オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
ルーク、サンタクロースと出会う
オレだって望んで魔法使いに生まれたわけじゃない。
もし君が、自分も魔法使いかも? と思いながらこれを読んでいるんだったらすぐにブラウザバックして11歳までおとなしくすごすこと。たぶん君の両親か保護者はなんらかの理由があって君にその事実を隠してるはずだ。知らなきゃよかったで済む話じゃなくなるかもしれない。
君が12歳を過ぎても何もアクションがなければどうぞこの話をフィクションだと思って楽しんで行って欲しい。
そして今魔法使いとして優雅で楽しい生活を過ごしている諸君は……こんな人生を送っている同胞もいるってことを知る貴重な資料になるんじゃないか? たまったもんじゃないが。
オレは警告したからな。大抵真実を隠されているやつにはそれ相応の理由があるんだ。知ってしまったからってクレイジーなサンタに振り回されたり、闇討ちされたり、村八分にあったりその他諸々危険な目にあうなんてことがあってもオレは一切責任をとらない。ここから先は自己責任ってやつだ
……まあ好きにしてくれ。
◆
オレの名前はルーク・ブラック。
光をもたらす者のファミリーネームがブラックとか親のセンスが気になるだろ? だが残念。オレの両親は蒸発中だ。
オレは2歳から9歳までずっとこの『ホワイト子供の家』の住人だ。もちろん両親の顔なんて覚えてなければ、名前すら知らない。感謝することがあるとすればこの誰もが二度見する容姿くらいだろう。このおかげで何回か施しにやってくる人からお小遣いがもらえたからな。
そんなに見た目がいいなら養子として受け入れてくれる家庭はなかったのかって? それはオレが問題児って思われていることが原因だったりする。
自分の約10年間の人生をクリップしたとしても大抵良くないことを引き起こしている自覚はある。もちろん半分は不本意だ。
たとえば6歳、地域のボランティアで落ち葉拾いをしていた時、ちょっと苛ついて葉っぱを集めた袋を軽く蹴ったらその中に爆弾が入ってたらしく盛大に爆発して周りの子を病院送りにしてしまった。8歳の時は養子を検討してくれる人との食事会でちょっとヘマをしてシャンデリアを落としてしまったし……まあそんな感じだ。
これ以上は聞かないでくれ。
こんな感じで色々問題を起こしているオレは誰からも貰われることなくこのホワイト子供の家の名物として名を轟かせていた。『Black of White』ってね。
そのはずだったんだけど、一人物好きな老人がオレを訪ねてやってくるようになった。本名は何て言ったっけ。そうだ、アルバス・パーシブル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアだった気がする。長過ぎてアルバスと呼んでいる。
初めての顔合わせは応接室でのお茶会だった。
シスターたちからは今回こそはいい縁でありますようにと祈られ、ちびっ子たちには盛大な応援をされオレはドアをノックした。もちろん4回だ。余談だが2回はトイレらしい。
「どうぞ」と柔らかい穏やかな声。
扉を開けると髭のふさふさしたお爺さんがいた。そして机の上にはたくさんのお菓子。
どこかで見たことがあると思ったのはあれだ、ナンシーの絵本に描いてあったサンタクロースだ。そう思ったのが悪かったのか対面一言目の言葉はこれだった。
「わしはサンタクロースではないよ、ルーク。おかけなさい」
オレは言われた通りにソファーに腰を下ろした。
この時に気づいてればよかったんだ。こいつはクレイジーだって。でもこの時のオレは養子になることに全力だったから気が付かなかった。
アルバスと呼んで欲しいと言われたのでオレもルークでいいと言ったがもうそう呼ばれていた。
アルバスはオレの両親をよく知ってるらしい。今まで来るのが遅くなったが養子として引き取る準備が整ったと、あとはオレの気持ち次第だって話をされた。養子に来たら好きなだけ本を読めるし嫌なボランティアもしなくていい、ついでにアルバスはどっかの校長らしくその学校に試験なしで行けるようにしてくれるそうだ。
「なんでそんなにしてくれるんですか?」
って聞いたら予言とか言われたのが気になったがあれだ、引っ越し先を方位で決めるようなタイプの人間なのだろう。
なんてすんなり受け入れてしまったオレをだれか叱って欲しい。ここならまだ後戻りはできたはずだ。
3回目のお茶会をしてアルバスの好物らしい甘いものを平らげていたらシスターも安心したのか家に訪問する許可が出た。あと2回ほどクリアしたらオレのお別れ会を開いてくれるということらしかった。
「ルーク、12歳になったら君はどちらの名前で学校に行きたいかな? ダンブルドアでもブラックでも君の好きな方を選びなさい」
「あー、ブラックにします。校長の養子なんて変な目立ち方をするのはごめんです」
「ふぉふぉふぉ、そうか。それなら登録はルーク・ブラックにしておこう。11歳になったら入学許可証が届くはずじゃ、それまでに本で知識をつけておきなさい。ここの書斎は自由に使ってよい」
一見超古びた本ばかりだがどれもオレの知らない最新のテクノロジーが使われているらしく、動いたり飛んだりしている。たまに音声付きのやつもあった。ただどれもこれもファンタジー要素たっぷりだった。そういうのが趣味っぽい。そう思った。
何回も言うがオレはこの時どうにかしていたと思う。オレはなぜかわからないがアルバスが小説家なのだと納得してしまった。だからオレが行く予定の学校も文学系の学校なんだろうって。ピクシーやハウスエルフはよくある設定だから知らないと授業に置いてかれるぞって意味で本を勧めてきたのかと思った。
たまにアルバスが言う「君の学んだことをどう実生活に役立てるかきちんと考えておくように」なんて言葉の意味が今では良くわかるが、その時は「なにを言ってるんだサンタクロース。オレは小説家志望じゃないぞ」としか思っていなかった。
そして毎回「わしはサンタクロースではないぞルーク」なんて返されていた。
◆
7月10日。
オレのお別れ会は盛大に開かれた。ほとんどの孤児が一桁前半歳で出荷される中俺だけ長くもうすぐ10歳ってとこまで居座り続けたんだ、みんな心から喜んでくれたしオレもめちゃくちゃ喜んだ。毎日毎日明日の食事と洗濯について考えるのも苦痛だったからな。最年長の務めからもおさらばだ。
「じゃあ行こうかルーク。これからはわしと二人だからちと静かじゃがその分面白いものを見せてやれるぞ」
「本当ですか? それは楽しみです」
「ただ、一緒に生活をする上でいくつか約束事をきめよう」
「なんでしょうか?」
「1、嘘をつかないこと。わしは大抵のことでは怒らんから物を壊したとかでもすぐに言いなさい。隠されると傷ついてしまうからのう。
2、外に一人で出ないこと。わしは仕事があるから特に昼間は外にでることも多いが、ルークは家で留守番をしていなさい。ここらへんは治安がちと良くないらしいのじゃ。ひとりでいる時に拐われたりしたら悔やんでも悔やみきれん。わかってくれるか?」
「嘘をつかず、一人の時は家にいると。庭にはでてもいいんですよね?」
「もちろんじゃ。敷地内では好きに過ごしなさい。入ってはいけない部屋なども特にない」
「わかりました。何かあった時は伝書鳩で送ればいいんでしたっけ?」
「ルーク、ふくろうじゃよ。鳩は間抜けなところがあるからのう」
こうしてオレとアルバスの奇妙な親子関係がスタートした。親子ってよりは孫と祖父の関係って感じだが。
ここでオレの日常を少し紹介しよう。なんでかって? ホワイト子供の家とこっちじゃ日常が全然違うんだ。
朝起きてふくろうに餌をやる。朝食をアルバスと食べてそのままお見送り。ハウスエルフって名前のやつとビリーって名前のやつが掃除と洗濯をしてくれているらしく家事全般はやることがなかった。
オレはアルバスからプレゼントされた箒で遊んだり、本を読んだりしながら昼間は時間をつぶしている。
この箒がまたすごいのだ。またがって地面を蹴れば空中を飛べるという優れもの。箒は掃除用かと思っていたとアルバスに言ったら、「どんどん学びなさい」と言われた。やっぱり孤児とお金持ちは常識が違うのかもしれない。オレも私立のエレメンタリーに行ってればそういう高級品とも出会えたのかもしれないが、寄せ集めエレメンタリーでは箒の掃除以外の用途を教えてはくれなかった。
遅めの晩ご飯をアルバスと二人で食べ、その後面白い話をほぼ毎日聞かせてくれる。この間は友人のニコラ(通称ニコ)と一緒に不死の石について研究してた頃の話だった。どこまで本当でどこまで冗談なのかは毎回よくわからなかったが、寝る前のお話としてはおもしろかった。
11歳の誕生日がくるまでそんなことを思っていた。そうオレは記憶している。
オレは9歳までは親の貧困によって捨てられ孤児院に、その後はお金持ちの小説家の養子として過ごしていく……はずだった。