの隔壁や、パージスイッチの確認をお願い。』

 

 友里が深淵の竜宮のマップデータを送ると、通信モニターに表示された。そこには各ブロックの隔壁やスイッチの場所など、きめ細やかに表示されるが、如何せん施設は広い。故に切歌はその多さに音を挙げる。

 

「こんなにいっぺんに覚えられないデスよー!」 

「じゃあ切ちゃん、覚えるのは二人で半分こにしよう。」

 

 一人で出来ないなら二人で、調は切歌と二人で竜宮内のマップデータをそれぞれ半分、頭に入れる。

 そこに藤尭が報告する。

 

『セキュリティシステムに侵入者の痕跡を発見!』

「そういう知らせを待っていた!」

 

 挽回の機会が巡って来た事に喜んだクリスだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 翼がイグナイトモジュールを用いてファラを撃破した直後、その残骸が破壊された要石の近くに横たわっていた。四肢は欠損、胴体も翼の攻撃で上半身しか残っておらず、壊れたおもちゃの人形とも言えるような状態だった。

 

「これは……先程の……」

「ええ。翼さんが退けたオートスコアラーです。」

「この状態から動き出すなんて事……ないですよね?」

 

 瑠璃が不安を口にした瞬間、ファラの瞳孔が動き出した。本当に動き出した事に瑠璃は小さく悲鳴を挙げた。

 

「いつか……しょぼいだなんて言って……ごめんなさい。剣ちゃんの歌……本当に素晴らしかったわ……。」

「私の歌……?」

「あはははははは!まるで身体がバッサリ2つになるくらい素晴らしく呪われた旋律だったわ!あははははは!」

「もうバッサリ2つになってるじゃん……。」

 

 突然動き出した事に驚かされた瑠璃は仕返しと言わんばかりに言い返す。

 

「待て。呪われた旋律……確か以前に、キャロルが言っていた……。」

「答えてもらうわ!」

「呪われた旋律って……?」

 

 翼とマリアはその事を思い出したのだが、瑠璃はその時、メディカルルームで眠っていたので知らぬのも無理はなかった。

 

「知らず『毒』は仕込まれて、知る頃には手の施しようのないまま、確実な死を齎しますわ。」

「毒だと?!」

 

 毒とは何を指すのか、未だに理解出来ていない。

 

 一方、深淵の竜宮でキャロルを追跡する3人。だがどこまで追跡しても一向に追いつく事が出来なかった。艦内のオペレーター達の情報通りならとっくに追いついてもいいはずなのだが、どういうわけか追跡を振り切っている。

 いつまでも変わらぬ事態にクリスは苛立ちをぶつけるように弦十郎に通信で問いただす。 

 

「おい、この道で間違いないんだろうな?!」

「ああ、だが向こうも巧みに追跡を躱して進行している。」

 

 艦内のモニターでもキャロルの位置を示す光点が移動している。クリス達を示す光点も動いているのだが、クリス達が動き出すと、キャロル達もそれに合わせるように移動している。

 

「まるでこちらの位置や選択ルートを把握しているみたいに……」

 

 友里の呟きで、艦内にいる者達はこの違和感の正体に気付いた。それを藤尭が推測する。

 

「まさか……本部へのハッキング?!まさか裏切り者……輪ちゃんの?!」

「いや、いくら輪君でもそんな器用な真似は出来ない。それに、彼女はその行いに既に悔い改めている。いや待て……!」

 

 輪の裏切りにばかり目を向けていたが、それがキャロルの本当の狙いを隠す為の囮である事に気付いた。

 

「輪君はただ利用されただけ……。俺達は知らずに毒を仕込まれていたということか……!」

「普通なら追いつけないはずがない。先読みしているとしか思えない動きをしている。」

「俺達の追跡を的確に躱すこの現状。聖遺物の管理区域を特定したのも、まさかこちらの情報を出歯亀にして……?」

「それが仕込まれた毒……内通者の手引だとしたら……」

 

 裏切り者は輪だけではないという事になる。いや、そもそも裏切り者ではなく、初めから敵だったという事になる。その正体の方に向いた。

 

「ち、違います!ボクは何も……ボクじゃありません!」

 

 エルフナインは疑いの目を向けられ、すぐに否定した。

 

『いいや、お前だよエルフナイン。』

 

 突如キャロルの声が聞こえた。するとエルフナインから分離するようにキャロルの幻影が現れた。敵の親玉の姿が本拠地に現れた事にみんなが驚く。

 

「あなたの言う毒とは一体何を意味しているのですか?!」

 

 ファラの残骸を問い詰める緒川。ファラは笑いながらそれに答える。

 

「マスターが世界を分解する為に、どうしても必要なものがいくつかありましたの。その1つが、魔剣の奏でる呪いの旋律……。それを装者達に唄わせ、躯に刻んで収集する事がオートスコアラーの使命……。」

「ではイグナイトモジュールが?!」

 

 魔剣ダインスレイフを持ち込んだのはエルフナイン。つまりエルフナインがその毒の正体である事を意味した。これには仲間として信頼しているマリアと瑠璃が否定する。

 

「馬鹿な?!エルフナインを疑えるものか!」

「そうだよ!それに……ジークは私達を本気で……」

「あの方は最初に作られた故に、制御が不完全なまま完成させられた、言わばマスターの生き写し。故に暴走した際は、強制的に活動を停止させるよう施してありましたの。」

 

 オートスコアラーの中で最もキャロルと性格が似通っていたジーク。故に暴走する事を予見していたキャロルは対策も施されていたが、それは起動する事なく、使命通りイグナイトモジュールを起動した瑠璃によって破壊された。

 

「最初にマスターが呪われた旋律をその身に受ける事で、譜面が作成されますの。後はあなた達にイグナイトモジュールを使わせればいいだけの、簡単なお仕事。」

 

 イグナイトモジュール自体が、キャロルの計画完遂の為の罠であった。装者も、エルフナインも、最初からキャロルの掌の上で踊らされていた。

 

「じゃあ……最初から全て……罠だったの……?」

 

 瑠璃がそう言うとファラは満足したようにその身を跡形もなく爆ぜた。緒川は風呂敷で翼、マリア、瑠璃を覆うようにして守った為、全員外傷は無かった。そして宙には粉塵が舞っていた。

 しかし、ギアを強化する為のイグナイトモジュールが敵の策略の1つだと知った以上、使わせるわけにはいかない。

 

「呪われた旋律を手に入れれば、装者を生かす道理がなくなったということなの?!」

「緒川さん、本部に連絡を!イグナイトモジュールの使用を控えさせなければ……」

「駄目です!恐らくこの粉塵が……」

 

 この粉塵こそが通信を妨害する為のものである事は容易に理解出来た。しかもこの付近一帯に舞っている為、ちょっと離れただけでは使い物にならない。

 

「残るオートスコアラーはあと1体……!」

「しかも深淵の竜宮にいる……。そこにはクリス達が……!」

 

 キャロルの仕込まれた毒は、もはや手の施しようのないところにまで蝕んでいた。翼達は八紘邸を後にした。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そんな……ボクが毒……?」

 

 エルフナインは自分がキャロルに仕込まれていた毒であると告げられ、困惑していた。

 

『とはいえ、エルフナイン自身、自分が仕込まれた毒であるとは知る由もない。オレが此奴の目を、耳を、感覚器官の全てを一方的にジャックしてきたのだからな。』

「僕の感覚器官が……勝手に……。」

『同じ素体から作られたホムンクルス躯体だからこそ出来る事だ。それに、ガリィが丁度いい捨て駒を拾って来た事が、毒から目を遠ざける良い盾になったがな。』

 

 その捨て駒は輪を指していた。裏切り者だった輪が装者の戦闘パターンや地の利を流していたのだとしたら、エルフナインはS.O.N.G.の内部の情報を流していた事になる。たとえ輪が裏切り者であると看破されたとしても、そこに目を向けさせた上で、毒を気付かせる事なくエルフナインを通じて、情報を把握出来た。

 キャロルを止めるはずが、自分のしてきた事が全てキャロルの掌の上で踊らされていて、キャロルの計画を助けてしまった事に気付いたエルフナインは、その罪悪感に苛まれ、贖罪を求める。

 

「お願いです……ボクを拘束してください!誰も接触できないよう、独房にでも閉じ込めて……いいえ……キャロルの企みを知らしめるというボクの目的は既に果たされています……だからいっそ……」

 

 今にも泣きそうになるエルフナインだが、弦十郎は不敵な笑を浮かべていた。

 

「迂闊だったな。まさか種明かしをしてくれるとは!」

「え……?」

 

 弦十郎だけじゃない、友里も藤尭も、エルフナインに微笑む。

 

「なら良かった。エルフナインちゃんが、悪い子じゃなくて。」

「輪ちゃんと同じで、敵に利用されてただけだもんな。」

「友里さん……藤尭さん……?」

「君の目的はキャロルの企みを止める事。そいつを最後まで見届ける事!」

 

 艦内にいる全員がエルフナインの味方だった。すぐさま弦十郎は指示を下す。

 

「装者への通信手段をパターンβに変更!表示も最低限に変更しろ!……っとこんな所だ。S.O.N.G.にだって、それなりのやり方が用意されている。だからここにいろ。敵に覗き見されようとも、構うものか!」

「は、はい……!」

 

 覗き見られても構わないよう通信手段だけを変え、情報も限られたものに縮小された。これでエルフナインを拘束する必要もなくなり、キャロルに情報を見られても良いようになった。

 面白くない結果にキャロルは舌打ちを最後に、幻影は消えた。

 通信手段が変更された事で、暗号化された座標でキャロルの位置を特定した3人はすぐさまその場所まで駆ける。




少しの間だけ、以前に書いておいた鬼滅のストーリーを再構成するので少しばかり投稿頻度が遅れます。
悪しからず……
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