オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、新鮮なトロールを献上する

 ハロウィーンの朝、廊下に漂うパンプキンパイの匂いにみんな目を覚ました。オレはついでに嫌な悪寒がした、風邪ではないはず。

 

 今日の授業は「妖精の呪文」、しかもみんなが楽しみにしていた物を飛ばす呪文の練習がスタートする日だ。

 

 どうしてみんながやりたがってるか知りたいって? 

 

 ネビルのヒキガエルが教授によって教室を縦横無尽に飛び回っているのを見たらだれでもやりたくなるだろ。ネビル以外は大興奮だった。

 

 教授が適当に近くにいる人同士でペアを組んでから授業が始まった。

 

 オレは隣にいたラベンダーとペアだ。悪いなネビルこっちを見てアピールしてたっぽいけど、君はディーンとだ。ハリーはフィネガンと、ロンはハーマイオニーとペアだ。

 

「さあ、いままで練習してきたしなやかな手首の動かし方を思い出して! ビューン、ヒョイですよ。いいですか。呪文は正確に。はい皆さん、やってみてください。目の前の羽を浮かせれば成功です」

 

「ウィンガーディアム()()オーサ! んー、ぴくりともしないわ」

 ラベンダーが首を傾げながらそう呟く。

 

「もっとゆっくり発音してみたら?」

「んー、そうだっ! ルーク。お手本見せてくれない? そしたらわたしできると思うの」

 ラベンダーは何かを思いついたかのようにそうリクエストしてきた。

 

「わかった、やってみるよ。ウィンガーディアム レヴィオーサ よっし」

 

 オレの羽は教室の天井までのぼって行きちゃんとオレの目の前に着地した。

 

「ミスター・ブラックよくやりました! おぉミス・グレンジャーもいいですねぇ。今年のグリフィンドールは優秀でいいですな。グリフィンドールに4点あげましょう!」

 

 フリットウィック教授がぴょんぴょん本の上をはねている。

 

「すごい! あなたって本当になんでもできるのね!」

「ありがと、ラベンダーもやってみなよ。オレの見たからできるんだろ?」

「それは──、そうね。できる気がするから見てて。ウィンガーディアム()()()オーサ。あれっ今のは失敗ね」

「ここの発音がたぶんラじゃなくてレなんだ。あと手の振り方もこうやって──」

 

 オレはラベンダーの手首を持って杖の振り方を伝授する。これでできなかったらお手上げだ。

 

 ラベンダーは一瞬固まったあと深呼吸をして杖を構えた。やる気満々だな。

 

 そして羽を1cmほど浮かせることに成功した。

 

「今見た?! 私の羽ちょっと浮いたわよね?!」

「あぁ、見たよ。おめでとう」

「私今日のこと一生の思い出にするわ!」

 

 ラベンダーは大袈裟に感謝を伝えてきた。大したこともしてないのにこんなに感謝されるなんていいとこだなここは。

 

 オレはちょっと調子にのって杖を構えた。もちろんターゲットは分厚い本だ。前々からやりたかったことを実行するチャンスだ。

 

「ウィンガーディアムレヴィオーサ……よっし! 成功し──」

「ブラック!!! 危ないじゃないですか! グリフィンドール2点減点」

 危ないとか言いながらフリットウィック教授は足場が一段減ったのに造作もなく対応しながら2点も減点してきた。つまりさっきの加点がパーだ。

 

「どうして、こう魔法を悪戯に使っていくのか……言っておきますが私は決闘チャンピオンでもあるんです。こんな小手先な悪戯には慣れています」

 

 オレの微妙な顔に周りみんな爆笑した。一人「信じられないせっかく加点してもらったのに」みたいな顔をしている子もいたが。名前はハーマイオニーって言う。

 

 授業が終わった時、なぜかロンの機嫌が最悪だった。

 

「だから、誰だってあいつにはがまんできないって言うんだ。まったく悪夢みたいなやつさ」

「どうしたんだよロン。洗濯機の中身干し忘れたときの顔みたいになってるぞ」

()()()が何かしらないけど気分は最悪だよ。あんなに上から言われてだれが気分がいいんだ? 『言い方がまちがってるわ。ウィン・ガー・ディアム・レヴィ・オーサ。わかる?』だとよ」

 

 誰かがハリーにぶつかったらしく、ハリーが小さく声を出した。そっちの方をチラッと見るとハーマイオニーが追い越していくところだ、なんというか泣いているようにも見えた。

 

「いまの、聞こえてたみたい」とハリー。

「それがどうした? 誰も友達がいないってことはとっくに気がついてるだろ」

 とロンは少し気にしながら、でもそう言いきった。話はすぐにオレの減点の話になり、オレたちはハーマイオニーのことなんて頭から吹き飛ばしていた。

 

 結局ハーマイオニーは次の授業どころか、午後まで見かけることはなかった。大広間に夕食を食べに行く途中でパーバティーとラベンダー、そしてサリーの話が聞こえてきた。

 

「ハーマイオニーずっとあそこのトイレで泣いてるっぽいわね」

「でも一人にしてって言われたから私たちどうしようもないし、1日あれば落ち着くかしら?」

「そもそもあの子なんで泣いてるの?」

「わかんないわ。教えてくれなかったもの」

 

 ロンはこの会話を耳にして一瞬バツの悪そうな顔をしたが、豪華なハロウィーンの飾り付けでまたもやすべてが吹っ飛んだ。まあオレ達は女子トイレに入れないから仕方がない。

 

「なんでカボチャパイと肉を一緒に出すんだよ。匂いで自分が何食べてんのかもよくわかんないだろこれ」

「どっちも美味しいからいいじゃないかルーク、ポテトとろうか?」

「ああハリーよろしく、あとロンご馳走は逃げないんだからそんなに口につめこむなよ」

「だっふぇおふぃしいふぁらひはたなふぃだろ?」

「あ? なんて言った?」

 ロンは口に詰め込む癖は直す気がないようだ。永遠にちゃんとした答えがかえってこない。

 

「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」

「ん? いまクィレル教授なんて言った?」

「とふぉーふふぁって! ふゃばひんふぁないふぁ??」

「ロンとりあえず、君は口のなかのもん無くしてからしゃべってくれ」

「トロールが地下室にってわぁ」

 

 大混乱の大広間をアルバスが杖の先から紫色の爆竹を何度か爆発させることによって鎮めた。休暇中にあの魔法教えてもらいたいな。

 

「監督生よ。すぐさま自分の寮の生徒を引率して寮に戻るように」アルバスの声が轟いた。

「僕についてきて! 一年生はみんな固まって! 僕の言う通りにしてれば──」

 パーシーは水を得た魚だった。

 

「ちょっと待って……ハーマイオニーだ」とハリー。

「あいつがどうしたんだよ?」

 とロンは何言ってんだハリーって思ってそうな顔で聞き返した。

 

「トロールのこと知らないよ、助けないと!」

「その提案乗るぜハリー。本物のトロールも見てみたいしな」

「できれば会わないで逃げるのが一番だよルーク」

 

 オレたちは列からこっそり抜け、誰もいなくなったほうの廊下をすりぬけ女子トイレへといそいだ。その途中足音を察知した俺たちは石像の影に身を隠した。

 

「誰だか見えるか?」

「パーシーじゃない、スネイプだ!」

「何してるんだろう。他の先生と一緒に地下室に行かないのはなんでだ? あれって上への階段だよね?」

「知るもんか。よし行った、僕たちも行こう」

 

 オレたちは1階女子トイレの付近に到着するとそこは下水を汗たっぷりの靴下に浸けたみたいな臭いが漂っていた。次に鼻詰まりのときにでるスピーズゾゾゾみたいな音と、何かを引きずる音が聞こえてきた。明らかに自分たちより上から。

 

 トロールはオレが想像していたよりもだいぶデカかった。背は4m強、硬そうな肌、そしてみたこともないデカさのこん棒を片手にゆっくりと歩いている。そして開いているドアをくぐっていった。

 

「あそこのドアを閉めたら閉じ込められるよ!」

「ナイスアイディア!」

 

 オレたちは扉を精一杯押して、鍵をかけた。これで一件落着、あとはハーマイオニーを……。

 

「なぁ、ここって何の部屋だっけ?」

 オレは素直に思ったことを口にだした。

 

 ハリーとロンは顔を真っ青にさせて叫んだ。

 

「「女子トイレだ!!」」

 

 慌ててオレは木製の扉を魔法で木っ端微塵に吹き飛ばした。よくよく考えたら、ドアの前にハーマイオニーがいたら一緒に吹き飛ばしていただろう、ただ彼女はドアから反対の洗面台の下で蹲って震えていたから運がよかった。

 

「僕とロンで引きつける! ルークはあっちに潜り込んでハーマイオニーをなんとかしてトイレから出すんだ!」

「オーケー、いまやる!」

 

 オレはその掛け声と共にトロールのたぶん死角であろう場所から走り込んで、トイレ奥の壁までたどり着いた。さっきまで「女子トイレには入れないしな」とか言ってたの誰だよ? オレだ。

 

 その間にハリーはトロールに飛びついて首を絞めていた。まじかよ。トロールははえでも振り払うかのように首を左右に振っているが、ハリーは必死にしがみついていたし、なんならトロールの鼻に杖をつっこむファインプレーをかましていた。

 

「ハーマイオニー立てるか? ここから動かないとまずいっ(物理的にも精神的にも)」

「わ、わたし、こ、どうなってるの?」

「それはオレたちもよくわかんないし、考えてる暇もないみたいだっとあぶね。おいロン! なんか魔法かけろ! こっちは破片除けるので精一杯だ」

何かってなんだよ!!

知るか!!

 

 オレの無意味な返事に何か思いついたのかロンは勇敢にもトロールに杖を向けた。

 

 オレは間違えてロンが「オキュラスレパロ」とか修繕魔法を言わないことを願いながら、ハーマイオニーを鏡やら壁の破片から守るのにプロテゴし続けていた。

 

ウィンガーディアムレヴィオーサ!!

 

 ロンが放った呪文はトロールではなく棍棒に作用した。棍棒は空中を高く高く上がってゆっくり一回転してから、嫌な音をたてトロールの頭の上に落ちた。ついでにトロールのバランス感覚がなくなったせいでハリーも地面に落ちてきた。トロールは数秒フラフラしたあと、落ちたハリー目掛けて倒れようとしたのでオレは慌ててハリーを引きずり抜いた。もし床が掃除用洗剤で泡だらけじゃなかったらハリーは圧迫死してたに違いない。

 

「これ……死んだの?」ハーマイオニーが口を開いた。

「いや、ノックアウトされただけだと思う」

 

 ハリーがトロールの鼻から杖を引き抜きながら言った。オレはトロールに近づき、髭をもっていたペティーナイフで切り落とし、血と鼻水を採取するために何個目かのサンプル瓶をトロールに近づけた時、マクゴナガル教授が飛び込んできた。オレは慌てて蓋をしてポケットに瓶をしまった。ついでにスネイプ教授とクィレル教授までなだれ込んできた。

 

 よかったサンタはいない。

 

「一体全体、あなた方はどういうつもりなのですか」

 マクゴナガル教授の声は冷静だが、怒りに満ちていた。

 

「殺されなかっただけでも運がよかった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」

 スネイプ教授はオレとハリーを交互に鋭い視線を投げかけてくる。

 

「マクゴナガル先生。聞いてください──3人とも私を探しにきたんです」

「ミス・グレンジャー!」

「私がトロールを探しにきたんです。私……私一人でやっつけられると思いました──あの、本で読んでいろいろ知っていたので──もし3人が見つけてくれなかったら、私今頃死んでいました──」

 

 オレたちは「まさにそのとおりピンポーン」みたいな顔をして頷いた。

 

「まあ、そう言うことでしたら……ミス・グレンジャー、グリフィンドールから5点減点です。あなたには失望しました。怪我がないなら3人はグリフィンドール塔におもどりなさい。生徒たちがパーティーの続きをしています」

 

 オレは聞き間違えたようだ。なんでそこの3人なんだ? そこの4人だろ?

 

「先ほども言いましたが、あなたたちは運がよかったのです。大人の野生のトロールと戦える1年生はざらにはいません。ポッター、ウィーズリー、ブラック、一人5点ずつあげましょう。ただ、ダンブルドア先生に報告しておきます。ミスターブラック以外帰ってよろしい」

 

 そう言って3人はこのやばいトイレから追い出されてしまった。

 

「ミスターブラック。隠したものを全て出しなさい」

「あーはいはい、これですね」

 

 オレはポケットからトロールの鼻水を1瓶提出した。早く解放してくれ。

 

 そう思ったが、オレの目論見は甘かった。スネイプ教授が杖を一振りしたせいで、瓶6本髭1束、ついでに羽ペンやらペティーナイフそして杖まで教授の手におさまったのだ。くっそ。

 

「本当に……こんな時までブラックあなたは。全て回収です。トロールに関してはスネイプ教授がいい研究材料として役立ててくれるでしょう。残りの持ち物は明日自分でとりに行きなさい、それまでスネイプ教授があずかってくれます。もちろん杖もです」

 

 つまり今日の夜は大人しくしていろってことか。

 

「あー、アル──じゃないダンブルドア校長にはこのことを秘密にすることって──」

「全て話しますよ。もちろんですとも。そうでなくてもあなたの行動は全て報告するように言われてますから」

 

 マジかよサンタクロース、全然会わないから放任主義なのかと思ってたら部下つかって見張ってたのか。

 

「ブラック、トロールを倒しただけで調子に乗るな。加点されたから自分が英雄にでもなった気でいるようだが、その優秀な頭を多方面から物事を見ることに少しは割いてほしいものですな。我々教員の手間を増やしただけであることを肝に銘じておくように。自寮の生徒だからと甘くしていたら将来あやつのようになりますぞ、マクゴナガル教授」

 

 スネイプ教授は言いたいことだけ言って黒マントを翻して去っていってしまった。あやつって誰だよ? というかマクゴナガル教授が今オレに優しい要素あったか?

 

「……さぁ、あなたは医務室に行って傷をみてもらってから寮に帰ること。いいですね」

 

 マクゴナガル教授にはローブで隠した傷に気付かれていたらしい。

 

 オレが寮にたどり着いた頃にはハーマイオニーはロンと仲直りをし、なんなら友人になっていた。オレはマダムポンフリーの大袈裟な包帯の巻き方のせいで次の日からスネイプ教授と足の包帯がおそろになるなんて全く思ってもいなかった。

 

 ついでにスネイプ教授に預けたはずの杖はいつのまにかオレのポケットにおさまっていた。もちろんこんな短時間で盗んだわけじゃないと、ここに供述しておく。

 

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