戦姫絶唱シンフォギア 夜空に煌めく星   作:レーラ

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AXZ編前の最後の番外編となります。

恒例である前日譚の番外編も最後にあります。


番外編 カラオケと序章

 ・逆光のフリューゲル

 

 魔法少女事変が終結してから数日が経過し、リディアンに通う者達は夏休みを満喫している。夏祭りやプール、海水浴にボランティア活動、やれる事を精一杯満喫している。だがその夏休みも残りが10日を切った。ここは装者らしく、最後にみんなでカラオケで盛り上がろうという事でカラオケボックスに来ていた。

 今回参加するメンバーは瑠璃、輪、響、未来、クリス、切歌、調の7人。瑠璃は主に翼のシングル曲、輪は流行りのJ-POPなど、それぞれ思い思いの曲を予約して、それらを歌い続ける。フリータイムで入った為、夕方まで歌い続ける事が出来る。だが一人、先程から歌っていないのが一人いた。

 

「所で響ちゃん……それは?」

「ジャンボサイズフライドポテトとジャンボサイズたこ焼きですよ!」

 

 このジャンボサイズシリーズはそれぞれの普通サイズの3人前の量を盛り付けた料理となっており、食べごたえは充分にあるのだが、ジャンボシリーズ2種類という量はどう見ても一人で食べる量ではない。

 

「お前それ一人で全部食う気なのか?!」

「まあいけなくはないけど、みんなも食べる?」

「いただきますデース!」

 

 響と切歌がガツガツ食べ始めると、皆もそれに当てられたのか、ジャンボサイズフライドポテトと、ジャンボサイズたこ焼きを貰って食べる。どちらも熱々でカリッとふわっとしていて、箸が止まらなくなる。10分足らずで完食してしまう。満腹になった輪がソファーから立ち上がって曲を入れる。

 

「よし、じゃあ次行くよ!」

「おう!」

「次の曲は……え?」

 

 みんなが次の曲を見て驚愕した。輪が入れたのは、あれほど憎んでいたツヴァイウィングの曲だからだ。確かにもう恨むのはやめたとは言っていたが……

 

「変に気を使う必要はないよ。それに、これは過去の私の決別。キチンと踏ん切りをつけて、今度こそ前に進むんだ。」

「輪さん……。」

 

 そう言い切る輪。未来が心配するが、本人は迷いなくもう一本のマイクを瑠璃に渡す。

 

「一緒に歌ってくれる?」

 

 瑠璃は輪の真っ直ぐな目を見て、マイクを受け取る。

 

「うん。」

「よっしゃっ!じゃあ行くよ!逆光のフリューゲル!」

 

 そう言うと曲のイントロが始まった。響達も盛り上がる。

 輪が奏パートを、瑠璃が翼パートを歌う。瑠璃と輪、二人のデュエットは秋桜祭でも聴いたことがあったが、その時も二人は息はピッタリで、輪が光で瑠璃は闇、二つの歌声が調和して、誰もが二人の歌に盛り上がった。何より、唄っていた二人は楽しそうだった。

 そして今の輪は、その時以上に心から楽しそうに歌っていた。そしていよいよサビに入る。

 サビに入り、唄う二人の目線が合うとより楽しそうに、笑顔で唄う。そして、瑠璃が輪に右手を出すと、輪はそれに応えるかのようにその手を掴んだ。二人の右手は添えるように、互いに繋ぎ合い、最後に思い切り全部を出し切って歌い終えた。

 

 最後まで楽しく、思い切り、心のままに歌い切った。輪の表情は晴れやかだった。

 

(やっぱり……歌って良いなぁ……!)

 

 もうかつての過去に縛られた自分じゃない。皆に光を照らす日輪になっていた。

 

 

 

 

 ・悪夢の序章

 

 

 

 

 

 

 

だ……いや……いやだ……嫌……

 

 

 

 

た……けて!パ……マ……ァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやあああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

  

 

 

 

 

 

「ああああああぁぁあっ!!」

 

 夜中の3時、瑠璃は叫び声を挙げながら起き上がった。八紘邸で見たあの生々しい悪夢、あれから瑠璃は同じ夢に悩まされるようになった。そのせいで寝不足になり、寝るのが怖くなっていた。しかし、眠らなければ身体を壊してしまう。装者として活動しているのだから尚更睡眠は大事だ。だがこうも何度も同じ悪夢が続くのは明らかに異常だ。

 瑠璃は弦十郎に相談した末、病院に受診した。医師に睡眠障害と診断され、カウンセリングを受けた後、薬も処方してもらい、病院を後にした。

 何故あの夢を見るようになったのか、今でも分からない。一体いつまであの悪夢を見なければいけないのか、そう考えると余計に気分が落ち込む。

 

「ため息をつくと幸福が逃げる……。」

「え?」

 

 突然のセリフに、まるで自分の事を言っていると思い込んだ瑠璃は振り返った。そこにいたのは銀髪の髪を後ろに結っていて、こめかみの毛が肩にまで掛かっているレディーススーツを着た女性だった。

 

「あ……失礼。独り言のつもりが、大きくなってしまって。」

「あ、いえ……。こちらこそ失礼しました……。」

 

 瑠璃は女性に一礼して、家に帰ろうとすると、女性に呼び止められた。

 

「あ、待って!聞きたいことがあるの!」

「はい……?」

「リディアン音楽院はどっちかしら?」 

「リディアンですか?」

「ええ。私、明日からリディアンで教員を勤める事になったのだけど、道のりが分からなくて。」

「あ……でしたら案内します。と言ってもここから近いんですけど……。」

 

 そう言うと瑠璃はリディアンまでの道を案内した。瑠璃の言う通り、少し歩いただけですぐにリディアンに辿り着く。

 

「ありがとう。助かったわ。」

「いえ。私もここに通ってますし……」

「あら、ここの生徒さんだったのね。お名前伺っても良いかしら?」

「は、はい。風鳴瑠璃です。」

 

 そう言うと女性は驚愕した。

 

「風鳴……もしかして風鳴翼の血縁?!」

「は、はい……従姉です。」

「そうなのね……。世間って狭いわね……。あ、まだ名乗ってなかったわね。私は瑠無・カノン・ミラーよ。道案内ありがとう、風鳴さん。学校で合う日を楽しみにしてるわ。」

 

 そう言うと瑠無は瑠璃に手を振りながら校舎の方へと行ってしまった。

 

「あ、いけない。帰らなきゃ……ぅっ……!」

 

 突然瑠璃が頭を抱えて苦しみだした。激しい頭痛に襲われ、頭を抱えたままその場に座り込んでしまう。

 

(痛い……!何なの……?!)

 

 パパ!ママ!死んじゃ……よ!おね……い……け……よ! 

 

 同時に、頭の中に霞がったヴィジョンが断片的に流れ込んできた。それが何なのか、苦しんでいる瑠璃には理解する余裕はなく、途切れてしまった。

 

「はぁ……はぁ……今のは一体……?」

 

 結局それが何なのか、分からず終いとなってしまった。しかし、彼女はまだ知らない。これから待ち受ける、最悪の運命を前にしようとしていることに。

 

 AXZ編に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 




裏話

輪はリディアンに入ってから翼が唄う歌を一度たりとも歌っていません。それがどこか過去に拘っていた事を意味していましたが、今回ツヴァイウィングの曲を唄った事で、過去への執着を捨てて、前へ向く事を決めた覚悟の証となりました。

次回、お待たせしました。いよいよAXZ編開幕です。

また活動報告にも書きましたが、R-18版の瑠璃の最初の相手が誰がいいか、アンケートを実施しております。よければ投票お願いします。
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