戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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小説を一気に読んでたらすっかり遅くなってしまいました。

だって面白かったんだもん……ゲラゲラ笑ってたし……後悔はしていない……


へいき、へっちゃら

 洸がチフォージュ・シャトーを映した映像をスマホに収めようとしている間に、殆どの避難を完了させた輪は、急いで響の所へと車椅子を走らせていた。すると、洸はまだ逃げておらず、響に怒られている姿を見て呆れた。

 

(嘘でしょ?!まだ逃げてないとかバッカじゃないの?!)

「何してんの?!早くその人を……」

「ほう……そいつがお前の父親か。」

 

 どこからともなくキャロルの声が聞こえた。3人は声がした方、空を見上げると、そこにキャロルがダウルダブラを抱えて宙に浮いていた。

 

「響、空から人が……」

「キャロル……!」

「キャロルちゃん……。」

「終焉の手始めに、お前の悲鳴を聞きたいと、馴染まぬ体が急かすのでな。それと……」

 

 目線を響から輪へと変える。

 

「いつかの裏切り者か。お前は望みを果たす為にS.O.N.G.を裏切ったというのに、今度はオレを裏切るのか?」

「何とでも言いなよ。私は……もう親友を悲しませない為に、あんたと決別したんだから!」 

「ふっ……裏切りを重ねて生き恥を晒すのか?」 

「人形しか友達がいない長生きボッチより100倍マシだね!」

 

 キャロルが裏切り者だった輪を煽るが、仕返しに煽り返された。しかも今の輪は洸の情けない姿を見て機嫌が悪かった事もあり、余計に辛辣だった。

 

「ならお前から消し飛ばしてやろうか!」

 

 するとキャロルは輪に向けて風の錬金術を放った。車椅子ではその強力な竜巻を咄嗟に避ける事も出来ず、直撃してしまい、車椅子と共に吹き飛ばされ、さらに車椅子から勢い良く放り出された。

 

「うわあああぁぁぁっ!!」

 

 しかも、威力が凄まじかったのかレストランのガラスドアに背中を強く打った事でヒビが入った。

 

「輪さん!」

 

 倒れ伏した輪を助けるべく、ギアを纏おうとペンダントを握ったが、キャロルの放った風の錬金術がギアのペンダントの紐を断ち切り、赤い結晶が落ちてしまった。

 

「もはやギアを纏わせるつもりは毛ほどもないのでな!」 

 

 ペンダントが手から離れてしまってはギアを纏う事が出来ない。キャロルは見下ろしながら、魔法陣を展開したまま宣言するように告げる。

  

「オレは、父親から託された命題を胸に、世界へと立ちはだかる!」

「お父さんから……託された……?」

「誰にだってあるはずだ。」

 

 父親から託されたもの。今の響にはそれを見つける事は出来ない。故に、先程までの強い意思が少しずつ失われつつあった。

 

「私は何も……託されていない……。」

「何もなければ耐えられまいて!」

 

 だがキャロルは容赦しない。風の錬金術で竜巻を放つ。今の響には戦う意思が感じられず避けようとしない。

 

「響!!」

 

 起き上がった輪が叫んだ。今から怪我と痛みを押し殺して走ったとしても間に合わない。このままでは直撃してしまう。その時、洸が響を飛びかかった事でそれは回避された。

 

「響!おい!響!」

「危ない!早く逃げて!」

 

 洸は響に呼び掛けるが、輪の叫びでキャロルが目前まで降り立ったのが見えた。さらにキャロルは標的を洸へと変えようとしている。

 

「世界の前に分解してくれる。」

「うわああああぁぁぁ!!」

 

 洸は一目散に走り出した。情けない叫び声からして逃げようとしている事はすぐに分かる。

 

「お父さん……?」

「助けてくれえぇ!こんなのどうかしていやがる!」

 

 我が身可愛さで自分を見捨て、逃げ惑う洸に絶望し、涙を流していた。やはりもう自分が大好きだったお父さんはもうどこにもいないのだと、嫌という程思い知らされた。

 

「逃げたぞ!娘を放り出して、身軽な男が駆けていきおる!」 

 

 キャロルはそんな洸を嘲笑うように錬金術を放つ。しかも当てずに彼のやや後ろに放っている事から、わざと外しており、走らせている。

 だが輪は逃げ惑う洸を見てどこか違和感を感じた。

 

(何で態々この辺りを周るように走ってるんだろう……?もし本当に逃げ出すなら、さっさとここから遠く離れた所へ逃げるはず……。)

 

 先程から洸の走り方、そして辺りを見回している所を見た輪。だが次第に洸は追い詰められ、尻もちをついてしまった。手近にあった小石をキャロルに向けて情けない声を挙げながら投げつけては立ち上がって逃げ出す。

 

「大した男だな、お前の父親は。オレの父親は最後まで逃げなかった!」

(いや違う……あの人はただ逃げてるんじゃない……!)

「響!立ち上がって!まだ諦めないで!」

 

 輪が響に叫ぶがそれでも響は立ち上がろうとはしなかった。

 

「響!今のうちに逃げろ!」

「え……?」

 

 突然洸がキャロルの錬金術から逃げながら響に向かって叫んだ。唐突に、それも逃げ出したと思っていた洸に呼び掛けられた事で咄嗟に反応した。

 

「壊れた家族を元に戻すには、そこに響もいなくちゃ駄目なんだ!」

 

 だがキャロルの錬金術が足元に着弾した事で爆発が起き、吹き飛ばされた。

 

「お父さん!」

 

 響が叫んだ。一度は倒れ伏した洸だったが、痛みを押し殺して立ち上がった。

 

「これくらい……へいき、へっちゃらだ……。」

 

 それを聞いた響は幼少期の記憶が蘇った。あの時、料理で包丁を使っていた。それで失敗し、指を切ってしまい出血した時、幼い響が心配すると

 

『へいき、へっちゃらだ。』

 

 へいき、へっちゃら。いつも響がどんな困難に直面しても自然に笑顔になれる魔法の言葉。それは洸が響に言っていた口癖だった。

 

(そっか……あれはいつも、お父さんが言っていた……)

「逃げたのではなかったか?」

「逃げたさ……。」

 

 そう言うと洸は力では勝てないはずのキャロルに立ち向かうように見据えた。情けない姿に見えるかもしれないが、今の洸の心は覚悟を決めているような目をしていた。

 

「だけど……どこまで逃げても、この子の父親であることには逃げられないんだ!俺は生半だったかもしれないが、それでも娘は本気で!壊れた家族を元に戻そうと!勇気を出して向き合ってくれた!」

 

 洸は足元の石をキャロルに何度も投げつける。しかしそれは全てキャロルには当たらない。何個かはキャロルのいる方ではなく、違う所になげてしまっており、偶々キャロルの方へ投げたとしても、それを軽く避けられる。

 

「だから俺も、なけなしの勇気を振り絞ると決めたんだ!」

(あの人……あっ!)

 

 だがいくら石を投げてもキャロルにはかすり傷一つすら与えられない。だが響と輪は見逃さなかった。洸が手に握りしめたものを。響は完全に立ち上がり、それを見た洸は

 

「響、受け取れええええぇぇぇーーー!!」

 

 そう言って投げた赤い結晶、ギアペンダントはキャロルのすぐ真横を通り過ぎ、それにキャロルが驚愕した時には、響の手に握られていた。

 

 

 Balwisyall nescell gungnir tron……

 

 響は洸に託されたペンダントを握りしめ起動詠唱を唄った。

 

「させるか……」

「輪パーーーンチ!!」

 

 キャロルが響に錬金術を放とうとしたが、輪がそうはさせまいと殴りかかった。ダウルダブラによって防がれ、ダウルダブラで殴り飛ばされたが、キャロルの気を引く事には成功した。

 

「チッ……!」

 

 キャロルが気付いた時には、響はガングニールのギアを纏っていた。

 

「響……!」

「私、お父さんから大切なもの……受け取ったよ……!受け取っていたよ!」

 

 響は洸に笑顔を浮かべた。

 

「お父さんは、いつだって挫けそうになる私を支えてくれていた……。ずっと、守ってくれていたんだ!」

「響……。」

 

 惨劇から生き残って苦しいリハビリをしてきた時だって、学校で虐めにあっても、その魔法の言葉があったから乗り越えられた。響は父親から託されたものを胸に、今度はキャロルと対峙する。

 一方倒された輪は、成り行きが良い方向へと進んだ事に安堵していた。

 

「良かったね……響……。」

「お、おい君!大丈夫か?!血が出ているじゃないか!」

 

 洸が輪に駆け寄り、肩を貸した。輪の右足に巻かれていた包帯が血で染まっていた。先程、キャロルに殴りかかった時、走った事によって傷が開いてしまったのだ。

 

「いやぁ……面目ないです。」

「いいんだ。それよりも……ありがとう。君も未来ちゃんと響を支えてくれていたんだろう?」

 

 筑波で会った時、響と再会した衝撃が強すぎて自分の事は忘れてるだろうと思っていたが、洸は響と一緒にいたのを覚えていた。だから響の後ろの席で見守っていてくれていたのが分かっていた。

 

「私の場合は、罪滅ぼしと……私と同じ結果になってほしくなかっただけですよ。何より……」

 

 輪はキャロルが召喚したアルカ・ノイズと、単騎で戦う響を見る。

 

「あの子には笑顔が一番似合ってますから……。」

 

 洸は響を戦う姿を目の当たりにして、思い出した。フロンティア事変の時、中継で響がガングニールのギアを纏って戦っていた姿を。

 

(やっぱり……あの女の子は響だったのか……。逃げるばかりの俺と違い、お前は何があっても踏みとどまって、ずっと頑張ってきたんだな……。)

 

 響はアルカ・ノイズを殲滅させると今度はキャロルに殴りかかる。だがキャロルは初めて響と邂逅した時のように手加減はせず、響を潰す為に錬金術を放つ。

 その威力の凄まじさに響は吹き飛ばされ、建物に背を打ち付け、落下してしまう。

 

「負けるなああああぁぁぁーーー!響、負けるなあああああぁぁぁぁーーーーー!!」

 

 娘の勇姿を見届けている洸は叫ぶように応援する。すると目を見開いた響は、着地と同時に脚部のジャッキで再び高く飛び立つ。さらに腰のブースターで加速して、一直線にキャロルの懐に入って、腹部をアッパーで殴った。再び着地と同時にジャッキで飛翔、ブースターを点火させ、さらに右腕部のハンマーパーツを展開させた。

 

「ヘルメス・トリスメギストス!」

 

 高く打ち上げられたキャロルは錬金術で4層のバリアを展開させる。

 

「ぶち破れ響!」

 

 輪が拳を突き出して叫ぶ。そして響も

 

「知るもんかああああぁぁぁーーーー!!」

 

 バリアを拳一つで破壊し、そのままキャロルの顔面を殴り飛ばした。

 

「よし!やった……危ない!」

 

 キャロルが殴り飛ばされた方を見た時、足元に魔法陣が展開されていた事に気付いた輪は咄嗟に洸を突き飛ばした。

 

「痛っ……!君、何を……う、うわあああぁぁぁ!!」

 

 突き飛ばされた洸は、突如アルカ・ノイズが輪を囲うように出現したのを目の当たりにした。

 キャロルは洸が叫んだ時、彼と輪を葬ろうとアルカ・ノイズの召喚石をばら撒いていたのだ。この時、響の方を見ていた為に気付かず、輪も気付くのが遅れてしまった。

 しかも今の輪は足を怪我していたので、出現するギリギリのタイミングで洸を包囲の外に出すのが精一杯だった。輪は逃げ道を探すべく周囲を見るが、そんなものは見つからない。もはや響が全速力で駆けても間に合わない。輪に死の恐怖が目前に迫った。

 

(どうしよう……!本当にヤバい……!)  

「まずはお前の父親からと思っていたが……やはり手始めに裏切り者から挽いてくれる!!」

「輪さん!!」

「やめろおおおおぉぉぉぉーーーー!!」

 

 響と洸が叫ぶが、逃げ道を失った輪にアルカ・ノイズが全方向から解剖器官が迫る。

 

(助けて……瑠璃……!)

 

 輪は目を瞑り、この場にいない友に助けを求めた。




キャロルが相手でも煽る輪でした。
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