オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
11月に入ると、急に寒くなった。
学校を囲む山々は灰色に氷月、湖は冷たい鋼のようにはりつめている。クィディッチ・シーズンもちょうどこの時期で、ハリーの初戦は土曜日らしい。今も最終調整の最中だ。
チームの秘密兵器として、ハリーがシーカーに抜擢されたことは極秘だったのだがもちろんホグワーツ内全員が知っている極秘となっていた。他寮の人が「ポッターは初戦でやらかすに決まってる」とか「1年は箒を持てないってルールを変えるなんてよほどの才能なんだよ。かっこいいプレーをするに決まってる」とか噂をしている。
そんな中、オレはなぜかハリーとロンの遅れがちな宿題をハーマイオニーと手分けして手伝うことになっていた。
もちろんちゃんと精一杯手伝っている。
ただハーマイオニーからの講評はあまりよくないようだ。
「ルーク! さっきまで真面目にハリーに教えてるからって安心してたのに。数分も経ってないのになぜ防衛術の教科書が談話室を羽ばたいているのかしら?」
こんな感じで数分に一回注意を受けている。
言い訳をすると同じ宿題を二回考えている暇があるならなにか違うことをしたいって思うだろ?
◆
次の日が土曜日、つまりハリーの初舞台前日の夕方。
ハリーはいつも以上に落ち着きが欠如していた。普段から落ち着いていないお前は人のこと言えないって? オレはぱっと見クールで超落ち着いて見えてると思うぞ、たぶん。
「スネイプから本をとり返してくる」とハリーが談話室のソファーから腰を上げた。
「経験者からのアドバイスだハリー。なるべく視界に入らないくらいの位置から『預かっていただいた荷物を受け取りに参りました。お手数をおかけして申し訳ございません。とても反省しております。以後気をつけます』って言うんだ」
「で、ルークは実際なんて言ったの?」とロン。
「あー、なんだっけな。『教授、トロールの髭何本か分けていただけませんか?』って言ったら『これを持って今すぐ去れ!』って羽ペンとインクとその他諸々が入ったトレーを押しつけてきたよ。ちなみにトロールの髭はもちろんダメだった。それにあまりにもゆっくり歩きすぎてついでに5点減点されたよ」
「参考になったよ。じゃ、行ってくる」
ハリーはニヤつきながら太った婦人の肖像画の裏に消えてった。
ハリーは思ったより早く、そして手ぶらで帰ってきた。走ってきたのか息が上がっている。
「僕やばいとこ見ちゃったよ。職員室に行ったらフィルチとスネイプがいて、足の包帯を変えながら喋ってたんだ。『三つの頭を同時に注意するなんてできるか?』ってね。やっぱりハロウィーンの日スネイプは4階に向かったんだ。スネイプはあの犬が守っている何かを狙ってるに違いないって」
「違う。そんなはずないわ。確かに意地悪だけど、ダンブルドアが守っているものを盗むような人じゃないわ」
「いーや、わかってないねハーマイオニー。スネイプならやりかねないよ。んー、だけどあの犬何を守ってるんだ?」
ロンの疑問への答えを持っている者は残念ながらここにはいなかったのでその質問は空中分解した。
ハリーはその後もなにか思うところでもあるのかずっと考えているようだった。
オレは早く自分の足か、スネイプ教授の足から包帯がとれることのみ願っていた。
◆
夜が明けて晴れ渡った寒い朝が来た。今日はハリーの初舞台だ。
11時すぎには競技場は観客でいっぱいになろうとしていた。
オレたちグリフィンドールの一年はお古のベッドシーツで横断幕をつくり、特等席つまり一番最上段でかかげることにした。横断幕には『ポッターを大統領に』と書いて、シンボルのライオンを描いた。オレが蛙にしようと提案したのだが残念ながら多数決1:8で敗れてしまった。
試合はフーチ審判のホイッスルと共にはじまった。クアッフルが競技場を縦断しているのを目で追う。
試合が盛り上がって来たところに森番のハグリッドがやってきた。
「ちと詰めてくれんか? 俺も小屋から見ておったんだがやっぱり観客の中で見るのは違うな。スニッチはまだ現れんか? え?」
「オレちょっと反対コートも見たいから一周回ってくるよ」
「ハリーの勇姿を見逃さんようにしろよルーク」
「わかってるって」
オレは通路を伝い一周散歩でもして時間を潰すことにした。
ハリーには悪いが箒は自分で乗る分には楽しいが、別に人のを見てもたいしてなんとも思わない。もちろん結果グリフィンドールが勝ったら馬鹿騒ぎには参加するつもりだ。
あとでビデオを見せてくれればいいのにと何度も思ったが、そうだこっちにはビデオ制度がなかった。訴えてもどうせ「ビデオってなんだよ?」って返ってくるだけだ。
半周ほど通路を歩いたところで、教授陣の席を見つけた。スプラウト教授にスネイプ教授そしてクィレル教授、そして他にも何人かが座っていた。ちなみにマクゴナガル教授は司会席の方でリー・ジョーダンと一緒に立っている。
クィレル教授とスネイプ教授の2人があまりにも真剣に瞬きもせずに一点を見ているので、オレは何を見ているのか気になり座席から競技場に目をずらした。
すると目線の先にはハリーがいた。歓声のせいで遠くにいるときには気づかなかったが、2人ともなにやらぶつぶつと呟いている。一つ言えるのは二人ともハリーの勇姿を見ながら小さな声でラップバトルをしているわけではなさそうだYO。チェケ。
席の裏側に潜り込み、二人の真後ろあたりにぴったりとくっついていると、突然歓声がざわめきと変わった。隙間から見るに、ハリーの様子が、いやハリーの箒の様子がおかしいようだ。徐々にコントロールを失っている。
オレは迷ったのちに、ポケットに試作品だと言われて双子から渡された『時限炎』があることを思い出した。
なんで持ってたかって? たまたまだ。別に人が多いところでロンとかディーンに試してみたいとかそんなこと思っていない。
周りを見渡しオレのことに気づいている人がいないかを確認する。よし、誰もいない。杖でダイヤルを30秒にセットしてクィレル教授とスネイプ教授の間に置きオレは何事もなかったかのようにもといた最後列に戻るよう足を進めた。
後ろからは何人かの悲鳴、そして前からは血相を変えたハーマイオニー。
「ルーク! 大変なの、スネイプ先生がハリーに呪いを!」
「落ち着いてハーマイオニー、オレもそれを見つけたからほら」
オレは悲鳴を上げている魔法使いの方を指差す。
「あなた、また何かをやらかしたのね」
「これは大いなる善のためだ。それにだれも火傷してないしいいだろ。悪いのは呪いをかけた方だ。ほら、ハリーが復活した。早く戻ろう」
「あなたの悪戯に感謝する日がくるとは思わなかったわ」
「それは嬉しい褒め言葉だ」
オレたちは小走りでもとの位置にもどった。
ちょうど席に二人が着いたときにハリーの箒は急発進した。そして急降下している。速すぎて双眼鏡じゃもちろん追いきれない。観客がきちんと目視できたのは地面でハリーが口を抑えている瞬間だった。四つん這いになって着地し、口を手で抑えている。今にも吐きそうだ。ハリーがえずいた瞬間金色の物体が口からコポッという音と共に飛び出して来た。わーお、スニッチだ。
ハリーはそれを高々と掲げ、試合終了のホイッスルが響き渡る。
「グリフィンドールが170対60で勝ちました!」
グリフィンドールの応援席はお祭り騒ぎだ。もちろんオレもお祭り騒ぎに参加している。
◆
オレは試合後ハグリッドに誘われて小屋に来ていた。ハリーとロンとハーマイオニーも一緒に。
「スネイプだったんだよ。ハーマイオニーも僕も見たんだ! ハリーの箒にぶつぶつ呪いをかけていた、目を離さずにね」とロン。
「そうそう、スネイプ教授とクィレル教授はハリーに釘付けだったよ。瞬きすらしてなかったね」
オレは情報を付け足す。
「呪いをかけるとき、瞬きもしちゃいけないんでしょ? やっぱそうだよ!」
「そうは言うがロンにルーク、なんでスネイプ教授がそんなことをする必要があるんだ?」
「僕、スネイプがハロウィーンの日三頭犬に噛まれたの知ってるんだ。何か知らないけど、あの犬が守っているものをスネイプが盗ろうとしたんじゃないかって思うんだ」
ハリーの言葉にハグリッドはティーポットを落とした。
「なんでフラッフィーをしってるんだ?」
「フラッフィー?」
「そう、あいつの名前だ。去年パブでギリシャ人のやつから買ったんだ。俺がダンブルドアに貸した。守るため──」
そのギリシャ人、地獄の番犬持ってるとかハデスの息子じゃないよな? いや、ハデスの息子なら売らないか。
「何を?」
ハリーが身を乗り出す。
ハリーはハグリッドがフラッフィーを買ったギリシャ人の素性より守っているものの方が気になるらしい。
「もう、これ以上聞かんでくれ。重大秘密なんだ」
「だけどスネイプは盗もうとしたんだよ? それに僕を箒から落として殺そうともした」
「スネイプも教師、つまり守っている側だ。箒の件は全くわからんが、スネイプはそんなことせん。いいか4人ともよく聞け、関係ないことに首を突っ込むな。あの犬のことも、守っているものもな。あれはダンブルドアがニコラス・フラメルの……」
「あっ! ニコラス・フラメルっていう人が関わっているんだね!」
ハグリッドはそれっきり何も話さなくなってしまったのでお茶会はお開きとなった。
ニコラス・フラメル……なんか聞いたことあるんだよな。ニコチンフリー?
PJOを知っていらっしゃる方へ、この主人公の名前はルークですがルーク・キャステランとは関係ありませんのでよろしくお願いします。