オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
「オレたちオープンダッシュに失敗したみたいだな」
4階のドアはすでに蝶番が外れ、床に落ちていた。
「ぐずぐずしてられない。追いかけなきゃ、行こう」
ハリーは勇敢にも躊躇なくドアを押し開けた。
扉は軋みながら開き、低い唸り声が聞こえた。三つの鼻が、姿の見えない四人のいる方向をさかんに嗅ぎ回っている。オレは鼻息で帽子が吹き飛ばされないようにするために片手の自由を捧げた。
「犬の足元にあるのは何かしら?」
「ハープみたいだ。スネイプのに違いない、僕たちもはじめよう。ハグリッドからもらった横笛があるんだ、吹けるかは試したことないけど」
そう言ってハリーは横笛を吹き始めた。ただそれは案の定メロディーにもなっていないお粗末なものでフラッフィーはレム睡眠一歩手前って感じだ。
ちゃんとした音楽でしか寝ないとか贅沢なやつだ。
「ハリー、オレ、ロックかヨーデルか能楽かクラシックなら魔法でかけれるけど、どう?」
「ルーク、そういうのは先に言ってよ。もちろんクラシックでよろしく。間違ってもヨーデルとかやめてよ」
わお、オレがそのセリフを言われるとは思わなかった。魔法界の忌まわしき習慣、『後出し』がオレにも染み付いてきてしまったのかもしれない。気をつけなきゃな。
オレはスネイプ教授所属のハープをヴァイオリンに変え、勝手に演奏させた。いまクライスラー『愛の悲しみ』を演奏している。オレのお気に入りだ。フラッフィーは眠りこけ、オレ達はスムーズに隠し扉まで到達できた。
開けてみると、中に梯子も何もなく真っ暗だった。
「落ちるしかないみたい。僕から行くよ」
「ハリー、先に行きたいのかい? 本当に?」
「もし僕の身に何かあったらついてくるなよ。まっすぐふくろう小屋に行ってダンブルドア宛にヘドウィグを送ってくれ。いいかい?」
「オーケー」
「じゃ、あとで会おう。できればね……」
そう言ってハリーは暗闇の中に落ちていった。
幸運なことに、数秒後ハリーの声が微かにきこえた。よほど地下深くに到達したようだ。
「オッケーだよ!下は柔らかい何かで覆われてる!」
「じゃあ次は僕だ」
ロンはその言葉を聞いて勢いよく飛び降りて行った。さすがグリフィンドール、リスクヘッジが下手な寮だ。言い換えると勇敢っていう。
「どうするハーマイオニー、よかったらオレに捕まって一緒に降りる?」
オレはちょっとだけ飛ぶことを躊躇しているハーマイオニーに紳士っぷりを発動した。
「……いいの?」
「いいよ、オレの首に手を回して?」
オレはハーマイオニーを抱えてそのまま扉に飛び込んだ。急な浮遊感にハーマイオニーは腕の力が強まり、ついでにオレの耳元で小さな悲鳴をあげている。鼓膜が破れそうだ。
そろそろ落ちきると思ったところでオレは自分に妨害魔法をかけた。
案の定オレの予定落下ポイントにはロンとハリーがまだ座っておしゃべりをしていた。危うく下敷きにするところだった。
ハリーやロンとは2、3m離れたところに着地しハーマイオニーを床に下ろした。
「なんだこれ、柔らかいな」とロン。
「わかんないけど何かの植物らしい。落ちるショックを和らげるためにあるみたいだ。さあ、ルークとハーマイオニー、おいでよ!! 次の道を探さなくちゃ」
ハリーに近づこうとオレは足を動かした時何かにそれを遮られた。
「あー、一つ質問だ。ハーマイオニー、君動ける?」
オレの問いかけにハーマイオニーが一瞬黙った。そのあとこうとも言った。
「……大変っ、どうしましょう、これって『悪魔の罠』だわ!!」
「なんだよそれっ、てかなんだこれっ、おい、絡まってうごけない! やめろっ」
ロンは絡みついてくるつたに暴言を吐きながら必死に抵抗しているようだ。
「どうすればいいのかどっちか何か知らないの?!!」とハリー。
オレはなけなしの知識をこの場で披露する。
「あー、小さいときはひらひら花と見分けがつかないんだ。そのせいで100年以上前から何人も事故死してい──」
「そういうんじゃなくて!! この場をなんとかできることだよ!!」
これはデジャブだ。オレの立場が逆だった気がするが。たしかあの古びた杖屋での出来事だ。
「えーっと、スプラウト先生は暗闇と湿気を好むって……おっしゃってたから……」
「じゃあ火をつけろハーマイオニー!!」
「無理よ!! 薪がないもの!」
「大丈夫っ、オレたちはっ魔法使いだハーマイオニー。っインセンディオ!!」
オレはなんとか腕に絡みつく植物に抵抗し杖を掲げ火炎魔法を放つ。すると植物の力はだんだん弱くなり、スルッと体が抜け下に落ちた。
「ふう、危なかった。君たちが真面目に勉強してくれててよかったよ。無駄な知識もあったけどさ」
「そう思ったなら今度から予習復習をしっかりやろうなロン。オレより知識豊富になってくれればその問題は解決だ」
「そういう知識系はメンバーに2人で十分だ、な、ハリー」
「早く行こう。こっちだ」
ロンはハリーの同意を得られなかったようだ。ただただ無駄話をしている暇はないってことだと思うが。
◆
暗い通路を通り4人は進んでいく。進んだ先には扉があり、中で何かの音が聞こえた。
「なんだろう……羽みたいな音が聞こえる。とりあえず入ってみよう」
オレたちが中に入るとたくさんの鍵の形をした何かが空を飛び回っていた。いや、羽のついた鍵なのかもしれない。
「大変だ! ドアが閉まっちゃった! 僕たちもう戻れないよ」
後ろを振り向くとばっちり扉がしまっていた。アロホモラも通じない。しかも鉄製だから破壊も難しい。だれか安全なアセチレンガスと酸素缶とかもってたりしないよね?
「どうすればいい?」
「そうだな、おっ、ここを作った教授は華麗な箒捌きを御所望みたいだハリー」
「ルークどういうこと? 箒に乗って何をすればいいの?」
「ドアに合う羽付き鍵を捕まえてさしこめばクリアじゃないか? どれが本物かはわからないけどっ……こいつじゃなさそうだ」
オレは顔面目掛けて飛んできたハート型の鍵を手で掴みとりながらハリーに説明した。さっきから可愛らしい鍵しかオレのほうに寄ってこないのはなんでだ? 今度はピンク色だ。
「あれは!? 一つだけ羽が変よ! きっとスネイプ先生が掴んだ時に折れたんだわ!」
「あれか、わかった! スニッチに比べたらこんなの余裕だよ!」
ハリーは見つけた羽に向かって急上昇していく。オレとハーマイオニーは周りの邪魔そうな鍵たちに妨害呪文をかけたり金縛りの呪文をかけたりしてサポートした。ちなみに爆発で一気に吹き飛ばそうとしたら、一緒にハリーも吹き飛ばしかけたのでオレはこの冒険でコンフリンゴ使用禁止になったってのはここだけの話。
「つ、つかまえたっ!!」
「ハリーすごいわ!」
「逃さないように気を付けろよ。最悪羽はもぎとっちまえ」
ハリーは捕まえても従順にならない鍵を無理やりドアに押し込んだ。扉はカチャリと開き、その瞬間鍵はまた飛び去って行った。
やっぱりもぎ取っとけばよかった。
◆
また新たな部屋に突入した。
部屋は足を踏み入れた瞬間ライトアップされ目の前にはたくさんの大きな石像とチェックの床が現れた。
「これってチェスみたいだね」とハリー。
「みたいじゃないよ。これはチェスだ。向こうに行くにはこのチェスで勝たなくっちゃいけないんだと思う」
とロンが言うと石像が頷いた。石像が動くくらいもうオレは動じない。日常茶飯事だ。
「どうやって試合をするの?」
「たぶん、僕たちがチェスのコマにならなくちゃいけないんだ」
「じゃあロン、指示出しを頼むよ。オレたちの中では君が一番魔法チェスが強い」
「ちょっと考えさせて……ハリーはそこのビショップに、ハーマイオニーはその隣のルークに」
「ルークに何をすればいいの?」
「あー、駒のことだよハーマイオニー」
「あっ、そ、そうよね」
「オレは反対のルークにでも?」
「いや、ルークはクイーンの方にしよう。そして僕はナイトだ」
こうして役割がきまり、それぞれ持ち場についた。
豆知識だがチェスのルークはRookオレはLuke。覚えておいてくれ。