「愛する人となら、共に生きるか共に死ぬかの2択でしょ」という尊敬する作家さんの考えを、妹紅にぶつけたくて作った話。幻想郷ならいくらでも不老不死になる術があるはず。
※この小説にはキャラ崩壊、独自解釈、拙い文などの要素が多分に含まれます。それでもいいという方は小説擬きのお人形遊びで良ければどうぞ
吐く息も凍る冬の季節。雲一つない青空の下で僕は今、暴行を受けている。いつもの奴らがいつものように鬱憤を晴らし楽しむために、集団で弱いものを囲む。
「こいつ殴っても泣かないから全然面白くないよ」
「まぁそう言うなよ」
「でも、いつも殴るだけじゃん」
「確かに」
同じ10歳という年齢なのに、僕とこいつらとではここまで差が開くものなのか。いつもめげずに抵抗しているのだけれど、空ぶってばかりで上手くいかない。せめて僕に今できることは睨みつけることぐらいだ。
「なんだよその眼」
「ムカつく〜」
「足腰立たなくなるまでやろうぜ!」
すかさず蹴りがとんでくる。回避することも防御することも出来ないから、そのまま受けてしまう。いつもの事なのにやっぱり痛いのは変わらない。誰かから痛みには慣れるものだと聞いたけど、そんなことない。
「いつも反抗的だよな」
「よし!今から顔蹴るけど守るなよ。もし守ったら俺の親父に家の商品盗んだって言うから」
「そ、そんなことしてない!」
「そっか。でも、どっちの言い分を信じるかな」
怖い、怖い、怖い。顔に蹴りが来るのに守ることが出来ない。だって、もしそんな事をしたら今のささやかな生活さえどうなってしまうのか分からない。
「いっきまーす」
幸いなことに蹴りは、額に当たり血が出ることはなかった。もし、あれが鼻にでも当たったら今頃のたうち回りながら辺りに血をまき散らしていたんだろう。
「あははは。本当に受けてんじゃん」
「村の中でも発言力が強い親父には逆らえないからな」
「俺、友達で良かった〜」
「だろ!俺と友達だったらもっと面白いこと出来るぜ!」
周りから褒められたい頭と、ご機嫌取りをする金魚の糞。本当にこんなものが友達なのだろうか。こんなのが友達という関係なら僕はいらないと、思う反面あそこに僕も居られればと羨ましくも思う。誰だってどんなに否定しても、一人ぼっちは嫌なのだ。
「今日はこのくらいにしとく?」
「いや今日はこいつに罰を持ってきたんだ」
ようやく終わりも見えたと思ったこの暴行も、まだ続くらしい。罰と言うんだどうせろくなものじゃない。
「あの妖怪が出るって言う竹林あっただろ。あそこに1人肝試ししてもらおうぜ!」
「でも、あそこに行ったら本当に死ぬよ?」
「大丈夫だって。竹林の前に灯持って立ってれば、中からでもすぐに帰る方向わかるだろ?何かあったら帰ってきたらいいじゃん」
絶対に嘘だ。顔に書いてある『しばらくしたら俺達だけ帰って置き去りにしよう』って。俺が死んでも、止めたけど勝手に入って行ったとか言うつもりなのだろう。
「嫌だ!」
「そんな反抗していいのかよ。お前と違って俺には親がいるんだぜ?」
「死ぬならお前も道ずれにしてやる!」
掴みかかろうとする手は、あっさりと躱されて空を切る。自分では早く動いたつもりでも、向こうにとっては遅い攻撃だったのだろう。お腹に拳が入りうまく息ができない。
「よっしゃ!こいつが言うこと聞くまで殴ろうぜ!」
せめて身を守ろうと丸くなると、四方八方から踏んずけられる。反抗しなければ、素直に従っていればこんな事にはならなかったのだろう。でも、お父さんとお母さんが理不尽に立ち向かったように、僕も負けられないから。
「いつまで丸くなってんだよ!」
「こいつ全然動かない!」
「これじゃ面白くないよ!」
丸くなってるだけの相手を、ひたすらに殴り続けるのは楽しくないだろう。痺れを切らして無理やり立たせようとしてくるが、絶対に丸くなった姿勢をくずしてやらない。楽しい思いなんてさせるもんか。
「おい!弱虫、戦えよ!」
「そうだ!」
そろそろ疲れてくる頃だ。そうしたら、この状況からも開放される。早く家に帰りたい。こんな奴らに時間をかけるよりも、もっと時間を共にしたい人がいるんだ。
「はあ、はあ。明日、お前ん家に行くから逃げんなよ。もし逃げたら親父に言ってやるから」
「そうなったらこの里では生きてけないな」
あれを言われてしまえば、逆らえないのを分かっているんだ。実際その通りで、言いなりになるしかない。竹林に向かってしまえば、本当に死んでしまうかもしれない。伝える言葉を考えなければ。
痣だらけの体を引きずって、帰路を辿る。こんな最低の日なのに空は以前、雲一つなく綺麗な青色をしていた。
僕の家は、賑わいも消えた裏通りの端にある。里の外縁であり度々、妖怪に攫われて家主が消える事から誰も近づかなくなり、放置されてる家。身寄りのない僕にとっては、これ程に助かることはない。周りの家とは違い洋風?な建築らしい。
「今日は簡単に開くといいな」
ドアノブを回し、思いっきり後ろに体重をかける。立て付けが悪いのか、いつも全力で挑まないと開かない。昔は勢い余って後頭部を強打したこともあった。が、今では何とか五分五分にまで持っていくことができた。
「それでも、頭をぶつけているのには変わりないけど!」
痛む体を何とか動かして、更に力を加える。その瞬間バタンと勢いよくドアが開く。頭をぶつけないで済んだものの、毎回緊張する。
「今日は一段と手強かったな」
玄関の先には、子供が1人で住むにはやや大きい部屋が広がっていた。さほど物を持たない·····と言うより持てないため生活感があまりなく、空き巣が入っても取る物に困るだろう。
「ただいま」
もちろん誰も返事はしてくれないが、自分の帰ってくる場所という認識をする為には大事な行為である。そうでもしなければ、自分の帰る場所を見失ってしまうから。
「今日はなにがあるかな?」
毎日、帰ってきてまず確認することがある。空き巣が入ったかの確認ではない。確かにドアには鍵がかからないが、前述の通り取るものがない。むしろ逆、戸棚の中に食べ物が置いてあるのだ。
「前述の通りってちょと格好つけすぎかな?教えてもらった言葉って使いたくなるんだよね」
いじわるな人もいるがこの里は優しい人もいる。僕の事を心配してこうやって食べ物を置いて行ってくれるのだ。みんな口々に僕の両親にはお世話になったからと話してくれる。だから、すごく誇らしいのだ。
「僕がこうやって、働かなくても生きていけるのは皆のおかげだよね」
だから、いじめを見て見ぬふりしているのは水に流そう。僕だって、あの親父さんが怖いし関わりたくないと思うもん。自分の身は自分で守る。ここまでしてもらっているのだ、恨むのはお門違いだろう。
「今日は少ないな」
2人分を作るとなると少し心もとないが、何とかする。料理に関しては幼い頃からやってきた。病弱で何も出来なかった僕が無理を言って手伝わせてもらったのだ。
「あの時のお母さん嬉しそうだったな」
今では慣れたもので、考え事をしながらでも難なく料理をこなせるようになった。もし、お母さんが生きていたら料理の感想でも聞けたのだろうか。
「お母さんの料理食べたいな」
今日は嫌なことがあったからか、一段と両親のことを思い出してしまう。踏ん切りなんてつかない。いつまでも心の奥でチクチクと残り続ける。
「落ち着け、落ち着け。泣いちゃだめだ」
感情が昂ると発作がおきてしまう。だから、悲しみや涙は胸の奥にしまい込んで落ち着かなければ。悲しみに昏れることすら許されない。神様は酷い制約をかけたものだ。
「ふーー。おし、完成」
なんて事ない、たまにある事だ。自分の手網は自分で握れる。だから悲しくなんてない。しばらくは暇だから、教えてもらったところの復習でもしよう。
勉強も終わり外を見るともう真っ暗だった。いつも通りなら、もうそろそろ来る頃だろう。
コンコン
ちょうど、料理を配膳し終えたところでドアを叩く音がする。勝手に入って来てもいいって言っているのに、律儀に知らせてくれる性格が僕は大好きだ。
「どうぞ入って下さい。慧音さん」
「ありがとう」
ドアを開けて出迎えると、そこには
「どうしたんだ?何か変か?」
「いえ。変わらず綺麗ですよ」
なんて言うと赤面する·····という事はなく優しげな顔を僕に向けてくる。この手の言葉はもう少し大人になってからでないと、意味ないだろう。
「お世辞にしては上出来だ」
「お世話じゃないですよ。本心ですから」
「そうか·····うん、素直に嬉しいな」
こんな返事が帰ってくるとは思わなかったため、少々面を食らう。こういったやり取りも意外と無駄では無いのだろう。これからは、面倒くさがられない程度にやっていこうかな。
「立ち話もなんですから、中で話しましょう」
「邪魔する」
「違いますよ」
慧音さんが家に通うようになってから、するようになった皆には当たり前の言葉。だけど僕らには何よりも大切な言葉。
「そうだったな。た、ただいま」
「おかえりなさい」
帰る場所を定める証。好きなんて言葉よりずっと大事で大切な挨拶。これを交わす事によって、僕らが1人ではなく2人だと感じられる。
「まだ慣れないんですか?」
「家ではもう何年も1人。帰った先には誰もいないのが、当たり前だったからな」
「僕がいますから」
「ああ、こそばゆいが嬉しいよ。帰える先に誰かがいるというのは」
僕から提案したこの挨拶を気に入ってくれて嬉しい。なんだかんだ孤独は堪える。帰った先で大切な人に『おかえり』と言われるだけで心は救われるのだ。
「とりあえずご飯食べましょう。」
「そうだな」
そう言ってテーブルを囲み、向かい合わせになるように座る。1人だった時は足を崩して座っていたのだが、如何せん慧音さんが綺麗に正座してるのだから、こちらも自然と姿勢を気にしてしまう。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきます」
お互い黙々と食事をとる。普通だったら話をしたりするのだろうが、僕達が食事中に会話をすることは稀である。この嫌じゃない沈黙が好きなのだ。慧音さんもそう思ってくれているのだろうか。
「·····」
「·····」
慧音さんが家に通い始めたのは最近である。例のごとくいじめられていた僕を、寺子屋にも通っていないのに助けてくれたのが始まりだ。いじめは結局、見つからないようになっただけで前と変わらない。余計な心配をさせないために慧音さんには秘密だ。
「これは」
「?」
僕がおかずを取ろうと伸ばした手を急に慧音さんが掴んだ。落としてしまった箸を取りたいのだが、なかなか離してくれない。一体どうしたというのだろう。
「この痣どうしたんだ」
「えっと、それは」
まずい。長袖だから分からないと思っていたのに、手を伸ばしたことで、袖がズレて隠れていた腕が見えたのだろう。これ以上見られないために、手を振り払おうとしたところで袖をまくられてしまった。
「っ·····痣だらけじゃないか!」
「これはぶつけただけで」
「そんな訳ないだろ。なんで·····こんな·····」
慧音さんが声を荒らげるのは、ものすごく珍しい。大体のことは冷静に受け流しているのに、僕の事でこんなにも心を乱してくれている。嬉しいと同時に申し訳なかった。
「またあの子供達にやられたのか」
「ごめんなさい」
「なんで謝るんだ。悪いのは向こうだろう?」
「僕がもっと強かったら、慧音さんがそんな顔をする事もなかったのにって」
こちらを見る顔はものすごく悲しそうで、いじめられた僕よりも怒りに満ちていた。大切な物を傷つけられた時には、こういった顔になると昔にお父さんが言っていた。僕は慧音さんの大切な物になれたのだろうか。
「私が!」
「駄目だよ」
「どうしてだ」
「僕の戦いだから」
このまま慧音さんが、以前のように出てくれば問題は簡単に解決するだろう。いくら父親の方が発言力があると言っても、稗田家の阿求さんと同じように替えがきかない存在だ。
でも、このまま甘えてしまったら両親を見送るしか出来なかったあの頃の自分と、同じだ。だから、変わらなければならない強い自分へ。
「私の気持ちは無視か?この先こんな怪我を負うのを黙って見ていろと?もし、取り返しのつかない事になったら」
「·····」
「もう、大切なやつの最後を看取るのは嫌なんだ」
切実に訴えられたその言葉は、今まで抱えていた不安も混ざっているのだろう。頭の片隅にあった寿命という名の死と、他殺という名の身近な死が合わさり無視できない領域まで来たのだ。
だから、不安そうに震える彼女に言わなければいけないことがある。さっきの身勝手な気持ちは捨てて、彼女と俺の願いが叶う方向へ。
「ごめんなさい。これは僕のわがままだって分かってる。だから、お互いが納得出来るところ探そ?」
「納得出来るとこ」
座っている慧音さんに近づき抱きしめて、頭を撫でる。身長が小さいから膝立ちにならないと、上手く抱きしめられないのが不格好だ。だが、今は僕という存在を感じさせる事で不安を和らげられればそれでいい。
「これからは隠さずに相談するし、勝てなかったら逃げるっていうのは?」
「私が出ればそんな事しなくても」
「それじゃあ僕が弱いままだから。守られて生きていくのも悪くないと思うけど、僕は横に立ちたい。もし駄目だ〜ってなったらその時は助けて欲しいな」
慧音さんはだいぶ悩んでいた。どんなに折衷案をだしても、不安なものは不安なんだろう。
「一つだけ約束してくれ。絶対に死ぬような危険は侵さないと」
「約束する。俺は絶対、慧音より先に死なない」
「ああ、約束だ」
誓いの言葉くらいは、飾りたくなかった。だから、呼び捨てを拒絶されなかったのは嬉しかったりする。
「ご飯すっかり冷めてしまったな」
「そうですね」
「いつまで、抱きついてるつもりだ?」
「もう少し、もう少しだけ」
山場は越えたがまだ話してないことがある。竹林に行く話をすれば動揺するだろうが、隠さないと決めた以上話さなければ。
「あの、慧音さん」
「?呼び捨てでいいんだぞ?」
「いえ、ここぞと言う時に使いますから」
「そうか。で、なんだ?」
慎重に言葉を選びながらゆっくりと、話をする。
「実は、明日の夜に竹林に行くよう脅されていて」
「あいつら!完全に殺す気じゃないか!」
「みたいです」
「はあ〜〜、分かった。竹林なら知り合いがいるから、話をつけておく」
あの竹林に人が住めるとは思えないのだが、人じゃないという事だろうか。なんにしても顔が広い。とりあえず、お別れの言葉を言う必要はなくなったか。
「まさか、これが最後とか馬鹿なこと考えてたんじゃないだろうな」
「はい、そうです」
「本当に気づいてよかった」
「ごめんなさい」
「なんでそんなになっても、笑っていられるんだ?」
確かに、普通の子供だったら泣き喚いているところだろう。でも、僕は大丈夫だ。どんなに絶望に染まっても、暗闇に落ちてもその中で小さく光る幸せがあるから。つまるところ。
「僕には慧音さんがいますから」
「私が?」
「はい!」
「本当に私の事が大好きだな」
「うん。俺は慧音の事が大好きだよ」
幼く高い声から発せられたその言葉は、落ち着いた低い声だったのなら女の子を赤面させられたのだろう。決め台詞がこうも滑稽に響くのは、少し残念·····だ?
「な、なに馬鹿なこと言ってるんだ!」
「本心ですから」
「もっと躊躇ってものを覚えろ!」
お?お?これは?赤面した顔に荒くなった口調。意外と上手くいったということだろうか。なら、ここで攻勢の手を緩める訳にはいかない!
「好きだよ」
「耳元で囁くな!離れろ!」
「すき、好き、大好き、愛してる」
「やっ、やめ」
先程までの暗い雰囲気はどこへやら、すっかり騒がしくなった慧音さんを見て良かったと心の底から思った。すっかり冷めて硬くなったご飯を発見したのはもう少し後のこと。
その日の夜は珍しく慧音さんが泊まっていき、1つの布団を2人で共有した。
伸ばされた手を掴むか否か
あらすじからも分かる通り、本来は妹紅をヒロインとして構想してました。なのに何故か慧音といちゃいちゃしだして困惑気味です。まだ、親愛の域を出ないので修正可能なはず。
衝動的に書いたので、次回は未定です。
主人公の名前が出てこないのもそういう理由です。
ちなみに本編の前後に入るクサイ言葉は、気に入っているのでやめる気はないです。若気の至りだと思って許してください。年を取ったら、布団の上で苦しむから帳消しという事で。