オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
オレとロンとハーマイオニーはハリーのクィディッチの練習を見るために朝からスタンドで朝食会を催していた。
ちなみに今、オレとハーマイオニーはベーグルに、ロンはマーマレードトーストに齧り付いているところだ。
「おっハリーが出てきた。てかさっきからカシャカシャうるさいな。まさか競技場にまでカメラがあるとか言わないよな? オレの最近のアンラッキーアイテムがパパラッチなんだ」
「ルーク、後ろのあの子に見覚えは?」
「ああ、オレの写真で小遣い稼ぎをしていた一個下の……コイン・クリービーだっけ?」
「コリン・クリービーよ」
「はあ。昨日あんだけ言ったのにまだ懲りてないのかよ。まあ今日はハリーがターゲットになっている分オレに被害がないからいいけど」
「ルークが窓の外見ながら黄昏てる写真と談話室で居眠りしてる写真だっけ。一年生の間で蛙チョコ5つで交換されてるのをみた時は笑ったよ。ハリーの笑顔の写真より高かったぜ」
「ロン、笑って見てないでついでに没収してくれればよかったのに。一年たちも物好きだよな、オレの写真持っててもいいことないだろ。強いて言うならスネイプ教授の嫌そうな顔が見れるくらいだ」
「取り上げるなんてことしたら、僕が君の同担拒否のファンみたいになるだろ。もしかしたらパートナーとか噂されるかもしれない。そんなの僕の被害がひどくなるからごめんだね」
「それは困るな、いい判断だロン。そもそもカメラはなんでホグワーツに持ち込みオーケーなんだよ、マグル製品は壊れるんじゃなかったのか?」
「それはホグワーツの歴史の第4章に書いてあったわ。電気──」
オレたちはハリーの練習の様子を眺めながら、そしてシャッター音をBGMに世間話をしていた。
ただ、世間話に一段落つく前に状況が一変した。
競技場に緑のカラーユニフォームを着たやつらが乗り込んできた。
スリザリンだ。
赤と緑お互いキャプテン同士でなにか言い合っている。明らかにやばそうなので、オレたちも会話が聞こえるくらい近くに行くことにした。
「スネイプ教授から許可をもらっている。新しいシーカーの育成のためにな」
スリザリンのキャプテンの発言によると、なんとドラコが今年のスリザリンのシーカーらしい。ずっとやりたがっていたみたいだしよかったなドラコ。ハリー、コテンパンにしてやれ。
「ドラコのお父上が我々スリザリンチームにくださったありがたい贈り物を見せてやろうじゃないか」
そう言って自慢げに見せられた箒は『ニンバス2001』ハリーの箒の次の型、つまり最新版だ。
「グリフィンドールも資金集めをして新しい箒でも買えばいい。クイーンスイープ号を慈善事業の競売にかければ博物館が買い入れるだろうよ」
スリザリンメンバーは自分のキャプテンの言葉に爆笑している。笑いのツボがちょっとばかしひねくれているって思うのはオレだけかな?
ちなみに、クイーンスイープ号はフレッドとジョージが今使っている箒らしい。ロンが博物館の音声ガイドのように的確に解説してくれた。
「ちょっコイン、お前は手を後ろに組んで大人しくしてろっ」
「僕はコインじゃないですっコリンです! ルークどいてくださいよっスクープなんです」
「そのスクープを撮らせないようにこうやって言ってるんだ。ほら、カメラを下ろせ」
「ちょっカメラが壊れますって!!」
オレの予想だとあと数分後にグリフィンドールの誰かがスリザリンの誰かの首根っこを引っ掴むことになる。そんなところを写真で撮られたら暴行という証拠が残ってクィディッチ出場禁止を言い渡される可能性大だ。
だからオレが必死に止めているのにこのコインは自分の欲求に忠実すぎる。
コインはそんなことまで考えていないから教えてやれって? オレは聞く気のない生徒にメディアリテラシーを教える授業はもう請け負っていない。ちなみにちょうど1日前まではたびたび臨時出講してたんだがあまりにも生徒の耳をすり抜けていくから中止になった。
オレの予想は少し外れた。
スリザリンの嘲笑に耐えられなかったらしい、隣にいたハーマイオニーが口を開いたのだ。
「少なくともグリフィンドールの選手は誰一人としてお金で選ばれたりしてないわ。こっちは純粋な才能で選手になったのよ」
「誰もおまえの意見など求めていないグレンジャー、生まれ損ないの『穢れた血』め」
ドラコの発言にフレッドとジョージがドラコを殴りかかりに、アリシアが「よくもそんなことを!」と金切り声をあげ、ロンは杖をローブから取り出し「マルフォイ、思い知れ!」と黄緑色の閃光を発射した。
オレの予想は悪い方向に外れた。首根っこじゃすまなかった。
オレはその戦いに参加しなかったかって? もちろん参加したいのはやまやまだったんだが、このヤバめな状況をコインが写真を撮らないように手でレンズを押さえるのに尽力していたせいで不可能だった。とりあえずカメラを構えるのをやめてくれコイン。本当に魔法をかけるぞ。
ここで残念なニュースがある。
ロンは杖が折れていることを忘れていたみたいだ。黄緑色の閃光はドラコではなくロン自身に当たった。ロンは大きな音をたててひっくり返った。
「ロン! ロン! 大丈夫?」
ハーマイオニーが悲鳴を上げた。
ロンはその問いかけに答えようと口を開いたが言葉の代わりにゲップとなめくじ数匹がぼたぼたとこぼれ落ちてきた。
「あー、君はなんで変な呪いばっかり覚えてるんだ。もっといい呪いいっぱいあっただろ頭に花を咲かせるとか」
オレはグロッキーなロンに杖をむけ、呪いを終わらせる呪文をかけた。大抵の呪いはこれでどうにかなるんだが。
「……おかしいな。なんかバグが生じたみたいだ。全部吐き切らせないとだめかも」
オレの呪文は効かず、なめくじまみれの芝を見ながらオレはため息をつくしかなかった。
スリザリン生は少し離れたところで大爆笑し、グリフィンドール生は少し離れたところで心配そうに見つめている。
おい、引いている君たち。ナメクジぐらい魔法薬学でいっぱい触ってるだろ。
「ハグリッドのところに連れていこう。1番近いし」
ハリーの提案でオレとハリーがロンの肩を支え、後ろからロンが吐き出したなめくじを消す係をハーマイオニーが担当した。
「コリン、今撮ったデータ全て消さないとそのカメラごと壊すけどいいか?」
オレがそう言うとコリンは真っ青な顔をして首を横に振った。最初からそうすればいいのにまったくかわいい後輩だ。
「もうすぐよ、ロン。すぐに楽になるから……もうすぐそこだから」
ハーマイオニーは必死にロンを励ましながらナメクジを消している。やっとハグリッドの小屋に辿り着き、運ぶのをハグリッドに任せた。
「いつ来るんかと待っておったぞ。フラッフィーもおるぞルーク。さあ入った入った。おうおうロンはどうしたんだ? え?」
ロンは椅子に座らせられ、ついでにバケツを持たせられていた。出し切ったら止まるという励ましも添えて。
「それで? やっこさん、誰に呪いをかけるつもりだったんだい?」
「マルフォイがハーマイオニーのことをなんとかって呼んだんだ。ものすごくひどい悪口なんだと思う。みんながカンカンだったんだ」
「ハリー、そのなんとかは『穢れた血』だと思うぞ」
オレはフラッフィーを撫でながらそう付け足した。
「そんなこと、ほんとうに言うたのか!」
「言われたわ、でもわたしどう言う意味か知らないの。もちろん物凄く失礼だってことはわかったけど」
「ハーマイオニーでも知らないことがあるんだな。『穢れた血』ってのは『純血』と真逆の意味でマグル生まれを差別する言葉なんだ。よく1個か2個前の校長の肖像画がオレに向かって説教してくるときに使うよ。純血たるものウンタラカンタラってね」
「他人のことをそうやって罵るなんてむかつくよ」
ロンが顔を真っ青にしながらそれだけ言ってまたバケツに頭をつっこんだ。
「ドラコはあの場でそうとしか言い返せなかったんだ。君のことを優秀な魔女と心の中で認めている証拠さハーマイオニー。気にするなよ?」
「そうね。私とは関係ない人が何を言おうがどうでもいいわ」
「君は最高の魔女だってみんな思っているよ」
ハーマイオニーが傷ついていないようでオレ達はちょっと安心した。
「ねえ、それが本当にあのフラッフィーだよね?」
ハリーが信じられないとでも言いたげな顔でそう言ってきた。
「そうだけどどうした?」
「本当に小さくなったのね、私たちの二倍は背丈があったのに今は大型犬くらいかしら。それに、牙も丸くなっているわね」
ハーマイオニーもオレの口頭での説明は信じていなかったらしい。
「お手入れの成果さ。ほら3人とも触ってごらん? 普通のペットだよ。三つ頭があるのもまあご愛嬌だ」
「僕なめくじ吐きすぎて頭までおかしくなったかも。普通に人懐っこくないかこいつ?」
「フラッフィーはもともといい子だって最初からいっとったろう。え?」
「ハグリッドのいい子は幅が広すぎるもの。いい例がノーバートね」
「うう、すまんかった」
「すぎたことだからもういいよ、ハグリッド」
「この子元の大きさにするにはどうするの?」
「首輪を大きくしたらそれに対応した大きさになるっぽい。アルバスはそう言ってた」
「便利ね。どんな仕組みなのかしら──」
オレとハーマイオニーが魔法について議論している間ロンとハリーはハグリッドがお腹が空いただろうと出してくれた糖蜜パイに貪りついていた。
◆
玄関ホールに戻るとマクゴナガル教授がいらっしゃった。
「3人ともここにいたんですね。探しましたよ。あなたたちに今夜罰則です。ウィーズリーとブラックはトロフィールームで銀磨きです。魔法は使ってはいけません。ポッターはロックハート教授から直々のご指名です。ロックハート教授のファンレターに返事を書くのを手伝いなさい」
「えーっそんな。僕もトロフィールームの方ではいけませんか?」
「もちろんいけません」
ロンとハリーは見るからに落ち込んでいた。
「あなたは彼らみたいに落ち込んでいないのね」
「ハーマイオニー、オレが今まで磨いてきた皿の数を知ってる? これくらい余裕だよ」
「あなたへの罰則をファンレターの返信にかえた方がいいんじゃないかしら? 今からでもマクゴナガル教授に進言してあげましょうか?」
「それはやめてくれ。オレ写経は苦手なんだ」
「あなたにも苦手なことがあったのね」
「苦手なことだらけさ。蜘蛛が嫌いだし、実は文字を読むのも書くのも疲れるから好きじゃない。パパラッチも苦手。あとはマンドレイクの葉っぱも最悪だ」
「マンドレイクの葉っぱって嫌いになる要素が何かあったかしら? 泣き声じゃなくて?」
「色々あるんだ」
◆
オレとロンはその日の夜延々と銀を磨き続けた。
オレのトロフィー磨きの手際の良さにフィルチが「卒業後管理人に推薦してやろうか?」なんて言い出す始末だった。
嫌だね、オレは取り締まる側じゃなくて取り締まられる側のほうが性に合っている。まあ1番は取り締まられないことだけど。それに管理人に必要な能力は磨くことだけじゃないだろ。オレがやったらほとんどの生徒が夜中ベッドから抜け出すことになりそうなことくらいわかってるだろ?
オレとロンが銀磨き粉の匂いを漂わせながら帰ってきた時、ハリーに遭遇した。ハリーはロックハート教授の方で搾り取られたらしく、初っ端から意味のわからんことを言い始めた。
「ロックハートのサインを書いている時『来るんだ……。俺様のところへ……引き裂いてやる、殺してやる、八つ裂きにしてやる……』って声が聞こえたんだ。だけど、ロックハートにそれを言っても不審そうに「いったいなんのことかな?」って言うんだ」
「君にしか聞こえないなんて変だな。別にドアが開いてたとかそういうわけじゃないんだろ?」
「うん」
「ロックハートが嘘をついてたとか?」
「わからない」
ハリーがおかしいのか、ロックハートがおかしいのかこの時点でオレたちは判断することができなかった。もちろん偏見だけだったらオレの中で100%ロックハートがおかしい。
ただ、ハリーがロックハートのテンションに幻聴を聞くほど参った説も否定できない。