オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、魔法使いだと思い出す

 書店で集合ということだったのでオレは寄り道しつつも時間通りにフローリッシュ・アンド・ブロッツ書店の目の前まで来ていた。

 

「ルーク! こっちよ!」

 

 首を右往左往させているオレをハーマイオニーが見つけてくれた。隣にロンとハリーもいる。助かった。このままもみくちゃにされながら待ち続けるのは苦痛でしかない。

 

「なんだこの人だかりは。閉店セールでもやってるのか?」

「縁起でもないこと言わないで。今日はあのギルデロイ・ロックハートのサイン会がここで催されるみたいなの! 本物の彼に会えるって!」

「もしかして、君、ファンなの?」

「ええ、そうよ。彼って本当に偉大なの」

 

 ハーマイオニーは少し顔を赤らめてロックハートの魅力について語っている。

 

「オレのチャーミングな笑顔は? ハーマイオニー?」

「あなたも頑張ればあの人みたいになれるんじゃないかしら。素質はあるわよ」

 

 なんとも微妙な評価を得ることができた。そもそもロックハートに憧れを抱いていないオレにとってそれは褒め言葉ではない。

 

「奥様方、お静かにお願いします。押さないでください! 本にお気をつけ願います!」

 

 本屋の店員は崩れそうな本の山を支えながらそう叫んでいた。絶対整理券でも配るべきだ。魔法界にそういう制度はないのか?

 

 オレはアルバスからもらった分厚めの本一冊が買える程度のお小遣いを使うべき本を探して回りたかったのだが、そう自由に動けない状況だ。

 

 仕方なく近くに置いてあった『近代の魔法薬学論文一覧』って分厚めの本を引っ掴むことにした。本当は『古代魔法から現代魔法の変遷』が欲しかったのだがそれを探すには今日は不適すぎた。

 

 どんどん前の方に流されて、オレたち4人はとうとうロックハートを半径2m以内で観測できるようになった。4人中3人はロックハートよりお会計の方が重要だと思っていることをたぶんロックハートご本人は知らない。

 

「そこ、どいて! 日刊預言者新聞の写真です!」

 

 ロンを薙ぎ倒す勢いで新聞記者が割り込んできた。ちょっとした騒動にロックハートの目が行ったのだろう。彼はロンを見て次にその横のハリーを見た。オレとは目すら合わなかった。

 

「君は、もしやハリー・ポッターでは?」

 

 ロックハートは列からハリーをカブのように引き抜いた。そして、壇上でハリーと横並びになった。

 

「はい、ハリー。笑って。いい写真だ。これで明日の朝刊は君と私とで一面大見出し記事だ。みなさん! なんという記念すべき日でしょう。ハリー君がわざわざ私の書籍を買うためにこの書店に足を運んでくれました。今、私は彼に喜んでプレゼントしましょう! 無料で!」

 

 急にロックハートはダーズリー氏みたいなことを言い始めた。こいつ商売やってるやつだな。ハリーの知名度を使って自分をアピールしようとする魂胆が読め一気にオレの中のない熱が冷めた。チャーミング賞も裏で取引しているタイプだろこれ。

 

 猫かぶっている時のオレとムーブがなんとなく似ていて同族嫌悪を感じている間にロックハートは重大発表をしていた。もちろんオレの方がもっと上手くできる自信はある。今やる気はないけど。

 

「重大発表をします! このたび私はホグワーツで『闇の魔術に対する防衛術』を担当することになりました!」

 

 マジかよ。クィレルの次はステマお兄さんか。アルバスはなんでこんなやつを選んだんだ? 

 

 オレはまだこの人の一面しか見ていないからこう思ってるだけで、実はガチで優秀なのか? 

 

 ハリーは今無料でもらった教科書七冊を手にふらふらと書店の端に歩いていった。オレは人混みから少し離れた会計場所で会計を済ませ、ハリーのいる場所に足を運んだ。

 

 よかったロックハート著と一般書籍の会計が分かれていて。

 

 本を買った後の集合場所として指定された書店のまだ比較的空いているところに行くと、オレがあまり好印象を持っていない彼に絡まれていた。

 

「ウィーズリーか。そんなに買い込んで、君の両親は1ヶ月飲まず食わずだろうね」

「なんだとマルフォイ!」

 

 ドラコの挑発を受けたロンが彼に殴りかかろうとするのをハーマイオニーとオレ二人がかりで止めなくちゃいけなかった。

 

 そんなバッドタイミングの中ウィーズリー氏がオレたちに声をかけた。

 

「何してるんだ? ここはひどいもんだ、みんな早く外にでよう」

「これは、これは、アーサー・ウィーズリー」

 

 それを阻んだのはドラコの父ルシウス・マルフォイ氏だった。

 

「お役所はお忙しいらしいですな。あれだけ何回も抜き打ち調査を……残業代は当然払ってもらっているのでしょうな?」

 

 マルフォイ氏はジニーの大鍋に手を突っ込み、豪華なロックハートの本の中から使い古された「変身術入門」を引っ張り出した。ちなみに豪華な本はハリーがジニーにプレゼントしたらしい。やるなハリー。

 

「どうもそうではないらしい。役所が給料もまともに支払わないのでは、わざわざ魔法使いの面汚しになる甲斐がないですねぇ?」

「マルフォイ、魔法使いの面汚しがどういう意味かについて私たちは意見が違うようだが」

「さようですな」

 

 その瞬間ジニーの大鍋が吹っ飛び、ウィーズリー氏がマルフォイ氏を本棚に叩きつけた。何冊もの本が衝撃に耐えきれず重力に従って降ってきた。

 

「ジニーここを出よう。今日の天気は本ときどき雷みたいだ。晴天のはずだったんだけど予報はあてにならないな」

 

 巻き込まれそうだったジニーと近くにいたハーマイオニーの腕を掴みオレは書店の外にでることに成功した。こういうのが両手に花っていうのかもしれない。ムードもへったくれもないが。

 

「助かったわ、ありがとう」

 

 ハーマイオニーにお礼を言われ、ジニーにも小さく「ありがと」と言ってもらえた。ごめんなハリーとロン。君たちは自分でなんとか抜け出してきてくれ。

 

「ジニーも入学準備からこんななんて先行き悪いよな。そんなジニーのためにオレからささやか──」

「ルークったらごちゃごちゃ言い訳せずに普通に渡せばいいのに。それ、さっきアクセサリーのお店で選んでたの私もジニーも見てたわよ。とっても目立ってたわよあなた。お店の周りが女の子たちで人だかりになってたもの」

「うわっ、まじかよ。ゆっくり選べると思って空いている店に入ったら急に大盛況になったのはオレのせいかよ。まあそういうことだ。君のために選んだんだ、もらってくれ」

 

 オレのプレゼントをさらっと渡す作戦は無事ハーマイオニーの余計な一言によって打ち砕かれた。

 

 まさか選んでいるところを見られてるとは思わなかったな。ジニーがお下がりばっかりだって嘆いていたから一つくらい入学のお祝いとして新品を渡したいと思って選んだ髪留めだ。

 

「ありがとうルーク……すごく嬉しい」

「よかった、オレがつけてあげたいけど、今からフルーパウダーだ。ポケットにでもしまっておいてくれ」

「そうするわ」

 

 少しでもジニーが末っ子ではなく、今年の主役感が味わえたらいいななんて考えているオレはいつのまにか兄貴気分なのかもしれない。なんだかんだオレやっぱり年下にかまいたくなるタチなんだ。あの家では何年も最年長だったからな。

 

 

 夏休みもそろそろ終盤、オレは8/31の朝には戻ってこいとアルバスに言われていたためウィーズリー家を一瞬はなれることになった。二日後また会うのに意味不明である。

 

「ただいま戻りました」

 

 オレは誰もいない空間にそう叫ぶと、ビリーと数名がやってきて煤のついたコートを早急に奪っていった。

 

「ご主人様からの伝言です。手違いで往復切符が取れなかったから9/1の19:00までにホグズミード駅まで自分で来るようにとのことです。こちらが地図でございます」

「あー、だからオレへのホグワーツからの手紙に切符が同封されてなかったのか、ってそうじゃないだろ。絶対切符取り損ねって故意だろ校長! やらせたいことってこれのことかよ。なんで前回は往復乗せてくれたのに今年は一歩も列車に乗せてくれないんだ! マーリンの髭!」

「ビリーはそう聞かれたら『何事も経験じゃ』と言うようにと仰せ使っております」

「あんなに頑なに外にオレを出さなかったあのサンタが?」

「そうルーク様がおっしゃられたらビリーは『わしはサンタクロースではないよルーク』と言うように仰せ使っております」

「なんでそんなに読みが深いんだよ。プロチェスプレーヤーを目指した方がいいんじゃないか?」

 

 オレはアルバスから魔法の地図をゲットした。

 

 この地図は優れもので、自分の位置が赤く光るようになっている。つまり今ダンブルドアズハウスと書かれたところが光っている。地図の端にはルート外に出たら警報がなるので心しておくように。なんて嫌なことが書かれていた。

 

「ビリー、オレの教科書とかってまだこの家にある?」

「まだ荷物はお送りしていませんのできちんと寝室に置いてありますでございます」

「オーケー、今日アルバスは帰ってこない感じ?」

「旦那様はお忙しいご様子です」

「つまり、オレは明日起きてスーツケースに教科書をぶちこんでビリーに渡し、18:30に家を出ればいいんだな?」

「完璧でございます」

 

 アルバスがオレに地図を読めるかのテストをしたかったのか、現在地を教えてくれる地図の性能を確かめたかったのか、オレが素直に指示に従えるのが知りたかったのかなんなのかわからなったがオレはこの家の場所を知る権利を得た。案外オレを外に出すきっかけを作ってくれただけかもしれない。

 

 あーひとつ心当たりがあった。

 

 もしかして、机の上に置いてた150年魔女と戦う計画書がどっかいったのと関係あったりする?

 

 

 9/1の18:30。

 

 オレはローブで家を出発することになった。すでに日は落ちかけで学校に着く頃には真っ暗確実だ。

 

 オレは地図を頼りにずんずん進んでいった。そしてホグズミード駅に辿り着くまでは完璧だった。なんのトラブルも珍しく発生しなかった。

 

 ちょうど列車も少し前に到着していたらしく新入生らしき子たちが列を作って歩いているのが見えた。そして手に持っていた地図はいつの間にか案内を終えましたと言わんばかりにまっさらになってしまった。

 

 ここまではよかった。

 

 オレはホグズミード駅からどうやってホグワーツに行くのかを知らないままここに来てしまったと言う点を除けば完璧だった。

 

 そう。

 

 あたりを見渡しても上級生も同級生もいそうにない。いるのはルートが違う新入生だけ。それももう最後の一人しか見えない。オレはとりあえず新入生とは逆の方向に行くことにした。逆張り精神ってやつだ。

 

 進んでも進んでも森・木・森・草・森。

 

 ここどこだよ? 

 

 とりあえず遠くにぎりぎり見えるホグワーツ城の塔に目がけて真っ直ぐ進むことにした。噂によると馬車的なものがあるらしいんだが、一向にみつからない。これはもう遅刻確定だ。

 

 オレは歩き続けた。

 

 暗いせいで自分が今どこにいるかなんてわからない。ライトかせめて松明が欲しいくらいガチで一寸先は闇だ。オレには赤外線センターもついていないからさっきから木の根につまづきかけてばっかりだ。

 

 そんなことを考えていてふと思い出した。

 

 ん? 

 

 オレって魔法使いだよな? 明かりなんて自分で作ればいいんじゃね?

 

 すっかり忘れていた。オレは杖の先に光を灯し倍速で歩くことが可能になった。さっきまでにできた傷は全く無意味だったらしい。

 

 どんどん近づいてくる塔。自分はどういうルートを通ったのかよくわからないがとりあえず玄関ホールまでたどり着けた。

 

 オレってやればできるやつじゃん!

 

「ブラック! いったい全体何をやっていたんですか!」

 

 玄関ホールには少し髪が乱れたマクゴナガル教授が突っ立っていた。心なしか息も切れている気がする。

 

「お久しぶりですマクゴナガル教授。馬車が見つからなくて歩いてきたらこんな時間に」

「列車を降りて右にいけばいっぱい並んでいたでしょう!」

「オレその列車に校長先生の思惑によって乗れていないんです」

「ああそうでした。あなたが列車を破壊してしまうんではないかと言って徒歩で来るよう指示されたんでしたね」

「まじか。そんな理由だったんですね」

「儀式にうちの寮の生徒が3人もいないって大騒ぎだったのですよ。ほら早く入りなさい。罰則は食事を食べた後に考えても遅くありません」

「……罰則はあるんですね」 

「まだ寮の得点制度が始まっていないので減点がないだけましだと思いなさい」

 

 オレは歓迎会で盛り上がっているところにささっと(結構な人には見られたが)入っていくことに成功した。ハーマイオニーがご丁寧に隣を詰めてくれたのでオレは食事にありつくことができた。

 

「ルーク! あなたなんでこんな時間に? 列車には乗ってなかったわよね? ハリーとロンを知らない? あと背中にいっぱい葉っぱがくっついているわ」

「おうおう。ハーマイオニー質問が多いな。オレは家から徒歩で来たんだ。そしたら駅からホグワーツまで行く馬車が見当たらなくて適当に森とか獣道を歩いてきたらこの時間さ。ハリーとロンってなんの話だ? というか二人はどこだ? ん? ああ、ジニー、グリフィンドールに決まったのか。おめでとう。なんでも聞いてくれ、たぶん役に立つ」

「馬車は右にでてすぐに並んでたでしょう!」

「いや、なら全部引き払った後だったのかもしれない。オレも右に行ったけどすっからかんだったね」

 

 オレはジニーの皿にチキンをよそってあげながらハーマイオニーの小言に対応していた。ジニーには「ルーク! 私そんなに食べれないって!」と言われたのでよそうのをストップした。

 

「で、ロンとハリーは? 体調不良か?」

「それがわからないの。列車にも乗ってなかったし、ジニーに聞いても駅までは一緒にいたって言うの」

「じゃあオレの計画を二人が引き継いでくれたのかな? 列車脱出作戦。でも変だな、ハリーはそういう冒険よりもホグワーツに行くことの方が大切だと思ってたんだけど」

「……ルーク、あなたそんな計画を立ててたのね。まったく信じられないわ」

「結局アルバスにばれてオレは徒歩通学になったけどな」

「ダンブルドアの判断は正しいと思うわ」

「でもそのせいで迷って遅刻。さっきマクゴナガル教授に罰則も約束させられた。いい一年の始まりとは言い難いね」

「もしあなたが列車にのってその計画を実行してもいい一年の始まりじゃなかったでしょうね」

「そうかもしれない」

 

 オレは途中参加なもののちゃんとデザートまで食べきり満足した。校長からの二言三言を聞き流しオレたちは寮に戻ることになった。

 

「ポッターとウィーズリーが車を飛ばして退学処分になったらしいぞ」

「だから大広間に二人はいなかったんだ」

 

 なんとまあひどい噂が飛び交っていた。まさか車に羽をはやすわけでもあるまいし、いくら浮遊魔法が使えるからってさすがにあの距離だと体力の方が先に尽きるぞ。オレはそう思って噂を鼻で笑っていた。逆に隣にいるハーマイオニーは不安そうな顔をして「本当にあの人たちやってないわよね?」なんて聞いてくる。そのたびにオレは「流石にないだろ」と言うしかなかった。

 

 待てよ、すっかり忘れていたけど空飛ぶ車、オレ一個だけ知ってね?

 

「ねえ消灯前にちょっと外を見に行かない? もしかしたらハリー達がいるかもしれないし」

「……なんだかんだ不安なんだな。まあいいよ、付き合う。合言葉知らないかもしれないしな」

 

 オレたちはローブを羽織りなおし、肖像画を抜け廊下にでた。廊下の端に二人で座り込む姿はぱっと見仲良しカップルだろう。まあそんな事実は一切ない。

 

 しばらく廊下で待機してそろそろ戻ろうと言おうとした時ハーマイオニーが勢いよく立ち上がった。

 

「やっと見つけた! いったいどこに行ってたの! ばかばかしい噂が流れて──誰かが言ってたけど、あなた達が空飛ぶ車で墜落して退学処分だって」

「うん、退学処分にはならなかったよ」

 

 ハリーがさも安心してくれみたいな顔で言ってきたがそうじゃない。

 

 オレが思ったより二人はいたずら好きだったらしい。いつもオレが提案するいたずらには8割乗ってこないのにオレ抜きでおもしろそうなことするなよ。

 

「まさか本当に空を飛んだの?」

「お説教はやめろよ」

 

 ハーマイオニーの本日何度目かの「信じられない」を聞いた。オレ達は廊下にいる必要もなくなりベッドに行っておとなしく眠ることに専念しようとした。ただそうはいかなかった。

 

 ハリーとロンが入った瞬間中にいたグリフィンドール生がドッと歓声をあげた。

 

「おい、二人ともまじかよ! 感動的だぜ! 車をとばして『暴れ柳』に突っ込むなんて! 武勇伝になるぜ」

 

 こんな感じでハリーとロンは超賞賛をうけた。

 

 一方ハーマイオニーはご機嫌斜めになってオレのローブに八つ当たりをしてきたのでオレはその場から早急に退散し荷物の整理整頓をすることにした。とばっちりはごめんだ。

 

 あーあ、オレも真面目に歩いてくるんじゃなくて花火くらい打ち上げとけばよかったな。そしたら楽しい一年の始まりがもっと楽しくなっていたかも。

 

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