戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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GX編最終回になります。
オリジナル要素に裏切り者を取り入れ、その正体にまつわる伏線をある程度張りましたが、すぐにバレるんじゃないかなって不安になってました。
ですが、裏切り者が判明した後で皆さんからご感想をいただいた時、それが衝撃的だったという方がいらっしゃっていたので皆さんを驚かせる事が出来た事に安堵してました。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございました!最後は恒例通り、輪視点でGX編は終了となります。それではどうぞ!


二人で紡ぐ絆

 碧の獅子機の爆発によって都心部は壊滅状態となっていた。緒川率いるS.O.N.G.の調査隊がキャロルの行方を追っていたが既に戦闘が終わってから72時間が経過しており、これ以上は捜索不能という事で打ち切られる事になった。響が無事だった事からキャロルも生きている事に間違いないのだろうが、その姿は影も形もない。弦十郎達は不安を覚えていたが、問題はそれだけではなかった。

 エルフナインは入院している。今、その病室に装者達と未来、輪が集まっていた。

 

 

「来てくれてうれしいです……毎日すみません……。」

「大丈夫だよ。私達、夏休みに入ったから。」 

「夏休み……?」

 

 瑠璃が口にした夏休み、エルフナインは初めて聞く単語に疑問を呈する。

 

「楽しいんだって、夏休み。」

「アタシ達も初めてデス!」

「早起きしなくていいし、夜更かしもし放題なんだよ?」 

「いや、それいつものあんたじゃん。」

 

 と、輪がすかさず突っ込む。図星を突かれた響はたじろいだ。

 

「輪さん何故それを?!」

「相方が苦労をしている所を見てると……ねぇ?」

 

 そう言いながら未来の方を見る。

 

「そうですね。それが響のライフスタイルですから。」

「あんま変な事を吹き込むんじゃねえぞ?」

 

 クリスに注意されるが、響はお構いなしに夏休みについて教える。

 

「夏休みはねぇ、商店街でお祭りもあるんだ!焼きそば、綿あめ、たこ焼き、焼きイカ!ここだけの話、盛り上がってくるとマリアさんのギアから盆踊りの曲が流れるんだよ!」 

「ブフッ……!」

 

 突然のジョークが入った事に、瑠璃の隣にいた輪は思わず吹いた。響にからかわれ、輪に笑われたマリアは顔を真っ赤にして

 

「そんなわけないでしょう?!だいたいそういうのは翼のギアから流れてセルフでやるのがお似合いよ!」

 

 今度は翼に飛び火した。のだが容易くイメージ出来てしまうからか、病室に笑いがこみ上げた。

 

「お姉ちゃんには悪いけど……確かに似合ってるかも……ふふふっ……!」

「なるほどなるほど……?皆が天羽々斬についてどう認識しているか、よーくわかった……。瑠璃、後で天羽々斬が何たるか、その身体にみっちり叩き込んでやろう。」

「えっ……?!ご、ごめんなさい……!それだけは……!」

 

 瑠璃が必死になって謝るのは、その講義、及び訓練がとんでもなくハードであり、瑠璃にはそれが殆ど必要ないものなので、はっきり言ってしまえば不毛な教育である。

 そのやり取りを見ていた他の面々が大爆笑する。エルフナインも笑いすぎて涙が出ている。

 

「僕にはまだ知らない事が沢山あるんですね。世界や皆さんについてもっと知ることが出来たら、今よりずっと仲良くならますでしょうか……?」

「なれるよ!」

 

 響がエルフナインの手を取って

 

「だから早く元気にならなくちゃ、ねっ!」

 

 エルフナインに挨拶をした後、一堂は病室から出ていった。

 

「私、ちょっとトイレに!」

 

 そう言うと響は走り出すが、出会い頭に看護師たぶつかりそうになるが、響は軽やかに避けた。一方看護師はバランスを崩して、手に持っていたカルテを落としそうになった。

 

「おわっ!病院内で走らんといてやー!」

「すみませーん!」

「ったくもう……って今の響ちゃんか。」

 

 その看護師は小夜だった。未来が響に代わって小夜に謝る。

 

「あ、小夜さん!すみません、響がご迷惑を……」

「未来ちゃんか。まあ今回は見逃しといたるわ。あの子の事やろ?」

 

 響がトイレへ走っていった理由も察していた。もうエルフナインは先が長くない。小夜はエルフナインがどうしてこうなってしまったのかは把握していない。だがエルフナインの残りの命が僅かである事は分かっている。

 

「まだまだこれからやって時に、こんな事になるなんてな……。そんなになったら、泣きたくなるわな……。」

 

 小夜がそう言うと未来は俯いてしまう。

 

「はよ行きなはりや。あの子の涙を拭えんのは未来ちゃんだけや。」

「はい……!」

 

 そう言うと未来は響が行ったトイレへと向かった。小夜はエルフナインの病室へ向かおうとした時、病室の前にいる翼達と目が合った。翼達は一礼すると、彼女達より年上の小夜は軽く手を振った。

 

「いつも来てもらって悪いなぁ。あの子、皆がいない時は……何ちゅうか、寂しそうやったからな。」

「小夜姉……。」

 

 輪が暗い顔で小夜を呼んだ。エルフナインが助からない事を知っているから、自分達がいない間は小夜に任せきりになる。もう死ぬと分かっていて、接する事になるので辛い思いをさせてしまうから、余計に申し訳なくなる。

 

「ウチの心配はいらんよ。職業柄、こういうのには慣れとるし。」

「ありがとうございます。エルフナインの事、よろしくお願いします。」

 

 小夜には秘匿にしているが、装者代表としてマリアが挨拶をする。

 

「任されたで。」

 

 小夜はエルフナインの病室の扉をノックすると、病室内へと入って行った。

 その後、ロビーで響と未来を待ち、二人が合流した後、それぞれ家路についた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その日の夜、エルフナインは眠っていたが呼吸が荒かった。もうその命が終わろうとしている。そこに病室の扉が開き、誰かが入って来た。突然の来訪者に気付いたエルフナインは目覚め、その方を見る。

 

「キャロル……。」

 

 来訪者はキャロルだった。だが彼女は響や世界に向けていた怒りや敵意などは全く感じられない。

 

「キャロル……それがオレの名前……。」

「記憶障害……思い出の殆どを焼却したばっかりに……。」 

 

 あの戦いで、キャロルは全ての思い出を焼却して力へと変えてしまった。故に自分が何者なのかも分からなくなってしまっていた。

 

「全てが断片的で、霞がかったように輪郭が定まらない……。オレは……一体何者なのだ……?目を閉じると瞼に浮かぶお前なら、オレの事を知っていると思い、ここに来た……。」

 

 キャロルはエルフナインが眠るベッドへと近付いて、問うた。

 

「君は……もう一人の僕……。」 

「オレは……もう一人のお前……。」

「ええ……二人でパパの残した言葉を追いかけてきたんです……。」

「パパの言葉……?そんな大切な事もオレは忘れて……。教えてくれ!こうしている間にもオレはどんどん……」 

 

 だがその問いははエルフナインが咳き込んだ事で遮られた。吐き出された血を見て、キャロルは愕然とする。

 

「順を追うとね……一言では伝えられないです……。僕の身体も……こんなだから……」

「オレだけじゃなく、お前も消えかけているんだな……。」

「うん……。」

 

 エルフナインは病室の天井を見る。そして、そこに彼女の本当の思いを告げる。

 

「世界を守れるなら……消えてもいいと思ってた……。でも……今はここから消えたくありません……!」

 

 エルフナインが涙を流す。それが彼女の願いだった。だがその願いは届かない事を分かっている。分かっているから涙を流した。

 それを見たキャロルはエルフナインに言った。

 

「ならば……もう一度二人で……!」 

 

 キャロルとエルフナインの唇が重なった。指と指が絡み合うと、輝かしい光が発した。同時に、エルフナインのバイタルを表示する心電図の波形が、平坦となり、0の数字が表示されると警告音が鳴った。

 

 エルフナインが死亡したと知らされた響達は急いで病室へと駆け込んだ。病室には月の光が差し込まれており、その光が照らすように、一人の少女が立っていた。ベッドで眠っていたはずのエルフナインがいない、そこにいたのはキャロルだけだった。

 

「キャロル……ちゃん?」

 

 響が問いかけると、少女は振り返った。

 

「僕は……。」

 

 その声はエルフナインだった。響がエルフナインに抱きつき、皆がその生存を喜び分かち合った。

 

「エルフナインったら……もう心配したんだから!」

「でも……良かったね……!」

 

 瑠璃と輪も涙を流しながら抱き合い、喜んだ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そういうわけで、キャロルの姿になったエルフナインは無事に退院して、正式にS.O.N.G.の一員になった。

 翼さんとマリアさんは再びロンドンへと旅立った。見送りには私も行った。もう翼さんの事は恨んでいないし、それが筋違いだってのも分かってたから。あの時、皆を裏切ったのは本当に申し訳ないと思っているけど、あれのお陰で、私は私の中であのライブの惨劇の事で踏ん切りもつけられたし、これで良かったんだと思う事にする。

 それと、キャロルが巻き起こしたあの事件は『魔法少女事変』と呼ばれるようになり、欧州で関わった者がいないか、調査を始めるんだって。

 

 まあ最後のやつはさておき、私達学生は夏休みを迎えた。そんなある日、私は瑠璃と一緒にクリスの家にお邪魔してた時なんだけど……私、今調と切歌と共に学校から出された課題を終わらせるのに勤しんでます……。

 いやぁ実を言うとキャロルに情報流す時、学校がある日でも容赦なく呼び出すから遅刻や無断欠席が多くなっちゃって、それで私だけ課題の量が増えました……。本当に最悪……。

 しかもクリスはソファーで寝っ転がりながら優雅にアイスなんか食べちゃって……。まあそれもそうだ。あの子瑠璃と同じくらい成績良いもん。しかもそこは双子というべきか、各教科の点数は若干差異はあるけど、総合得点だけ見ると一緒なんだよね。

 

「はい、麦茶。」

「ありがとう〜瑠璃〜。助かるよ〜。」

 

 瑠璃が注いでくれた麦茶……それだけで私は頑張れる!よーし!早く課題を終わらせて、瑠璃の写真をバンバン撮るぞー!色んな衣装を着せて、色んなシチュエーションを考えて、それから……

 

「姉ちゃん?おい姉ちゃん!」

 

 クリスが突然大声を出したからそれに反応して私達も瑠璃の方を向いた。頭を抱えるように触れていて、その手も震えてた。

 

「え……?あ……」

「どうしたんだよ姉ちゃん?具合でも悪いのか?」

「ううん、何でもないよ。」

 

 あの時、瑠璃はすぐに笑顔に戻った。私も気のせいだと思って、気にしなかった。でも……それが後に、あんな事になるなんて……思わなかった。

 

 




これにてGX編は終幕となります。
番外編を挟んでAXZ編となります。
ただ、今回の番外編は殆どがシリアスになります。



AXZ編予告

バルベルデ共和国、そこはかつて雪音姉妹が6年間地獄を体感した戦場。

彼女達を含めた装者一行はその地へと足を踏み入れる事になる。
そして、瑠璃は遂にその地獄へと再び直面する事になる。

AXZ編 開幕
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