オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
もうすぐクリスマス。
外は雪が降り、湖はガチガチに凍っていた。今の時期飛んでくるふくろうはだいたい瀕死状態なのだが、オレが今日手紙を受け取ったふくろうはピンピンしていた。
それもそのはず、送り主がホグワーツにいるせいだ。
『クリスマス休暇はホグワーツですごすように。ハリーも残るようじゃから仲良くしなさい』
たった二行の手紙だった。彼はサンタクロースだし、この時期忙しいのだろう仕方がない。
むしろビリーが忙しいのが理由かもと思ったがそんなことを尋ねる気はなかった。だいたいオレの質問には謎かポエムか文脈無視で返ってくるから。
この間なんて『クリスマスプレゼントオレから欲しいものがありますか?』って送ったら『愛 p.s.大概がサイン入りの本を送ってくる』と返ってきた。
欲しいもの聞いて愛って答えるのはバカップルだけだろ。爺が言うことではない。それにオレは書籍を出版なんてしてないからサイン本なんてまったく参考にならなかった。つまりオレはこんな手紙を出したせいでクリスマスプレゼントを送るという事実だけが確定してしまったのだ。困った。
◆
休暇の1日前、オレたちは図書館でニコラス・フラメルについて調べていた。ハーマイオニーが調べる予定の内容と表題のリストを取り出し、ロンがかたっぱしから本を引き抜いては戻していた。オレはハリーが「閲覧禁止」の書棚に近づくのを見て、一緒についていった。ここの本は残念ながら教授のサイン入り特別許可証がないと入れないのだ。
「君たち何を探しているの?」司書のマダム・ピンスがどこからともなく現れた。
「あー、オレアニメーガスのレポートを書いてて一般書籍だとわからないところがあったのでこっちにあるかななんて思ってチラッと見に来たんです」
「許可証は?」
「残念ながらまだ」
「アニメーガスなら担当はマクゴナガル教授ですね。あなたの名前は名乗らなくてもわかっています。ルーク・ブラックですね。私から教授に伝えておきましょう。もしレポートが本当ならあなたは教授からサインがもらえますよ。さあ、出ていきなさい」
マダム・ピンスはオレのことをちくる気満々らしい。下手なことを言わなきゃよかった。
オレとハリーは押し出されるように禁書エリアから遠ざけられた。もういっそのことマダム・ピンスに「ニコラス・フラメルの蔵書を探してるんですが」と言ってしまいたかったが、それがスネイプ教授の耳に入るかもと考え実行するには至らなかった。
結局今日も4人で全滅だった。
「私が家に帰っている間もあなたたちは続けて探すでしょ? 見つけたらふくろうで知らせてね」
「君の方は家に帰ってフラメルについて聞いてみて。パパやママなら聞いても安全だろう?」
「ええ、安全よ。二人とも歯医者だから」
◆
クリスマス休暇になると楽しいことがいっぱいだった。
寝室はいつも通り3人揃っているが、暖炉は使い放題。そして談話室の一等席は座り放題だ。オレたちは暖炉の前でマシュマロやらパン、ソーセージなどいろいろ炙って食べながら、チェスをしたりドラコの撃退方法を考えた。オレが言った白兎に変える案と逆さ吊りにする案は超受けた。ただどちらも今のオレたちじゃ技術的に不可能で諦めることになったけど。
クリスマス当日、目を覚ますと真っ先にベッドの足元に置かれたプレゼントの山が目に入った。
「メリークリスマス、ルーク、ロン」とハリーが勢いよくガウンを着ながら挨拶してきた。
「メリークリスマス」
「ねぇ、みて! プレゼントがあるんだ」
ハリーは朝からテンションあげあげだ。
「他に何があるって言うの? 大根とかあってもしょうがないだろ?」
ロンは一番高く積まれたロン宛のプレゼントを開け始めた。ちなみにオレのプレゼントの量はロン寄りだ。
山の構成要素は、ハグリッド、なぜかウィーズリー家、ハーマイオニー、ロン、ハリー、何人かの女子、そしてサンタクロースだった。
「ロン、君のママにありがとうって言っておいて。オレのセーター真っ黒でイケてるよ」
「まじかよ、ハリーだけじゃなくて君にもその手編みセーター送ったのかママ」
ハグリッドからはどっから仕入れてくれたのかはわからないがドクロメンガタスズメの繭をもらったし、友人たちからはお菓子をたくさんもらった。何人かの女の子は手紙と小物のセットが多かった。お返しを考えるのが面倒だな。
一番オレの中で期待値が高かったサンタクロースの送ってきた箱には二つのものが入っていた。
一つは中古のニューヨークヤンキースオリジナルキャップで、もう一つが『オペラ愛好家によるオペラの魅力を語る本』という本だった。どちらのプレゼントも何を思って選んだのかさっぱりだ。オレはアメリカ野球のファンでもなければ、オペラ愛好家でもない。最後に箱の底を覗くとレターカードが挟まっていた。
『キャップは君のお母さんの遺品です。大事にするように。本は君がそろそろ芸術に関心を持ち始める頃かと思って選んだ。メリークリスマス』
オーケー、母さんが野球ファンってことはよくわかった。とりあえずアルバス、オレは全くオペラにオの字も興味抱いてないってことだけは断言するよ。
このままスーツケースに仕舞い込むのももったいないかと思い、オレはキャップをかぶってロンママのセーターを着てハリーたちに見せびらかすことにした。それくらいしかここでは使い道がなさそうだから。キャップにローブって絶対変だろ。
「見て、ロンとハリー。このキャップとセーターいけてるだろ?」
「ルーク、君どこにいるの?」
「は? 何言ってんだよ目の前にいるじゃん。ほら」
オレはロンの肩をポンと叩く。
「うわっ、君体がない自覚ある??」
「そんなわけないだろってうわっ。オレ体ないじゃん」
下を見るとオレの体は消えていた。
「何したのルーク?」
「あー、この帽子か?」
オレがキャップを脱ぐと体がちゃんと見えるようになった。
「すごいや。マントと違って聞いたことないけど、その帽子透明の魔法がかかってる悪戯グッズだ。ハリーは透明マントもらえるし、ルークは透明キャップ? もらえるしいいなぁ」とロン。
「ハリー、透明マントって何?」
「これだよ。誰から送られたかは書いてないけど、ほら。覆ったら透明になる」
「それでかいから2人いや、3人はいるよな。オレはこのキャップ持ってるから夜の校内散歩が気軽にできるってことだ」
「それナイスアイデアだ」
オレはこの母親の遺品の野球帽の方に頭の全キャパ持ってかれててアルバスからもらったオペラの本のことは頭からすっぽ抜けていた。
◆
クリスマスの翌日、ハリーが夜中に閲覧禁止の本棚に行って、フィルチとスネイプに見つからないよう逃げた先にあった鏡に両親が映っていたという話を伝えられた。オレもロンもそんな楽しそうな旅に連れてってくれなかったハリーを軽く責めた。だってそうだろ。楽しいことはみんなでお裾分けすべきだ。
「今晩一緒にくればいいよ。僕、また行くから。君たちにも鏡を見せたいんだ」
「君のパパとママに会いたいよ」ロンが意気込んでいる。
「僕はロンの家族に会いたい。ウィーズリー家の人たちに会いたいよ」とハリー。
「今度の夏休みに家に来ればいい。もちろんルークも。もしかしたらその鏡は亡くなった人を見せるかもしれないな」
「ハリー…なんか食べないの? まさか昨日のご馳走で舌が肥えて普段の食事が食えないとか言わないよな?」
「大丈夫かいハリー? なんか様子がおかしいよ」
オレもロンの意見に激しく同意だ。ハリーがなんだかおかしい。
◆
その日の夜、オレたちは部屋を抜け出そうとしたところで一つ問題が発覚した。
「あー問題発生だ。みんな透明になるのはいいんだけど、これってオレはどうやってハリーを見つければいいんだ? お互いにみえなくなるぞ?」
「たしかに、どうしよう」とロン。
「なんとかなるって、早く行こうよ」とハリー。
いやハリーなんとかってなんだよ。
「わかった、僕が紐の片っぽを持ってマントの外に垂らすから、ルークはそれを目印に歩いてけばいいよ。さすがに誰も毛糸の端っこが床を動いてるなんて見破れないだろうし」
ロンの意見が採用された。まぁハリーはなんでもいいから早くしてくれみたいな感じだったから他の案が思いつかなかったってのもある。
オレはキャップを被り姿を消した。暗闇の中ロンの尻尾についていくのは至難の技だったが、透明マントの方は二人で入っている分歩くのが遅いのがせめてもの救いだった。
「ここだ……ここだった……そう」
ハリーが立ち止まったのは鎧の近くの部屋だった。
ハリーは部屋に入るなりマントをかなぐり捨てて鏡に向かって走った。
「ほら! みんなを見てよ……たくさんいるよ。たぶん親戚だ」とハリー。
「僕、君しか見えないよ」
オレとロンの総意は一致していた。横から眺める限りただの鏡だ。
ハリーが立ち位置をロンに譲りロンが鏡を覗き込むと、ハリーと同じく奇妙なことを言い始めた。
「僕を見て! 僕一人だけど……もっと年上の僕だ。うわー、僕主席だ! そして最優秀寮杯と優勝カップを持っている……僕、キャプテンもやってるんだ。この鏡は未来をみせてくれるのかな?」
「そんなはずないよ。僕の家族はみんな死んじゃったから。場所もう一回変わって」
「いやだ、昨日君はいっぱい見たんだろ??」
とうとうロンとハリーが喧嘩し始めた。なんで鏡の前で喧嘩してんだコメディードラマの女子かよ。「ちょっとどいてくれる? 今日はデートだからとっておきのメイクをしなくちゃなの」「あんたの顔メイクしても大して変わらないわ、そんなことより私はドライヤーが使いたいの」「そんなことって何よ?! 言ってくれるじゃない」って感じでオレには副音声が聞こえる。
「おい、そんなに声上げてるとフィルチが……あー、二人ともはやくマントをかぶれ。ミセスノリスだ」
オレの声に二人は静止する。その後慌てて先ほどかなぐり捨てたマントを二人は被った。
「寮に戻ろう」
オレはもうここまでの行き方を覚えたからお互い透明でも問題なく帰ってくることができた。強いて言うなら太った婦人に超疑われたことくらいだった。
結局あの鏡はなんだったんだ? また明日にでも行ってみるか。