オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、やり手営業マンになる

「やあ。君は?」

 

 オレがロンの魔法薬学の課題を手伝っているとドアが少し開き赤毛の女の子がこっちを覗いていた。

 

オレが声をかけると肩をビクッと揺らした後、走って階段を降りてしまったようだ。

 

 彼女の後ろ姿を見てなんだか孤児院のころのチビたちとの生活を思いだした。と言っても大概の子が物心つくかつかないかくらいでもう入所してるから人見知りなんて文化はなかったけど。

 

「あいつはジニー、末っ子で妹。ジニーも今年からホグワーツなんだ」

「つまり一個下ってことか。人見知りかなにか?」

「あー、どうだろ。そうかもしれない。普段はもっと生意気でおしゃべりなんだ。でもそもそも君を最初に見て人見知りしない女子なんていないさ。中身を知ったらすぐ緊張はほぐれるけどね。あー、ほんとその顔分けてほしいよ。そうそう僕の兄貴のビルも君とおんなじでハンサムなんだ、ちょっと雰囲気似てるかも──」

 

 ロンからビルのモテエピソードやらジニーの男の子顔負けなエピソードまでいろんな話を聞いていると、下からオレたちを呼ぶ声が聞こえて来た。

 

「パパが帰って来たんだ! やっとハリーに会える!」

 

 オレたちが勢いよく階段を駆け降りたせいで階段がミシミシ嫌な音を鳴らしていた。

 

「あの子たちの息子か、なるほどね。モリーわかっているよ、流石に私もそんな無神経なやつじゃあない。それにダンブルドアからも話には聞いている。うんうん、そんなに心配しないでドンと任せなさい」

 

 下から夫人とウィーズリー氏がなにやら話している声が聞こえてきた。この家も女性が強いらしい。

 

 孤児院のときも女性は強かった。というよりシスターが強かった。

 

「君がルーク君かな? 私はアーサー・ウィーズリーよろしく」

「ルークです。お世話になります」

 

 オレはウィーズリー氏と握手を交わした。人の良さそうな感じってのが彼の第一印象だ。さすが大家族の大黒柱。

 

「うちは大世帯だから一人や二人増えただけじゃなんにも変わらない、むしろ楽しくなる。歓迎するよ。で、少し聞きたいんだが、君はマグルのことに詳しいって噂だ。そこのところどうなのかな?」

「そこそこ詳しいと思います。魔法界について知ったのが数年前ですから」

「じゃあ、テレポンとかは知っているのか?」

 

 ウィーズリー氏の目は終始輝きっぱなしだ。どっちが青少年かわからなくなる。

 

 言っておくがもちろんオレの方だからな?

 

「あー、テレフォンのことですね。作り方は詳しく知りませんが、使い方なら知っていますよ」

「それはいいね。ぜひ君に教えてもらいたいことがたくさんある。一緒に私のガレージに──」

「アーサー! そんなことは後でもできるでしょう。まずはハリーを迎えに行くのが優先です。ほら、ロンにルーク、準備ができたなら車のところに行きますよ」

 

 ウィーズリー氏は残念そうな顔をしながら、車庫に案内してくれた。そこにはさっき言っていたテレポンもひっくり返った状態で置いてあったし、他にもたくさんの電化製品の化石が積まれていた。自動車整備を手伝っていた時を思い出すな。ただここは別にオイルとかの匂いとかで充満しているわけではないのが幸いだ。

 

 オレが案内されたのは少々錆びついたフォード・アングリアだった。4人で乗るにはちょっと狭くないか? 

 

 そう、この一年でオレは身長が結構伸びたんだ。たぶん10cmは伸びたんじゃないかな。160cmはとっくに超えているだろう。ロンも同様に背が高くなっている。ちょっとこの4人で乗るには手狭に感じる。

 

「さあ、入って。早く行かないと帰る頃には日が暮れてしまう。まあ帰りは行きより早く帰れると思うが──」

 

 ん? ラッシュと反対に進むからってことか? 

 

 とりあえずオレは3時間ペシャンコになる覚悟をしてドアを開いた。

 

 すると、目の前には思いもよらない光景が広がっていた。

 

「けっこう広いんですね」

「うちは大家族ですから、大きめのものでないと入りませんからね。マグルの技術は本当に魔法みたいなのね、アーサー。そうそう、私たちもまだ乗り慣れていないのよ。つい先週彼が引き受けてきたものですから。はい、早く入っちゃいなさい」

 

 中は10人乗ってもまだ隙間があるくらいの大きさになっていた。まるでキャンピングカーだ。

 

 そして夫人、マグルの技術ではなくほぼ確でウィーズリー氏の魔法だこれ。

 

 ウィーズリー氏が運転席に、ウィーズリー夫人が助手席に。オレとロンが後方座席に座ったところでドライブがスタートした。

 

「君は今どこに住んでいるんだい?」

 

 ウィーズリー氏は運転をしながらオレに話を振って来た。

 

「アルバス、いや、ダンブルドアに養子として引き取ってもらってからはずっと屋敷ですごしています。ただ、庭から外に出たことがないのでどこにあるかはなんとも……」

「そうかそうか、それは安心だ。ちなみに勉強の方もダンブルドアが教えてくれたのかい?」

「いえ、アルバスは忙しいので家で本を読んだりして過ごしていますよ」

 

 他愛のない現状報告をしたら哀れみの目で3人に見られて、うちでは人は余るようにいるから存分に遊んでいきなさいなんて言われてしまった。アルバスが魔法界一般の子育てをしていないことがここではっきりした。だからってこれ以上の待遇をアルバスに求めはしないけど。

 

 強いて言うなら食後のデザートがないと夜から朝までずっとテンションが下がるのをやめてほしい。そろそろ高血圧だかなんだかに引っかかりそうって屋敷しもべたちが噂してたのオレ聞いたからな。

 

 

「よしついた。プリベット通り4番地だったね?」

「ここですね。このダーズリー家ってのがハリーの家です」

「さぁ、ベルを鳴らそうか。マグルの家でもベルは鳴らすんだったよねルーク?」

「そうですけど、ちょっと待ってください。ハリーの家は魔法使いに慣れていないので威圧感を与えないためにも少人数で訪ねるべきだと思います。ほら夫人の山高帽とか特にザ魔女ですみたいな感じですし」

「あらこの帽子もマグルはしないのね……そうね。ロンはわたしと車で待ってましょう。ほら、行くわよ」

「えー、わかったよママ。ルーク、ハリーを頼んだよ!」

「任せろ」

 

 こうしてオレとウィーズリー氏はドアの前に立った。

 

「今回ダーズリー氏に伝えるのは、夏休み期間中ハリーを責任を持って預かること。始業式の日にホグワーツに送ること。この2点です。話はオレがします。こういうのは得意なんで。ウィーズリー氏は最後にお預かりしますとおっしゃっていただけると助かります」

「わかった、なんだかわからないが頼んだよ。それがマグル界のルールなんだね」

 

 別にマグル界のルールでもなんでもなければ、今からやることはちょっと変なことだがそんなことを説明する必要はない。

 

 オレがベルを鳴らすと、女の人の声が帰って来た。たぶんハリーが言ってたペチュニアおばさんだろう。ウィーズリー氏がインターホンのボタンをジロジロ見ようとするのを止めつつオレは返事をした。

 

「ハリー君とクラスメイトのルーク・ブラックと保護者のアーサー・ウィーズリーです。ダーズリー氏と本日15時30分のお約束で参りました」

「……少々お待ちください」

 

 ウィーズリー氏は驚いた顔をしてこちらを向いていた。

 

「私たちはいつ約束なんてしたかな?」

「来る前に少し。アポ無し訪問はこう言う時はご法度ですので」

 

 玄関がガチャリと開き、ハリーとは真反対の体型の男性が現れた。

 

「お初にお目にかかります。私、今朝お電話させていただいたルーク・ブラックと申します。いつもハリー君にはお世話になっております。ほんの気持ちばかりでございますが、お菓子の詰め合わせです。ご子息とご一緒にお召し上がりください。本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます」

「ふむ、これはまともなお菓子かね?」

「はい。王室御用達の洋菓子店のものです」

「ほう、この店はうまいところじゃないか。ルーカ君、君よくわかっているなぁ。用件はあの小僧をそっちで預かってくれるってことだったな?」

 

 オレはルークだルーカじゃない。という言葉を喉の奥に押し込んで会話を続ける。

 

「はい。夏休みの期間8/31まではウィーズリー家で、そこから直接学校直通の列車の駅に行く予定です。そのため、学校の荷物を今日すべてこちらでお預かりすることになります」

「小僧には荷物を纏めるように言ってあるから問題ない」

「ありがとうございます」

 

 オレはウィーズリー家に車があるのもロンの話を聞いて知っていたし、ウィーズリー氏が今日の昼すぎに帰ってくることも予想がついていた。あとは昼過ぎに車にのったと仮定してハリーの家にたどりつく時間を計算し、事前に朝からテレフォンをかけていた。ロンにハリーの状況を話し、お昼を食べたら車で迎えに行かないとという状況を作り出させてもらった。

 

 オレってこういう作戦の実行力はなかなかだと自負している。

 

 もちろんだけど失敗した時のプランBからTくらいまで考えてあった。

 

 ついでに手土産はアルバスが三日前のフランス出張の時にたまたまねだってオレ用に買って来てもらったものを流用した。本当はオレが独り占めする予定だったんだが背に腹はなんとやらってやつだ。

 

 オレはできるだけ丁寧に、お金持ちとの食事会を思い出しながら話した。もちろんシャンデリアを落とした時ではない食事会のことだ。

 

 ウィーズリー氏には申し訳ないがここはスピード勝負。気が変わる前にハリーを連れ出さなければならない。

 

「ペチュニア! 小僧を連れて来い。荷物も持って来させろ」

 

 ダードリー氏はそう奥様に命令し、奥様は階段を駆け上がっていった。

 

「ところで、君。うちのドリルを使っているって言うのは本当かい?」

「ホワイト子供の家ではボランティアの日曜大工で御社の穴あけドリルを愛用しております。形状もシンプルかつ軽く、一定年齢を過ぎればだれでも安全に操作でき、値段もお手頃で、他社に比べ性能が群を抜いていると思います」

「そうか、そうか。ホワイト子供の家か。あそこは著名人も多く投資しておったな。いいことを聞いた。今度うちから何口か寄付しよう」

「ありがとうございます」

 

 オレはちゃっかり元オレの家の宣伝に成功した。元オレの家って案外すごくて、結構著名な人とかお金持ちの慈善活動の一環に組み込まれやすいハウスなんだ。そのため子供たちも()()()()教育をうける。オレが経験豊富なのもまあそういうおかげだ。

 

 話し方から魅せ方はもちろん、乗馬から車の整備、射撃からゴルフまで高貴な方々の慈善活動の密着取材について行っても失礼のないようにみっちり訓練されてきた。まあお金は慈善活動のおかげでたんまりあるからな。おもしろいとこだろ?

 

 適当に世間話をしている間にハリーがトランクを持って降りて来た。オレを見て目を見開いている。大方家を追い出されるとでも思っていたのだろう。ダーズリー氏がいる手前小さく手を振ることしかできなかった。

 

「ではハリー君をお預かりいたします」

 

 ウィーズリー氏がダーズリー氏と話したのは計画通りそれだけだった。

 

「また時間があったらうちに来なさいルーキー君。君とは話が合いそうだ。ぜひダドリーの友達になってくれ」

 

 さすが社長、商機は逃さないってことらしい。オレは笑顔で握手を返しておいた。その間にウィーズリー氏はハリーの荷物を半分持って車に運んでいた。

 

「失礼致します」

 

 玄関から外に出てドアがしまったことを確認してオレは車が停まっている場所に戻って来た。成功だ。

 

「ルーク!! 君すごいよ! どうやっておじさんをそそのかしたんだい!」

 

 ハリーがキラキラの目で尋ねて来た。よほど酷い目に遭ってたんだろう。

 

「オレの才能かな」

「君を敵に回すのは避けないと、来年も頼むよ」

「任せてくれ。こういうのは小さい頃から訓練されているんだ」

 

 そこからハリーはオレとロンに何があったのか、どんな生活を送っていたのかを飽きるまで話してくれた。ちなみに前席に座っているウィーズリー夫婦はハリーの扱いにとても怒っていた。

 

 ただ、ハリーは屋敷しもべ妖精については車の中ではあまり触れなかった。たぶん前に大人が座っているからだろう。

 

 そして予知どおり帰りは行きよりも時間がかからなかった。

 

 なぜなら全く渋滞に遭遇しなかったから。

 

 そもそも空に渋滞なんて概念があるのかは謎だけど。

 

 このフォードはウィーズリー氏のちょっとした好奇心によりいくらか改造されているっぽい。部屋の大きさから、透明化、そして空をとぶことまでできるたぶん世界に一つしかない車だ。

 

 やり方をぜひ教えてほしい。そろそろオレにも箒よりもいい乗り物が必要だとおもうんだ。

 

 残念なことに車は魔法界の通販では買えないし、車の廃棄場もこの状況だと一人では行けない。それに大概オレが一人で外を行動するとよくないことが起こるのは短い人生の中で身をもって経験してきた。たとえば超でかい不細工なやつらと鬼ごっこしなくちゃいけなくなるとかな。話せば長い。

 

 ああ、庭にいい廃車でも落ちてこないかな? 最悪二輪でもいい。

 

 それかフラッフィーに空飛べる能力とかないよな? 最近よく背中に乗せてくれるし飛んでくれてもいいんだけど。

 

 そんなこんなで隠れ穴に帰ってくるのはあっという間だった。

 

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