戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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今回も瑠璃より輪が大きく目立ちます。
戦いは何もギアだけではないんですよ。


世界を壊す歌

 アルカ・ノイズに取り囲まれ、死の淵に立たされた輪。全方向から解剖が迫り、死を覚悟して目を瞑った。同時に、ここにいない友に助けを願った。

 

(助けて……瑠璃……!)

 

 だがいつまで経っても身体に痛みが襲って来なかった。目を見開くと、アルカ・ノイズの身体は黒槍と白槍に貫かれ、赤い塵と化した。  

 

「バイデント……もしかして……!」 

「輪!」

 

 放たれた方を振り向くとそこにはギアを纏っていた瑠璃が駆け寄って来た。彼女だけではない、瑠璃の後ろに、全ての装者が並び立っていた。

 

「輪!大丈夫?!」

「ありがとう……今度は本当に駄目かと思った……。」

「足の怪我が……緒川さん!」

「輪さんをこちらへ!」

 

 緒川は洸と共に輪を抱えて、車に乗せて安全を確保した。

 

 

「もうやめよう、キャロルちゃん。」

「本懐を遂げようとしているのだ!今更辞められるものか!思い出も……何もかもを焼却してでも!」

 

 響の呼び掛けに拒絶したキャロルはダウルダブラの弦を弾いて音色を奏でる。その音色がトリガーとなり、再び艶めかしい大人の身体へと変化させてダウルダブラのファウストローブをその身に纏った。

 

「ダウルダブラのファウストローブ。その輝きは、まるでシンフォギアを思わせるが……。」

「輝きだけではないと、覚えてもらおうか!」

 

 そう言うと、キャロルは歌い出した。すると放たれた錬金術が容赦なく装者達に襲い掛かる。

 停泊していた本部のブリッジではダウルダブラの反応をキャッチしていたが、その反応パターンが前回にはなかったものもキャッチしていた。

 

「交戦地点でのエネルギー圧、急上昇!」

「照合完了!この波形パターンは……!」

「フォニックゲイン……だと?!」

 

 キャロルから発せられたフォニックゲインが、放たれた錬金術の威力を跳ね上げていた。

 

「この威力……まるで……」

「すっとぼけが効くものか!こいつは……絶唱だ!」

 

 再びキャロルの絶唱級の錬金術が襲い掛かる。翼とクリスはこれを避ける。

 

「絶唱を負荷もなく口にする……」

「錬金術ってのは何でもありデスか?!」

 

 切歌と調も、躱す。しかし、絶唱は本来使用者に掛かるバックファイアは絶大である。キャロルが放つこの絶唱級の錬金術にはそれがない為、こうも連発されては装者達はたまったものではない。

 

「だったらS2CAで……」

「駄目……!あの威力……一人分で出しているような威力じゃない。7人のS2CAを使っても……あれに勝てるかどうか……。それに下手したら響ちゃんが……」

 

 瑠璃の言う通り、キャロルの放つ絶唱級の錬金術は一人分程度のものではない。しかもS2CAは響に大きな負担がかかる。一時的に切り抜けても追撃が来れば、動けなくなった所を攻撃されておしまいだ。

 

「翼、あれを!」

 

 マリアがチフォージュ・シャトーを指すと、シャトー全体に緑色の輝きを帯びていた。

 

「明滅、鼓動……共振?!」

 

 キャロルの意思、滅びの歌に共鳴するように、次第にその光が強くなっている。

 

「まるで、城塞全体が音叉のように、キャロルの歌に共振!エネルギーを増幅!」

 

 すると、シャトーから地に向かって放たれ、放射線状に拡散したエネルギー波が、地球全体に、地表にそって、まるで切り刻むように収縮されようとしている。この軌道に弦十郎はある事に気付いた。

 

「これは……まさか!」

「フォトスフィア……」

 

 エルフナインがその正体を呟いた。そこに緒川と洸が入って来た。

 

「いけません、ここは……」

「頼む!俺はもう二度と、娘の頑張りから目を逸らしたくないんだ!娘の……響の戦いを見守らせてくれ!」

 

 緒川は洸が入るのを止めようとするが、洸の意思の強さに折れた事で、洸は響の戦いを見守る事が出来た。

 

 地表に放たれたエネルギー波はフォトスフィアの軌道線状に沿って収斂している。海上に浮かぶ漁船、そこに乗る何も知らない漁師達が、このエネルギー波が近づいている事に驚いたが、間もなくそのエネルギー波に呑み込まれた。

 キャロルは世界の分解が始まり、愉悦に浸るように笑う。

 

「これが世界の分解だ!」

「そんなことは……!」

 

 響がキャロルに殴り掛かるが、ダウルダブラの弦がキャロルを守るように展開、響の身体を巻き付き、伸ばした拳を防いだ。

 

「お前にアームドギアがあれば届いたかもな!」

 

 するとマリアが突然飛び出した。その行動に翼が問う。

 

「マリア!何処へ?!」

「私は、あの巨大装置を止める!」

 

 ビルの屋上まで飛び、走ると後ろから禁月輪で走行する調と、それに同乗する切歌も追いかける。追いつくと、調の左手がマリアの右手を掴む。それに気付いたマリアは振り返る。

 

「LiNKER頼りの私達だけど……」

「その絆は、次元式じゃないのデス!絆は瑠璃先輩の受け売りデスけど。」

 

 切歌は頬を掻いて、はにかむ笑顔を見せる。二人が来てくれるならこんなに心強いことはない。マリアは一瞬笑みを浮かべると、チフォージュ・シャトーを見据える。

 

「なら、急ぐわよ!」

 

 3人は、チフォージュ・シャトーに乗り移り、内部へと乗り込んだ。キャロルはそれを見ていたが、そんな事は眼中にないようだ。キャロルは弦の糸で響を吹き飛ばすと、シャトーを見上げる。

 

「それでもシャトーの守りは越えられまい。俺を止めるなど能わない!」

 

 背後から翼が斬りかかるが、それを避け逆に翼の背後を取る。だがさらにその後ろからクリスがガトリング砲を、瑠璃が連結させた二本の槍の穂先から、融合させ、強大となったエネルギー波を放つ。

 

【Shooting Comet:Dual Drive】 

 

 だがキャロルが放った錬金術によって、それらは全て消し飛ばされ、クリスと瑠璃もまとめて吹き飛ばされた。

 

「「うあああああぁぁぁ!!」」

 

 響、翼はキャロルの側面からそれぞれ攻撃を仕掛けるも、ダウルダブラの弦によって防がれ、同時に跳ね返すように吹き飛ばす。

 

「世界を壊す、歌がある!」

 

 キャロルは4人の装者を見下ろしながら、そう叫んだ。

 痛みを押し殺して立ち上がる4人。歌によって導かれ、出会い、救われたからこそ、それを認めはしない。

 

「そんな事……あるかよ!」

「歌は破壊の為にあるのではない!」

「そうだよ……!歌があったから今の私達がいるんだ!」

「絶対に、止めてみせる!」

  

 立ち上がった4人は叫び、キャロルを止める為にそれぞれアームドギアを手に、キャロルと対峙する。 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 シャトーに乗り込んだマリア、調、切歌は床に這いつくばるように倒されていた。キャロルの言う通り、シャトーの防衛機構は強力なものだったのだろう。だが、そんな三人を倒したのはアルカ・ノイズではない。フロンティア事変で亡くなったはずのナスターシャがジャンヌお手製の車椅子に座って見下ろしていた。

 

「マム……」

「思い出しなさい、血に汚れたあなたの手を。どうしてその手で、世界を救えるなんて、夢想出来ますか。」

 

 マリアは突きつけられた現実に狼狽える。

 

「あなたが世界を救いたいと願うのは、自分が救われたいがため……」

 

 そこに調と切歌が狼狽えるマリアに呼び掛ける。

 

「マリア!あれはマムじゃないデス!」

「私達はマムが今何処で眠っているのかを知っている!きっとこの城塞の……」

「そんな事は分かっている!あれは偽りのマム……だけど語った言葉は事実だわ!」

 

 目の前にいるナスターシャが偽物であることは分かっている。当の本人は既にこの世の者ではないのだなら。だが目の前にいるのが偽物である事が分かっていても、突きつけられた事実の前に、マリアは動揺を隠せず、俯いてしまう。

 

「救われたいのですね……眩しすぎる銀の輝きからも……」

『そんなの関係ない!』

 

 ナスターシャの追及を通信機から輪が叫んだ事で遮られた。

 

「輪……?」

 

 ブリッジから、輪がマリアに呼び掛けていた。本来であればまだ安静にしなくてはならなかったのだが、輪は戦いを見届ける為に、洸と同じように車椅子に乗って強引に入って来た。輪は重傷を負っているエルフナインの代わりに、マリア達のサポートを弦十郎に志願した。この中でエルフナインを除けばシャトーの内部の構造について詳しいのは輪だけであるという理由もあってお許しが出たのだ。

 

『マリアさん!そいつは人の心の弱みにつけ込む幻!私もそうやって、旭の偽物に惑わされた!だけどマリアさんも思い出して!みんなが歩む世界の未来を、私達に託してくれた友達を!』

「みんなが歩む世界……っ!」

 

 マリアは思い出した。あの時、自らの命を省みる事なく支えてくれた友を。最後のビデオレター、あれを聞いた時から、この世界を任されたのだ。

 

『救われたいから世界を救うんじゃない!彼女に託されたこの世界を、未来を守る為に救うんです!未来で胸を張って、生きられる自分になれるように!だからそんな所で立ち止まらないで!未来へ進む為に、前を向いて、戦ってマリアさん!!』

 

 マリアは拳を作り、前を向く。

 

「ありがとう……輪。そうね……ここで立ち止まっていたら、ジャンヌに顔向けができないものね!」

 

 迷いを振り切ったマリア。すると突然マリアとナスターシャの間に障壁が現れた。

 

「何……?!」

『その部屋から出て右側の回廊から走れば玉座へすぐに辿り着く!今のうちに!』

「了解!」

 

 三人は部屋から脱出すると輪の案内通り、右の回廊へ走ろうとした時、障壁が立ちはだかった。

 

「また!」

「ここで通せんぼデスか?!」

『こうなったら遠回りになるけど、左側から行って!』 

 

 マリア達は左側の回廊を駆ける。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 シャトーの外、響、翼、クリス、瑠璃がキャロルと交戦しているが、キャロルに傷一つ与えるどころか攻撃が届かない。以前発電所で戦った時とは違い、フォニックゲインも糧としている。故にその威力は凄まじいものだった。

 キャロルがシンフォギア装者ではないのに唄っている事にクリスはを悪態つく。

  

「何で、錬金術師が歌っていやがる……?!」

「七つの惑星と七つの音階、錬金術の深奥たる宇宙の調和は、音楽の調和。ハーモニーより通ずる絶対心理……。」

「どういう事だ?!」

「その成り立ちが同じである以上、おかしな事ではないと言っている。」

「成り立ちが同じ……?」

 

 翼の問いにキャロルが答えると、瑠璃はその答えをオウム返しに呟いた。

 

「先史文明期、バラルの呪詛が引き起こした相互理解の不全を克服するため、人類は新たな手段を探し求めたという。万象を知ることで通じ、世界と調和するのが錬金術ならば、言葉を超えて、世界と繋がろうと試みたのが……」

「歌。」

 

 響がその答えを呟いた。

 

「錬金術も歌も、失われた統一言語を想像するために生まれたのだ!」

「「「「まさか!」」」」

「その起源は明らかにされてないが……お前達なら推測するのも容易かろう?」

 

 バラルの呪詛、相互理解の不全、統一言語、これらのワードに関わり深い人物は、フィーネただ一人しかいない。

 

 

 一方輪の案内で走る三人だが、いくら走っても玉座の間にたどり着く気配がない。

 

「輪先輩!本当に合ってるんデスか?!」

『本来近道出来る所を遠回りしてるから、時間が掛かるんだよ。』

「そろそろ罠が仕掛けてもおかしくない頃合いデスよ!あっ……」

 

 三人は目の前の事態に、足が止まる。

 

「罠以下の罠……!」

「もしかして、アタシ達を誘導していたのは……」

 

 目の前に、英雄に焦がれる最低で最悪のマッドサイエンティスト、Dr.ウェルが壁にもたれかかっていた。

 

「ご覧の有様でね……血が足りず、シャトーの機能を完全掌握する事もままならないから難儀したよ……。さて、戦場で僕と取引だよ!」

 

 マリア達のチフォージュ・シャトーの破壊、そしてウェルの中にはキャロルへの仕返し、この二つの利害が一致した。

 




以前瑠璃、輪、小夜のイメージCVについて言ってましたが、皆さんはどなたの声優さんを想像してますか?
今回はジャンヌとジークがいるので、もしよろしければそれらも教えていただければと思います。
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