オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
「長旅だから、ネズミをたくさん入れといたし、ブランデーも入れといた」
ハグリッドの声がくぐもっていた。
「ノーバート、バイバイだよ」
ハリーとハーマイオニーが透明マントを箱にかぶせ、2人も一緒にその下に隠れた。2人は時折足元が見え隠れしながらも、階段を上り、廊下をわたり、また階段をのぼった。
オレは一生懸命足跡がのこらないよう床をツルピカにしたり、逆に埃をばらまいたりしながら塔に続く階段までたどりついた。何やってるんだって自分でも思うが一つ言えるのはばらまいた埃のせいでいまにもくしゃみがでそうだ。
ただ数秒後にくしゃみなんかしている場合じゃなくなった。
「罰則です!」
マクゴナガル教授が声を張り上げた。なんでバレた?! とオレは自分自身を上から下まで見たがもちろん透明だ。ただ、すぐに理由はわかった。
そもそもそれはオレ達に向けた声じゃなかったのだ。
「スリザリンから20点減点! こんな真夜中をうろつくなんて、なんてことを……」
「先生! 誤解です! ポッターとブラックが! ドラゴンを連れて来るんです!」
「なんというくだらないことを! どうしてそんな嘘をつくんです!」
まずい、このままマクゴナガル教授があそこにいるとチャーリーの友人が来てしまう。約束の時刻まであと数分。
オレは野球帽を脱いで透明マントに潜り込み、中で息を潜めているハーマイオニーに帽子をかぶせた。
「ちょっとルークどうするの? 何をするつもり?」
「預かっててハーマイオニー」
ハーマイオニーとハリーの視線を押し切り、オレはマクゴナガル教授の方にむかった。
「なんということですか──っブラック! あなたまでですか!」
「ほら先生! 僕が言った通りですブラックが来ました」
「こんばんはマクゴナガル教授。あー、あの、ちょっとした悪戯だったんです。ドラゴンがいるって言ったらドラコは騙されるかなって、でも本当におふざけのつもりだったんです。うん、ドラコも悪かったよごめん」
「はぁ、ミスターブラック。あやまればいいということではありません。夜間外出は規則で禁止されていますから。ミスターマルフォイをスネイプ先生のところに連れて行ったら、あなたの処遇をきめますよ。ついてきなさい」
「先生、違います! ブラックが嘘をついているんです!」
「ええそうですね、さきほど彼はそれを認めましたから。行きますよ」
これで、塔からマクゴナガル教授を離すことに成功した。あとは頑張れよハリー、ハーマイオニー。オレの犠牲をくれぐれも無駄にしないでくれ。
ドラコはオレをすごくにらみつけてきた。でもオレはなんとも思ってない。試合に負けて勝負に勝ったからな。
オレは地下牢経路で二階のマクゴナガル教授の研究室につれてかれた。
「で、何をやったのかもう一度説明してもらいますよブラック」
「あー、その。ドラコが親なしとか、休暇に帰れないやつはかわいそうだとか、オレとハリーを侮辱してきたのに耐えきれなくなったんです。オレ達は魔法使いの家で育ったわけじゃないけど、そんなに言われる筋合いはないって。だから嘘をついて度胸試しをもちかけたんです。授業以外に入っちゃダメな場所にドラコは入るかって。ついでにフィルチに捕まって二度とオレ達をからかったり、首突っ込んだりしないようにって思って。でも、教授に20点減点されてるの聞いて……オレ間違ってたなって。スリザリンだけ減点されるのもおかしいかなって……思い直したので、階段の影からでてきました。それだけです」
「はぁまったく……たしかにあなた達の生まれや育ちをとやかくいう権利はマルフォイにも誰にもありません。あなた達がそれによって苦しめられているのであれば立ち向かうことも時には大切です。ですが、こうして他人を貶めることで対抗するのは故人への冒涜となるでしょう。やるなら正々堂々と言い返しなさい。わかりましたか?」
「……はい、教授」
なんだかよくわからないがオレの言い訳がマクゴナガル教授のハートに超響いたらしい。慈愛の目を向けられている気がする。
「マクゴナガル教授! 生徒がベッドを抜け出していたのをとっ捕まえました。ハリー・ポッターですよ。塔の階段にいました。あとはしかとよろしくお願いします」
おいハリー、なんでお前までフィルチに捕まってんだよ。ハーマイオニーは無事逃げられたっぽいけど。透明マントはどうしたよ。
「ハリー、度胸試しのこと全部話しちゃったんだ。悪い」
オレは先手を打った。下手なことを話されたら今までがぱーだ。
「あー、うん。僕も共犯だから、仕方ないよ」
ハリーはよくわからないなりにそう返してくれた。ナイスだ。
「ポッターもいたんですね。ポッターあなたにも言っておきます。生まれや生活環境について揶揄われたとしてもこのような姑息な方法で立ち向かうのは間違っています。グリフィンドールなら、正々堂々と言い返しなさい。いいですね?」
「はい、先生。わかりました。肝に銘じときます」
ハリーも状況を理解したらしい、しんみりとした顔をしていた。主演男優賞をあげよう。
「あなた達は2人で20点減点します。罰則は後日伝えますから……ブラック、ポッター、いつでも相談にのりますからくれぐれもこのようなことを繰り返さないように。寮まで送っていきます」
もう少しでマイナス60点されるところだったのを20点までに抑えられた、しかも僅差のスリザリンとは同じ点だけ減ったんだ。よくやったオレ。
オレは寮の肖像画をくぐる前にマクゴナガル教授になぜか頭をなでられた。なんでなでられたのかは謎だ。
◆
談話室に入り、マクゴナガル教授がついてきていないことを確認するとハリーとオレは大きく息を吐いた。するとひょっこりハーマイオニーが現れた。ずっとオレの帽子をかぶって談話室で待っていたらしい。
「二人とも本当にごめんなさい。どうなったの? なにかあった?」
「おちつけハーマイオニー、オレ達60点減点されるところを20点減点で済ませたんだ。悪くない結果だろ? それより、ハリー。なんでお前までフィルチに捕まったんだ?」
「僕たちノーバートを渡すまでは完璧だったんだ。ハーマイオニーは帽子をかぶって、僕はマントをかぶって階段をおりてたんだけど……マントにつまずいてこけたところをたまたまフィルチが通ったんだ。透明マントの存在はバレなかったけど、僕は丸見えで連行された」
「そう、私も帽子をとろうか迷ったんだけどそれで帽子の存在がバレるとまずいと思って寮に先に帰ったの。でもどうやって減点がそんなに少なく……はないけど、抑えられたの?」
「ルークがすごかったんだ。マクゴナガル先生ったらルークと僕に同情しちゃってさ」
「ドラコに色々親のことを言われて腹が立ったって、それで嵌めようとしたんだけど悪いことをしたって気づいたって言ったんだ。たぶんオレ達の両親、マクゴナガル教授の教え子なんじゃないかな? わかんないけど」
「あなたって意外と演技派なのねルーク」
「心外だな、オレは品行方正な男児だよ」
「品行方正な人は規則を破らないし、悪戯をしないわ。罰則はどうなったの?」
「わかんない、後日伝えるって……どうしよう学校内のトロフィー磨きとかだったら最悪だ」
「オレは得意だぜ。ここに来る前はそんなんで小遣いかせいでたから」
「まぁ僕もダーズリー家で洗い物ノックをよくやるから慣れてないわけじゃないよ」
そう言って3人で笑い合った。今日はとってもスリリングな1日だったな。