戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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遂にGXラストバトルです。
今回後書きのおまけは無しとさせていただきます。


世界を識る為に

「エルフナイン!しっかりしてよエルフナイン!」

 

 輪が呼び掛けるが、エルフナインは意識を失い応答はない。かなり危険な状態だ。

 

「涙……?」

 

 洸言われて気付いた。エルフナインの目尻から一筋の涙が流れていた。

 

 空に舞い降りた7人の装者。キャロルが放った七十億の絶唱利用してエクスドライブへと姿を変え、浮遊している。

 

「単騎対七騎……」

「錬金術師であるならば、彼我の戦力差を指折る必要もないであろう。」

「おまけにトドメのエクスドライブ、これ以上はもう終いだ!」

 

 戦力差を一縷の望みに賭けて、この逆境を覆してみせた。だがキャロルに狼狽えている様子は見られなかった。

 

「ふん……奇跡を身に纏ったくらいで、オレをどうにか出来るつもりか!」

「みんなで紡いだこの力を……!」

「奇跡の一言で片付けるデスか?!」

「片付けるとも!」

 

 調と切歌の反論を、キャロルは真っ向から否定した。奇跡、それ自体がキャロルが最も忌み嫌うものである。それは自身が体験した過去に由来していた。

 

「奇跡など……あの日、蔓延する疫病より村を救った俺の父親は、衆愚によって研鑽を奇跡へとすり替えられた。そればかりか資格無き奇跡の代行者として、焚刑の煤とされたのだ!」

 

 命題の答えを識っても、それを否定し復讐の道を選んだ理由。奇跡を否定する理由。あの日の思い出が長い時を生きたキャロルに今も残り続ける忌まわしき思い出だった。

 

「万象に存在する摂理と術理。それらを隠す覆いを外し、チフォージュ・シャトーに記すことがオレの使命!即ち万象黙示録の完成だった……だったのに……!」

 

 だがそれは叶わぬ夢となって消えた。故にキャロルは全てを破壊する事を選んだ。怒りながら宣言するように叫ぶ。

 

「奇跡とは、蔓延る病魔に似た害悪だ!故に俺は殺すと誓った!だからオレは、奇跡を纏うものだけには負けられんのだぁぁ!!」

 

 するとキャロルはアルカ・ノイズの召喚石を大量にばら撒いた。空に展開された大型のアルカ・ノイズの体内から小型のアルカ・ノイズが降り注ぎ、直下の地上を埋め尽くした。モニターでその反応は捉えられているが、その数の多さに赤い点で表示されているレーダーの殆どが赤一色に染まった。ブリッジにいる全員が驚愕を隠せなかった。

 

「まだ、キャロルは……」

「これほどまでのアルカ・ノイズを……」 

「チフォージュ・シャトーを失ったとしても、世界を分解するだけなら不足はないということか!」

「この状況で、僕達に出来るのは……」

 

 そこに洸が通信越しに響に呼び掛けた。

 

「響……響!」

「その声、お父さん?!」

『泣いている子が……ここに居る!』

 

 エルフナインは意識を失っているがその目尻から流れる一筋の涙。それを洸は伝えたかった。

 響はその意図を察し

 

「泣いている子には……手を差し伸べなくちゃね!」

 

 響はエルフナインを、キャロルを救う為に拳を構える。

 

「何もかも壊れてしまえばああぁぁ!!」

 

 キャロルの叫びがトリガーとなり、アルカ・ノイズの大群は全てを破壊する為に動き出した。破損した建造物から赤い塵が舞う。

 

 

「翼さん!」

「分かっている、立花!」

「スクリューボールに付き合うのは、初めてじゃねえからな!」

「その為にも散開しつつ、アルカ・ノイズを各個に撃ち破る!」

「これ以上、キャロルに悲しい思い出を作らせないように……ここで終わらせよう!」

 

 装者達はそれぞれ変形したアームドギアを手に散開した。響は右手のアームを槍の穂先の形へと変えて、真正面からアルカ・ノイズを貫いていく。

 

『あの子も、私達と同じだったんデスね。』

『踏みにじられて、翻弄されて……だけど、何とかしたいと藻掻き続けて……。』

 

 切歌と調はアームドギアを合体させてクワガタムシのようはロボットに乗って操縦すると、ハサミとなったイガリマの刃でアルカ・ノイズを刈り取る。

 

『違っていたのは、独りだったこと……ただそれだけ!』

『苦しみや痛み……。それをずっと独りで抱えて……辛かったよね……。』

 

 マリアの剣、瑠璃の二叉の槍から放たれた光が道標のように展開され、そこから複製されたアームドギアが放たれ、アルカ・ノイズ達は貫かれる。

 

『救ってあげなきゃな……。何せアタシも救われた身だ!』

『その為であれば!奇跡を纏い、何度だって立ち上がって見せる!』 

 

 翼は鞘をも刀へと変えて、両足のブレードを巨大化、宙返りをするように回転すると、浮遊するアルカ・ノイズを両断。

 クリスが全身に連結させた大型の砲門からビームを発射、拡散するように放たれたビームはアルカ・ノイズの身体を貫通させる。

 

『その為に私達は!この戦いの空に、歌を唄う!』

 

 アルカ・ノイズを天へと駆け上がるように拳を振り抜き、貫いた。七人が奏でる歌が、大群をなしていたアルカ・ノイズを殲滅させた。

 残るはキャロルただ一人。だがキャロルはエクスドライブと同等のフォニックゲインを備えている。四大元素の魔法陣を一度に大量展開させており、その身に纏う力が増大している。

 

「さっきのアルカ・ノイズは時間稼ぎ?!」

「残った思い出丸ごと焼却するつもりなのか?!」

 

 キャロルの目からは涙ではなく、血が流れていた。

 

「何もかも壊れてしまえ……。世界も……奇跡も……オレの思い出も!!」

 

 キャロルが叫ぶと、魔法陣からは光が放たれた。だがその風圧だけで、装者達は吹き飛ばされそうになる。

 

「救うと誓った!」

「応とも!共に翔けるぞマリア!」

 

 翼とマリアの身体を重ね合わせ、六つの剣を束ねるとドリルのように高速回転しながらキャロルに突っ込む。だが

 

「散れえええぇぇぇ!!」

 

 キャロルが展開させた錬金術のバリアによって弾き返された。

 

「マリア!」

「お姉ちゃん!っ……!あれ!」

 

 瑠璃がキャロルの方を指す。ファウストローブの背部から展開された弦が伸びていき、それが一つの塊のように形成される。次第にそれは装甲となっていき、その姿は一角の碧の獅子機である。

 

「ライオンになった……。」

「チクショウ!何だってんだあれは?!」

 

 これ程のものを形成させる為にはどれ程の力が必要になるか、装者達にとっては想像すら出来ない。獅子から発せられる咆哮は、怒りにも嘆きにも感じ取れた。恐らく、獅子の中にいるキャロルの心象を表しているのだろう。

 

(全てを無に帰す……。何だかどうでもよくなってきたが、そうでもしなければ臍の下の疼きが収まらん……!)

 

 獅子が口を開ける。

 

「仕掛けてくるぞ!」

 

 獅子は咆哮と共に、その口から炎を放った。装者達はこれを避けるが、その軌道線上にあった建物は跡形もなく消えた。それだけではなく湾岸部にまでその被害が及んでいる。

 

「あの威力……何処まで……!」

「だったらやられる前に!」

「やるだけデス!」

「おい!」

「猪突猛進に行っても……!」

 

 クリスと瑠璃の制止を聞かずに突っ込む調と切歌だったが、あっさりと振り払われてしまう。

 

「あの鉄壁は金城!散発を繰り返すばかりでは突破出来ない!」

「ならばアームドギアギアにエクスドライブの全エネルギーを集束し、鎧通すまで!」

 

 響を除いた六人の装者が道路に降り立った。

 

「身を捨てて拾う、瞬間最大火力!」

「ついでにその攻撃も同時収束デス!」 

「御託は後だ!マシマシが来るぞ!」

 

 獅子の口から光線が放たれる。だがそれは響の槍へと変形させたアームで押し止めている。

 

「私が受け止めている間に……!」

「行くよ皆!全てのエネルギーを、一つに!!」

 

 瑠璃の合図で六人のアームドギア、並びに装甲を全て解除、エネルギーへと変える。

 

「一斉同時攻撃!!」

 

 六人が全てのエネルギーを同時に獅子に向けて放つ。そのエネルギーは獅子に直撃し、装甲が剥がれた事で、中にいるキャロルの姿を捉えたが

 

「アームドギアが一つ足りなかったようだな……っ!」

 

 勝ちを確信したように笑っていたが、それはすぐに消え失せた。響の右手に六つの光が束ねられていた。

 

「なんちゃって……!」

 

 瑠璃が不敵な笑みを浮かべた。実はバイデントの力で、攻撃だけでなく響に集めたエネルギーを繋ぎ合わせていた。ガングニールの繋ぐ力で先程のエネルギーの同時攻撃よりその最大出力を跳ね上げる為に。

 まんまとしてやられたキャロルは怒りを露わにする。

 

「奇跡は殺す、皆殺す!オレは奇跡の殺戮者にいぃぃ!!」

「繋ぐこの手が、私のアームドギアだ!」

 

 獅子から再び光線が放たれるが、集まったエネルギーが、巨大な右手となった事で、それは防がれる。

 

(当たると痛いこの拳……。だけど未来は、誰かを傷付けるだけじゃないって教えてくれた!)

「枕を潰す……ぐうっ!こんな時に……拒絶反応?!」

 

 だがそれはすぐに違うと分かった。脳裏に蘇る、愛する父イザークとの思い出。それがキャロルを見失わせないように引き止めていた。

 

「認めるか!認めるものか!!オレを否定する思い出など要らぬぅ!!全部燃やして力と変われえええええええええぇぇぇぇぇぇーーー!!」 

 

 とうとうイザークの思い出までもを焼却し、力へと変えてしまった。それにより再び獅子に輝きが放たれる。

 響も迎え撃つ為に一度、右手のアームドギアを分解、さらに巨大な拳へと変え、雄叫びと共に突き出し、獅子の強大な波動とぶつかり合う。

 だが響の方が僅かに押されている。しかし、響とキャロル、二人の決定的な違いが勝敗を分ける事になる。

 

「立花に力を!天羽々斬!!」

「イチイバル!!」

「バイデント!!」 

「シュルシャガナ!!」

「イガリマ!!」

「アガートラーム!!」

 

 それは仲間との絆。響が繋いで来た手の数だけ、それは力になる。七つのアウフヴァッヘン波形が一つに重なり、その一撃が獅子の波動を押し切った。

 

「何っ?!」

 

 

 

 

ガングニイイイイィィィィーーーーール!!

 

 

 

 

 

 そしてその拳は獅子に、キャロルに届いた。

 

 

【Glorious Break】

 

 

 だがキャロルはそれでも笑っていた。打つ手があるわけではない。もはや全ての思い出を焼却し、力へと変えた上で敗れた以上、もう彼女に残されたものはない。

 すると獅子の身体はそのまま上昇していき、身体から光が漏れ始めた。ブリッジではそこから発せられる高エネルギー反応が検知されていた。

 

「行き場を失ったエネルギーが、暴走を始めています!」

「被害予測、開始します!」

「エネルギー臨界到達まで、あと60秒!」

「このままでは、半径12キロが爆心地となり、三キロまでの建造物は深刻な被害に見舞われます!!」

 

 その報告を受けて、弦十郎は低く唸る。

 

「まるで小型の太陽……」

「それって自爆って事じゃ……まさか皆を道連れに?!」

 

 緒川が呟くと、輪はキャロルが奇跡も歌も、何もかもを否定する為の最後の足掻きを察した。

 

「お前に見せて刻んでやる……。歌では何も救えない世界の心理を……」

「諦めない……奇跡だって手繰って見せる!」

「奇跡は呪いだ、縋る者をとり殺す!」

 

 そう告げると獅子の内部が爆発、キャロルは幼き姿へと戻り、編み降ろしていた髪が焼け落ちた。響はすぐにキャロルを助けようと手を伸ばすが、ダウルダブラの弦が身体に巻き付いており、これ以上の速度が出ない為届かない。爆発まであと20秒もない。

 

「手を取るんだ!」

「お前の歌で救えるものか……誰も救えるものかよおおぉ!!」

 

 キャロルは手を取ることを否定する。だがそれでも響は諦めない。

 

「それでも救う!抜剣!!」

『ダインスレェェーイフ!!』

 

 響がギアコンバーターのスイッチを押してイグナイトを起動、白き装甲が黒へと染まり、瞬間出力でスピードを出して手を伸す。

 

 『キャロル!!』

 

 響だけではない、エルフナインもまたキャロルを救う為にその手を伸ばそうとしている。そして、もう一つ伸ばす手が。それを見たキャロルは驚愕した。

 

 『キャロル、世界を識るんだ!』

 

 それは、先程拒絶し、焼却した父イザークだった。

 

『いつか人と人が分かり合う事こそ、僕達に与えられた命題なんだ。』

「うん……!」

 

 キャロルの目から涙が流れた。

 

『賢いキャロルにはわかるよね?そしてそのためにどうすれば良いのかも。』

 

 どれだけ拒絶されようとも、娘を救う為に父親は手を伸ばす。たった一人の娘が、泣いているのだから。

 

 

 

 

パパアアアアアァァァーーーーーー!!

 

 

 

 

 

 キャロルはその手を伸ばし、掴み取った。爆発の瞬間、漆黒の闇が二人を守るように包みこんだ。爆発によって建物は焼き払われ、爆風が巻き上がった。

 

 




次回、GX編 最終回
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