戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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最終決戦だというのに瑠璃より輪が目立っている……。

マリアさんの必殺技の色文字を灰色にするか水色にするかちょっと悩み始めましたので今回は水色の方にします。
どっちかに決まり次第、変更します。




崩れゆく

 マリア達は負傷したウェルを伴ってチフォージュ・シャトーの玉座の間へと辿り着いた。4人は制御装置の前に立ってそれを見上げる。

  

「これがチフォージュ・シャトーの制御装置……これを破壊すれば……」

「おつむのプロセッサは何世代前なんだい?そんな事をすれば制御不能になるだけさ。」

 

 キャロルが唄う世界を壊す歌。それによって放たれる錬金術が響、翼、クリス、瑠璃の4人を追い詰めている。

 対する4人はいくら攻撃してもキャロルに傷一つ与える事はおろか、そもそも届きすらしない。勝負という勝負すら成り立っておらず、言ってしまえばキャロルの一方的な蹂躙である。しかも今まで自分達を支えてくれた歌が、キャロルが口ずさむ事で世界を壊す道具として利用されている。瑠璃は、それが悲しかった。

 

「歌で世界を壊すなんて……歌をそんな事に使うなんて……!」

「東京の中心とは、張り巡らされたレイラインの終着点。逆に考えれば、ここを起点に全世界へと歌を伝播させられるという道理だ。」

「その為に安全弁である要石の破壊を!」

 

 霊脈を守る社、そして八紘邸にあった要石、それがない今、世界の解剖を止めるにはシャトー自体を破壊するか、シャトーから放たれたエネルギー波に共鳴する歌を唄うキャロルを倒さなければならない。だがマリア達三人だけでは破壊に必要な力はない。そしてキャロルとの戦力差、どちらも絶望的である事は見るに明らかである。

 

「もうどうしようもないのか?!」

『ないことなどない!』

 

 漂う絶望感を、通信機越しからマリアが打ち破った。

 

「たとえ万策尽きたとしても、一万と一つ目の手立てはきっとある!」

 

 シャトーでは防衛機構の一つとしてアルカ・ノイズが召喚されていた。マリア、調、切歌が対処している。残ったウェルはシャトーの制御権を奪う為にネフィリムを宿した左手を装置に当てる。

 

「私達が食い止めているうちに!」

「ちゃっちゃと済ませるデス!」

「血が足りないから踏ん張れないって言っただろう?!子供はいつも勝手を言う!」

 

 調と切歌の指図にウェルは文句を言う。そこに錬金術を介してキャロルが映し出される。

 

「生きていたか、Dr.ウェル!何をしている?!」

「シャトーのプログラムを書き換えているのさ。錬金術の工程は分解と解析、そして……」

「ちっ……!機能を反転し、分解した世界を再構築するつもりか?!そんな運用にシャトーの構造が耐えられるものか!お前たちごと丸ごと飲み込んで……」

「そう!爆散する!」

 

 三人はキャロルとウェルのやり取りに驚いた。まさか自分達はともかく、ウェル本人も死を覚悟している事に。どの道自分の命が尽きる事は分かりきっているウェルは、自分の命を引き換えに、キャロルの計画を阻止しようとしている。そう考えただけで、ウェルの下卑た笑みが浮び

 

「どっちにしても分解は阻止出来る!ホント、嫌がらせってのは最高だ!」

 

 次第に高笑いへと変わっていった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 Dr.ウェルが生きていた事は想定外だが、それは問題ではない。ウェルがシャトーの機能、分解から再構築に変換しようとしている。キャロルの目的と正反対の事をされようとしているのを当の本人が黙っているはずがない。

 

「世界の分解は止まらない……些事で止めてなるものか!」

「止めてみせる!エルフナインちゃんの想いで!」

 

 響はマイクコンバーターに触れる。イグナイトモジュールを使おうとしているのだ。それに響を除いた三人が反対する。

 

「よせ!」

「キャロルは元々、イグナイトを使わせる事が目的だった……だから……」

「イグナイトモジュールの起動は、キャロルに利される恐れがある!」

 

 イグナイトには時間制限がある。カウント999が0になった瞬間、どんな状況であってもギアが強制解除されてしまう。もし今この場で使い、時間以内にキャロルを倒せなかったら敗北が確定する事を意味する。三人はそこを懸念していた。

 だがそこにキャロルの錬金術が放たれ、4人は吹き飛ばされてしまう。

 

「一万と一つ目の手立て……それをマリアさんが……!」

「マリア……!」

 

 瑠璃と翼がマリア達がいるチフォージュ・シャトーを見上げる。その一万と一つ目の策、それが実るまで4人はキャロルとの戦いに耐えるしかない。

 

 だがシャトー内でも、状況は好転していない。アルカ・ノイズは殲滅させたが、突然切歌と調が吹き飛ばされた。ふっ飛ばしたのはナスターシャの幻影だった。遂に追いつかれてしまったのだ。だが輪の檄で迷いを振り切ったマリアは、目の前に映るナスターシャの幻影を前に、狼狽える事はない。

 

「お前がマムであるものか!」

 

 そう啖呵を切る。すると、ナスターシャは突如別の姿へと変わった。それは黒いガングニールを纏ったマリアだった。

 突然の変化に驚くマリアだったが、突如マリアの幻影がガングニールの穂先から放ったエネルギー波を、短剣で受け止めきれず、吹き飛ばされた。

 マリアの幻影はガングニールの穂先を床に刺し

 

「私はフィーネ。そう……終わりの名を持つ者。」

 

 機械的な声でそう言い切った。

 左の拳を床に突き立て、立ち上がったマリアは、今目の前にいるマリアの幻影が何者なのかを悟った。

 

「そうか……お前は私……。過ちのまま行き着いた……私達の成れの果て……!」

「だけど……黒歴史は塗り替えてナンボデス!」

「シャトーが爆発する前に、この罪を乗り越えて脱出しよう!」

 

 切歌と調も立ち上がり、三人は並び立って唄う。調がアームの鋸を振り下ろし、マリアの幻影がガングニールで受け止め鍔迫り合いになるが、すぐに押し返し、解く。そこに飛びかかった切歌が大鎌を振り下ろすが、これは後ろへ飛ぶ事で避けた。

 

 本部では輪が道案内をする為にオペレーター席へ座っていたが、そこに輪より重傷を負っているエルフナインが声を掛ける。

 

「輪さん、代わってもらえますか?」

「で、でも……あんた……。その怪我で……」

「これは、僕の戦いでもあるんです……!お願いします……!」

 

 エルフナインは輪を強く見据える。その目から覚悟を感じ取った輪は、ゆっくりと席から立つ。

 

「分かったよ、エルフナイン。」

 

 輪が座っていた所が空き、代わりにそこにエルフナインが座り、輪は車椅子に座る。

 代わったエルフナインは早速マリアに通信で声を掛ける。

 

「マリアさん、通信機をウェル博士に預けてもらえますか?!」

『何?!』

「自分らしく、戦います!」

 

 通信機越しから、エルフナインの意図を汲み取ったマリアは通信端末をウェルに投げ渡す。

 

『この端末をシャトーに繋いでください!サポートします!』

「胸が踊る……!だけど出来るのかぁい?」

 

 そう言って嬉しそうに笑うウェルはすぐさま通信端末を制御装置に置いた。

 するとブリッジのモニターにはフォトスフィアの図が映し出された。緒川と友里がすぐにその意図を察知した。

 

「そうか!フォトスフィアで!」

「レイラインのモデルデータを処理すればここからでも!」

「藤尭ぁ!」

「ナスターシャ教授の忘れ形見……使われるばかりじゃ癪ですからね!やり返してみせますよ!」

 

 意趣返し。藤尭はコンソールを素早く打つ。

 

「演算をこちらで肩代わりして負荷を抑えます!掌握しているシャトーの機能を再構築に全て当ててください!」

 

 その間にマリア達はマリアの幻影と戦う。再び放ったガングニールのエネルギー波を、逆三角形のバリアで防ぐ。

 

(私が重ねた罪は……わたし一人で!)

「調、切歌!ここは私に任せて、みんなの加勢を……っ!」

 

 マリアが二人の方を向いた隙、マリアの幻影がガングニールを投擲する。防御が間に合わないと思われたが調と切歌がそれぞれのアームドギアで間一髪防いだ。

 

「この罪を乗り越えるのは……!」

「三人一緒じゃなきゃ駄目なのデス!」

「ありがとう……二人とも……!」

 

 マリアは短剣を強く握りしめ、ウェルの方を向く。

 

「ドクター!私達が命に代えても守ってみせる。だから……ドクターは世界を!」

 

 ジャンヌに託された世界、皮肉にもその命運はジャンヌの命を奪ったウェルに掛かっている。しかし、マリアは世界を守る為に託す事を決めた。ウェルは口角をさらに上げて笑う。

 

 するとシャトー内の歯車が動き出した。外でもシャトーの周りに稲光が走る。解剖から再構築へと書き換えようとする事によってエネルギーの流れが逆流、シャトーに負荷が掛かっている。その異変を察知したキャロルが初めて狼狽えているのが露わになっている。

 

「やめろ……オレの邪魔をするのはやめろ……!やめろおおぉぉーー!!」

 

 キャロルがシャトーの方へ飛び立った。

 

「翼と立つステージは楽しかった……!次があるなら……朝まであなたと歌い明かしてみたいわね。」

「マリア……何を……?!」

 

 突然マリアが翼に語り掛けた。その真意が何なのか翼は理解出来なかった。

 

「命懸けで戦った相手と絆を深めて、仲良く出来る瑠璃先輩とクリス先輩は凄いなって……!憧れてたデスよ!」

「そんな……切歌ちゃんだって……!」

「そうだぞ!お前だって出来てる!」

「ごめんなさい……!あの日、何も知らずに『偽善』と言った事……本当は直接謝らないといけないのに!」

「そんなの気にしてない!だから!」

 

 切歌は瑠璃とクリスに、調は響に同じように言った。

 エネルギーが逆流し、暴走するにつれてシャトーから光が漏れ出し始めた。間もなく爆発する。

 

「お願いやめて!これ以上私とパパの邪魔をしないで!!」

 

 思わず以前の幼き少女のような声で懇願する。

 再構築の為の演算に心血を注ぐエルフナイン。床には血液が落ち、エルフナインの頬に脂汗が流れる。

 

「エルフナイン……もうこれ以上は……」

 

 これ以上やっては死んでしまう。そう言おうとした輪だが……

 

「輪さん……輪さんが命懸けで皆を守ったように……僕は……僕の錬金術で世界を守る……!キャロルに世界を壊させない!」

 

 切歌と調の攻撃で幻影マリアの手からガングニールを弾いた。マリアは左腕の篭手に短剣を連結させ、長くする。マリアが飛ぶと、幻影マリアがマントを翻す。そこに現れたのはアガートラームのギアを纏った亡き妹、セレナ。だが今のマリアは迷わない。

 

「セレナアアアアアアァァァァァーーーー!!」

 

 篭手のブースターを点火させて急降下、その剣で幻影セレナを真っ二つに両断した。

 

【SERE†NADE】

 

「やめろおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーー!!」

 

 キャロルが叫ぶと四大元素の錬金術を一つにした強大なエネルギー波をシャトーに向けて放ってしまった。自らの攻撃で貫いてしまったシャトーは大爆発を起こした。キャロルはシャトーが落ちていくのを見ているしか出来なかった。

 

 




おまけ 輪の憂鬱

「正直な事を言うと……私もギアを纏いたい!そして唄って戦いたい!いつも見てるだけなんて……私も瑠璃と並んで戦いたい!というわけでギアをくださいなオジサン!」
「頭を冷やせ!」
(げんこつ)
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