戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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輪の裏切りのストーリー 後編です。

後半はオリジナルストーリーの後半部分と同じ内容なので、違いは殆どありまへん。そちらを読んでない方はそれを読む事をオススメします。
最後に本編では語られなかったその後の処遇についての新作ストーリーがあります。


番外編 裏切りとその後の処遇 後編

 家に帰っても、旭に言われた事が頭からこべりつくように、頭から離れなかった。筑波に行く前に、私はビデオレターを残す事にした。罪滅ぼしになるわけないけど、まあ遺言くらいにはなるかな。

 

「出水輪です。もしこれを聞いていたら……。ううん……回りくどいことは言わない。

 もう言っちゃいます。私は、あのキャロルという子供と結託して、S.O.N.G.の情報を流しました。」

 

 嘘偽りなく話したつもり……本当に騙すつもりなんてい。でもこれを見てくれた所で、私が皆を裏切った事に変わりはない。

 言葉を並べていくと、涙が溢れて来た。何とか泣き出す前に言いたい事を全部言った。ビデオを止めると、私は堪えきれずに泣いてしまった。おこがましいよね……

 

 みんなと筑波のビーチに行く時、罪悪感でいっぱいだった。向こうも裏切り者が誰なのか探ってるはず。でも……今更私が裏切り者だなんて……言えない……。またあの日のように、一人ぼっちになっちゃう……。何とかいつものように元気に振る舞うしかない。

 でも筑波から帰って来た時、私は失態を犯した事に気づいた。

 

「あれ?ジェムがない?!何で?!」

 

 落とした?!あれ最後の一個だったのに……まさか……見つかった?!だとしたら、裏切り者が私だって知られる……。

 

 その予感は的中した。ジェムを持ち出したのはよりによって、一番知られたくなかった瑠璃だった。でも一人ならまだしも、陰にクリスと未来がいた。もう言い逃れは出来ない。ごめんね瑠璃……私……もうあんたの友達じゃいられない……。

 

「さよなら……瑠璃。」

 

 私は瑠璃を泣かせた、傷つけた、その絆を自ら断ち切った。これで……本当に一人ぼっちになった。

 

 チフォージュ・シャトーに来たら、キャロルが生きていた。でもそんな事はどうでもいい……。もうみんなの所へ帰れない……私は薄汚い裏切り者……。消えてなくなりたい……。

 ジークが私を地上に返すと、私の周りを囲うようにアルカ・ノイズを召喚してきた。

 

「あんた……まさか……」

「貴様はもう自由だ。そこから先の事は知らんがな。」

 

 どうしよう……逃げなきゃ……!あった!僅かに包囲の隙間!

 

「ほう、分解を恐れず走るか。」

 

 私は走った。あいつから逃げる為に。でも、このまま走り続けて一体どうなるんだろう?あいつから逃げて……その先は?裏切った私を助けてくれる人なんて……いるわけがない……。

 そうだ、元々死のうとしてたんだから……咄嗟に逃げちゃってたけど……あいつから逃げたって……もうこの世界に、私がいて良い場所なんてもうどこにもない……。いっそ死んだ方が……楽なんだ……。

 だから私は走るのをやめた。そうしたらアイツはまた私を痛めつけた。右の脹脛を切られた。でも不思議と生きる事を諦めたら、苦しくはなかった。

 アルカ・ノイズが私を分解しようとする。でも、これで良いんだ……。やっと……解放される……この地獄から……。お父さん……お母さん……旭……。もう……良いでしょう……?私……精一杯……生きたよ……。

 ただ……一つ心残りがあるとしたら……瑠璃とはもう……二度と会えなくなることだなぁ……。

 

 あれ……?私……生きてる……?何ともない……。あれは……槍……まさか……!

 

「瑠璃……」

 

 何で……何でここに来たの……?まさか私を助けに来たなんて言わないよね?

 

「笑いに来たの……?」

「違うよ……。私は……助けに来たの……。」

 

 そのまさかだった……。何で……何で私を助けに来たの……?私は……あんたを裏切ったんだよ?!絶交したんだよ?!私なんて……もう助ける価値なんてないのに……

 

「やめてよ……。私は……もう死にたいの……。こんな地獄に生きていたって……もう辛いだけなの……。たとえキャロルを倒して……世界が救われて……みんなが笑って過ごせるようになっても……そこに私の居場所なんてない……!私には……もう……生きている資格なんてないの……!だから……お願いだから……死なせてよ……!」

 

 もう嫌なの……生きているのが……自分が……。

 

「これ……中身を見てほしい。」

「え……?」

 

 私のカメラ……中身……?

 

「死ぬのは……これを見た後にしてほしい……。私から言えるのは……それだけ……。」

 

 そうしたら、瑠璃とジークは何処かへと行ってしまった。中身って……。知らないデータ……。これは……瑠璃?

 その中身を見た私は、枯れたと思っていた涙が止まらなかった。だって、裏切った私を、それでも友達だって……もう戦わなくていいって……。

 

(ごめん……っ!ごめんね……瑠璃……!私……私……!)

 

 そこに、私が憎んでいた風鳴翼が来た。だけどあいつは、私を助けようとしていた。あんたの事、憎んでたのに……。

 

「私の事を……いくらでも恨んでくれて構わない。だが、瑠璃に悲しい思いをさせたくない。これは防人としてでも、風鳴としてでもない。これは……出水への償いでもあり……私の我儘だ。」 

 

 我儘……。それがあんたのやり方なんだね……?だったら私も、やりたい事をやる。瑠璃、私はあんたと友達でいたい!あんたの隣に立ちたい!

 

「輪せんぱーーーい!」

 

 え……?暁さん?!っていうか鋸をタイヤみたいに……

 

「掴まるデス!」

 

 咄嗟に暁さんの手を掴んで乗ると、月読さんの背負われた。何で私を助けるのか、聞いてみる。

 

「瑠璃先輩に言った事、ちゃんと謝ってほしいからです。私も、響先輩に偽善って言ってしまった事、今も後悔してます。同じ後悔を……してほしくない。」

「だから、輪先輩が裏切り者とかそういうのはどうでもいいんデス。瑠璃先輩を隣で支えてくれる友達は、輪先輩以外にいないのデスよ。ちゃんとごめんなさいって言えるように、私達も手伝うデス。まずは面と向かって、当たって砕けろデース!」

「切ちゃん、砕いちゃ駄目。」

「あ、あはは!そうとも言うデスよ〜。」 

 

 二人を見ていたら、勇気を貰えた気がした。そっか……私帰る場所があるんだ……。こんな私を……受け入れてくれるんだ……。ありがとう……私、もう迷わない。一度は断ってしまったあんたとの絆、もう一度繋ぎ合わせる!

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 瑠璃が暴走した。イグナイトっていうのを支配出来ずに暴れ狂っている。しかもジークは竜のような身体になって私達を殺そうとしている。ジークは装者のみんなにしか倒せない。なら、瑠璃を止めるのは私。あの子が心の闇に打ち勝てなかったその原因は私にある。だから私が止めなきゃ……!今ここで逃げたら、助けられなくなる……そんなの、友達のする事じゃない!だから私が止める!何としてでも!

 

「いい加減に……大人しくしろ!」

 

 瑠璃に思い切り頭突きをしたら、急に意識が……ヤバい……何これ……。

 

 え?ここどこ?真っ暗だし、裸?!何で……

 

「あら〜やっと来てくれたのね〜。」

「あの……あなたは?」

「もう忘れちゃったの?まあ無理もないわね。この姿じゃ……今現すからちょっと待っててね〜。」

 

 聞き覚えのある声だけど誰だったっけ?しかも光の玉って……あ、何かだんだん人の姿に……嘘でしょ?!あんたは……

 

「さ、櫻井さん……?!何で……あなたがここに?」

「そうね。まあ話せば長くなりそうね。ちなみに言っておくと、私はフィーネであってフィーネではないわ。正確には、あの子の世界の中に残った、私の意識の残留思念がフィーネとして形成された……言わばこの子の別人格ね。」

 

 それって……二重人格ってこと?!しかもよりによって櫻井さんの人格って……。

 櫻井さん曰く、私が頭突きしたタイミングでバイデントの力を使って私をこの瑠璃の精神世界に呼んだらしい。聖遺物って何でもありなの?

 

「この先に瑠璃ちゃんがいるわ。でも、私じゃ救えない。だからあなたを待っていたの。」 

「それって……んっ?!」

 

 何なの?!なんで私は3回もキスされてるの?!超人はキス魔なの?!

 でも何故か、私の中に何かが入った感じがした。

 

「ここからはあなたの役目よ。私は……本当は存在してはいけないの。だから消え時を探してたの。まさか、こんな形であなたに力を与えちゃうなんてね。」 

 

 櫻井の身体が消え始めた。何がどうなっているのか分からないけど、何でそこまでしてくれるの?

 

「瑠璃ちゃんに伝えて。私が消えたら、この子を厄災から守る者がいなくなる。だからこれから先、あの子は残酷な運命に立ち向かわなくちゃならなくなるわ。けどこれだけは忘れないでほしい。誰かと繋がる事を、失う事を恐れないで、手を伸ばし続けて。絆は……そうやって強くなっていくものなのよ……。絆の力を……信じなさいってね……。」

 

 櫻井さんの人格はそれを最期に消えてしまった。きっと、私に力を託したんだ。ならやり遂げなきゃ!絶対に瑠璃を闇から救い出すんだ!

 

 海に潜るようにこの暗い闇を降りていくと、みんなが映る鏡があった。みんな、瑠璃を拒絶するように冷たく言い放つ。瑠璃の絆を否定するように。

 そんな事言われたら、瑠璃は悲しむ。だけど、直接的な原因を作ったのは私だ。

 

「ごめん……瑠璃。苦しいよね……辛いよね……。全てを否定される痛みは……本当に地獄だもん……。もし……あんたを否定する奴がいたら……私がそいつを壊してあげるから……!」 

 

 私は鏡を全部叩き割った。何度も何度も。痛くはない。瑠璃が負った痛みに比べれば、これくらい!これで邪魔者はいない……次は瑠璃を……っ!

 まだ邪魔するやつが現れた。瑠璃を覆っていた闇が、人の形をなして……あれって……

 

「私……?!」

「よくのうのうと来れたね。裏切り者。」 

 

 裏切り者……そうだ。私は感情に任せて復讐に走った結果、皆を裏切った。それは事実だから否定出来ない。今目の前にいる黒い私は、私の心の闇の写し鏡。だから私の事は何でも分かるらしい。

 

「ここは瑠璃の世界。裏切り者のあなたは受け入れられないんだよ。」

 

 そうしたら、何処からか現れた鎖が私を縛って……瑠璃との距離を離そうとするように引き上げようとしている?!冗談じゃない!ここまで来て!お願い瑠璃、聞いて!

 

「瑠璃、聞いて!私は……本当は瑠璃が大好きなの!確かに出会った頃は騙してたし、チョロいなって思ってたよ!でも、一緒に過ごす内に私は瑠璃の綺麗な心に惹かれたの!だから、そんな瑠璃を裏切った自分が許せなくて、こんな醜い私じゃ……もう友達じゃいられないと思って、あんな酷い事を言っちゃったの!許してくれるなんて思ってない!だけど瑠璃……私は……」

『私は瑠璃を盾に復讐を一度はやめた。けど、キャロルと会って、あのライブが聖遺物の起動実験だったと知って、復讐の炎が燃え上がった。だから私は友達より復讐を選んだ。友達を捨てたあんたが……また友達になりたい?都合が良すぎるよ。』 

 

 そうだよ……それが私だもん。黒い私は、私を否定する為に言ってるのかもしれないけど、それが私だもん!今更恥じるものなんてない!だから、私は黒い私に全部ぶつけた。どす黒くて醜い私の心を!黒歴史もビックリなくらい黒いもの!私はそれを恥じない!私はそれを受け入れた上で、瑠璃に受け入れてもらう!だから……

 

「何にも知らない、理屈ばっかな幻影が、私と瑠璃の絆を語るな!さっさと消えろ、この大馬鹿野郎がああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」 

 

 叫んだら黒い私は消えた。ざまあみろ……今度こそ私を邪魔するやつはいない。今度こそ、瑠璃を助ける。

 

「瑠璃……起きて。」 

「リン……?」

「おはよう、瑠璃。」

 

 やっと起きたな……ねぼすけめ……。

 

「ごめんね瑠璃。私は瑠璃を利用して、あんな酷い事を言って悲しませた。今更許してくれないかもしれないけど、私は瑠璃の友達でいたい。また一からやり直したい。駄目かな?」

 

 少しずつ、瑠璃を覆っていた闇が消えかけている。その泣き顔が見えた。あーあ。また瑠璃を泣かせちゃった。

 

「リン……。イイノ?まタ友ダチとしテ……一緒ニ……いてくれるの?」

「当たり前だよ。私達は……親友でしょう?」

「うん……!」

「瑠璃は、私がもう戦わなくて良いって言ってくれたよね?私、もう逃げないよ。でも一人じゃ不安だから……一緒に戦ってほしい。私も、瑠璃と一緒に戦うよ。」

「うん。今度は二人で。」

「「私達の絆の力で!」」 

 

 瑠璃の心の闇は消えた。精神世界から目覚めた私は、瑠璃が元に戻った上に、イグナイトを支配している姿を見た。良かった……今度は上手くいったんだ……。

 

「瑠璃……。」

「輪、行ってくるよ。」

 

 今の瑠璃なら、負けるわけがない。あいつを絶対に倒してくれる。私はそう信じている。

 アルカ・ノイズはもちろん、ジークの攻撃を全部捌いて、あいつを打ち上げた!

 

「やっちゃえ、瑠璃いいいいぃぃぃーーーー!!」 

「皆の絆がここに集まったこの一撃!貫けえええええええええぇぇぇぇーーーーー!!」

 

 私と瑠璃は思い切り叫んだ。そうしたら、瑠璃は龍のように空を駆け上がって、あいつの身体を貫いた!勝ったんだ!瑠璃が勝ったんだ!

 

「あの時輪が来てくれなかったら……私は闇に囚われてたままだった。これは皆と輪と、一緒に掴んだ勝利だよ……!」

 

 瑠璃はそう言って私を抱きしめてくれた。

 

「ごめんね……っ!ごめんね瑠璃ぃ……!私……私……あの時、酷い事を言って……もう……嫌われちゃったんじゃないかって……!」

「ありがとう……輪。やっぱり輪は、私の最高の親友だよ……っ!」

「ぅっ……うぅっ……ありがとう……ありがとう瑠璃いぃ……っ!」

 

 また泣いちゃった。だけど、目の前に大好きな親友がいて、帰りを待ってくれる仲間がいる。ありがとう……みんな。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・その後の輪の処遇

 

 

 私はS.O.N.G.のメディカルルームに運ばれた。処置が終わると、オジサンやエルフナイン、装者のみんなが来てくれた。

 

「ごめんなさい!私、皆を裏切りました!私がした事は許される事じゃありません。どうか、私を罰してください。」

 

 どんな理由があっても、私がした事は消えるわけはない。多分、もうここには二度と来られないだろうし、外部協力者ではなくなる。まあそうなっても文句はないよ。私はどんな罰でも受け入れ……

 

「いや。俺達こそすまなかった。君が今回の凶行に走った原因は俺達にある。君はただ巻き込まれただけに過ぎん。君に恨まれて当然だ。本当に、申し訳なかった!」

 

 オジサン達、もといあのライブに関わった人達、そしてソロモンの杖を起動したクリス、全員頭を下げた。まさか謝るなんて、思ってなかったから驚いちゃった。

 

「いや……その……皆さん……」

「出水、すまなかった。」

「翼……さん……」

「私は奏を失い、己の弱さを鍛えようとするあまり、他者を省みなかった。全ては己の不徳故のもの。私の事を恨み続けても構わない。だから、叔父様や緒川達の事は許してほしい。」

「待ってくれ!元はソロモンの杖を起動させたあたしがいけないんだ!あんなものさえなければ今頃お前は何も失わずに済んだんだ!だから先輩達を恨むのはもうやめてくれ!恨むならあたしを恨め!」

 

 翼さんとクリスが……そこまで言うなんて……。いや、翼さんはともかくクリスも案外堅物だから、そういうのも仕方ないのかな……。

 

「翼さん……。一つ勘違いしてます。あとクリスも。」

「え?」

「私は、もうあの事で恨むのはやめたんです。こんなのがいつまでも続いたら、疲れちゃうじゃないですか。それに、翼さんを恨むのは筋違いですし……。クリスだって、櫻井さんに利用されて捨てられて、誰かを恨むのは当然だよ。私もそろそろ過去を精算しないと。もう恨み続けるのには、疲れちゃった。」

「良いのかよ?!そんなんで割り切っちゃって?!」

「良いんだよ。だって、それ以上に……大切なものを貰ったんだから。」 

 

 今やっと分かったよ。私は自分から、大切なものを手放そうとして、同時に諦めていたんだ。生きる事を、やり直す事を。櫻井さんが言っていたこと、あれって私にも言ったくれていたんだね。

 私にはギアはないけど、瑠璃と肩を並べられるなら、この残酷な世界と向き合って生きていける。それに、何も嫌な事ばかりじゃない。だって、こんな我儘な私を受け入れてくれる……友達がいるんだから。

 

「瑠璃……ありがとう。」

 

 私の処遇は治療後、聞き取り調査と、軽い謹慎で済んだ。裏切りの代償にしては随分小さなものだった。けど、大切なものを守れて良かった。それに戦いはまだ終わってない。キャロル、あいつには絶対吠え面をかかせてやる!いざとなったら輪パンチで何とか一発入れてみせるからな!

 

 




これにて輪の物語は完全に完結です。ここまで読んでいただきありがとうございました!

さあて今度こそコメディカルな番外編を書くぞー!
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