シリアスが続くので、後書きの方におまけの台本式のものを用意してます。
シャトーを用いた再構築によって、分解された場所は元通りに戻った。だがその代償は大きかった。
「シャトーが……託された命題が」
自らの攻撃でチフォージュ・シャトーは破壊された。撃ち抜かれたとはいえまだ外壁の形は保たれているが、機能を失ったシャトーはツインタワービルの真上へと落ちた。自ら命題を解き明かす唯一の手段を失い絶望していた。
一方装者達の方も悲しみに暮れていた。シャトーの中にはマリア達がいた。脱出したという報告もなく、まだ中にいるのは確かだった。もはや生存は絶望的だった。
「また失った……大切な人達を……」
「何でだ……くそったれ!」
瑠璃はそれぞれの手に持っていた二本の槍が落ち、膝から崩れ落ちた。
クリスも拳を強く握る。
翼の慟哭が響き、刀を地に突き刺した。
「投降の勧告だ!貴様が描いた未来は、もう瓦礫と果てて崩れ落ちた!」
「未来……?」
『もう……やめよう……?』
エルフナインが弱々しい声でキャロルに呼び掛けた。出血が酷く、輪に支えてもらわなければ今にも倒れてしまいそうな程にエルフナインは弱っていた。
「お願い、キャロル……。こんなこと、僕達のパパはきっと望んでいない……。火あぶりにされながら、世界を識れと言ったのは……僕たちにこんなことをさせるためじゃない……!」
「そんなの分かっている!だけど、殺されたパパの無念はどう晴らせばいい?!パパを殺された私達の悲しみは、どう晴らせばいいんだ?!パパは命題を出しただけで、その答えは教えてくれんかったじゃないか?!」
「それは……」
そこに洸が語り掛けた。
「君達のお父さんは、何か大事な事を伝えたかったんじゃないか?命懸けの瞬間に出るのは、一番伝えたい言葉だと思うんだが……。」
「錬金術師であるパパが、一番伝えたかった事……」
洸はキャロルの父親、イザークとは生きた年代も違えば会った事すらない。だが同じく娘を持つ父親であるからその心中を察する事が出来た。
エルフナインが呟くと、ブリッジにキャロルの幻影が現れ、その場にいるものはそちらを向いた。
『ならば真理以外ありえない。』
「錬金術の到達点は、万象を知ることで通じ、世界と調和する……こと……。」
『調和だと?!パパを拒絶した世界を受け入れろというのか?!言ってない!パパがそんなこと言うものか!』
「だったら代わりに解答する……。」
子供のように受け入れないキャロルの代わりに、エルフナインが弱々しい声で、その答えを口にする。
「命題の答えは……『許し』」
キャロルの幻影がエルフナインを見る。
「世界の仕打ちを許せと……パパは僕たちに伝えていたんだ……!」
だが遂に限界が訪れ、口から血を吐き出してしまう。それを見た輪が叫んだ。
「エルフナイン!」
同時にキャロルの幻影がブリッジから消えた。
キャロルは自ら破壊したシャトーを見上げ、涙を流す。
「チフォージュ・シャトーは大破し、万象黙示録の完成という未来は潰えた……。」
そう言うと、響達を見下ろす。その目は明らかに敵意を向けており、叫ぶように宣言する。
「ならば!過去を捨て、今を蹂躙してくれる!」
命題の答えが分かっていても、父親を奪った世界をキャロルは許せなかった。故に全てを破壊しようとする。
「駄目だよ!そんなことをしては、パパとの思い出も燃え尽きてしまう!」
エルフナインの制止すら届かない。それをブリッジから見ていた輪は復讐に走った自分と重ね合わせていた。
「そんな事したって……あんたのお父さんは、帰って来ないのに……馬鹿野郎……!」
全てを捨てて復讐に走っても何も残らない。かつて友達を捨ててまで復讐の炎を燃え上がらせて、S.O.N.G.を裏切った。でもそれを果たせたとしても何も残らない事を、輪は知っている。決定的な違いは、キャロルにはそれを理解しようとせず暴走している事だ。
キャロルの雄叫びが響くと、その身体には輝きを帯びる。再び強大な力を振り回そうとしているのが肌で感じる。
「キャロルちゃん何を?!」
「復讐だ!!」
そう言うとキャロルはダウルダブラの弦で装者達を叩き潰す。
「もはや復讐しかあり得ない……!」
「復讐の炎は……すべての思い出を燃やすまで、消えないのか?!」
「そんな事……あなたのお父さんが望むわけがないのに……!」
「エルフナインだって、復讐なんて望んじゃいねえ!」
「うん……エルフナインちゃんの望みは……!」
響はギアのコンバーターに触れる。
「イグナイトって、本気か?!」
「うん。」
クリスの問いに響は迷いもなく頷く。
「賭け……って言うには正直、分の悪いものになるけど……。」
「だが嫌ではない。この状況では尚の事。」
瑠璃と翼も響に同意した。イグナイトは元々キャロルの計画の内の一つであれば強みも弱みも全て知られている。だがこの場にいる者達は全員満身創痍であり、後がない。それにキャロルを止められるのは響達4人の装者しかいない。ならば一縷の望みに賭ける事を選ぶ。
「この力はエルフナインちゃんがくれた力だ。だから疑うものか!イグナイトモジュール……」
「「「「ダブル抜剣!!」」」」
そう言うと4人はウィング型のスイッチを二回連続で押し込み、イグナイトモジュールを支配したギアを纏った。
イグナイトモジュールには三段階のセーフティ機能がある。一段階目がこれまで使用してきた『フェイズ・ニグレド』であり、今回二段回目である『フェイズ・アルベド』。当然ニグレドより分出力が上昇するがその分制限時間も短くなる、まさに諸刃の剣である。
4人の身体には白い燐光を宿し、臨戦態勢へと入る。響が一番槍を務め、キャロルへと真っ先に殴り掛かるが、バリアで防がれ軽くいなされる。
クリスのガトリング砲の弾丸も、ダウルダブラの弦で全弾とも弾かれ、翼の斬撃もバリアで防がれる。
瑠璃も二本の槍を連結、エネルギーをその槍に集結させ、投擲させると穂先がドリルのように高速回転し、キャロルの背後を狙う。
【Horn of Unicorn】
だがダウルダブラの弦によって受け止められた事で、キャロルの目と鼻の先で完全に停止し、弾き返される。
響の拳の乱打、翼の斬撃、クリスのガトリング砲、瑠璃の槍の遠隔操作、4方向からの攻撃を持ってしても全て防がれてしまう。
「力押し、実にらしいし可愛らしい……がっ!」
キャロルが腕を振るうと4方向からの攻撃を全て吹き飛ばした。当然突っ込んでいた響も吹き飛ばすが、翼が受け止めた事で遠くまで飛ばされずに済んだ。
「イグナイトの二段回励起だぞ?!」
「それでも届かないなんて……!」
「次はこちらが唄うぞ!」
キャロルのターンが始まった。唄うと同時に魔法陣が背後に展開される。強大な力を放とうとする為に貯められるエネルギーの余波が伝わるが、それだけで辺り一帯が吹き飛びそうになる。
「さらに出力を……?!」
「一体どれだけのフォニックゲインなんだよ?!」
「でも待っていたのはこの瞬間なんでしょう……?」
瑠璃が響の方に向いて問う。
「はい!」
4人は再びギアコンバーターに触れる。
「抜剣、オールセーフティ!」
「「「「リリィィィース!!」」」」
ウィング型のスイッチを押し込むと三段階目、つまり全てのセーフティが解除された『フェイズ・ルベド』へと移行した。
ブリッジにアラートが鳴り響き、モニターにはアルベドに移行した事で速まったカウントダウンが赤く表示され、更にそれよりも速くなっている。
キャロルの錬金術を正面から受け止める4人。
「イグナイトの出力でねじ伏せて!」
「吹き荒れるこのフォニックゲインを束ねて撃ち放つ!」
「これが正真正銘、最後の切り札!」
「S2CA!スクエアブラストォォォーーー!!」
イグナイトのセーフティを全て解除した上で、4つの絶唱 S2CAスクエアブラストでキャロルの錬金術と打ち合う。
が、それにも関わらずその強大な力の前に踏ん張るのが精一杯だった。
「このままじゃ暴発する……!」
「バイデントの力で……何とかそれを防いでも……キャロルの錬金術が……!」
バイデントの力で4つの力を掛け合わせる事で暴発は阻止出来る。だがキャロルの錬金術を前に力負けしている。
「イグナイトの最大出力は知っている!だからこそそのまま捨て置いたのが分からなかったか?!オレの歌は、ただの一人で70億の絶唱を凌駕する、フォニックゲインだあああぁぁぁーーーー!!」
70億対4、その力の差はあまりにも圧倒的で絶望的なものだ。その差によって、4人は呆気なく吹き飛ばされてしまった。
「はははは!他愛もない……。」
キャロルは4人をゴミ屑のように吐き捨てる。相当なダメージを4人は負い、立ち上がる事すらままならない。だがそれでも、諦めていない。
「たとえ万策が尽きたとしても……一万と一つ目の手立てはきっと……!」
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl……
突然聞こえてくる絶唱、それは4人のうちの誰かのものではない。振り返るとそこにはイグナイトを纏っているマリア、切歌、調が立っていた。奇跡が起きていた。
シャトーが大破した事で、天井が瓦礫となって崩落した。それはマリア達に容赦なく襲い掛かったのだが、それに押し潰されず、無事だった。ただ一人を除いて……
「Dr.ウェル……!」
ウェルが彼女達を助けたが、代償として自分の身体が瓦礫に押し潰されてしまっていた。奇しくもその様は、ジャンヌの命を奪った時と同じ、今度はウェルがジャンヌと同じ最期を迎えようとしていた。
「君を助けたのは……僕の英雄的行為を世界に知らしめる為……。」
正直な所、マリアはウェルの事は好いていない。嫌いだったが、死んでほしかったわけではない。だがもうウェルは助からない。マリアはウェルの言い分を聞く事しか出来ない。
「さっさと行って、死に損なった恥を晒して来い……!それとも君は……あの時と変わらない、駄目な女のままなのか……?」
その命が終わろうとしているのに、相変わらずマリアを煽る。だがウェルは最後の力を振り絞ってマイクロチップをマリアに差し出す。
「これは……」
「『愛』ですよ……」
「何故そこで愛?!」
ウェルは全てを教えるつもりはない。マリア達が求めるものに必要なヒントをくれてやった。
「シンフォギアの適合に、奇跡などは介在しない……!その力、自分のものとしたいなら手を伸ばし続けるがいい……!」
チップを渡すと、力尽きたウェルの身体は脱力した。最期にマリアに問うた。
「マリア……僕は……英雄になれたかな……?」
それを最期に、Dr.ウェル永遠の眠りについた。
マリアは骸となったウェルに振り向かずに告げた。
「ああ……お前は最低の……」
Gatrandis babel ziggurat edenal
Emustolronzen fine el zizzl
7人は絶唱を唄う。
「この期に及んでまだ唄うか……!」
何度倒れても立ち上がり、唄う装者達に苛立つキャロル。
「オレを止められるなどと……自惚れるなあああぁぁぁーーー!!」
再び70億の絶唱の錬金術を放ち、7人の絶唱とぶつかり合う。
「S2CA ペプダゴンバージョン!!今度こそ、ガングニールで束ね!!」
「アガートラームで制御、再配置する!!」
「そして……バイデントで繋いで、掛け合わせる!!」
響、マリア、瑠璃がそれぞれのギアの特性を使い、ぶつかり合う二つのフォニックゲインを一つへと変える。するとそれぞれのアームドギアが変形し、響のマフラーが虹色になり、装者達を包み込む。
だがモニターに映し出されたカウントダウンは、その間に刻一刻とタイムリミットが迫っていた。時間がない。エルフナインがその腕を伸ばす。
「最後の……奇跡を……」
「まさか……オレのぶっ放したフォニックゲインを使って……!」
響達が狙っていた最後の切り札が発動しようとしていた。
「奇跡を願え!!」
「ジェネレイト!!」
「エクスドラァァァァァイブ!!」
3人が叫ぶと7人がいた場所に虹色の竜巻が発生する。その竜巻は空を貫いた。竜巻が消えると、そこから7人の装者が天へと降り立ち、光を輝かせていた。奇跡の結晶のギア、エクスドライブを纏って。
「これが……奇跡の形……」
奇跡を見届けたエルフナインは力尽きた。
おまけ 某ゲームである無線通信風のやり取り
「ねえクリス。『そして誰もいなくなる』っていう小説知ってる?」
「いや、知らねえな。」
「年齢とか職業、全くバラバラの男女8人が、ある豪邸へ招待されるんだけど、そこで次々と招待客とが殺されていくの。その犯人が誰なのかを最後の一人になる前に探すっていうミステリー小説なの。」
「でもよ、タイトルに書いてある通り誰もいなくなるんだろ?だったらもう犯人の勝ち逃げで終わるのは分かるじゃねえか。」
「それはどうでしょうね?」
「え?何だよその気持ち悪くなるような言い方は?!」
「読んで見れば分かるよ。」
「おい待てよ姉ちゃん!それじゃ気になるだろうが!」
その後、クリスは続きが気になって仕方なくその小説を買い、真相を確かめたのだとか。