戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

82 / 190
切ちゃんハッピーバースデー!デース!

結構ギリギリになってしまった……

本当に、申し訳ない


残酷な世界でくれたもの

「エルフナインめ……使われるだけの分際で……!」

 

 エルフナインがS.O.N.G.に一人の人間として改めて迎え入れられた事が気に入らないキャロル。元々、この計画の為に作り、利用していたのに、それが自分に盾突いた。本当に不愉快だった。さらにそれだけでは終わらない。複数の足音が聞こえ、そちらを向くと

 

「ここまでよ!キャロル、ドクター!」

「さっきみたいにはいくもんかデス!」

 

 クリス達3人が追いついた。だがキャロルは余裕の態度を崩さない。

 

「だが既に、シャトー完成に必要な最後のパーツの代わりは入手している。」

 

 そう言うとキャロルはアルカ・ノイズを召喚する。その後ろではウェルが3人を煽るように吐き捨てる。 

 

「子供に好かれる英雄ってのも悪くないが……あいにく僕はケツカッチンでね!」 

「誰がお前なんか!」

 

 ウェルをよく知る切歌はバッサリとそのセリフを両断する。そして、ギアのペンダントを握りしめる。

 

Zaios igalima raizen tron……

 

 3人はそれぞれギアを纏い戦闘を開始する。切歌はその両手に持つ大鎌を振るい、アルカ・ノイズを刈り取る。調も、高く飛翔しながらツインテールのアームとなっているバインダーを開くと、そこから小型の鋸を無数に放つ。

 

【α式・百輪廻】

 

 放たれた鋸は、アルカ・ノイズの群れを切り刻んでいく。

 クリスもボウガンからピストルへと可変させて、アルカ・ノイズを撃ち抜いていく。ボウガンやガトリングよりは弾数は落ちるが、クリスの正確な射撃であれば、アルカ・ノイズなど一匹たりとも討ち漏らす事ない。

 

 クリスの前にレイアが立ち塞がる。クリスは両手に持つ拳銃を構え、レイアは重ねたコインをトンファーにして構える。トンファーのリーチは拳銃よりあるが、クリスは発砲しながら格闘戦に持ち込む。それにより、レイアは弾丸を避けながらトンファーで殴ろうとするが、クリスの拳銃で受け止められる。

 だが遠距離特化のイチイバルでは、遠距離、近距離共にバランス良く戦えるレイアの敵ではない。レイアはクリスの弾丸を躱しながらコインを床にばら撒くと、そこから岩が隆起、そのままクリスの足元からも隆起した事で、クリスを吹き飛ばす。

 

「マスター、後は私と……間もなく到着する妹で対処します。」

「オートスコアラーの務めを……」

「派手に果たして見せましょう。」

 

 キャロルに課せられた使命を果たすべく、レイアは戦闘態勢に入る。キャロルはテレポートジェムを割ると、足元に魔法陣が展開される。その範囲内にウェルも入っていた。

 

「ばっはは〜い!」

 

 3人を嘲笑うように手を振り、キャロルと共に転移された。

 

「待ちやがれ!」

 

 クリスは単騎で二人を追いかけようとしたが、レイアがそれを許さない。格闘戦に慣れていないクリスはトンファーに隙だらけの顔面を殴られ、倒される。

 

「不味いデス!大火力が使えないのにまともに飛び出すのは!」 

「駄目、流れが淀む……!」

 

 切歌と調はクリスの救援へと駆けつけようとするが、そのままレイアの標的となってしまう。空中にばら撒かれたコインは、そのまま雨霰のように降り注ぎ、二人を襲う。切歌は、何とか踏みとどまったが、調は防ぎきれず吹き飛ばされた。ギリギリ、切歌が調をキャッチして受け止めたが、今度は巨大なコインが2枚、二人を押し潰さんと襲いかかる。。そのまま切歌は調と共に巨大コインに押しつぶされ倒されてしまった。

 倒れていたクリスが目を開けると、そこには切歌と調が倒れていた。後輩達を守ろうと戦ったはずなのに、結果的に自分が壊してしまったのだと思い、涙を流す。

 

「独りぼっちが……仲間とか友達とか……先輩とか後輩とか……求めちゃいけないんだ……!でないと……でないと……残酷な世界が皆を……姉ちゃんを殺しちまって……本当の独りぼっちになってしまう……!」

 

 あの頃から、9年前と、ルリと離れ離れになったあの時から何も変わってない。あの時、ルリに助けられて一人生き残ったが、それがルリは心を失い、今度は守ろうとしていた後輩達を失いそうになっている。その恐怖が、クリスを押し潰そうとしている。

 

「なんで……世界はこんなにも残酷なのに……パパとママは歌で救おうとしたんだ……。」

 

 声が掠れ、慟哭が漏れ出る。だがレイアはそんな事を考慮するような者ではない。

 

「滂沱の暇があれば、唄え!」 

 

 頭上からレイアがトンファーで殴りかかろうとしていたその時、倒されたはずの切歌と調がそれぞれのアームドギアで防いだ。

 

「独りじゃないデスよ!」

「未熟者で……半人前の私達だけど……。傍にいれば誰かを独りぼっちにさせないくらいは……!」

 

 既にボロボロの二人をレイアは力押しで押し返す。

 

「二人とも……!」

 

 だがそれでも切歌と調は立ち上がった。

 

「後輩を求めちゃいけないとか言われたら、ちょっとショックデスよ……。」

「私達は、先輩が先輩でいてくれること……頼りにしてるのに……!」

 

 切歌と調、二人の後輩がいるからこそ、自分という先輩がいる。ようやくそれに気付いた。

 

「そっか……あたしみたいなのでも、先輩やれるとするならば、お前達みたいな後輩がいてやれるからなんだな……!」

 

 クリスは立ち上がり、ギアのコンバーターに触れる。それを見たレイアは、再び構え直す。

 

「もう怖くない……!イグナイトモジュール、抜剣!!」

 

 ウィング型のスイッチを押し込んでコンバーターを取り外すと、それを宙に投げる。コンバーターの外殻は開き、エネルギーの刃が展開されると、その刃はクリスの胸を貫く。発電所でも体感した闇が再び襲いかかった。

 

(あいつらが……あたしをギリギリ先輩にしてくれる……!姉ちゃんの言葉を借りるなら……それは……絆なんだ……!)

 

 だが今のクリスならこの呪いに立ち向かうだけの力がある。何故なら、切歌と調、二人の後輩がいるから何も怖くない。

 

(そいつに応えられないなんて……他の誰かが許しても……あたし様が許せねぇってんだ!!)

 

 するとイチイバルの白かった装甲が弾け飛び、黒い装甲へと姿を変え、禍々しくも強力なイグナイトモジュールを二人の後輩という絆に応える為に、呪いをねじ伏せた。

 

 

 クリスはクロスボウの矢を乱射させ、レイアはそれをトンファーを回転させる事で防ぎ、その嵐が止むと同時に接近する。クリスも再び二丁の拳銃を手に構え、レイアに格闘戦を挑む。レイアもトンファーで殴りかかるが、クリスはそれを避けながら拳銃を発砲する。先程の焦りを見せていたクリスとは全く異なり、弦十郎と瑠璃に叩き込まれた技術を存分に発揮していた為、動きに無駄がなく、的確に攻撃と防御を切り替えていた。

 

(失うことの怖さから……せっかく掴んだ強さも暖かさも全部、手放そうとしていたあたしを止めてくれたのは……!)

 

 クリスはこの埒を切り開く為に背後へ飛び、二丁の拳銃がロングレンジのライフルへと可変させる。

 

「ライフル……?!」

 

 クリスの行動に虚を突かれ、驚くレイアの後頭部にその銃身が振り下ろされ、直撃した。

 

「殴るんだよ!」

 

【RED HOT BLAZE】

 

(先輩と後輩、この絆は世界がくれたもの……!世界は大切なものを奪うけれど、大切なものをくれたりもするって事を。そうか……パパとママは、少しでも貰えるものを多くする為に、歌で平和を……!)

 

 もう二度と手放さない。その思いを胸に大型のミサイルを二本展開させて発射する。

 

【MEGA DETH FUGA】 

 

 高速で襲いかかるミサイルを一本、レイアは叩き折る。だが発射された残りの一本の上に、クリスが乗っていた。

 

「諸共に巻き込むつもりか……?!」 

 

 レイアはコインを弾いてミサイルを撃ち落とそうとするが、クリスのガトリング砲によって全て弾かれてしまう。レイアはミサイルを避けようと跳躍したが、突如ミサイルの軌道が変わり、そのままレイアの方へと一直線に向かう。

 

「ミサイルを曲げて……?!」

 

 足場がない以上、レイアは最早避ける事は不可能となった。だがクリスもこのままでは巻き添えをくらうことになる。だが今のクリスは一人ではない。クリスの両手首にイガリマのアンカーに巻かれ、それに引っ張られる形でクリスはミサイルから離脱、レイアは笑みを浮かべながらミサイルに直撃した。

 

「スイッチの位置は覚えてる!」

 

 ミサイルが爆発する前に、調はツインテールのアームのバインダーを開いて、小型の鋸を発射、隔壁のスイッチを撃ち抜くと、隔壁が閉じようとしていた。さらに、レイアを直撃したミサイルが爆発し、その爆風までもが襲いかかろうとしていたが、ギリギリ閉じきる直前で、クリスの回収に成功、爆風も隔壁によって防がれた。

 

「やったデス!」

 

 3人の連携が決まった事に、切歌がガッツポーズを取る。

 

「即興のコンビネーションで、まったくもって無茶苦茶……」

「その無茶は、頼もしい後輩がいてくれてこそだ。」

 

 クリスは二人の手を取って

 

「ありがとな。」

 

 3人は笑顔を浮かべた。互いに信頼し、託す事が出来たからこそなしえた連携、勝利。だがその余韻に浸る暇はなかった。施設内が大きく揺れ始めた。

 

 艦内でもアラートが鳴り響き、クリス達の危機を知らせていた。

 

「深淵の竜宮、被害拡大!クリスちゃん達の位置付近より、圧壊しつつあります!」

 

 しかもそれだけではない。

 

「この海域に接近する巨大な物体を確認!これは……!」

 

 モニターには以前に確認された巨大人造兵器、レイアの妹がこの深海を泳ぎながらこちらに向かって来た。あの時は足止めされただけだったが、今回同じ事をするとは限らず、この潜水艦を破壊しに来る事も想定される。しかも、今回はクリス達が乗る小型潜水艇の到着も待たねばならず、その間にもレイアの妹がこちらに迫っていた。

 

 さらにLiNKERの効果が切れた事で、調と切歌のギアが解除されてしまう。幸いクリスはイグナイトモジュールを支配したままの状態であり、そのまま二人を担いだ状態で、崩落は避けられない竜宮内を走っていた。

 

「駄目、間に合わない……!」

「さっきの連携は、無駄だったデスか……?!」

「まだだ!諦めるな!」 

 

 ギリギリ崩落する前に潜水艇に乗り込んだ3人。脱出に成功、レイアの妹が来る前に、本部の潜水艇に帰投した。

 

「潜航艇の着艦を確認!」

「緊急浮上!油圧を気にせず、振り切るんだ!」

 

 潜水艦を出せるだけのスピードで浮上させるが、レイアの妹も、その後を追う。

 

「総員をブリッジに集め、衝撃に備えろ!急げ友里!」

「はい!」

 

 コンソールを弾く友里。その間に潜水艦は夜明けの光を差す海面へと浮上した。だが同時にレイアの妹も海面から姿を現し、その右腕を振り上げた。そして、その腕が振り下ろされると、潜水艦は真っ二つになるように大破した。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 同じ頃、病室にも陽の光が差し込んだ。父親と向き合う覚悟を決めた響に、輪が心配していた。

 

「響、大丈夫?私が焚き付けておいて言うのも何だけど……」

「大丈夫ですよ。」

 

 響は病室の窓の方へと向き

 

「決戦の朝だ……。」

 

 登る太陽を見つめていた。

 




おまけ

「お誕生日おめでとう切歌ちゃん。」
「ハッピーバースデー暁さん!」
「瑠璃先輩!輪先輩もありがとうデス!」
「さあじゃんじゃん食べて!瑠璃お手製のフルコース料理!どれもこれも絶品だよ〜!」
「おお〜!ご馳走なのデース!」
「あれ?調ちゃん、どうしたの?」
「切ちゃんのおさんどんは、私の役目……瑠璃先輩でも譲れない……!」
「あ、あれ……調ちゃん……?」

それからというもの、調に対抗心を剥き出しにされるようになった瑠璃であった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。